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第四百五十一話 深淵

また評価があがりましたああああ!!

ありがとうございます!

<視点 ケイジ>


頭や手足から触手を生やした化け物・・・。

目玉はさきほどの虫オーガと同様、昆虫のような・・・。

そして口のような器官はあるが、それを開いて声を出している様子はない・・・。

だが今の声・・・聞き覚えはある・・・。


 「その声・・・その触手・・・

 あなたが・・・邪龍か!!」


カラドックから絞るような声が飛ぶ。


そうだ、あれはベアトリチェの胸を内部から貫いていた触手・・・

つまりコイツがオレたちの忌むべき最後の敵・・・邪龍なのか!!



 『邪龍・・・そう呼ばれているのは間違いないようだ。

 我自身は・・・ヌスカポリテカと名乗っている。』


そうだ、確かにベアトリチェが今わの際に出した名前だった。


 「・・・まだ、あなたの居場所までは距離があったと思ったのだが。」


邪悪な化け物と思っていた相手から理知的な声が聞こえてきたせいか、

さすがのカラドックもどういう態度で話すべきか、悩んでるようだな・・・。



 『ここまで踏み込んでくるお前たちに興味が出た。

 我の本体の所まで来れるのなら、直接相手をしてやってもいい。

 だが、途中で力尽きるのであれば、我の目で見ることは叶わぬであろう?

 故にそうなる前に、向こう見ずな愚者どもの姿を目に焼き付けに来たという訳だ。』


 「それはご丁寧なことだね。

 ではせっかくの機会なので聞くけども・・・

 邪龍・・・あなたはこのまま地上に姿を現し、

 人間たちの世界を蹂躙するというつもりでいいのか?

 かつては・・・人間とも魔族ともその国々を破壊せしめたと聞いているが・・・。」


 『ふむ・・・お前は・・・愚か者か?』


 「は?」


この触手野郎、何言い出しやがる!?

よりにもよってカラドックを愚か者だと!?


 「ケイジ! ステイ・・・!」

飛び出そうとしたオレをリィナが止める。

あれ?

ここはみんなで触手野郎に飛び掛かるとこだと思ったのに、

オレ以外、誰も反応してない。

ヨルまでもか。

くそぅ、キレかかったのおれだけかよ。


つーか、バカにされたカラドックすら涼しい顔をしている。

ここがオレとカラドックの違いなんだろうか。


 『我も生きる以上、食事をする。

 そしてお前らゴミどもは、我に食われないために抵抗する。

 これ以上、何を考える必要がある?』


 「なるほど、確かにわかりやすい話だ。

 牛や豚など、ヒューマン・亜人以外の動物の食事で満足するつもりはないというわけかい。」


 『本当に愚かだな、貴様は。

 そこら辺の獣とお前らに何の違いがある?』


斬りかかりてぇ・・・。

一度ならず二度までもカラドックを・・・。


だが、カラドックの器はオレの想像以上だった。


 「あなたも違いがあると思うから、興味を持ってここに来たのでは?」


おっ!?

いいぞ、カラドック!

邪龍を論破してやったんじゃないか?


 『・・・・・・。』


ホレ見ろ。

触手野郎、黙り込んじまったぞ。

気のせいか、触手の動きも乱れているか?


 『・・・なるほど。

 我も他者と会話するのは、あの魔族の女くらいだったものでな。

 あの女は珍しく我の役に立ってくれた。

 なれどそれ以外、我の役に立たねばその存在など不要。

 手始めに貴様らの命を喰らってやろう。

 無事に我の所まで来れることを願っておくとするぞ。』


 「交渉する余地はなさそうだね。

 では次に会う時は問答無用で戦わせていただこう。」



なるほど、つまりここは宣戦布告の場ということだな。

オレはみんなの方へ一度視線を飛ばし、暗黙の了解を得る。

これ以上の、慎重さはもはや不要だろう。


カラドックは「次に会う時は」と言ったが、それは邪龍本体の話。

この場の触手男に関しては


 『いや、少し待て。』


はあ?


 「この期に及んで何かあるのかい?」


 『ほんの少しばかりの興味だが・・・』


 「・・・・・・。」

 『お前たちは本気で我に勝てると思っているのか?』


なんだ、コイツ?

質問の意図が読めない。


 「それだけの戦力を要していると自負しているよ、

 逆に聞くが、あなたは私達の戦力を把握できるのか?」


 『かつて我に戦いを挑んだ者達のステータスと、

 現在のお前たちのステータスを比べての話であるな。』


ほぉ、つまり邪龍も俺たちのステータスが視えるのか。


 「それは興味深い話だ。

 参考までに聞かせてもらっても?」


 『よかろう。

 戯れに聞かせてやるか。

 お前たちの戦力は、かつてこの我を封じ込めた者たちいずれにも劣らぬほど強大だ。

 誇るがよい。』


おお!

さすがだな!!


 『だが、しかし。』


む?


 『亜人・ヒューマンの魂を喰らい、更に力を得た我の前には微力。』


ああ、そういう事か。

ほんと、余計なことしてくれたよ、ベアトリチェは。


 『それとは別に。』


あ? まだなんかあるのか?


 『気になることもある。

 前回の魔族の女もそうだが・・・』


む?

ベアトリチェのことか?


 『なぜ、この世界ではない異世界出自の者がいる?』


ん・・・待て・・・オレの隠し称号見えてないよな・・・?

油断してたがこんなところでバラすなよ?


 『我の復活に合わせ、誰かがお前たちを呼び寄せたというのか?

 他の世界から人間を呼び寄せる能力がある者がいるのか?』


 「なるほど、邪龍と言えどもそこは気になるという事か。

 安心しなよ。

 未だに誰が私たちを呼んだのか、或いは誰かが向こうの世界から私達を送り出したのかは分かってない。

 私たちは向こうから送り出されたのではないかとは思っているが、今のところ根拠は何も無いしね。

 あなたが気にする必要はないよ。

 私たちは・・・ただの助っ人、ってところさ・・・。」


ふっふっふ、言葉の節々に棘が見えるぞ、カラドック。

ただ・・・「助っ人」か。

有難い話なんだろうが、オレは助けに来た方なのか、助けられる方なのか、ちょっと悩むな。

オレとしては、もう完全にこっちの世界で生きているつもりなんだがな。


 『・・・よく分かった。

 では・・・』


おっと。

麻衣さんでなくても分かるぞ。

邪龍はこれまで圧倒的な破壊力と、自らの眷属というべきかな、

要は誰の力も借りず自らの力だけで生きていたわけで、

交渉とか話し合いの機微も知らない、わからない。


だからこそ、話は単純、流れも読みやすい。

つまりここから先は・・・


 『ここで死ね。』


前兆も前振りも何もなく、

眼前の触手がブヒュンと飛んでくる。


パキィンとプロテクションシールドが一撃で破られるも、

紫電一閃!!

リィナがその不気味な先端を一蹴!!


ビチビチ激しく蠢きながら触手の切れ端が飛んで行く。

続いて襲ってくるであろう後続の触手はオレが・・・


いや・・・



気味が悪くてたまらないとばかりにアガサがホーリーレイ連射。

彼女も待ち構えていたんだな。

触手男のカラダを三つの光の柱が貫いた!!


ギュルォォっ!

と悲鳴・・・か!?

邪龍の声ではない。

恐らくこの触手男そのものの声だろう。

さっきまでのは、どうやってか、邪龍が声をここに飛ばしていたということだろうか。


触手男は苦しそうに体の各部から伸びている触手を振り回しているが、

こちらまで届きそうな動きじゃあないな。


だが、オレら前衛班が止めを刺しに行くにはまだ早そうだ。

近付いたら残りの触手に襲われそうなのは間違いない。

ならタバサにさっさとホーリーシャインで・・・


 『なるほど・・・いい反応だ。』


 「くっ、こいつまだ・・・。」

触手男そのものは苦しんでいるようだが、邪龍の声は一切変化がない。


 『今はまだ得意になって、我の分体を屠るがよかろう。

 だが、お前たちの手の内は丸裸になっていくということを忘れないことだ。』


そういうことか。

分体・・・。


全ては奴の分身。

この触手男は奴の端末と考えていいのだろう。


なら余計に攻撃手段はこれ以上見せる必要ないな。

 「タバサ・・・」


オレが彼女の姿を探そうと首を向けた時、

何故か・・・


防御力が一番低い筈の麻衣さんが、

何故かオレの視界に飛び込んできた!?


 「麻衣さん!?」


オレだけじゃない。

カラドックを始め、誰だって麻衣さんが最前線に出て来る必要も意味もないと思うだろう。


しかも彼女は誰にも視線を合わせず、

ホーリーレイを喰らって崩れ落ちた触手男に向かって歩いている。


そ、それ以上近づくのは危険だ!!



 『・・・む、子供、いや・・・

 異世界のものか・・・?』


邪龍も戸惑っているのか?

客観的に見て麻衣さんがオレたちの中で最も弱そうに見えるだろう。

その彼女が無防備に自らの元へ歩み寄ってくる姿に違和感しか覚えまい。

だが本当に彼女は何をしに・・・



 「深淵・・・。」


麻衣さんがそこで呟いたのは・・・

意味がよく分からない一言だった。





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