第四百七話 生暖かい目で見つめる女性陣
ぶっくま、ありがとうございます!
アスターナ様一家のエピソードも10話くらいで済むかなと思っていたけど、
どのくらいの分量になるのか書いてみないと分かりません!
<視点 リィナ>
と、
いうわけで、あたしたちはスタンピードを起こしたダンジョンへと赴くこととなりました!
「任せろ、カラドック、丁度暴れたりないと思っていたところだ。」
あたしもケイジも役に立っていませんからね、
いっちょやってやりますか。
「アガサはさっきので魔力を結構消費したと思うから、使用は限定的に。」
「了解、カラドック。
けど、いざという時は私も参戦。
さっきので、木術系魔法も三つ新たに習得!」
いきなり新術三つも覚えたんですか・・・。
まぁ、カラドックとの合わせ技とは言え、何千匹屠ったかわかりませんものね。
「タバサ、君は防御呪文より破邪系呪文を優先しよう。
このスタンピード・・・邪龍と関係ないと思えるほど楽観はできない!」
「ふふふ、承知!
この戦いにてタバサちゃんの名を全世界の良い子たちの心に刻み付ける大チャンス!!」
そこでカラドックは先程の冒険者パーティーの人に声を掛けました。
「というわけで、私達はこの先のダンジョンに向かうが、
アレン達はどうする?」
「・・・いや、スタンピードを起こしたダンジョンや、
Aランクパーティーの君たちの戦い方には非常に興味があるのだけど、
僕らの使命はアスターナ様達の護衛だ。
依頼を途中で投げ出すことは出来ないよ。」
「そうか、それもそうだな、
悪かったね、アレン、余計なことを言って済まなかった。」
あれ?
あの白銀の人、残念そうに首振ってますけど、
心音の方は、「ほっとした」って感じですかね。
「はは、それこそ余計だよ。
それより勇者を擁するパーティーに戦力として見做してもらえたことの方が光栄さ。
その代わり、僕らは奥様やこの少年を守るさ。」
そこへ何故か申し訳なさそうにケイジが入ってきました。
アレンという鎧の騎士に何か用でしょうか?
「・・・オレの口から言う事じゃないんだが・・・。」
「おや? どうかしたかい?」
「・・・その少年が目を覚ましたら・・・是非、暖かい言葉をかけてやってくれ・・・。
別にオレが同じ獣人同士だからってことでなく・・・
仲間を守るために命を投げ出すような奴だ・・・。
是非、その思いは報われることを教えてあげたい・・・。」
「・・・もちろんだよ、
それは男なら・・・なおさら、だものね。」
あ、「男」ワード来ました!!
これは女の子には立ち入れない世界の話です!!
「・・・おまえ、カッコいいんだな・・・。
空回りばかりしているオレとはえらい違いだ。」
そこでアレンという冒険者はきょとんという顔になりました。
たぶん、ケイジの言うことが・・・
いえ、これはケイジの方が間違っていたんでしょうね。
「何を言ってるんだい?
さっきの君の言葉の方こそカッコよかったぞ。
君は相手が貴族だということを覚悟したうえであんな態度に出たんだよね?
僕は立場上、アスターナ様を擁護したが、
あの少年のために激高した君を格好悪いなんて思うやつはこの場にほとんどいないさ。」
「えっ?」
ですよねー。
カラドック推しのヨルや麻衣ちゃんだってそう思ってます。
それどころか、怒鳴られていた筈のアスターナ様でさえ、優しい笑みを浮かべてますもん。
・・・あえて同意してなさそうな人っていうのは、
執事の人と、あっちのダークエルフっぽい女の子かな?
同意してないっていうか、興味なさそうなだけっていうか。
「・・・これも余計だったか・・・。」
ほら、逃げるな、ケイジ。
恥ずかしがってんじゃないですよ。
「・・・絶妙な空気の所、ごめんなさい?」
空気は読めても、空気に従おうとしないメリーさん登場です。
「メリーさん、どうかした?」
メリーさんは雪豹の獣人を膝枕の上に乗せたまま、カラドックに声を掛けます。
マデリーンという女の子と二人で男の子を看護続行中です。
女の子も一人で動いて喋るメリーさんに驚いてましたけど、
今は怪我人の方が大事ですものね。
「・・・私はダンジョンに行かないわ。
行っても何の役にも立たないし。」
あっ、それは・・・そうでしょうね。
狂乱状態の魔物相手にメリーさんの生態は意味はないですもんね。
「そうか・・・そうだね。
じゃあメリーさんは、この後どうするつもりだい?」
「どっちみち、ダンジョンをクリアしたらこの貴族の家に招かれるのでしょう?
なら先に向こうで待たせてもらうわ?
仮に、私が必要になるのだとしたら、麻衣に呼んでもらえばいいし。」
そう言えばそうでした。
よく考えたら、メリーさんはどこにいても、麻衣ちゃんの召喚術で呼び出せるんですよね。
「・・・メリーさん、その男の子って・・・。」
おっと、麻衣ちゃんがやってきましたよ。
麻衣ちゃんの視線は、メリーさんに拭ってもらって綺麗になった少年の銀髪に注がれています。
「・・・わからない。
あの女神が言っていたのは・・・この人たちのことでいいのよね?
それはわかるのだけど、
私に何の関係があるのか・・・。
確か石のようなものの前で私が跪いていたと言ってたような気がするけど、
この辺りにそんなものはないわよね?」
あたしと麻衣ちゃんは、
更に別の話も聞いています。
とはいえ、この段階で何か新たな事実が明らかになったわけでもありません。
あたしだって麻衣ちゃんだってわからない話です。
「あ・・・あの、ハギルの看護をしてくださっているのは・・・」
アスターナ様がおずおずとメリーさんの近くに寄ってきましたよ。
そりゃあ、よく見ればメリーさんが人間には見えないですものね。
色々心配にはなるでしょう。
ただ・・・今回は
グルンッ!!
「ひぃっ!?」
メリーさんの首がぐるんと予備動作もなく回転しました!
人間にできる動きではありません。
当然、メリーさんの正体を知らないアスターナ様は驚かれ、
その豊かな黒髪も乱れます!
麻衣ちゃんが「あああ、それエクソシストの女の子の」と呻いてますね。
以前似たようなものを見たことがあるのでしょうか。
・・・ん?
アスターナ様の反応はあたし達にも理解できますが・・・
メリーさんがその体勢のまま、固まってます?
「メ、メリーさん、どうしたのっ?」
あたしの言葉が聞こえてないのでしょうか、
メリーさんは微動だにせず・・・
その視線はアスターナ様に釘付けのまま。
あ、ようやくネジでも巻かれたかのように動きだしましたね。
フリーズでもしていたんですかね?
「・・・いえ、ごめんなさい。
この貴族の方の、黒髪と・・・振る舞い・・・いえ、体型かしらね?
動きが私の記憶の中にいる子と、姿が重なった気がして・・・。」
「えっ? それって例の子のこと?」
「ええ・・・、でも顔とかは違うようだし・・・
万が一、カラドックの母親とマルゴット女王のような関係かとも思ったけど・・・
違うようね・・・。」
それは気になることを・・・。
でも肝心のメリーさんが違うというなら関係ないのでしょうかね?
あ、麻衣ちゃんも、首を左右に振ってます。
予知夢のようなものの中で、
黒髪の女の子を見ていたそうらしいので、やっぱり違うのですかね。
その後、男性陣に担がれて、男の子は馬車の中に引き取られました。
メリーさんも同行します。
さて・・・そんじゃあ、あたしたちはスタンピード中のダンジョンアタックに行きますか!!
ケイジ
「おかしいな・・・。
オレのキャラ変わってないか・・・!?」
カラドック
「人は変わるんだよ、ケイジ・・・。」