表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
443/748

第四百四十三話 迎え撃つ異形

<視点 カラドック>


おっと、ここで私かい?


別に構わないけどね、

前回も空の上で話したんじゃなかったっけ?

まあ、発言内容には気をつけるとも。


今のところ予定通りに進んでいる。

リィナちゃんの件は、邪龍の元に辿り着くまでにどうにかしなければと思っていたが、

何とかケイジと二人で解決できたようだ。


いや、解決したわけじゃないと思う。

多分、問題ではなくなった、ということだろう。


私はその件に介入しようとは思っていない。

リィナちゃんの悩みがなくなればそれでいいのだ。


そして、私の予想が正しければ・・・

いや、これは目的地に着けは嫌でも確かめる事になるだろう。


私の予想というのは、戦力に何の不安もなくなっただろうという事だ。


勿論、邪龍側の詳細には何も情報がないと言って過言ではない。

油断できる余裕はどこにもないけどね。


少なくともこちら側で出来る事は万全と解釈してもらって結構だ。



さて、いよいよ対岸が見えて来た。

カスタナリバ砂漠とやらはこの先にある。

まだ視界には砂漠らしき風景は見えないが、

麻衣さんの顔に緊張が見える。


目的地が近いことを察知しているのだろうか。


 「邪気の濃度が高まってきています・・・。」


麻衣さんの感知スキルは絶好調。

やはりというべきか、

下手すると空馬車の中に例の虫どもが発生するかもしれないな。


 「タバサ、念のためにフォースフィールドを。」


私の指示でタバサは術を実行。

私の方は特にすることもないが、

大気中の精霊の反応が鈍い気がする。

邪気の影響を浴びているのだろうか。



みんなの口数が少なくなっている。

誰もが最終決戦に向けて気を張っているのだ。


そして、

それから数十分は経過したろうか。

眼下の景色に大きな変化はない。



眼下に砂地が見えるわけではないが、

既にここはカスタナリバ砂漠に到達したと言っていいのだろう。

元の世界と違って、この世界では人間が全ての土地を測量しているわけでもない。

国という行政が存在しないこの付近ではなおのこと。

なんでも冒険家なり探検家が足を踏み入れたこの辺りの地域一帯を「カスタナリバ砂漠」と呼んでいるに過ぎないのだ。

もっとも、正確な地図があろうとなかろうと、

この砂漠のどこかにある、邪龍の住処へと続くダンジョンの入り口を発見するのが最初の目的だからね。

頼りにすべきは麻衣さんの感知術・・・


その麻衣さんから大きな声が上がる。


 「皆さん!

 現れました!!

 向こうはこちらを認識しています!!

 前方より数多くの邪気の塊を感知!!

 動いてます!!

 こっちに向かって!!」



ついにお出ましか。

こっちがダンジョンの入り口を見つけるより先に、

邪龍側が私たちの接近に感づいたというわけだ。


さて、まずは前哨戦ということだね。


 「そいつらは固まって?

 群れでもなしているのかい!?」


 「い、いいえ、かなり広範囲から・・・

 まるで扇状にこちらを取り囲むような動きです・・・。」


それは、あまり良くないな。

一箇所に固まってくれたら私の精霊術とアガサの広範囲魔法で纏めて潰せるが、

バラけて来られると効率が悪い。


 「取り敢えずケイジの矢にタバサの光属性付与!!

 ケイジはなるだけ魔物の弱点部分を撃ち抜くよう心掛けてくれ!」


タバサとケイジから了承の声が上がる。

矢弾は公国から五千本くらい貰っている。

うん、全部麻衣さんの巾着袋の中だ。


・・・本当に麻衣さんがいてくれないと、

かなり戦術の幅を狭めてしまうことになるんだよね。

怖いだろうけど頑張ってもらいたい。


・・・ていうか、やっぱり普通の子ではないと思う。


麻衣さんは緊張してはいるけど、

その恐怖を面に一切表さない。

知れば知るほどこの子の行く末が脅威に思う。

同じ世界で味方に出来なかったことを残念に思うか、

はたまた敵にならなくて良かったと思うべきなのか・・・。



 「みんな、そろそろ見えて来たぞ・・・。」


ケイジの目は敵の姿を捉えたようだ。



 「うわ・・・これは・・・」


御者のラプラスにも見えたのだろう。

やがて私の目にもそれらの姿が目に入って来た。



・・・異形。

それも巨大な・・・。


何というか、

これまでに見聞きした生き物の姿に見えない。


泥や土や生き物の死骸が寄せ集まって動き始めている・・・


そんな表現が適切なのか



それぞれ異形どもは、

手足、及び頭部らしきものは存在しているようだが、

目や耳、鼻といった器官はどこにあるかも判じ得ない。

ただ頭部の真ん中に、口らしき部分をバックリと開けてこちらに迫ってくる。

人間を模したかのような二足歩行の塊もいれば、

獣か虫かと思うような四足・・・いや、多足のものもいる。

人間型の化け物も、その手足は関節というか・・・虫っぽい・・・結節という表現が適切だな。


身の丈5メートルから10メートルほどで、大きさもバラバラだが・・・

それが広範囲から、

いくつもいくつも、何体も何十体もこちらに向かって・・・


いや、どんな集団だろうが

地を這う、又は歩いてくるだけなら、空を行くこちらに脅威ではないだろう。

数は膨大だが、一方的に空から・・・


 「攻撃来ます!!」


なんだって!?

どう見ても空を飛べるようには・・・


ケイジが叫び声を上げる。

 「な、なんだアイツ!!

 腕を引きちぎって・・・!!」


おいおい、まさか自分の体を投げつける気か!?

いくつか他の個体も同じ動作を始めたぞ!?


 「カラドック! 精霊術を!!」


いや、間に合わない!

アガサの風術も同じだろう!!

既に張ってあるエアスクリーンでどこまで防げるか・・・


 「うわああ、投げて来たー!!」


ヤバい!

即座に対応する手段がない!!

敵の魔術ならタバサのシールドで何とか出来るが物理攻撃は・・・


 「皆さん口を閉じてくださいいいい!」


ラプラス!?

その瞬間、空馬車にとてつもない重力がかかり私たちは床に叩きつけられた!!


 「ぐうううっ!!」


続いて空馬車の下の方から、何か巨大な物がいくつも通り過ぎていったような轟音・・・



ほんの一瞬・・・。


すぐに体勢を戻すも空馬車に変化は何もない。

視界を改めると、

敵の姿は少し小さく、

そして先程より低い位置に見えた。


 「・・・急上昇したのか、

 おかげで助かったよ。」


 「戦いには参加しないとはいえ、皆さんを運ぶ以上は運命共同体ですからねぇ、

 こちらも必死ですよ。」


ウィンクは要らないよ、ラプラス。

様にはなっているんだが、どうにもただのおっさんにやられると違和感が残る。


さて、助かったはいいが、

どうするか。


ある程度、上空なら敵の射程距離外だろう。

けれど、下に降りなければ、

邪龍の潜むダンジョンに辿り着くことも出来ない。


 「あっ! 新手!?」


なんだって?

しかも麻衣さんの目は前方に向いている。

ま、まさか飛行できる異形もいるってのか!!


 「えっ、前から、だけじゃなく後ろからも!?

 な、なにこれ、この大群!!」


挟み撃ちか・・・。

・・・まずいな。

邪龍はそこまでの群勢を率いていたのか。

ここから精霊術をフルに使えばどうにか出来るかも知れないが・・・


そんなペースで行ったら、いくら私でも邪龍のもとに万全な体調ではとても


む、

麻衣さんの狼狽ぶりが尋常じゃない!!

 「ま、麻衣さん!?」


 「あ、あ、あ、なにあれ

 あたし、初めて見ます・・・そんな」


 「麻衣さん、君は何を!?」


 「りゅ、りゅう、

 ドラゴンの・・・大群。」





最悪だ。

 

ついにマジもののドラゴンさんたち来襲。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ