第四百二十話 ハギルの目覚め(画像有り)
ぶっくま、ありがとうございます!
あ、画像に花吹雪入れ忘れた!!
いつか修正入るかも?
<視点 ハギル>
広い・・・
とても広い草原・・・、
果てが見えない。
辺り一面に色とりどりの小さな花が咲き乱れている・・・。
オレの他には誰も・・・
いや、向こうに誰かいるな・・・。
女の子か・・・。
風が吹くたびに、舞い散る花びらに洗われるように・・・
とても長い綺麗な黒髪の・・・
アスターナ様だろうか?
そう言えば立ち居振る舞いはアスターナ様に似てるような気もするけど、
かなり若い・・・
アスターナ様を少し小さくしたみたいな?
あっ、こっちを振り向いた!?
・・・違う、
似てると言えば似てる気もするけど、何故かあの子はアスターナ様じゃないとわかる。
オレを見て、「この人は誰だろうか」と戸惑ってるみたいだが・・・。
その子は突然、オレのことを思い出したかのように明るく嬉しそうに微笑んでくれた。
「やっと会えた」って?
誰と?
オレと?
その子は足元の草花に気を付けながら、ゆっくり足を抜いてオレの元に・・・
気が付くとオレの足も走り始めていた。
その子に向かって。
オレはこの子を知っている?
あの笑顔を忘れるわけがない。
オレの世界に初めて色を与えてくれたあの子を・・・。
もうすぐだ、
すぐそこだ。
彼女は腕を拡げて、
オレも彼女を抱きしめるために腕を伸ばして・・・
あれ?
オレの腕がない・・・。
オレの腕は何処に行った?
肘から先に何もないぞ。
届かない。
あの子にオレは届かない。
彼女はショックを受けて足が止まる。
まって・・・
オレはここだ。
ほんの・・・すぐそこにあの子はいるのに・・・
いつの間にかオレの足も動いていない。
まるで鎖にでも囚われたかのように。
お願いだ・・・!
だれか・・・オレを・・・
彼女を
守る・・・守らなきゃ・・・
あの子を一人にしちゃダメなんだ・・!
見ろっ!
あの子の後ろから、たくさんの魔物が湧き出てきて・・・
今にも彼女を喰い尽くそうと・・・
どけぇっ!!
彼女から離れろぉっ!!
守るんだっ!
だれか、・・・だれかぁっ!?
だ、ダメだ・・・意識が・・・
景色が
暗く、
闇に包まれてゆく・・・
あの子を
守らないと・・・
うっ・・・
ここは どこだ・・・
頭が痛い ガンガンする・・・
何も考えられない、
体も鉛のように重い。
何か夢でも見ていたような気もするけど・・・
いったい、オレは・・・
あれ?
確か 魔物がオレを・・・
「うわあっ!?」
反射的に跳ね起きようとしたけどカラダが言うことを聞かない。
あ、あれ・・・
ここ周りに
カラダがやけに重いと思ったら、
オレの腹の上で、ひっつき虫のようにマデリーンお嬢様が泣きそうな顔で覆いかぶさっていた。
それはいい・・・
いや、よくないけども!!
それと、
枕元でオレの顔を覗き込んでいた初めて見る・・・キレイな人形?
まるで生きてるみたいな・・・
なんでそんなものがオレの側に
「目が覚めた・・・のね。」
喋ったああああああああっ!?
「ハッ、ハギルウウウウウッ!!
あたしのハギルうううううっ!!
うわあああああんっ!!」
お嬢様がさらにオレの体を這い上ろうとしてくる。
オレの寝巻きの胸元がびっちょり濡れてる気がするのだけど、これ、マデリーンお嬢様の涙とかヨダレとか?
・・・そこまでは許容範囲だけど、
流石に鼻水は勘弁してほしい。
「お、お嬢様、お、オレは生きている、んですか?
ていうか、ここ、オレの部屋じゃなくてお客様用の部屋・・・
それに、こ、この人・・・人形!?」
あ、あと、
確か右腕も無くなってたよな?
ちゃんと普通についているぞ?
まさか夢でも見ていたんだろうか?
どこから夢だったんだろう?
黒い薔薇の刺繍のドレスを纏った人形の人がゆっくり説明してくれる。
「記憶はある?
あなたは一人、魔物のスタンピードを止めようとして・・・」
そ、そうだ、よなっ、
あのリアルさで夢なんて
その瞬間
口を大きく開けた魔物どもが涎を撒き散らしてオレを
「うわあああああああああああっ!!」
「ハギルっ!?」
その時、女性の形をした人形の細い腕が、ギュッとオレの頭を抱きしめた。
とても優しく・・・
「ごめんなさい、怖かったわよね?
もう、大丈夫・・・
ここにはあなたを傷付けるモノなんてどこにもいないわ・・・。」
「・・・え、あ・・・?」
あ、ああ、幻でも見たのか・・・
フラッシュバックって言うんだっけ。
でも、この人?
表情も、それこそ、そのダークグレーの瞳で何を考えているのか全く分からないにも拘らず、
その人形の声はとても穏やかで、
まるでオレの母親はこうだったのではないかとでもいうような優しさに溢れていた。
「あ、あなたは・・・っ?」
「私の名はメリー、
異世界からやってきたの・・・。」
はあっ??
「い、異世界いい!? うっ!」
ダメだ、興奮するとズキっと頭が痛む。
「あなたは回復魔法で全ての怪我が治ってる筈だけど、血を大量に失ってるわ。
しばらく安静にしていることよ。
・・・喉も乾いているでしょう?
また私が飲ませてあげるわ。」
確かに喉もカラカラだ。
枕元に水差しを見つけたのでそれに手を伸ばそうとしたら、人形の人が取ってくれた。
・・・「また」ってどういうことだろう?
でも、あれ?
オレに手渡してくれない・・・
「寝てなさい?
私が口移しで飲ませてあげ「それは今度こそマデリーンがやるのーっ!!」」
二人で水差しを奪い合い始めた。
いや、流石に水差しくらい自分で咥えられるよ。
・・・なんとか二人の隙をついて水差しを手に入れた。
ああ、水が美味しい。
「あら、遠慮しなくて良かったのに。」
「ううう、ハギルを取っちゃダメなの!」
とりあえず落ち着こう。
水分を摂取して、いくらか気分も楽になった気がする。
「ここは、お屋敷・・・ですよね?
あの状況で、どうやってオレは・・・。」
「ちょうどギリギリのタイミングで、
『蒼い狼』という冒険者パーティーが間に合ってね、
高位の僧侶があなたの傷を回復させたのよ。」
・・・信じられない。
そんな幸運が・・・。
「そ、そうだったんですか、
確か腕、無くなってたと思うんですけど、それも治してくれたなんて・・・すげぇ・・・。」
「・・・腕を引きちぎられて・・・まるで、彼の最期の・・・
いえ、何でもないわ。」
ん?
どうしたんだろう。
何か言いたそうだな。
「あっ、じゃあスタンピードの方は!?
あと、孤児院の方もっ・・・」
ていうか、何でオレは人形と普通に会話してるんだろう?
やっぱり夢を見ているのかな?
「それもその冒険者たちが片付けている頃よ。
あなたの言う孤児院とやらも無事だと思う。」
ハッ、
・・・奇跡だ、
それ以外なんて言うんだよ・・・
オレ・・・生きてて、いいんだ・・・。
またこの屋敷で・・・
あ、目が滲んできたけど、
水分が足りてないのか、あんまり流れないか。
でも嬉しい・・・。
またお嬢様に会えるだなんて・・・
アスターナ様やクリュグ様は後始末で大変なんだろうな。
本来なら手伝いに行かなきゃいけないけども、
あれだけのことがあったなら、こうして休ませて貰うのも
「よく顔を見せて・・・。」
うわあっ!?
メリーさんと言う人形がオレの顔を覗き込んできた!!
近い!!
まあ、人間の男女じゃないんだから、
普通に騒ぐことじゃないかもしれないけど、鼻と鼻がくっつきそうだぞ?
「やっぱり似てる・・・。」
え?
今なんて言った、この人形?
似てる?
オレが?
誰と?
「えっと、あなたとは初めて会う筈ですが、
どなたか、オレに似てる人がいたとか?」
雪豹獣人なんてそんな多くないと思うけど。
そして喋る人形なんて他で見聞きする筈もない。
「最初にあなたの銀髪を見た時から気になっていたの・・・。
そして、今、目を開いたあなた・・・、
氷のような瞳・・・、
こことは違う世界で私の護衛に就いていた・・・
私が死なせてしまった・・・
ザジル・・・彼にそっくり・・・。」
その瞬間またもや、頭ごと抱きしめられた!!
ザジル!?
それ、オレじゃないだろ?
名前はちょっとだけ似てる?
ああっ、この人形の胸の盛り上がりが頬にって、やっぱり硬いぞ!!
い、いや、それは問題でなく!!
「うわあああああん!!
またお人形さんがハギルを独り占めするううううううっ!!」
ああ、こっちも問題だ!!
まだオレ頭が痛いんですけど!!
誰かゆっくりさせて下さい!!
あっ、向こうにメイドのヘザーさんがいるっ!
この二人の勢いに飲まれて、今までなんのリアクションも取れなかったのかなっ?
オレは視線を投げて救助要請をアピール!!
気づいてくれたかなっ!?
ヘザーさんは大きく頷いて部屋から出ていった。
誰か助けを呼んでくれるに違いない。
オレはいったい、この後どうなるのだろうか?
ハギルの名前をどうしようか、ずっと考えていました。
元の名前に近いようにはしようとはしてたのですが・・・
ジル・・・いいんじゃないか?
いや待て! 確か「銀の閃光」の猫獣人で使ってるぞ!!
ザジ・・・悪くはないけど、串焼き屋のおやじ以外、魔族の名前がみんな二文字だからなぁ。
えっと、えっと、ザジルって元ネタは「〇ー大陸」シリーズで魚を意味するようなこと言ってた記憶が・・・
魚・・・魚人・・・サハギン?
よしハギルだ!!