第四百四話 どんな貴族にも後ろ暗いものはあるものです
ぶっくま、ありがとうございます!
ようやく社会人復帰です。
交通費をちょr・・・いえ、効率的な通勤ルートにしてますが、
職場まで小川が流れていて、鯉やカルガモ一家が優雅に泳いでいます。
夜の仮眠所は小さいながらも森の中にひっそりと建っている昭和建築のアパート・・・
周りにはまだ目撃していませんが今まで聞いたことのない怪鳥の鳴き声が・・・。
クエエエエエエエエエッ!!
あ、ちゃんと東京23区内の施設ですよ。
<視点 ミコノ>
いったい何が起こったというのでしょうか。
ミストレイさんの大きな声は聞こえてきましたけども、
辺りが一瞬にして明るくなったのは、馬車の中にいてもわかりました。
私達の馬車を御していた方も、アレン様ですら馬の歩みを止めて後ろを振り返ったまま。
「アレン様、い、今の光はなんですか!?
雷が鳴ってた気配も無かったと思いますが・・・。」
私達はまぶたをこすりながら、視力を回復させます。
光源からは、ある程度の距離があったせいからなのか、
この程度で済みましたが、
至近距離からあの光を浴びたら、しばらく視覚は使い物にならなかったでしょう。
念の為に空を見上げますが、今現在、怪しい雲行きなどありません。
先程の光はこの場にいる全員が目撃したはずです。
気のせいなどではありません。
何かの天体現象?
いえ、しかし日蝕とかなら暗くなるだけですし、
逆に一瞬だけ明るくなる現象など聞いたことがありません。
「い、いや、僕にもわからないな・・・。
ただ方向は、間違いなく、先程のスタンピードの辺りだよ。
それも・・・あの少年のいたところだ・・・。」
そこへ割り込むように声をかけてきたのは、後ろの馬車にいたライザです。
「あれ・・・途轍もない魔力を感じた・・・。
魔物が出せる魔力じゃ・・・ない。」
それは貴重な情報ですが、それだけではまだ何の判断もできません。
次にどうすればいいか、迷っていると、ライザにしては珍しい大声をあげたのです。
「っあ!
さっきより・・・もっと荒々しい・・・え?
違う!!
属性もわからない!
あ・・・これは水!?
そ、それに氷!!
あり得ない!!
なに、この異常な魔力は!?」
「ライザ! 悪いがもっとわかるようにしゃべってくれ!!」
い、いえ、アレン様の指摘はもっともですが、わたしにもライザの言いたいことはわかります。
・・・あ、ち、ちがいますね、分からないのが分かると言った方がいいのでしょうかね?
ですが判別不能なんです!!
先程から様々な属性の魔力が立て続けに・・・
ドッパアアアアアアアアアアン!!
ひぃっ!?
今度は何ですか!?
「やああああっ!?
なに、この爆発したみたいな音!!」
耳のいいオルベちゃんじゃなくても聞こえました!
なんでしょうね!?
火薬が爆発した音というより、巨大な波が岩肌に激突したような音にも聞こえました。
何が起きたのでしょうか。
まさか、スタンピードの中の魔物に魔法を使う高位の妖魔でもいたのでしょうか?
それなら完全に絶望的な状況となるわけですが・・・。
「でも、あの魔力・・・もしかしたら・・・カラドックの・・・。」
えっ!?
「何だって、ライザ!!
カラドックって・・・あのカラドック!?
さっきの魔力がカラドックのものだと言うのかい!?」
カラドック様と言えば、一時期、私達のパーティーにも参加していた精霊術士の方です。
確かに桁違いの魔力を持ってらっしゃる方でした。
「蒼い狼」という冒険者パーティーを探しにいかれるということでしたが、
あの方が国内に留まっていることなどないとは思うのですが・・・。
「あ・・・あの」
はっ!?
「あ! な、なんでしょう、アスターナ様!!」
「な、なぜ、馬車を止められたのですか・・・?
早く街へ戻らないと・・・。」
アスターナ様はまだ正気に戻ったとは言い難いようですが、
次に何をしなければならないのかという意識だけは保っているようです。
ただ・・・いま、こんな質問をするということは、
先程のまばゆい光や鼓膜を破りかねない轟音すらも、
上の空で気づいていなかったということなのでしょうか?
「恐れながらアスターナ様、
先ほどのスタンピードの地点で何者かが多大な魔力を解放したと思われます。」
「はい? た、多大な魔力・・・とは?」
アレン様の説明がアスターナ様の耳にちゃんと届いているのでしょうか?
いえ、聞こえてはいるんですよね。
でもそこから先へ何をどう考えていいのか、思考能力が著しく衰えていらっしゃるような・・・
「申し訳ありませんがわかりかねます・・・。
人間の魔術士が放ったものか、妖魔が存在していたのかもわかりません・・・。」
するとそこへ、先程から泣き叫び疲れてぐったりとしていたマデリーン嬢がこちらに這ってきました。
「も・・・戻って! ハギルの所に戻って!!
お願いっ!! 馬車をさっきのところへ戻すのっ!!」
「マデリーン! ハギルのことは諦めなさいと言ったでしょう!!
い、いまは私達が何を為すべきか考えるのです!!」
アスターナ様の言葉は正論の筈なのですが、
先程のご様子からして、深い熟慮が根底にあるようには思えません。
むしろ思考放棄というか、他のことを考える余裕すらないのでしょうか。
「いやだああああっ! 違うっ!
ハギルは生きてる!!
お母様っ!! お願い!! ハギルは絶対生きてるっ!!」
「聞き分けのない!!
チャンバス!! マデリーンを抑えておいてください!!」
「はっ、は、はい・・・お、お嬢さま・・・!」
とはいえ、この高齢の執事の方も、先ほどからずっとお嬢様を抑え続けていたのですよね。
いくら大人の男性でも、暴れ続ける女の子を抑え続けるのはカラダに相当な負担が掛っていると思うのですが・・・。
「お母様ぁっ! お願いっ!!
ハギルは死んでない!!
絵の中のおじいちゃまも言ってる!!
ハギルはっ、ハギルはまだ生きてるって言ってるのっ!!」
おや?
マデリーンお嬢様は何を言い出したのでしょうか?
「マ! マデリーン!!
お屋敷の外でその話をしてはいけないと言ったでしょうっ!!
これ以上、聞き分けがないとお尻を叩くことになりますよ!!」
マデリーン嬢が癇癪起こしたみたいに泣きわめいたままですが、
少し気になることが出てきましたね・・・。
あ、感情的になっているのはアスターナ様もですけども。
一度私は外のアレン様と視線を合わせます。
・・・やはりアレン様も同じ疑問を持ったようですね・・・。
アレン様の同意も得ました。
本来こんなところで足を止めてる場合ではないのですが、
自分たちの状況すら正確に理解できないのに、
魔物に対処するどころではございませんですものね。
意を決してアスターナ様に確かめてみましょうか?
「あ、あのう・・・」
「あっ、も、申し訳ありません、お見苦しいものを・・・。
どうか気になさらず、速やかに街へと戻ってください・・・!」
「あの・・・アスターナ様、
『絵の中のお爺様』とは・・・。」
その瞬間、アスターナ様のお顔が凍りついたように固まりました。
何か踏んではいけないものでも踏みつけてしまったかのように。
「なっ、なななななんのことだかわかわかわかりませんわあっ、
い、今しがたマデマデマデリーンの喋ったことですわよね?
マ、マデリーンの夢の中にでもでてきた話なのではないでしょうか・・・っ!」
・・・痛々しいくらいに狼狽えて・・・
ちょっと落ち着きましょう、アスターナ様。
お嬢様のお名前までまでがえて・・・いえ、お間違いになってらっしゃいますよ?
「アスターナ様・・・
失礼ですが・・・何か隠されておいでですか?」
「いいいいいいいいえいいいいいえっ!
なななにも隠してなどございませんっ!!
こっここたびのスススタンピードにはななんの関係もない事ですっ!!
そつそんなことより早く街に戻らないとっ!!」
アレン様はアスターナ様のお言葉が聞こえなかったのでしょうか。
いえ、これは聞こえない振りですね、
独り言でも呟くかのように、後ろを振り返ったのです。
「一度・・・さっきの場所へ戻ってみようか?」
あっ、
アレン様・・・さすがにそれは危なすぎませんか!?
「なっ!?
何を仰っているのですか!!
Bランクの冒険者がスタンピードの危険性を理解できないとでもいうのですかっ!!」
ですよね?
アレン様の提案は、アスターナ様に受け入れられる発言ではありません。
ちょっとアスターナ様のご家庭に、何か秘密の曰くがありそうな事態ではありますが、
ただいま、私たちが向き合うべき優先順位の筆頭が、
スタンピードの対処であることには何の変わりもない筈です。
ただ・・・アレン様の思い付きって、結構いい方向に転ぶことが多いのですよね。
ですので、私とアレン様とで意見が異なる事は、これまでにも勿論あるのですが、
それでパーティー内で諍いになることも空気が悪くなったこともございません。
結果的に状況が好転してるのがほとんどですし、
その後もアレン様は私に気遣いの一言を欠かすこともございません。
なので私はアレン様の元を離れられないのです♡
「いえ・・・アスターナ様、
先ほどから魔物の喧騒が全く聞こえてきません・・・。
なにか・・・僕らにも想像もつかないことがおきているようです。」
下書き尽きました・・・。
下着が尽きたんじゃないですからね?
そこ勘違いしないでくださいね。
明日明後日初お休みなので書き溜めて見せます・・・!