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第四百三十一話 ぼっち妖魔は流れを見守る

<視点 麻衣>


 「えっ、メリーさんの世界でも、私達は夫婦だったんですかっ!?

 しっ、しかも第二王女!?」


その瞬間、アスターナままとクリュグぱぱの体がどちらからともなくひっつく!

ごちそうさまです!!



 「単に名前が似てるだけという可能性は捨てきれないわよ?

 ちなみにアイザス王、・・・イザークはあなたの甥、という位置づけになるわ。」


 「ま、まぁ?

 ご先祖様はどうでもいいですが・・・世界が異なってもこの人と・・・

 うふふ・・・。」


嬉しそうに色っぽい表情を浮かべるアスターナまま。

今夜はもしかすると激しくなるかもしれない。


 『ア、アスターナぁ!?』


なんか男の人の声が聞こえたような気がするけどそっちは無視する。


 「ここから話は続くのだけどこの先を聞く気はあるかしら?」


 「あ、も、申し訳ありません、お願いします!」


 「・・・。」


あれ?

話を進めたいはずのメリーさんが黙っちゃった?


 「・・・メリーさん?」

アスターナままからも疑問の声が上がった。

それはそうだろう。


 「ごめんなさい、

 先に謝っておくわ?

 私はこの先の話を進めたくて仕方ない。

 けれど、この先はあなた達にとって気分のいい話じゃないのかもしれないの。」


 「そ、それは、どういう・・・?」


 「今の私には、あなた達の家庭がとても幸せそうに見える。

 ・・・けれど、私の大事だった黒髪の子の家庭は・・・

 決してそうだったわけじゃない、ということよ。」


ん?

アスターナままの顔に緊張が走る。

切り替えが早いというか、

物分かりが良すぎるような・・・。


 「・・・黒髪の子・・・

 その子は、こことは別の世界の・・・

 もう一人の私の娘・・・かもしれない、ということですよね?

 聞かせて頂けますか・・・。」


メリーさんの世界で、アスタナシアという人が、例の黒髪の女の子の母親なら・・・

この世界でもアスターナままの娘に?

いや、でもアスターナままの娘さんはマデリーンちゃんしかいない。

そしてマデリーンちゃんは「黒髪の子」に似ても似つかない。

ならアスターナままの親族の誰かに、ということなのだろうか。


 「ありがとう、

 決して気分のいい話じゃないと思うのだけど、

 お言葉に甘えて続けるわ。

 ・・・王宮から逃げ出したアスタナシアたちの足取りは誰にもわかっていない。

 私も他の人から聞いただけだしね。

 わかっていることといえば、

 王都から遠く離れた・・・田舎町で、

 とても寒い雪の降る朝、

 とある細工職人の家の前で・・・

 高貴そうな衣服に身を包んだ黒髪の女性が行き倒れていたという話よ。

 もうその民家の人間が見つけた時には、その女性は息絶えていたと・・・。

 けれど、その胸の中にいた赤子は弱っていたけれど、

 その民家の子持ちの女性の胸を美味しそうに吸い付いたと言うわ。

 そしてその子の出生が明らかになるまで、その子はその民家の娘として平凡に育てられた。

 ・・・なお夫らしき男がどうなったかは誰にもわからないそうよ。

 母親が身につけてた王家の遺品で、その子の出生の秘密がわかるまで・・・。」


それが例の黒髪の子か・・・。


 「そ・・・そんな・・・。」


ん?

アスターナままの反応がおかしい。

この感情は・・・なんだ?


 「アスターナ・・・?」

メリーさんにもアスターナままの反応は意外だったみたいだ。



 「も、もう一度、聞かせてください・・・

 彼女は・・・いえ、その世界の私は・・・

 その子を・・・黒髪の女の子を産むことが・・・

 世に送り出すことが出来たというのですか・・・!?」


 「え? え、ええ、そうね、

 まるで自分たちの身と引き換えに、といわんばかりに、ね・・・。」




 「うう、うううううううううううああああああっ!!」


突然、アスターナままから叫び声があがる。

この反応は尋常じゃない。

あたしを含め、周りの人達だってついていけなかったろう。

けれど、隣のクリュグぱぱだけが、まるで予測された出来事だったかのように彼女の体を支える。


 「アスターナ・・・!」


 「ああ、あなたっ、

 う、ううっ、み、みなさま、ご、ごめんなさい、

 こ、こんなお見苦しい姿を・・・っ、で、でもっ、

 そっ、その子は、その後も幸せなっ、人生をっ・・・!?」


アスターナままの顔からは大量の涙が溢れていた。

一生懸命ハンカチでそれをぬぐうも、後から後からそれは流れ続ける・・・。


 「・・・・・・。

 それは私の口からは言えないわ。

 昨日も言ったかもしれないけど、その子は異世界のハギルと両想いだった。

 ただし、片や王位継承権第一位の王族、

 片や王妃を護衛する生まれの卑しい元殺し屋、

 二人が結ばれる可能性は全くなかったと言っても過言ではない。

 けれど私はそこをつついて、二人の気持ちを再確認させ、

 彼女の両親がそうしたように、駆け落ちして王宮から脱走させる絵図までしめした。

 結局は失敗というか、そこに至ることすら出来なかったけれど、

 私は余計なことをしたのか、

 何もせずに、二人がお互いの気持ちに気付けないままだった方が彼女は幸せだったのか、

 その答えは今も出ない。」


あたしも女神さま含め、その辺りの状況は聞かされたけど、

メリーさんの中の人が何もしなければ、

黒髪の子は一人の王族としての虚像を演じ続け、

いづれは貴族の誰かと政略結婚でもしていたのだろうか?

・・・それでその子が幸せだと思えていたらそれで良かったのだろうか?


いや、そうなると、その時代のイブの座が空白になる。

もしかすると、こないだの話にあった盲目の女性だとか、

メリーさんの娘さんがイブの役割を果たす仕組みなのだろうか。



 「ハギルが・・・わ、私たちの娘と・・・、

 そ、そうなのですね。」


当のハギル君は口を挟まずにいたけれど、

自分の話であることは十分に分かっているみたいで、真剣にメリーさんの話に集中している。


 「後、私の口から言えるとしたら・・・

 あの子は世界を救った英雄の一人に数えられて・・・

 いえ、私も人の親として言うならば・・・そんなことよりも、

 あの子はみんなに好かれていたわ。

 いつも大勢の人に囲まれて・・・

 それといろんな騒ぎを巻き起こして・・・

 まぁ半分は私とその仲間がちょっかい掛けていたせいなのだけども。」



 「・・・ま、まぁ、それは・・・

 そうなんですね・・・。

 ですけど、それはとても、とてもいいお話を・・・

 とても素敵な話を聞かせてもらいましたわ。」


ようやくアスターナままも落ちついたようだ。

けどいつの間にか、アスターナままの隣に座っているマデリーンちゃんが泣きそうな顔をしていた。

メリーさんも気づいたようだ。


 「ああ、あと、マデリーン?

 あなたも蚊帳の外の話じゃないわよ?

 アスタナシアには姉がいたわ。

 神聖ウィグル王国第一王女マルリーン。

 もしかしたら彼女が向こうの世界におけるあなただったのかもしれない。

 私は彼女にも会った事ないけど、彼女の娘は良く知ってる。

 あなたと同じ金髪と・・・体格ももしかしたら似てる?

 マルリーンは・・・また別の国に行って、そこの王族と三人のこどもがいたそうよ。」


メリーさん、言いにくそうだな。

もしかしたらそっちもあまり幸せな人生を送れなかったのだろうか。


 「ふぇっ!?

 マデリーンがお母様のお姉さまっ!?

 ・・・ふ、ふふふふっ。」


 「そっそれは、う、嬉しいような複雑なっ・・・」


あー、ママが妹だったらかー、

それは楽しそうだなぁ・・・。


おや、

クリュグぱぱだけが悲しそうな顔をしているね。


まあ、気持ちはなんとなく分かるよ、うん。



次回、お待たせしました。

いよいよアスターナまま側の真相です。


どんでん返しなどありません。

全てこれまでの流れに沿った展開です。

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