第四百四十二話 ぼっち妖魔は一般ぴーぽぅである
ぶっくま、ありがとうございます!
<視点 麻衣>
そもそもの話なんだけど、
この後の邪龍との戦い・・・
あたしが行って何の役に立つのだろうか。
これから行く場所に他の人間はいない。
つまり出会うものは全て邪龍の眷属。
もしかしたら普通の魔物もいるかもしれないけど。
どっちみち見敵必殺。
あたしの探知スキルも必要なさそう。
そしてスネちゃん、ふくちゃん、ラミィさん・・・
いずれも邪龍相手ではいくらなんでも勝負にならないと思う。
となると再び「この子に七つのお祝いを」の話になるけど、
そろそろあたしもあの術の特性が掴めてきた。
多分あれは、対象となる相手にステータスに見えない抵抗値のようなものがあるとあたしは睨んでいる。
弱い敵の抵抗値はほぼゼロかそれに近い数値。
抵抗できない相手には、ほぼ100%、7つの状態異常が決まる。
相手の抵抗値が高いとそこで判定が起こり、こちらの状態異常は弾かれる。
そしてここからが恐ろしいとこなのだけど、
一発目の状態異常が弾かれた後、
その敵の抵抗値は比率は不明だけど減数される。
数値は例えばの話になるけど、
抵抗値80%の敵に七つのお祝いをかけて一発目が弾かれた場合、
二発目は抵抗値70%で判定されるのだ。
そして三発目は60%、四発目は50%と、術を弾くたびに抵抗値は少なくなってゆく。
そして一たび、術が決まると、元の抵抗値に戻って最初からやり直すのである。
重ねて言うけど数値計算式は不明だ。
50%、25%、12.5%といった半減方式かもしれない。
パーセンテージ計算ではなく、他のステータスと同じように、
整数表記の可能性もある。
たとえば抵抗値430から一発ごとに50の数値を減算して判定していくとかね。
今のところ、吸血鬼エドガー、なんちゃって悪魔、ベアトリチェさんの三人が最も抵抗されたケースだろう。
ベアトリチェさんに至っては成功したのは最後の最後だ。
これらから考えると・・・
そう、説明が長くなって申し訳ないのだけど、
邪龍に果たして通じるのか・・・という不安があるのである。
以前考えたように、一発だけは必ず決まるかもしれないわけだけど、
そんな保証は何もない。
ベアトリチェさんより高位の存在なんて、後思い付くのはアフロディーテさまだけど、
もちろん、人体実験するわけにもいかないしね。
その前にあたしが返り討ちに遭うでしょう!
そこで結論です!!
あたしがこの先に進んでも役に立たな・・・
あれ?
あ・・・
ああああ、ダメだ。
あたしには重要な役割があったの思い出した・・・。
あたしがいないとダメじゃん・・・。
「麻衣さん?」
現実に戻ろう。
カラドックさんを心配そうな顔にしてしまった。
「す、すいません、カラドックさんの厚意に甘えて、
ちょっと弱音を吐こうと思ってたんですけど、
自分の中で結論が出ちゃいましたので・・・大丈夫です・・・頑張ります・・・。」
「そ、そうかい?
きっと麻衣さん、自分のステータスに不安があったろうから、
タバサには念入りに防御魔法かけてもらうように思ってたんだけどね。」
その瞬間、あたしの中で何かが弾けた。
「カラドックさああああああああああんっ!!」
「うわあああっ!?」
「ひぎゃあああああああああああああ!
ヨルのカラドックにぃぃぃぃぃ!?」
やってしまった。
思わずカラドックさんの胸に飛び込んでしまった。
やってしまったというより、やった瞬間にやっちゃったと我に返った。
けど、今はほんのちょこっとこの状況を満喫する。
「ご、ごめんなさい、
べ、別にカラドックさんに変なことしようとなんて思ってなくてっ、
た、ただ、普通の一般人のはずのあたしが、なんでそんなとんでもない化け物の所に行かなきゃいけないのかと思ったら・・・。」
そんなあたしの頭と背中にカラドックさんが手を回してくれた。
優しい、とても優しい手つきで。
ふ・・・ふふふふふふふっ!
「ああああああああああああああああああ、カラドックゥゥゥゥゥ!?」
「それはそうだよね、
・・・無理ないと思うよ。
麻衣さんが普通の一般人かどうかは・・・ゴホン、いや、何でもない。
君のことは全力で守るから、最後まで着いてきて欲しい。
私は誰よりも君を頼りにしているよ・・・。」
「うう、あ、ありがとうございます・・・
ちょ、ちょっと勇気が出ました・・・。」
名残惜しいけど、あたしは体を離した。
これ以上やってると、さすがにヨルさんが暴走しかけない。
ヨルさんに殺意が芽生えないうちに身を引かねば。
それと、一瞬、カラドックさんから盛大な毒を吐かれたような気もするけど、
それはどこかで誤解を正そう。
「さっ、さっきの仕返しですねぇぇぇ!?
まさかそんな手で反撃してくるなんてぇぇぇ!!
麻衣ちゃんはほんとに恐ろしい子ですよぉぉっ!!」
「まぁ、たまにはいいじゃないですか。
ヨルさん、こないだ、ご自慢の角をさすってもらったんでしょ?」
「あっ!?
あれはっ、そ、そのっ、うう、こ、こんな時になんてことを思い出させるですかぁっ・・・!!
あっ、あのねっとりした手触り・・・ヨルの下着が濡れて・・・
ダ、ダメです、こんなああああ・・・っ!」
そして恥ずかしそうにヨルさんは内股で向こうの茂みの中に走り去っていった。
何しにいったんだろう。
・・・うん、あたしには未経験の領域だ。
未経験だと言ったら未経験である。
ちなみに遠隔透視は絶対にしない。
一応これ、あたしの中では、ヨルさんに意趣返ししたつもりも反撃したつもりもないからね?
あたしが人と言い争いで勝てないのは毎度のことだ。
負けは負けとして認めますよ。
あっ、前回のケイジさんのはノーカンね。
あれはあくまでも互いの考えを述べただけで、
リィナさんに気を配れなかったって指摘は、
あたしの勝ち星に入れる話でもない。
今回のヨルさんのへ被害は、
あたしの心の弱さが引き起こした、ただの流れ弾なのだ。
「お前ら・・・何やってんだ・・・?」
あれ?
ケイジさんとリィナさんが帰ってきていた。
こんなに早く?
まさかケイジさん、いわゆるところの早r
「い、いや、別に麻衣さん、変なことをしていたわけじゃないぞ?」
むぅっ!?
どうしてケイジさんがあたしの心を読めたんだ!?
「二人ともすっきりした顔をしているね、
迷いは消え去ったかな?」
「なんでカラドックは、そんな何もかも見透かしたような顔をしてんだよ・・・?」
「え? まさかカラドック、あたしの悩みに気付いていたの!?」
ホントだ・・・。
カラドックさん、まるで何事も起きていなかったかのような、柔らかい笑みのままだった。
それでも今は、言い訳めいたような、やや困り顔の表情にはなったけど。
「いやいや、まさかまさか、
悩んでいたのは知っているけど、
何についてかなんて・・。
でもケイジ次第で解決できる話なのかなとは思っていたさ。
で、どうだい、リィナちゃん、
ケイジは役に立ったかい?」
お、リィナさんの顔が赤くなった!
「・・・ん、んふ、まぁね!!
100点満点の解答かどうかはわからないけどさ、
とりあえず、あたしの悩みは・・・なんかどうでも良くなってきちゃった!!」
「・・・そうか、
それは良かった・・・。
では・・・みんなで行こうか、邪龍の元へね。」
こうなる展開を読んでいたのか・・・。
さすが賢王だね、カラドックさん。
「この子に七つのお祝いを」ってそんな法則だったのか。
今知っ・・・いや決めた。
うりぃ
「おい、コラ、作者・・・。」