表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
438/748

第四百三十八話 悪夢

<視点 ケイジ>


 「悪いな、ケイジ、

 ホントにこんなタイミングでさ・・・。」


オレたち2人はみんなから離れて、

島の木陰を探す。

無人島らしく、人の手が入ってるようには見えない。

小動物くらいしかいないのかもな。

獣道もほとんど見当たらない。

まあ、みんなからそう遠く距離を取る必要もないんだが。


 「じゅ、重要な話だっていうなら仕方ないさ、

 そ、それよりこの辺でいいか?」


植物がそんなに茂ってない砂地を見つけた。

ここならオレたちが暴れる事になるにしても問題ないだろう。


 「ば、場所はいいけど、なんでケイジ、剣のつかを握りしめてんだよ!

 魔物の気配なんかないぞ!?」


あ、だ、だって。


 「え、そりゃ分かるけどリィナ、めっちゃ緊張してるじゃねーか、

 この前の話からもしかしたら、荒事になるのかとオレも警戒して・・・。」


リィナがボリボリ頭を掻く。


 「あ、ああ、そうだよな、

 そういう風に誤解させちゃったか、

 確かにあたしも、緊張しまくりだよ。

 ここのところ、ずっと気にしてたわけだしな。」


 「い、いったい・・・」


 「そ、その前にさ、ちょ、ちょっと・・・。」


ガバチョ!!



うわああっ!

いきなりリィナがオレの胸に飛び込んできたああああっ!?

えっ、やっぱりそっち!?

まさかのヨルの考えが正解!?

い、いいのか?

それでいいのかリィナ!?


 「わ、悪い、ケイジ、

 ちょっと反則なんだろうけど、

 あたしに勇気が出るまでこうしていさせて・・・!

 お、お願いだからっ・・・!」


いや、オレに是非もない!

勇気って、あっと、えっとその、そういう事!?

確かに初めてだし、いろいろ心の準備が必要だし、邪龍と戦って万一のことがあったらずっと後悔を、やるなら今しかないと考えて、そうだよな、そうするしかないよな、これはオレの甲斐性を試されているからには、ここで一発ビシッと決めねば男じゃないよな、

うっ、柔らかい! 温かい!

めっちゃいい匂いがする!!

母さん、おふくろ、見ていてくれ、

オレは今ここで


 「・・・ケイジ。」


 「あ、な、なんだ、や、優しくするぞっ、リィナ!!」


 「こんボケっ!!」


ぎゃああああっ!?

強烈な膝蹴りを太ももに食らった!?

お、おまえ、それ、結構ダメージがあっ!!


あまりの痛みに声も出ないっ!

飛び跳ねようとするオレを勇者の怪力でリィナが抑える。

オレの力もかなりなステータスになってる筈だがビクともしない。

あんだけレベル差があったはずなのに、

勇者の経験値倍増効果で追いつかれているのか?


 「はあ〜、まあ、今回はあたしが言い出した事だからさ、

 多少は大目に見てやるけど、ここまで鈍いとどっから切り込めばいいのやら・・・。」


 「ううう、わ、悪いがまるで見当がつかん。

 何の話が始まるんだ?

 魔王になったミュラのことか?」


 「ああ、ケイジの当面の警戒はそっちがメインなのか、

 まあ、そうだな、タイミング的にはあの時点からあたしの心の問題は大きくなってったな。

 でも発端はケイジが異世界からの転生者だとはっきりしてからだぜ。」


オレの正体がバレてから?

でも、確かその時点でオレはリィナにオレの本心を伝えた筈・・・

今更何を?


 「ちなみに麻衣ちゃんには詳しい話は何もしてない。

 でもあの子はあたしが何に囚われているのか勘づいてる。

 でもケイジは全くその点に気づいてなさそうなのをあの子はイラついてるんだ。

 ここまでいいか?」


え、それがこないだの話の流れか。


 「そ、そういうことなのか。」


リィナは無言で頷く。

相変わらず緊張しまくりらしい。

これ読んでるみんなは何のことかわかるのか?


 「そ、そんでさ、何度も言うけど、あたしにもすごい勇気がいる話でさ、

 ケイジにまずは確認したい。」


 「確認、な、なんだ!?」


 「ま、前にさ、言ったよな?

 あ、あたし達は、ど、どこまでも、そ、その・・・。」


流石にその先はわかるし、リィナの口から言わせるほどオレは野暮じゃないぞ。


 「何度でも言うぞ、

 オレ達はどこまでも一緒だ!」


そこでようやくリィナの顔に安心したような、

いや、まだ不安の陰が見える?


 「もっと言って・・・。」

またリィナがしがみ付いてきた。

下半身が反応してるが仕方ない。

リィナのリクエストには全力で答えてやろう。


 「リィナはオレのものだ。

 誰にも渡さない。

 ずっとオレのものだ。

 この先も、永久に・・・。」


リィナはこの言葉が欲しくてこんな場所を選んだのだろうか。

それ程不安に感じることがあったんだろうか?

魔王となったミュラに身の危険を感じて?

でもさっきミュラの名前を出した時には、その話でもなさそうだったんだがな。


しばらくしてようやくリィナがカラダを離した。

ずっとこのままでも良かったんだけどな。


ん?

ちょっと泣いてるのか?

そこまで・・・


 「あ、ありがとう、ケイジ、

 少し落ち着いたよ・・・。」


 「あんな言葉で良ければいつでも言ってやる。

 ・・・あれか?

 今まであんまりそういう構い方できてなかったから、そ、そういうことなのか?」


口には出さないけど、もっとラブラブしたかったとか、そっち方面なのか?

でも命の危険のあるミッション中に、そんな油断出来ないのはリィナだって・・・


 「ち、ちがうって!

 ホントに気づかないよな、ケイジって、

 もう一度言うけど、ケイジが転生者じゃなきゃ、あたしだってこんな悩まないんだよ!」


え、オレが転生者じゃ・・・なきゃ!?


 「一番こたえたのは、あの時、

 ベアトリチェの魔法を喰らった時だよ・・・。」


 「ベアトリチェの・・・あれは確か・・・。」


 「ナイトメアってたっけか、

 喰らったやつに悪夢を見させるって、やつさ。」


 「え、まさか、まだ、その、術の効果が続いているのか!?」


そこでリィナの顔がかつてないほど真剣になる。

ここからが本当の話ということか。


 「もちろん、術は解けている。

 ・・・けれどその術で見せられた未来をあたしは否定できない。」


 「一体何を!?

 邪龍に殺される光景でも見せられたのか!?」


静かに首を振るリィナ。


 「あたしが見せられた光景には、

 あたしとケイジしかいなかったよ。」


 「じゃ、じゃあ、何を・・・?」


 「そこにいたのは、あたしとケイジ、

 3人、だけさ。」



え、


さん にん?



意味がわからない。

単に言葉を間違えただけ?

でもそんな間違いなどあり得るだろうか。

しかも言葉を間違えたなら言い直せばいいだけ。


リィナが、さっきの言葉を訂正しようと言うそぶりはどこにもない。


 「何がなんだか分からない。」



 

正直に言おう。

殴られようがリィナの真意が見えるまで迂闊なことは考えない方が良さそうだ。


リィナも、そんなオレを責める気などないようだ。


 「最初はさ、

 あたしはホントに、ケイジの前世に生きてたリナって子なのかな、って思ってたんだよ。

 そのうち記憶が甦ったりしてとかなんてね。」


 「え、あ、そ、それは」


 「だったら何も問題ないんだよ。

 あたしとケイジの間に障害は何もない。」


え、だったら?

じゃ、じゃあ、そうじゃなかったらっていうこと?


 「ダメ押しくらったのはローゼンベルクで

 メリーさんの世界の人たちが、

 こっちの世界でも、生きてるってことかな。

 そもそも異世界から転移してきた筈のメリーさんの中の人が、こっちの世界にも存在したなんてさ。」


え、でもそれ言ったら。


 「そうなんだよな、

 マルゴット女王と同じ人も向こうにいるんだってな?

 どうすんだよ。それ、な?」


ど、どうするって


どうも・・・え?


 「ケイジ、ここで聞くぞ・・・?」


え、いや、待て、凄く重大なことに気づきそうだぞ、でも、そんなまさか



 「お前・・・、もし、この世界に

 もう一人のあたしが転生していたらどうする?」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ