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第四百八話 接触

<視点 魔族メイド>


・・・はじめまして。

私の名はメナ。


ビュッテバウアという街で生まれた魔族のメイドです。

基本的に他人に干渉しない・・・よく言えばストレスもない、

悪く言えば刺激も何もない魔族の暮らしに飽き飽きしていた頃、

異世界からの転生者だという魔人ベアトリチェ様と出会いました。


他のくだらない魔族たちを手玉にとり、

面白いように彼らを操るベアトリチェ様は、まさしくくだらない世界に光を齎す救世主のように私の目に映ったのです。

とはいえ、私など特に何の技能も持たず、ベアトリチェ様のお役に立てることなどなにもないと悲観していたのですが、

あの方は私に、ご自分の身の周りをお世話するメイドという概念を教えていただきました。


・・・もう懇切丁寧に。



 「うふふ、メナ?

 これだけ出来れば上等ですわ?

 もうあなたはヒューマンの貴族の元に仕えるだけの技能を身につけたと言えるでしょう。」


勿論、ヒューマンなんかに仕えるつもりなどないですけれど、

あの方に認められたことが何よりも嬉しかったのです。



・・・なのに。

あの方は逝ってしまわれました。


代わりに全ての魔族の希望たる魔王様を産み落として・・・。


その名をミュラ様。


この方も異世界からの転生者だという事ですが、そんな事はどうでも良かったのです。

生まれたばかりにも拘らず言葉を話し、その内在する魔力は桁違い。

日に日にそのカラダは成長しており、恐らく数年もしないうちに成人の体格となられるでしょう。

それだけでありません、

その端正な顔立ちはベアトリチェ様を彷彿とさせ、きっと大勢の女性たちを虜にするでしょう。

そんな方に最も近い場所でお世話する事が出来る私は何と幸せなことなのか・・・。


ベアトリチェ様のことは残念でなりませんが、

せめて私もあの方の代わりを少しでも埋められるように・・・


 「・・・メナ?

 それは私がやると言ったはずです。

 あなたはミュラ様のお部屋の掃除でもされてはいかがですか?」


 「掃除などとうに済ませております。

 オスカ様こそ、ご自分のお仕事に戻られてはいかがですか?

 あなたはこの宮殿の警戒こそ本分でしょう。

 なぜミュラ様のお世話という私の仕事を奪おうというのでしょうか?」


 「宮殿に結界を張るなどこの位置からでも可能です。

 それよりミュラ様のお世話はあなたのお仕事だと誰が決めたのです?

 クィーンでさえそんな事は一言も仰らなかった筈です。」


そんな私を邪魔するのがこのハイエルフの結界師オスカです。

もともとベアトリチェ様は、種族や身分など何も気にしない方だったので、

魔族領で大きな顔をさせていても私も特に何も言うことはなかったのですが・・・


今は・・・


そう、何よりも以前からベアトリチェ様に対抗でもするかのような破廉恥なスケスケ衣装!

これだけは私も目を背けたくなりました!!


いえ、以前は良かったのです。

私も見ないことにしていました。

一体なぜベアトリチェ様もこんなはしたない恰好を許されていたのか?

恐れ多くも一度ベアトリチェ様に質問したところ、こんな答えが返ってきました。


 「あら? あのオスカのシースルーコスチュームのことですの?

 よいじゃありませんか?

 あの、見える・見えないギリギリを攻めるスタンス、嫌いじゃないですわぁ。」


く・・・

まさかのベアトリチェ様のお眼鏡に適っていたとは・・・。


 「そもそも、別に私も男性の方々を独占したいわけでもないですし、

 美しく魅力的な女性が多い分には越したことないのですよ?

 パーティーの時はメナ?

 あなたも給仕役などに徹するより、ドレスでも着飾って舞や踊りの一つでもご披露してみてはいかがでしょうか?」


い、いえ、それは、魔族の私には荷が重く・・・。


べ、別にオスカが夜ごとのパーティーで、男たちを惑わそうと、

宮殿中の男どもと爛れた関係になろうとどうでもいいのですが、今回ばかりは・・・。




 「・・・なぁ、君たち・・・。」


 「「はい! 魔王様!!」」


あら、いけません、破廉恥オスカと声が重なってしまいました。

もう・・・!

早く魔王ミュラ様からこのスケスケ衣装の女を遠ざけないと、魔王様の情操教育にとんでもない悪影響を及ぼしかねません!!


 「・・・パンツの履き替えくらい自分でできる。

 僕のパンツを引き摺り下ろそうと、二人掛かりで争わないでくれないか?」



 「そ、そんな・・・。

 遠慮はいけません、魔王様!!

 あなた様のご年齢なら、大人の女性に着替えをさせられても何の不思議もありません!」


む・・・言いたいことを先にオスカに言われてしまいました。

負けてなるものですか!


 「魔王様!

 母君の着替えを手伝っていたのはこのメナです!!

 ベアトリチェ様の跡を継がれたミュラ様の御着替えを担当するのはこの私を置いて他ならないのです!!」


ふふん!

忌々しげな眼でオスカが私を見てますが、これは真実です!

どうですか?

一歩、ミュラ様に近づいたのは私ですよ!


さぁ、ミュラ様、観念なさってそのパンツを私に任せるのです!!

パクつきたいほど可愛いものがぷらぷらしていても私は気にしませんよ!

な・・・なんなら・・・ちょっと・・・このメナのお口で・・・ご奉仕しても・・・



 「・・・あのな、君ら、

 僕はこれでも精神年齢40近いんだぞ・・・。

 君らから見たらおっさんだ・・・。

 さすがにこの見た目でオッサン臭い言動しないよう気を付けてるだけで、

 中身はそのまんまなんだからな・・・。」


 「「・・・いえ!

 ミュラ様が成長された姿も想像できます!!

 全く問題ありません!!」」


くぅっ!

なんでオスカとこうも意見が被るのでしょう!?

い、いえ、ミュラ様をお守りしたいという心魂は一緒の筈。

だからこれは私にとっても悪い話ではない筈なのですが・・・。


 「・・・どうせならリナに・・・

 いや、それはそれで恥ずかしいな・・・。」



む?

それは先日この宮殿を破壊していった冒険者パーティーの兎勇者のことですね?

うらやましくもミュラ様の前世で、この方が懸想されていたお相手だとか・・・。


思うところがないではありませんが、

ミュラ様が一言命じて頂ければこのメナ、

その兎勇者を捕獲してまいりますが・・・。


 「・・・はぁ、おい、ダン・・・。

 彼女達、なんとか出来ないものかね。

 少なくとも一人は君のパーティーなんだろう?」


ミュラ様は、

部屋の片隅でぐいぐい酒をかっ喰らってるヒューマンに声をおかけになりました。

こいつも本来、ミュラ様の護衛という名目でここにいるのですが、いったい何のお役に立っているのでしょうか?


 「ふっはぁ~、

 いやぁ、こういう方面に関しちゃ、オスカは絶対引かねーからなぁ?

 諦めなよ、魔王様。

 ものは考えようだぜ?

 その年で美人のお姉さんたちに相手してもらえるとなりゃ、誰でも羨ましがるとおもうんだがなぁ?」


 「・・・だから僕の精神年齢はダンとそんな変わらないというのに・・・

 むしろ君には、彼女達からこそ、護衛してもらいたい。

 それなら君と酒を酌み交わしてもいいと思っていたんだが・・・。」


 「いけません!!

 まだミュラ様にお酒は早すぎます!!

 後10年は経たないとお体に悪いですよ!!」


 「・・・いや、僕のカラダは状態異常無効らしいんだけど・・・。」


その時です。


ミュラ様の形相が変わりました。

続いてオスカも・・・。

いえ、これは私と同じくミュラ様のお顔の変化に反応したのでしょう。


その反応は、部屋の入り口付近に・・・

異質な・・・途轍もない魔力反応!?


 「な、なに!?

 私の結界に何の反応もなく!?」


なんて無能なオスカでしょう?

あなたの存在価値なんて、この高度な結界能力でしかありはしないのに・・・。


けど、いまここでオスカを落としてる場合じゃありませんね。

ミュラ様に害為すものが現れたならば、

「聖なる護り手」の冒険者や、事によったら竜人ゾルケトフをもこの場に呼んでこないと・・・!



 「・・・いや、これは只者でないな・・・

 君らは何もするな・・・。

 姿を現せ・・・!!」


私にもわかります。

それも・・・入り口の扉付近に現れた異様な気配は三つ・・・。


それが・・・だんだんと・・・人のような姿に・・・




 「・・・くくくくく、邪魔をするぞ、新たなる魔王よ・・・。」

 「ほう、これはこれは・・・稀に見る優男よな・・・。」

 「まぁ? こんな美味しそうな男の子だったのね・・・?

 それもサキュバス族の血から生まれたとは・・・。

 もし私の専属になってくれたら、この世の中の女性は思うままよ?」



あ・・・あ、

ま、まさか・・・こいつらは・・・いえ、この人たちは・・・っ




 「何者だ・・・。」


ミュラ様!

お気を付けください!

・・・こいつらは・・・いえ、この方々はっ!!


 「くくく、我らは・・・この世界の神・・・

 いや、ヒューマン、亜人どもには悪神と呼ばれている存在よ・・・!」

 

下書きはたいして進んでいませんが、

これより下書き作業はアスターナ邸に入ります。

・・・果たしてどんな内容になるか・・・。



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