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第四百四十八話 ぼっち妖魔は先が読めない

<視点 麻衣>


アガサさんが作った植物の蔦が暗闇の底に垂れ下がっている。

あたしの遠隔透視もその先に危険を感じない。

それを踏まえても、一番先にヨルさんに降りてもらった。

いつもだとこんな時はケイジさんが真っ先に先陣を切るのだけど、

今回に関して言えば・・・特殊なケースだ。


なにしろケイジさんの背中には、なんとあたしがいるのだ!


楽ちんである!


もちろん小学生だった昔と違って、

今や男の人の背中におぶってもらうような年齢ではないのだけど、

今のパーティー内で最も防御力が弱く、なおかつあたしの感知術を阻害するような行軍は、これより先を進むことに対し、致命的な状況を産み出す危険がある為、

これはやむをない処置だと全員が納得した。


納得してもらった。


タバサさんとアガサさんが羨ましそうな目を向けているのは気にしないことにする。


唯一あたしが警戒したのはリィナさんだけど、

たぶんリィナさんにはあたしは安パイだと思われてるのか、特段変な反応は見られない。


そうなんですよ、皆さん、

あたしはケイジさんのモフモフを堪能してるだけで、

おかしな気や不埒な企みなんか、一切ないんですからね?

誤解しちゃダメですよ。


ふへへへへへへへへ。



 「あ、あの、麻衣さん、オ、オレの背中に胸が・・・。」


 「はい? ケイジさん、何か言いました?」

 「い、いや、なんでもない・・・。」


挙動不審ですよ、ケイジさん。

変な気をまわしてあたしを落っことさないでくださいね。


ヨルさんの後に続いて、

アガサさん、タバサさん、カラドックさん、そしてケイジさんとあたし、

最後はリィナさんが降りる。

この時点で再びアガサさんがライトを詠唱。

もうスタート地点でのライトは不要なのであっちの魔力供給はオフにしたようだ。


ここであたしもケイジさんの背中から降りざるを得ない。

残念。


 「また、似たような状況になったらお願いしますね。」

 「あ、ああ、オレの方は全く構わないんだが・・・。」


ケイジさん、そこでリィナさんの方をチラチラ気にするから余計疑われるんですよ。



・・・この段階で、またもや、という話になるのだけど、

あたしはここでも調子に乗り過ぎていたのかもしれない。

そう、このあと、あたしはとんでもないしっぺ返しを食らうのだ。

因果応報とでもいうべきか・・・。


ただ今の段階で、あたしがその少し先の未来で起こる破滅的な不幸を知り得る術はない。

本当にいろいろ便利なスキルが使えたとて、人の人生はままならない。


え?

一体何をやらかしたのかって?

まぁ、それは後に明らかになるでしょう・・・。



 「若干、広くなった気がするな・・・。」

  

おっといけない。

今はこっちの方を気にしないと。


カラドックさんの言う通り、さっきまでの道より広い。


 「それにしても、普通の洞窟なら地下水がしみ出していたりするもんだと思うが、

 水の匂いというか、水気は殆ど感じないな・・・。」


あたしにはケイジさんほど匂いには敏感じゃないけど、

確かに湿り気は感じない。


 「精霊の存在自体、希薄みたいだ。

 私の精霊術は以前ほど効果を発揮できないかもしれない。」


カラドックさんの強みが薄くなってしまうのか、

それはちょっと不安ですね。


 「邪気の影響が増大、

 私のフォースフィールドも地上ほどの効果は半減。」


邪龍の脅威に対して、最も対抗的な存在となるべきタバサさんからも聞きたくないような情報が寄せられた。

やっぱりそんな美味しい話は転がってないんだろう。


 「そもそもこの洞窟自体、不自然だよね?

 どうやって作られたんだろ?」


リィナさんの疑問は誰しも思う所。

けれど、その答えを探ることは出来なくなった。


そこへあたしの感知術が反応したからだ。

 「皆さん、来ます!!

 森都ビスタールで虫が湧いた時と同じ気配!!」


あたし達の進行方向に邪気がいくつも凝縮する感覚!

でも・・・これはあの時より・・・!


道の向こうからやってきたのではない。

そこに突然湧いて出たのだ!


敵は三体!!

大きさや風貌はオーガを連想するも・・・やはりその質感は虫のような印象だ。

その証拠と言っていいかどうかわかんないけど、

今度の敵には目がある。

・・・それも複眼のような。


 「ケイジ! アガサ!!

 属性攻撃だ!!」


カラドックさんの指示でアガサさんがホーリーレイ、

ケイジさんが光属性付与の矢を撃つ。

二人とも標的を外すこともなく・・・


あっ


 「き、効かない・・・!?」


アガサさんの術は虫オーガの胸中央を、

ケイジさんの矢はえげつなくも敵の顔面を貫いたにも拘わらず、

奴らはフラフラしながらもこっちに向かってくる。

・・・その動きすら虫っぽくて気持ち悪い!!


 「いや、効いてはいる、

 光属性攻撃が奴らの弱点であることも間違いない。

 ・・・だが光の影響が弱まっているんだ。

 ここは邪龍の地の利があり過ぎる!!」


そんなっ!?

カラドックさんの分析はありがたいけど、

そんな絶望的な情報なんて・・・


 「ならヨルが行くですよぉぉぉぉっ!!」


あっ、さっそくヨルさんが魔闘法exを起動!!

無属性で魔力付与された三又の鉾が・・・


ん?

無属性!?


ヨルさんが真っ先に仕留めたのは、ケイジさん達が攻撃をかけなかった無傷の虫オーガ。

ヨルさんの攻撃に反応はしたけども、防御行動を一切取らなかったので、

あっという間に横薙ぎの矛で頭部を粉砕される。

他の二体もヨルさんに向かって行ったけど、

ケイジさん達の光属性攻撃のダメージのせいか、動きに精彩がない。

やっぱり多少は効果があってくれないと困る。


そして、

無事に三体の虫オーガは、

ヨルさんの連続攻撃であっという間に地響きをたてて崩れ落ちたのだ・・・。



 「ふぅぅぅっ! こんなところですねぇぇぇっ!!」


警戒を解かず足早に戻って来るヨルさん。

さすがですね。

普段、残念な言動の多い彼女だけど戦闘に関してはとても信頼できる。

今も、

残念というか・・・カラドックさんが満面の笑みで彼女を迎えたせいか、

真っ赤な顔して恥じらっている・・・。


けど・・・

今あたしが気になったのは・・・。


 「ヨルさん、いま、ヨルさんが魔闘法使った時、

 その矛の属性が変化していたみたいですよ?」


 「ふえっ!?

 それは気づかなかったですぅっ!

 ヨルは属性変化なんてスキル持ってないんですけどねぇ?」


 「あっ、じゃ、それ、三又の矛の方の属性ですかね、

 そういえば鑑定で地属性みたいなこと書かれていたし・・・。」


 「地属性なら、打撃に破壊ボーナスが乗りやすい。

 ・・・むしろこの地じゃ、光属性攻撃より有効かもしれないな・・・。」


おお!

ケイジさんの解説によると、

光だと邪気に影響されるけど、他の属性なら影響受けないってことですかね。

それはいい武器を貰ったと言えるでしょう!!



良くも悪くも色々計算外なことが起きている。

けど、序盤とは言え幸先いいスタートではないだろうか。


・・・そう思ってた時があたしにもありましたよ。


邪龍の眷属からは、討伐証明の素材の剥ぎ取りも要らないし、

魔石の抽出も不要である。


だから。

こいつらの息の根を止めさえすればいいと思ってた。


けれど・・。



あたしたちが虫オーガの死体を通り過ぎた後・・・、、

しばらくして・・・


またもやあたしの危険察知スキルが働いたのである。


それもすぐ真後ろに。


 

麻衣

「おかしいな・・・あたしの遠隔透視でもこの先がどうなってるかわからない・・・。」


うりぃ

「す、すまんな・・・!

作者のアホが何にも考えとらんのや・・・。」


い、いえ、少しは展開練ってますよ?

ほんの、少し・・・

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