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第四百三十四話 幸せの形

<視点 ケイジ>


 「・・・というわけで、本日は恒例秘密勇者会議に特別ゲストとして、

 麻衣さんをお迎えした・・・。」


ここはラプラス馬車の中、

その隅っこ。

メンバーは前回同様、オレとリィナと麻衣さんで3人な。


 「ケイジさん、冒頭からなにかっ飛ばしてるんですか・・・。」


あれ?

外しちまったか、

麻衣さんから何か冷たい視線を浴びてしまう。


 「麻衣ちゃん、あたしは突っ込まないから後で煮るなり焼くなり、

 この子に七つのお祝いをプレゼントするなり好きにしてくれていいから・・・。」


ちょっと待ってくれ、リィナ。

確かにふざけた出だしだったが、そこまで酷いお仕置きを受けるようなものか?


 「まぁいいですよ、

 それよりまた今回は何の用で?」


この三人で、他のメンバーから、何の話をしているのかと訝しがられているかもしれないが、

カラドックはヨルに纏わりつかれ、

タバサとアガサは何かエルフ界の行く末について、真剣な話をしているようだ。

人は見かけに・・・いや、見かけだけなら、かなり絵になる二人なんだが、おふざけモードとのギャップが凄いからな。

本来は仕事についても魔法についても真面目なんだよな、あの二人は。


それで、と。


 「邪龍との戦いの前に、

 また麻衣さんの意見を聞きたくなったんだ・・・。

 幸せって・・・何だろうなって・・・。」


その途端、麻衣さんの顔から表情が消える。

えっ、なにこれ、殺気!?


 「それは・・・

 リア充のケイジさんがあたしに何を聞くっていうんですか・・・。

 渾身の嫌味ですか?

 やっぱり七つのお祝いあげましょうか?」


 「えっ?

 ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ!?

 いや、恋愛ごとじゃないぞ!?

 普通の・・・一般的な意味での幸せって話で・・・っ!

 麻衣さん、目がっ、目が光ってる!!」



しばらくして、

ようやく麻衣さんの誤解が解けた。

とはいえ、オレらのことも誤解されてないか?

確かにリィナとは・・・そういう仲かもしれないが、

別に普段からいちゃついてるわけじゃないし、二人っきりの時間を作っているわけでもないし・・・。


さらに言うと、そのリィナはオレのフォローもしてくれない。

え・・・っと、オレら「そういう仲」でいいんだよなっ?



 「それで、またケイジさんの転生前のお話ですか?」


 「ああ、もちろん、それは無関係でないが、

 麻衣さんの意見を聞きたいってのは、

 オレのというか・・・今回の転生してきたみんなというか、

 いや、転生者だけでないよな。

 異世界・・・いや、二つの世界に共通して存在する自分・・・、

 彼ら、彼女ら・・・みんな、

 カラドックや麻衣さん、メリーさんと出会って、

 みんな幸せになれたんだろうかって話をしたいんだ。

 ・・・もちろん、最終的には邪龍をなんとかしないと、

 安心できないのは確かなんだが。」


 「幸せ・・・ですか。

 ベアトリチェさんはそう言ってましたね・・・。

 先にケイジさんの考えを教えてもらっても?」


今の感じでは麻衣さんも似たようなことを考えていたように思われる。

オレとは思考パターンが違うかもしれないから、オレのこれから考えるべきことの参考になりはしないだろうか?

そう思ってこの話し合いの機会を作らせてもらったんだ。


 「・・・ああ、そうだな。

 話は大まかに言って二点・・・。

 一つは、麻衣さん達を転移させた奴は・・・

 まぁアスラ王かシリスかは今はいい、そいつはこの世界にいる彼らを幸せにしようとしているのかってことと・・・。

 そしてもう一つは、その彼らはそのまま幸せになっているのだろうかってことなんだ。」


 「対象者は、ベアトリチェさん、ミュラ君、アフロディーテさまも含まれるんですかね、

 それに今回はアスターナま・・・アスターナさんとクリュグさんと、ハギル君にイザークさんでしたか。」


 「それだけじゃない。

 もちろん、その中にはオレやリィナ、マルゴット女王とその家族も含まれる。」


 「なるほど・・・。

 でも幸せっていうか・・・。」


 「そうだ。

 確かに麻衣さんやカラドック達が来なかったら、オレたちはもっと悲惨なことになっていただろう。

 その点ではオレも非常に感謝してるし有難いと思ってる。

 それに麻衣さん達がしてくれたことに対し、何も対価を返さないで済むとも思っていない。

 出来る事なら受けた恩も全て返したい。

 ・・・けれど、それとは別に、

 もっと・・・さっきのメリーさんではないが、

 『これだけなのか』っていうか、

 もっと、それこそ誰も悲しむことさえない、別な道を与えてくれようとはしなかったのかな、とも思うんだ。」



 「だれも悲しむことさえない?」


 「ああ、例えばミュラ達だったら、

 あの親子は和解したとは言え、死別させないことは出来なかったのか、

 そして、オレだったらおふくろをもっと長生きさせることは出来なかったのか、

 リィナだって、両親と一緒に暮らす道とかあってもって・・・。」


 「でも、それは・・・。」


 「ああ、わかってる。

 過去の悲劇をどれか無かったことにでもしたら、

 いまのオレたちが存在しないということも。

 それでもつい考えてしまうんだ。

 他に道はなかったのか、

 メリーさんだって、この世界に転移するタイミング次第では、

 あの心残りにしているという女の子に再会できた可能性もあったんじゃないかって。」


 「難しい問題ですね・・・。

 ケイジさんの考えていること自体はわかりました。

 あたしも・・・その話を考えようとするなら、

 他人事じゃありませんし・・・。」


 「麻衣さんの話ってのは・・・?」


 「あたしのママのことです。」


 「あっ!?」


しまった。

まさしくその通りだ。

なんで忘れていたよ、オレ!?

いや、それを踏まえても、麻衣さんに相談するのはベストな人選だったかもしれないが、

もう少し聞き方に慎重な態度を・・・。



 「あたしの率直な感想っていうか・・・

 思い付いたまま口を開くので良ければ・・・すれ違い、が多いなって気もしますね。」


 「すれ違い・・・か?」


 「ええ、もう一度会いたい人がいる。

 もう一度やり直したいことがある。

 ・・・さっき名前が挙がった人たちは、

 ほとんど望みを叶えているのかもしれませんけど、

 相手は自分の想っていた相手と同一人物って言っていいのかどうか・・・ですよね?

 ケイジさんはリィナさんを助けることが出来たけど、

 それは過去の世界のリナさん・・・でしたっけ、その人の記憶を持っていない。」


 

 「・・・ああ。」


 「カラドックさんの心残りにしていた弟さんは、間違いなくケイジさんなんだけど、

 ケイジさんはその正体を明らかにしてないから、

 カラドックさんにしてみれば、ケイジさんを助け切ったとしても、

 あくまで代償行為にしかならない。」


 「・・・くっ。」


 「アフロディーテさまも・・・色々向こうで思いを吐き出してきたみたいですけど、

 肉体ごと転移したわけじゃないですからね。

 ご本人がそれで満足したと言うなら、あたしも何も言うつもりありませんけど、

 好きな人と、お互い抱きしめ合うこともできなかったんじゃないかって思うと、

 ちょっと可哀そうかなとは思います。」


 「な、なるほど、そうだよな・・・。」


よく考えると、あれってかなりホラーな話だよな?

オレらの前には絶世の美女が磔になっているように見えたから、

あの場ではかなりロマンティックな話に思えたんだが・・・。

 

続きます。


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