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第四百二十三話 ぼっち妖魔はコメントしない

いいね、ありがとうございます!

<視点 麻衣>


 「ハギル・・・だったわね。

 ごめんなさいね、話が見えなくて混乱してたでしょう?」


メリーさんがようやく落ち着いたようだ。

落ち着いたって言うより・・・ハギル君の正体に一定の理解を得たという事なんだと思う。

自分の中でこのありのままの現実を消化したんだろう。


 「あ、い、いえ・・・

 どうにかこうにか・・・話の流れはわかりました・・・。

 オレが・・・メリーさんのかつての従者と、同一人物かもしれないって・・・

 でもオレには、そんな・・・。」


 「いいのよ。

 例え別人格でも・・・あなたに会えただけでも良かった・・・。

 今なら・・・少しカラドックの気持ちもわかる・・・。」


メリーさんの視線はカラドックさんに流れた。

・・・思わずカラドックさんも笑顔が綻ぶ。

あの人にとっては、

ケイジさんやリィナさん、二人分の再会だものね。

・・・もっともカラドックさんの心の中では、ケイジさんのことはどういう扱いをしているんだろう?

リィナさんと二人セットとして考えているのだろうか?




 「・・・そのザジルって人の記憶がなくてすいません・・・。」


 「何言ってるの?

 あなたは何も悪くないわよ。

 ・・・むしろ謝りたかったのは私の方だったのだもの。

 彼の命も未来も幸せも奪ってしまった・・・。

 だから、

 私はあなたに会えてこう思うの。

 ハギル・・・あなたはこの世界で幸せになって・・・。

 私なんかとは違う素敵な家庭に仕えているのですもの・・・。

 ほら、マデリーン、彼を返すわよ・・・。」


その言葉と同時にマデリーンちゃんがベッドにダッシュ、

いや、ハギル君にダイブ!!


 「ぅおっ、お嬢様!?」

 「ハギルはあたしのものっ!

 誰にも渡さないんだからぁっ!!」


なんとかマデリーンちゃんを受け止めたね、ハギル君。

ああ・・・またアスターナままが泣いている。


 「うわっ! カラドック、どうしたっ!?」


えっ?

あ、こっちもかっ!

カラドックさんまでも大粒の涙流しているよっ!!

沈着冷静に見えて、いつもこの人は感情の波が激しいんだよね!


 「ぐずっ、感動的な話じゃないか・・・。

 ケイジだってそう思うだろ・・・?」


 「い、いや、ま、まぁ、涙腺が緩んでるのは確かだが・・・っ。」


それにしても、マデリーンちゃん・・・、

独占欲強そうな・・・

あ、いや、これ、今まであの男の子をメリーさんに盗られていたからその反動かな。

たぶん、あと数年もしたら思春期故の恥じらいとか出て来る筈だ。

その時はこの二人の関係はどうなるんだろう?

ちょっと、鼻息荒くなってしまう。

イゾルテさんもこの場にいたら、さぞ興奮したに違いない。



 「こ、こら、マデリーン、

 あなたは貴族の子女なのですから、もっと慎み深い態度を身につけなさい!

 それに、ハギルはあれだけの活躍をしたのですよ?

 ならば栄えある伯爵家の跡継ぎとして、もっとかけるべき言葉があるでしょう!?」


涙を堪えながら貴族の母親らしく厳しい態度を見せるアスターナまま。

こういうところはさすがというか、大変だなとも思う。


 「あ・・・あ、う、は、はい、お母様・・・。」


一方、マデリーンちゃんも、自分のすべきことは頭で理解していても、

今までそんな言葉を発した事なかったんだろう、

ボキャブラリーが少なくて、なんて言えばいいのか分からないのかもしれない。

ちなみに、自慢じゃないけどあたしも語彙力はない。

え? 知ってる?

やかましいです。



 「あ、あうう、ハ、ハギル・・・。」


 「は、はい、お嬢様・・・。」


 「え、と、が、頑ば・・・うう、じゃなくて・・・。」

 「お嬢様・・・。」


あ、これ、単純に恥ずかしいだけだ。

さてはマデリーンちゃん、ハギル君の事、今まで真っ当に褒めたことないな。


頑張るのはマデリーンちゃん、あなただよ!

ハギル君は暖かい笑みでマデリーンちゃんの言葉を待ってあげている。

彼も本当に心優しい少年なんだろう。


 「え・・・と、高貴な貴族らしい・・・ブツブツ

 (頑張ったのね・・・だけだと貴族令嬢としては足りないっ?

 貴族の従者として相応しい働きだったわ!?

 それとも高貴なあたしに仕えるだけのことはあるわっ!・・・じゃなくて?

 ち、違う、ここはっ、

 あなたをここまで育てたこのあたしに感謝なさい!?って言うべき?) ブツブツ・・・」


ん?

気のせいか、マデリーンちゃん、混乱してる?

ていうか、なんか方向性間違えてない?

もしかしてマデリーンちゃん、高慢令嬢リスペクト系!?


 「お、お嬢様?」

ハギル君もマデリーンちゃんの様子がおかしいことに不安を覚えてるようだ。

とはいえ部外者のあたしが何かお手伝いをするのも違う気がする。


 「だ、大丈夫よ・・・は、ハギルっ!!」

 「は・・・はい?」

 「がん・・・がん・・・なさい・・・」


あらら?

最後まで言いきれてなくて言葉が尻すぼみだ。

何言ってるのかよく聞き取れない。


 「マデリーン、もっと堂々と自信をもって話すのよ!」


 「う・・・は、はい、お母様・・・。」


ワンモアチャンスだ。

ハギル君もさっきっから不安そうだけど、じっと待っている・・・。

 

 「は、ハギル、も、もう一度言うわっ!」

 「はい・・・お願いします・・・。」


 「う、うう、ハギル!

 この・・・が、がんば・・っ、がん・・・がん・・・」


頑張れ、もう一声だっ!


 「こ・・・この高貴なるあたしに・・・がん・・・」


ん? え?

な、なんでその枕詞を選んだの?




 「が・・・頑、がん・・・っ

 ガン謝しなさいっ!!」




ふ わ っ ?

 





時は止まる。





マデリーンちゃんの真正面にてベッドから動けないハギル君も、

アスターナままもクリュグぱぱも、

カラドックさん、ケイジさん、後ろで空気になってた冒険者の皆さんも、

果てはメリーさんまで本当の人形のように固まっていらっしゃる。


ただ一人、マデリーンちゃんが、何かを成し遂げたかのように額の汗を拭いていた・・・。

とてもいい笑顔で。


周辺の時が止まっている事など気にも留めた様子はない。






 ギ・ギ・ギ・・・と


その時間停止空間で必死に動こうとしている者がいた。


クリュグぱぱだ!!


 「・・・は~ぎ~る~・・・

 いーまーのーマーデーリーンーのーはーつーげーんーはー

 どぉーゆーこーとーかーなーっ?」


 「えっ!?

 そ、そんな、オ・・・オレは何もっ!?」



続いてアスターナままもその呪縛から解き放たれる!!

般若の如き笑みを浮かべてッ!!


 「あ~ら~?

 もーしーかーしーてーわーるーいーこーとーばーをーおーしーえーてーいーるーのーかーしーらー?」


とても仲の良い夫婦だと思う。

うん。


 「いっ、いえ!?

 オレは何にも教えてないですよっ!!

 濡れ衣ですっ!! 信じてくださいよっ!?」


 「そぉかぁ~、

 じゃあ~、地下室へ行って話し合いをしようか~?」

 「ええ~、ここはお客様もいらっしゃいますものね~、

 そこで気兼ねなくお話しましょうね~、ハーギール~?」



 「そっ、そんなっ!

 オレは無実ですっ!!

 ちっ、地下室は・・・牢はっ!

 いやだぁああああああっ!!

 地下牢はダメですうううう!!

 地下牢だけはやめて下さいぃぃぃっ!!!」


そして動けないハギル君は簀巻きにされてどこかへと連行されてゆく。

うん、あたし達は何も見なかった。

何も聞かなかった。


悲鳴?

なにをおっしゃっているのか。

事件はみんな片付いたはずだ。

もう何も起きないよ。



・・・それより夕飯は何が出るだろう?

お腹空いたな。





 

このネタを投下するためにアスターナ編が作られたと言っても過言ではない!!

(割とまぢで)


うりぃ

「アホかこの作者ぁっ!?」

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