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第四百二十一話 ぼっち妖魔は尻拭いをする

<視点 麻衣>


えっと、これ・・・解説役誰が・・・

ってあたしかー。


毎回毎回誰がやるか悩みどころらしいんですよね。

あっ、これ、内緒の話なんでしたっけ!?

み、皆さん、今のは聞かなかったことに!!



おっほん!

えー、

昼間のスタンピードを一人で食い止めようとしていた獣人少年の意識が回復したとのこと。


タバサさんの回復術で傷は綺麗に治ってる筈。

あたしも腕を繋げるのにちょっとだけ協力した。

まあ、別に売るほどの恩というわけでもないし、取り立ててこれ以上、介入する必要ないと思うんだよね。


ところがである。


メイドさんからのお知らせによると、無事に彼は目を覚ましたという。

めでたい。


良かったと思う。

心から。


家人である、アスターナさんて黒髪の綺麗な貴族の人も、お髭がダンディで強そうなクリュグ伯爵という人も本気で嬉しそうだ。


当たり前だよね。


どこか感情移入するような点でもあったのか、

ケイジさんも満足気。

あと、途中まで行動を一緒にしてたらしい、「栄光の剣」というパーティーの皆さんも大喜び。


うん、ここまでもいい。


今回、魔力消費が激しかったタバサさん、アガサさん、そしてこの屋敷所蔵の武器を確認したいとの事で、ヨルさんが執事の人に連れられて退席した。


・・・残った皆んなで雪豹獣人のもとへ。


なんでそんな大所帯で繰り出す必要があるのか、

そこには当然あたしやカラドックさんも含まれる。


本来、無関係な筈なのに。



どうやらメリーさんがやらかしてくれちゃったらしい。

いや、別に何かとんでもない被害をこの屋敷や家人に与えたわけではないそうだ。


そこは安心していいのだけど、

目を覚ました雪豹獣人からメリーさんが離れなくて、

マデリーンちゃんという可愛らしい女の子が、

男の子を取られたと泣きじゃくりまくって手がつけられないとか。



何してんの?


それを聞いてあたしは思わずリィナさんと目を合わせた。

あたし達は、泡の女神様から「ここで何か起きる」ことを聞いているからだ。


あと他に事前情報と言えば、

この領地でメリーさんが石碑のようなものに跪いている映像が女神様に見えたとか。

これはメリーさん本人も聞いている。


予知映像らしい。


ちなみにあたしには視えない。

まあ、視えないのが当たり前なんだけどね。


それとは別に気になるものもある。


エントランス正面二階に繋がる通路の真ん中から、やけに霊的な気配を感じるのだ。

悪意のようなものは感じないけど、

何か神経質になってるような・・・。


あたしに注意を向けられたくないので、

気づかないフリをしてるけど、

・・・アレ、メリーさんのいる方角をずっと睨んでるような・・・。


余談だけどちょっと想像してみてくれる?

少し斜めの角度から、正面を見詰めている白髪混じりの初老の人の肖像画。

肖像画を見るあたし達に視線は向いている「筈」。

でもあたしのような霊感持ちだと、その肖像画に描かれている人物の青い瞳は、

真正面ではなく特定の方向を向いているように「視えて」しまうのだ。

流石に目が動いているようには見えないけどね。



あたしの現状把握的な話はこれまでということで。



メイドさんの報告を聞いて、

あたし達はみんなで獣人少年の寝ている部屋へ向かう。


なんでも本日だけは特別に来客者用の豪勢なお部屋で寝かせているそうだ。


重ねて言う。


本来、あたし達は無関係だ。

でもメリーさんがやらかしそうなら、

同じパーティー、同じ異世界組として、

後始末の責任を取らなければ・・・はあ、

やってられない。



そして扉が開かれた。



うん、混沌カオス



開けた瞬間、マデリーンちゃんの泣き声の洪水。

・・・この子、どこまで体力あるのだろうか。

太ってるわけじゃないけど骨太の印象があるので・・・

将来、最低でも3人くらい子供産めそう・・・。


それを無視して、メリーさんが獣人少年・・・

ハギル君という名前だそうだ。

そのハギル君を抱き締めている。


体力を失っているハギル君にはなす術もない。


 「は、ハギル、目を覚ましたか・・・!

 具合はどうだ!?」


 「あっ、は、はい、旦那様、

 まだ、カラダが満足には動かせないんですけど、多分休めばなんとか・・・」


うん、あの状態じゃ満足には動かせないよね、物理的に。


 「も、もう、皆んな心配したのですよっ?

 お願いだから、こ、こんな無茶は二度としないと約束して・・・!」


 「お、奥様、

 はい、ご心配を、お掛けして、申し訳ありません・・・。」


みんないい人たちだね。

この会話だけでわかるよ。

この辺りじゃ獣人は差別が強いそうだけど、

いい貴族の人に雇ってもらってるんだね。


 「そ、それで、あ、あの、メリーさんは何を・・・?」


はい、本題ですね。

アスターナままもどう判断していいのかわかるまい。

いくらこの世界に来て感情が復活しているとは言え、基本他人に干渉しないはずのメリーさんの態度が明らかにおかしい。


マデリーンちゃんはアスターナままの腰にしがみ付いて、ハギル君を取り返してアピール。

女の子の反応としては分からないでもない。

もふもふだし、真面目そうだしね、ハギル君。


アスターナままの問いかけにもメリーさんは反応が薄い。

これはあたしの出番かー。


 「メリーさん、

 その男の子、メリーさんの元の世界の人たちに関係あるんですか?」


さっそく突っ込んでみた。

この線でほぼ間違いないと思う。


カラドックさんやケイジさんも驚いてる。

さて、メリーさんの反応はいかに?


 「・・・あの世界樹の洞窟で、

 私が強く拘ってた黒髪の子の話は覚えてる?」


 「はい、勿論覚えてますよ。」

夢でも見てるしね。


 「ザジルは・・・私の護衛だったザジルは、その子の事を愛していたの、他の誰よりも。」


ザジル?

この子の名前はハギルだ。

咄嗟に鑑定するも、名前に間違いはない。

確か女神さまも、この場所に転移者も転生者もいないと断言している。


という事は・・・


 「あ、もしかしてメリーさんが人間だった頃・・・。」


 「そう・・・、

 ザジルは、あの子は本来死ななくてもいい筈だった。

 けれど、私のつまらない目的の為に死地に追いやってしまった。

 あの子と、二人っきりで、幸せになる約束までしていたのに・・・。」




ああああああああ、女神様、これヤバいやつじゃないですかっ!?

確かあの「黒髪の女の子」の本当の死の理由は、好きな男の人が死んでしまって、生きる意味を見失ってしまったって話じゃなかったでしたっけ!?

そしてメリーさんはその男の人を死なせた張本人!!

もしメリーさんが自分の本当にしでかした事に気づいたらっ!!



 「そ、そう言えばあの女神さま、

 メリーさんが石碑のようなものに跪くって言ってましたよね、その件の!?」


ど、どうにか話を遠ざけないとっ!?


 「・・・それについては、いま、この場にあっても意味がわからないわ。

 このハギルという子が異世界に転生したザジル本人だと言うなら、私はいくらでも頭を下げて見せる。

 なんなら彼に殺されても文句は言わない。

 ・・・けども、ザジルの記憶を何も持ってない、それこそマルゴット女王とウェールズの魔女のように、別人格の存在だというなら、私が彼に謝罪しても何の意味もない。

 そうでしょう?

 大体、石碑のようなものって何なのかしら?」


そ、それは確かに・・・。


メリーさんの言ってること自体は間違ってないと思う。

もし、このハギルという子が、メリーさんにとって大事な人だとしても、

当の本人にしてみれば何の関係もないのだ。


あたしは念の為に、もう一度ハギルという子の鑑定結果を・・・



ん?

なんだ、このスキル?


 「ご、ごめんなさい、

 一体どういうことなのか説明していただけるかしら・・・?」


アスターナままが状況を把握できなくて困ってる。

それは無理もない。

ど、どうしようかな?

普段ならカラドックさんにお願いしたいところだけど、

カラドックさんもこの件についてはあまり分かってない筈だから・・・。

やってみるか・・・。



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