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第四百五話 合流

<視点 リィナ>


・・・え!?

ここで実況解説役あたしですか!?


普通にケイジか麻衣ちゃんで良さそうな気もしますけど。

メリーさんなんか適役だと思うんですけどね。

魔物のスタンピードじゃあまり活躍できないと言ってたし。


・・・え、でもやっぱりあたしなんですね。

はぁ~い、わかりました、

勇者使いの荒い人たちですねぇ。


とりあえず、現状なんですが、

もはや地上に魔物の気配は感じません。

恐らくダンジョンの中は大変なことにはなっていると思います。

この辺には見た感じ、大型の魔物はいないようです。

たぶん、ダンジョンの出入り口から出てこれなかったんじゃないですかね?


それと・・・助けた獣人の少年・・・、

いえ、まだ助かったとは言えません。

傷口はタバサが完全に治したし、麻衣ちゃんとあたしで必死に腕は繋げました。

あ! もちろんくっつけるのはタバサの回復術頼みですよ。

意識が戻ってなかったおかげで暴れられることもなく、綺麗に繋げられたと思います。

・・・問題は・・・


 「あれ? メリーさん?」

手持ち無沙汰にしていたメリーさんが、ぐったりしている獣人の少年の顔を覗き込んでますね。

豹獣人かと思いましたけど、体毛が白いです。

雪豹ってやつでしょうか。

・・・あ、そう言えば、世界樹の女神さまが言っていた白い豹のような若い獣人て、彼のことですね!?


けど・・・冒険者にありがちな事件とは言ってましたけど、それ程大きな事は起きないって・・・

あの人、何言ってるんですかね!?

スタンピードは十分大きな事件でしょうに!!

あの人にとっては、スタンピードもどうでもいい話なんでしょうか?


それにしても、メリーさんが他人に興味深そうにするなんて珍しいと思います。


 「・・・雪豹の獣人?

 初めて見るわね・・・。」

 「メリーさん、獣人をモフる・・・いえ、興味ある人だったっけ?」

 「そういう訳じゃないのだけど・・・

 むしろ興味を持ったのは銀髪の方かしら・・・。」


 「ああ、メリーさんとおそろとか?」

 「そういうわけじゃ・・・そういえばそうね・・・。

 え、と、アガサ、ちょっと水を出してくれるかしら?

 ケガそのものは治ったんでしょうけど、自分の血やら返り血やらで汚れて可哀相だわ。」


・・・まだ彼は目を覚ましません。

それでもメリーさんは自分の膝に少年の頭を乗せ、

優しく顔や髪を拭いてあげてます。


とても優しく・・・あれ?

なんでしょう、この違和感。


メリーさんが・・・優しい?


ごめんなさい、

あたし、まだ自分の心の中に湧きあがった疑問の正体がなんだかわかりません。


いえ、メリーさんだって元は人間なんだから、

他人に優しくする姿を見せたって、おかしいことは何もない筈なのに、

あれ? なんだかもやもやする。

こういう時は麻衣ちゃんに頼ればいいんですが、

あたしと視線を合わせると、麻衣ちゃんも困ったような表情になりました。

あの子も何らかの違和感を感じてるみたいです。



 「それにしても酷い話だ・・・。」


一方、ケイジが心の底からの怒りの感情を撒き散らしていますね。

無理もないと思います。

あたしでさえこれは酷いと思いますもん。


 「ボロボロになってはいるが、これは貴族の従者が着るような服だね。

 冒険者のものじゃない。

 獣人の従者自体珍しいと思うけど、どうしてこんなところでたった一人で・・・。」


カラドックにもこの状況はわからないでしょうね。

見た感じ、この辺りは森や林が並んでいて、貴族がそこらにいそうな風でもありません。

これが冒険者とかなら、子供に近い年齢の人間がいたとしてもそんなおかしくは感じないのですが。



・・・あれ?


 「どうした、リィナ?」


・・・空耳じゃないですね・・・。


 「ケイジ、耳を澄まして。

 蹄の音と・・・これは馬車の音かな?」


 「なんだと!?」


間違いないようですね。

こっちを警戒しているのか、極力静かに馬を走らせているようですが、

人間相手じゃないんだから、馬もそんな言う事なんか聞いてくれないでしょう。


でも、こっちを警戒してるということは、

スタンピードか、そこまで詳しく把握してなくても、何らかの異常を知ってこちらにやってきたということでしょうか?


あ、先頭が見えてきましたね。


ん?

白銀の鎧に身を固めた・・・貴族?

いえ、貴族なら同じような装備の者を何人も従えているでしょう。

それが一騎で・・・あとは二台の馬車・・・。


あ、でも馬車は立派ですね。

紋章も旗もつけてないけど・・・これは。


 「そ、そこにいるのは・・・人間か!?

 スタンピードは!?」


おお!?

えらく端正な顔立ちの馬に乗ってますね!

やっぱり貴族の人でしょうか?


後ろの馬車には・・・お?

狐獣人の女の子?

それと・・・奥の馬車に弓を構えた冒険者風の・・・

あれ?

あの尖った耳とゆさゆさの胸元に見覚えが・・・。



 「・・・あれ?

 君たちは・・・アレン!?」


えっ、カラドックの知り合い!?


 「あっ!

 強大な魔力が立ち昇ったって聞いていたけど、さっきのはやっぱりカラドック、様・・・でしたか!」


 「ははは、冒険者同士でいるうちは敬語は必要ないと言ったろう、アレン。

 普通に喋ってくれて構わないよ?

 それよりこの状況を説明できるかい?」


 「あ、ああ、そ、それはもちろんだけど、

 こっちもそんなたくさんの情報は・・・

 むしろどうして君が・・・あっメリーさんも!!」



おや、この人、メリーさんもご存知なんでしょうか?

なら意外と早く状況を教えてもらえそうですね。


 「あら? 久しぶりね、アレン、

 その節はお世話になったわね、また会えて嬉しいわ。」

 「そ、それはこっちも・・・って、その膝元の少年・・・!

 無事だったのか!?」



そこへ急に馬車の扉が開きました。

飛び出してきたのは貴族のような出で立ちの子供の女の子です。

泣きはらしていたのか目が真っ赤で・・・。


 「ハギルウウウウウウウウウウウウっ!!」

 「えっ、ハギルが・・・生きているのですかっ!?」


後から出てきたのは女の子のお母さんでしょうか?

こちらは間違いなく貴族の出で立ち。

ということは、もしかしてこの方がこの土地の領主のアスターナ様でしょうか。


弾丸のように突っ込んできた女の子ですが、ケイジがやさしく捕まえます。


 「はっ、放してっ!

 ハギルは私のものよっ!!

 ハギルのところに行くのっ!!」

 

 「・・・慌てちゃダメだ。

 この少年は回復呪文を受けて傷がないように見えるが、

 死にかけなんだ・・・。

 動かしたりカラダを揺すったりするだけで、命の危険がある。

 もし彼に抱きつきたいんなら、優しく触れるだけにしておけ・・・。」


 「あっ・・・は、はい、・・・わ、わかりましたっ・・・。」



ケイジが努めて感情を表に出さないように喋ってますね・・・。

さすがにケイジも小さな子に大人げないマネはしないでしょう。

・・・小さな子には・・・。


 「あ、あなたたちがハギルを助けてくれたのですかっ!?

 そっ、それにこの氷の塊は・・・な、中に魔物の群れがこんなにもっ!?」

 

 「・・・あんたがこの獣人少年の主人か・・・!」

 「えっ、は、はい、そ、そうですが・・・。」


うわっ!

ヤバい、ケイジはこの人が領主様だってわからないのでしょうか!?

尻尾が逆立ってます!!

完全にケンカ売る気ですよ!!


アスターナ様も、ケイジの怒気を孕んだ声に戸惑いまくってます!!


そして止める間もなく、ケイジの口から怒涛のような怒鳴り声が。


 「何故こんな年端も行かない少年をたった一人で残したっ!!

 高貴な自分たちを守る為なら、獣人一人の命くらいどうでもいいとでも思っていやがるのかっ!!

 彼はオレたちが到着するまでたった一人でこの場で魔物を抑え続けて、

 腕を食いちぎられ、腹も裂かれて内臓が飛び出ていたんだぞ!!

 返答次第によってはあんたが女王の遠縁だろうとタダでは済まさんぞ!!」


 「ヒッ!?

 そっ、そ・・・そんな・・・っ!?」


あ、これいろいろとヤバそうなやつです・・・!





そうそう、新しい職場と言えば、

以前、デリヘルメリーさんで書いたあの職場ですよ。


職種は以前と違うはずなのに、なんでまた電話応対が業務に含まれているんだ?


・・・もうあんな電話かかってこないだろうな・・・。


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