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第四百十九話 アスターナ邸到着

ぶっくま×ぶっくま×ぶっくま、ありがとうございます!

<視点 ケイジ>


 「あっ、あれが空飛ぶ馬車っ!?」

 「チャンバス様にお知らせしてっ!!」


眼下に慌てふためいてる使用人たちの姿が映る。

アスターナという貴族に事前に知らせておいたので、そこまで驚かれてはいない筈だ。

まあ、それでも目の前の光景は信じられない状況かもな。


あの後、ダンジョンの入り口まで戻ったオレらを、冒険者ギルドの面々が驚きと歓喜の表情で迎えてくれた。


何千体倒したかオレらも分からんが、念のためにエンペラーギガントトータスの甲羅を討伐証明の一つとして見せると、彼らは大歓声をあげる。

無理もないか。

中には涙まで零して喜んでいるヤツもいる。


疲れていることと、アスターナ邸に赴かなくてはならないことを告げ、この後の始末は彼らに任せた。


・・・後で聞いたがダンジョン内の死者は28人だったそうだ。

オレらも死体を一々確認していない。

何しろフロア間の移動を最短距離にして動いていたからな。

途中、冒険者らしき装備や衣服の残骸も全く見ないわけでもなかったが、

それらを気にしている余裕なんかある筈もない。


・・・もちろんまだ息があるというのなら、全力で助けに向かうつもりではあったのだが。


彼らの家族や関係者には残念なことだが、

これで被害は最小限だったのだと諦めて・・・

いや、そう思ってもらう他はない。


ダンジョンから無事逃げおおせた者、

多少の負傷を負っている者も勿論いるが、

時間と金さえあれば回復は容易だ。

生きていさえいれば、再起不能となるまでのことは滅多にない。


オレの元の世界と比べてどっちがマシなんだろうな。


ラプラスの馬車の中では、

オレたちの疲労を慮って、ラプラスが濡れタオルや飲み物を用意してくれていた。

・・・またもや有料。


いや、ありがたいのは間違いない。

後で纏めて払うから。


なので、アスターナ邸に降りた時には、

多少なりともオレたちの体力は回復はしていたろう。

普通に歩いたり会話したりする程度には。


もっとも、これ以上のイベントは勘弁してもらいたい。

飯くらい食わせてくれるだろう。

出来れば風呂にも入りたい。

そんで一晩寝かせてくれれば言うことは何もない。


・・・ていうか、

もともとこの街に来たのは、

メリーさん絡みとヨルの武器を入手するためだったよな?


ヨルの件は片付いたと思っていいのだろうか。

一応、クリュグ伯爵とやらに確認して、

あのトリダントゥ・レプリカを上回る武器など所蔵してなければこの件は確定だ。


・・・後はメリーさんか。




ただ、

オレらがスタンピードの対応してる間に、メリーさんの方でも一騒動あったらしいな。

オレたちはこれからそれを聞かされることとなる。




 「まあああ!

 皆さまご無事で何よりですわ!!

 本当にスタンピードを解決してくださるとは!!」


喜んでるんだか、感動で泣いてるんだか分からない表情でアスターナが出迎える。

化粧も落ちかけてるような気もするが、元が美人なせいかそんなに気にもならない。


 「マルゴット女王陛下の甥にあたられるケイジ様でしたか、

 このクリュグ、この地を治める領主としてなんとお礼を言えば良いか・・・。」


ここで初めてこのローゼンベルクの領主だというクリュグ伯爵に会った。

なるほど、

筋肉や骨格もかなり逞しい・・・。

あと、10年も若ければ現役で騎士団でも活躍出来そうな雰囲気だな。

騎士団長のブレオボリスと試合させたらどっちが強いだろうか。


なお、二人の後ろには、

冒険者パーティ、「栄光の剣」の五人が並んでいた。

アレンという爽やかな青年をはじめ、ハイエルフのミストレイや他の女性陣も顔が綻んでいる。

・・・少し照れるな。


 「・・・乗りかかった船みたいなもんだ。

 詳しくは女王からの親書を読んでもらったと思うが・・・。」


 「は!

 『蒼い狼』の皆さまはこれより邪龍討伐に向かわれるとのこと!

 その為に皆様方のお役に立てることは、ローゼンベルク家にとって光栄の極み!!

 何なりと御用をお申し付けください!!」


 「・・・いやあ、

 そんなに畏まらないで・・・

 ホントにただの冒険者なんだからさ。

 カッコつかないけど、

 夕飯と、ふ、風呂と一晩ゆっくりさせてもらえれば・・・。」


厚かましいなんて思われないよな?

今更獣人お断りとか言うなよ。

ただ彼らに差別感情がなかったにしても、オレやリィナはかなり体毛が抜けるからな。

ちょっと後ろめたい気もするんだ。


 「勿論ですわ!!

 そうですね、ではお風呂から皆さまお入りくださいませ!!」


アスターナからガッツポーズの了承を頂いた。

金をくれと言ったら、喜んで金貨の詰まった袋を用意してくれそうな気もする。

・・・もちろんそんな事は言わないぞ・・・。


 「助かる・・・

 あ、あとメリーさんが先に厄介になってると思うけど・・・

 それに獣人の少年は・・・具合どうかな?」



そこで彼らの顔が固まった。

・・・やめてくれよ、ここで流れをひっくり返さないでいてくれるか?



 「あ、あれ?」


ん?

後ろで麻衣さんが反応したぞ。

やっぱりなんかあるのか、ここ。


 「・・・どうしたんだ、麻衣さん?」


カラドックも何か違和感を覚えたらしいな。

嫌な予感が止まらない。


 「このお屋敷・・・なんかいます?

 い、いえ、悪意とか害意みたいなものじゃ無さそうですけど・・・。」


なんかってなんだよ!?


 「え、あ、あ、あの、そちらのお嬢様は・・・っ?」


アスターナもきょどってるぞ。

後ろめたいことがありそうだな。


 「この子は異世界からやってきた子で、類い稀な感知能力を持っている巫女職の冒険者です。

 彼女が反応したのは何か、お心当たりでも?」


カラドックが丁寧に探りを入れる。

任せたぞ!!


 「えっ、い、いえ、そ、そんなこっこっころ辺りも何もっ、ねぇあなたっ!?」

 「そっ、そうだとも!

 この屋敷はごくごく普通のどこにでもある一般的な、き、貴族の屋敷であって・・・っ!」


仲良さそうな夫婦なのはいいんだけどな。

もう、何か隠してるのモロバレしてるだろ。


・・・いや、オレたちに関係ない話ならそこまでこっちも突っ込むつもりもないんだが。



するとそこへメイドの一人が血相を変えてやって来た。

 「だ、旦那様っ!!」


 「なっ、なんだね、ヘザー!

 そそそんなに慌ててて!?

 おお客様の前だぞっ!!」


いや、あんたら夫婦の方が尋常じゃない慌て方だぞ。

突っ込まないでやるけども。


 「はっ!?

 も、申し訳ありませんっ!

 で、ですが・・・ハ、ハギルが、

 あの子が目を覚ましました!!」


おおっ!

それは良かった!!

あの様子ならしばらく無理はできないかもしれないが、危険な状況からは無事脱したと見ていいだろう。

この街でスタンピードの被害を未然に防げたのは、

冒険者ギルドの連中同様、誰もが喜んでくれる快挙だろうが、

彼に万一のことがあってしまったならば、オレらも手放しで喜んでなどいられなくなる。


 「おおっ! そうかっ!

 今すぐに向かおう!!

 アスターナ、君は冒険者の皆さんの案内を・・・」


と、クリュグ伯爵が言いかけたところで、

メイドの女性が口を挟んだ。


 「た、ただ、だ、旦那様・・・。」


 「む?

 な、なんだね、何か良くないことでも?」


えっ、大丈夫か?

まさか恐怖で口がきけなくなったとか、記憶喪失になっているとかいうオチはないよな?

タバサの術なら肉体面での不都合はないとは思うが、

心因性のものに関しては魔法の回復術ではどうにもならない。


 「いっ、いえ、あの、ハギルは無事なんですけど・・・

 あの、人形の・・・お客様が・・・」


はい?


人形ってメリーさんのことだよな!?

何やってたの、メリーさん!?


次回、ハギル君復活!!


そして皆様もお気づきでしたでしょう、メリーさんとの関係がはっきりと。

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