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第四百四十六話 ラストダンジョン

ぶっくま、ありがとうございます!

<視点 会長ラプラス>


おや?

私が実況中継役で宜しいのですか?


はは、

ではお言葉に甘えまして・・・


どうも皆様方、

はじめまして・・・


ええ、はじめまして、ですよ。


以前のハーフエルフは私じゃあありませんですからね。

改めまして、怪盗バブル3世こと会長ラプラスでございます。


ゴホン、あ、いえ、確かに今やラプラス商会の会長職は退いておりますな。

ま、それでもですな、

商会において陰の実権を握っているのは間違いない話でしてね。

ああ、これは内緒でございます。


流石に私が世界樹の女神の眷属、

そして今回の邪龍討伐に、勇者パーティーの移動を一手に引き受けた功績と比べても、

過去の犯罪歴は相殺されそうにもありませんからな。


もっとも私もこれ以上、ヒューマンの世界に潜む理由もありません。

無事に邪龍の件が片付いたら、マスターの元でマスターの守護に専念するだけで良いでしょう。


おやっ?

マスターからメッセージが・・・


皆さま、少し失礼いたしますね?


ふむふむ、

なるほど、少し先の未来で、また何か私たちに使命が・・・

案内人役を・・・


なるほどなるほど、それはメリー様には・・・

ああ、伝えられないと、

・・・畏まりました。


ではその時が参りましたらと・・・


は、では失礼いたします。


ああ、皆さま、大変失礼しました。

ちょっとした業務連絡でございます。


えーと、どこまで話をいたしましたかね?

ああ、私の件はもういいでしょう。

肝心なのはこれからですね。


闇の巫女の称号を得た麻衣さまが、

邪龍の拠点への入り口を発見したようです。


カラドック様の指示に従い、私は馬車をその方向へと向かわせます。


・・・なるほど、

辺り一帯に濃密な邪気が立ち込めていましたが、この先にはそれ以上の澱んだ気配が感じられますね。


ミュラ様と仰いましたかね、

あのあどけない顔立ちをした魔王様配下のドラゴン達が私達の周りをガードしながら飛んでくれています。


もちろんこの馬車の周りには私のエアスクリーンとタバサ様の防御呪文を展開しておりますが、これ程心強い護衛はいないでしょう。


後は新手の異形どもが現れるか否かというところですが、

麻衣様によれば最早周辺には存在しないようだとのことですね。


 「あの岩陰の辺りから邪気が立ち昇っています!」


麻衣様が新たな発見をしたようです。

辺りは完全な砂漠ではなく、

砂の大地の合間に時々ごつい岩肌が覗いているのですが、

その一つに向かって麻衣様が指を差しました。


どうやらあれが・・・


 「地下への入り口となるわけか、

 ラプラス会長、着陸準備だ・・・。」


 「ケイジ様、畏まりました・・・。

 安全に配慮して少し離れた場所に降りさせていただきますよ。」


 「ああ、頼む。

 こっちには麻衣さんの感知能力があるが、どんな想定外の事態が起きるか分からないからな、慎重に行こう。」


 「あ、え、と、はい、

 慎重路線でお願いします。

 あたしの能力も万能じゃありませんので・・・。」


ケイジ様の言葉に、麻衣様が全力で首を振っておいでですな。

ここに来るまでかなり楽させてもらいましたけどねえ。



そして私の特製馬車は砂地に着陸しました。

エアスクリーンを解除します。


 「さすがにこの辺りは暑いな・・・、

 最早冬の気候ではないようだ。」


紫外線が肌を刺すのでしょうな。

私はシルクハットにジャケットをビシッと着込んでおりますので、それ程暑さを感じません。

ここら辺まで来ると海風もないので、蒸し暑さもないようです。


 「ダンジョン内や夜になると、どれだけ気温差が生じるかは分からない。

 みんな、外套は用意した方がいい。」


カラドック様の言う通りでしょうな。

それに、流石に麻衣様の遠隔透視でも、

ダンジョン内の気温は分からないようです。

人間でもいればその人の格好で寒いか暑いかの予想は出来るらしいですけどね。

人がいないダンジョンでは仕方ありませんね。


 「・・・ていうか、入り口、広っ・・・。」


周りは太陽の光が降り注いでおり、

地表の反射光だけでも目を細めざるを得ないところです。

そしてそれに反比例するかのように、

岩陰の奥は真っ暗闇で・・・


いえ、多少は光も入り込んではいるのでしょう。

ただ、その明暗の差に私達の目が適応できないだけでしょうかね。


 「どちらにしろ、この先は前人未踏のダンジョンなんだろう、照明も松明も何もない。

 食糧は麻衣さんの巾着袋に収納できてはいるが、全部自前でどうにかするしかないわけだ。」


 「えっと、これ、つまり、ダンジョンて言うより・・・」


 「そうだね、私達がこれから向かうのはダンジョンとは考えない方がいい。

 人間が足を踏み入れることができるかどうかも分からない自然の秘境。

 生息するのは邪龍の眷属のみ。

 そう思っていた方がいいだろう。」


そう言うことですね。


そしてタバサ様が入り口に封魔石を設置して破邪呪文を詠唱。

・・・この期に及んでは気休めのようなものかもしれません。


前回、ローゼンベルクのダンジョンでは、

フロアごとに同じ呪文を詠唱したそうですが、

こちらでは、ダンジョンがどれだけの規模か、奥行きも深さも分かりません。

その場その場で判断していくしかないのでしょう。


・・・なお、

麻衣様は邪龍本体を遠隔透視しようとは絶対に出来ないそうです。

なんでも敵が精神攻撃系の能力を持っていたら、無防備状態の精神は一溜りもないというお話でしたかな?

「それ」に意識を向ける事はあまりにも危険だというわけですね。


 「いえ・・・今回に限って言えば、それだけで済まない気がして・・・。」

巫女職である麻衣様の予感は気のせいでは片づけられませんね。

もっと恐ろしい何かが控えているのかもしれません。



 「では、ラプラスさん、

 ここまで本当にありがとう!

 ここに残って身の危険を感じるようならすぐに逃げてくれ。

 仮にあなたがいなくなっても、帰り道はミュラ達のドラゴンがいればどうにかなるだろう。」


え?

そ、それは確かに私も自分の身がかわいいですからね、

いざとなったら逃げるつもりではおりましたが、

・・・カラドック様はあのドラゴンの背中に乗ることも想定してるのですか?


あの青い顔した冒険者パーティーの惨状を見ておいて?

ほ、ほら?

麻衣様やエルフの方々が泣きそうな顔されてますよ?


 「は、はい、ご配慮ありがとうございます、

 私どももあなた方の勝利を祈っておりますからね・・・。」


不安そうな麻衣様を除いて皆さん、いい顔をしておりますな。

我らがマスターもこの先の未来は読めないとのことでしたが、

マスターによれば、転移者を送り込んだ方は全ての未来を見通すお方とか・・・。

ならばこの先に数多くの困難が待ち構えていたところで、

きっとそれらを乗り越えられることでしょう。


ならば、私は皆様のご無事を祈らせていただくのみ。

お待ちしていますよ、私の超特製究極飛行馬車の中で。




 「さあ、いよいよ最後の冒険だ・・・!」

その言葉と共に、カラドック様がダンジョンの中へと足を踏み入れていきました・・・。


カラドック様は本来、この世界の住人ではございません。

けれど、誰よりも邪龍討伐に向けて使命感を燃やしているご様子。


・・・いえ、

それは少し違うのかもしれません。


あの方は何か他の事を見据えてらっしゃる。


そしてその為に、

邪龍を討伐すべきだと考えているのでしょうか・・・。


まるで邪龍討伐など、物のついでだと、言わんばかりに・・・。




あれ?

ラプラスさん、何か重大なことをぼそっと言わなかった?

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