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第四百五十四話 大地の牙

ぶっくま・・・消えて?増えた!


ありがとうございます!!


<視点 カラドック>


やれやれ、

まだまだ苦労しそうだな。


もちろんここは邪龍の本拠地・・・敵の親玉が待ち構えている最後の戦いの場。

そう簡単にクリアできるなんて思ってないけどね。


何もしてなくても気分が悪くなる邪気が充満した洞窟・・・

今はタバサのフォースフィールド内にいるおかげで、そういったマイナスコンディションに冒されることはないけども、

その光結界の有効範囲もかなり狭められている。


今までは地の利を有効に使う戦術を私は得意としてきたが、

さすがに邪龍のホームグラウンドでは勝手が悪い。

私の精霊術もここでは十分に力を発揮し得ないのだ。

地属性ならまだ何とかなるかな?


得意技を封じられたのは私だけじゃない。

せっかくレア職に転職したのに、ケイジも同様だ。

獣騎士ケイジのスキルは、人間型の魔物や獣型相手にはかなりのデバフ効果を与えるが、

生物という範疇に入れていいのかどうかすら分からない邪龍の眷属にはほとんど効果が現れていない。


味方の士気上昇効果を持つハウリングは有効のままなんだけど、

麻衣さんに「洞窟の中だと・・・その、あの・・・」と言われて、

ケイジはすぐに理解できなかったようだけど、

リィナちゃんが「ああ、やかましいよね、わかるよ。」と直球を投げつけられ落ち込んでいたな。


・・・・まぁ、集団戦ならかなり有効なスキルなんだけど、

このパーティーの中で、士気上昇対象となる人物はリィナちゃんしかいないものね。

ヨルさんにも少しは効果が出るみたいだけど、普通にヨルさんも煩いと思っていたらしい。

「叫びたかったら叫べばいいんじゃないですかあぁ・・・。」と無表情に言われて、

ケイジの尻尾がみすぼらしく垂れ下がっていた。

・・・ケイジ、どんまい!


その代わりと言っては何だが、

ケイジが手に入れたベリアルの剣の衝撃波スキルは役に立っている。

あれで敵を吹き飛ばして、安全な距離を作れているのだ。


十分な距離がないと魔法も危なくて使えない。


この洞窟での各自の役割を説明をすると、

麻衣さんとタバサは攻撃には参加しない。

タバサには常時、フォースフィールドを張り続けてもらわなければならないし、

最後の止めもやってもらってる。

それ以上の負担はかけられない。


麻衣さんの感知術は、

突然出現する邪龍の眷属の探知には役に立たないと本人は言っていたが、

それでも私たちより一早く邪気の凝縮する気配を察知してくれる。

ならば、やはり麻衣さんには敵の来襲を告げる役を全うしてもらいたい。

現在のところ、麻衣さんの虚術やユニークスキルの使用は必要ではない。

その代わり召喚術のフクロウを呼び出して、

敵の撹乱に頑張ってもらっている。

奴らの動きはそれ程速くない。

奴らにとっても、頭上を縦横無尽に飛び回るフクロウを補足するのは困難なのだろう。

こっちは、そのおかげで出来た隙に攻撃を仕掛ければいいのである。


そして攻撃陣だ。

私はパーティー内で中央に立ち、

戦況次第で攻撃も行うし、守備的な役割も果たす。


残るアガサ、ケイジ、リィナちゃん、ヨルさんが攻撃部隊だ。

邪龍本体まであとどれくらいの行軍が必要なのか分からない。

だから、各自魔力の使用は抑え気味にしてもらってる。

その気になればアガサは洞窟を吹き飛ばすほどの魔力と術を展開できるのだが、

もちろんそんな危険なマネをする必要もない。


火術系統は一長一短。

本来洞窟の中では酸素不足に陥る懸念から、あまり火術は使いたくないが、これだけの広さを持つ洞窟なら・・・やっぱりやめよう。

酸素不足の心配はなさそうだが、無臭の引火性物質が漂っていたら危険すぎる。


アガサは光属性魔術、私は氷属性魔術を使って敵を行動不能にしてしまえばいい。


もともと火属性も、敵の再生自体は阻害してくれるのだけど、奴らは苦痛耐性があるのか、敵の行動そのものを止めるには至らない。

そうなると使える属性や魔術の選択は限られてくる。


そして、

これまでで一番いい動きをしているのがリィナちゃん。


何かふっきれたような動きで、この暗い洞窟の中、その手の中の神剣天叢雲剣は、常に薄青い燐光を纏い続けている。

こちらは雷属性だ。

いわゆる魔法剣同様の効果があるのか、

斬られた敵が再生する気配もない。

そのまま斬って捨てられ、最後にタバサのホーリーシャインで浄化されてゆく。


想定してなかった事が一つある。

ヨルさんのトリダントゥ・レプリカだ。

麻衣さんが、

鑑定で地属性であることは看破してくれていた。


その為、ヨルさんが魔力を通す時に破壊力増大効果を見込んでいたのは確かだ。

実際、それで多くの邪龍の分体を蹴散らしてくれた。

何しろ一撃で行動不能に陥らせてくれたからね。


それでも敵が複数、集団で来られるとヨルさんの巨大な矛は重荷となってしまう。

振りかぶりやバックスイングが大きな隙となってしまうのだ。

突きだけでもそれなりに攻撃力はあるのだが、

左右から襲われるとやはり危険が生じてしまう。


そんな時、麻衣さんから声がかかった。


 「ヨルさん!

 その武器、スキルが封入されています!

 地属性を意識して下さい!!」


えっ!?

このタイミングで!?


 「地属性ですかああああっ!?

 ヨルは地属性苦手なんですよねえええ!!

 それで、な、何のスキルなんですかあああっ!!」


 「あっ、え、えーと、なんだろ、

 動き回ってるから視にくいっ・・・

 あ、わ、わかりました!!

 『大地の牙』です!!

 多分、地属性意識して地面ぶっ叩けば発動しそうです!!」


 「わっかりましたですよおおお!!

 やってみますですねええええ!!

 ちなみに文言とかないんですかあああっ!?」


 「あっ、ごめんなさい、そ、そこまでは・・・。」


ケイジのベリアルの剣も、ある意味スキル付与された剣だが、別にケイジはスキル名を叫ばなくでも衝撃波を発動できる。

・・・たまに叫んでいるけども。


スキル名を、叫ぶ叫ばないで威力に違いが出るのかどうなんだろうな?

流石に私もそこまで気にしてなかったな。


 「取り敢えずやってみるですよおおおおっ!!

 えーと、大地の牙大地の牙・・・牙きばキバ・・・牙だから・・・ええとぉ!?」



虫オーガや虫猪を薙ぎ払い、ヨルさんの前方にスペースができた。


その中心に向かって、まるで斧で地面をぶっ叩くが如く、ヨルさんが頭上に振りかぶる。



・・・あ、


これ、間違いなく強大な地属性の魔力が・・・


 「『喰らえ! 大地っ!!』でいいですかあああああああっ!?」




自分のまん前に槍や斧を打ち据えたら、

その激突した地面から石や土塊が飛び散るのが当たり前だろうか。


そんな誰でも考える予想は全てぶっ飛んだ!


まさしく大地の牙!!

数メートルはあろう何本もの岩の牙が、

地面を突き破り、邪龍の眷属どもの体を貫いたのだ!!


こ、これは強力だ。

地属性には敵の再生を阻害する効果はないけども・・・

あれでは釣り針、

ルアーが何かに引っ掛けられた生き餌のごとく、逃れることなど出来るはずもない!


 「す、すっごいですよおおおお!!

 持ってかれる魔力も厳しいですけど、

 地上の敵はこれで一網打尽じゃないですかああああっ!!

 これ、ホントに期間限定アイテムなんですかあっ!?

 ミッション終わった後もガメる方法ありませんですかねえええええっ!?」


気持ちは分かる。

とてもよく分かる。

でも無理だろうね。

そんな甘い話が用意されてるわけもない。


それにしても・・・


 「よく麻衣さん、このタイミングでそんなこと分かったな?」


ケイジでなくとも何故このタイミングなのか不思議に思う。

それに前回はマルゴット女王の魔眼があったおかげで隠しスキルが判明した筈。

まさか麻衣さんまで魔眼を手に入れたとか?


そうしたら麻衣さんは意外すぎる理由を教えてくれた。


 「あ、ああ、あたしも実は気づいてなかったんですけど、また・・・。」


 「また?」


 「またケイジさんのベリアルの剣が対抗意識を見せてたんで、もしかしてと思ってたら・・・」


それで気をつけてよくヨルさんのトリダントゥを観察してたら、隠しスキルのような表示を見つけたと。


あれ?

そういえば最初の説明で、大地を揺する力を秘めるって説明あったよね?

 「あ、それ、多分もっと習熟度あげて魔力食わせないと発動しないんじゃないですかね?」


まだ更なる力があるのか!?


 「あ、いや、違うかな?

 そっちがレプリカでなく本体の封入スキルかも・・・。

 ごめんなさい、あたしでもそれ以上はちょっと・・・。」


十分有用な情報だよ。

もっとも地面揺らされたら、こないだのワニの悪魔じゃないけど私たちも全員行動不能になるからね。

今のスキルだけでいいと思う。



ていうか、そろそろベリアルの剣、喋らせてあげたら?

念話くらいならいいんじゃない?

え?

無理?

他の有名な作品と被るからダメ?

意味がよく分からないな・・・。




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