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第四話 ぼっち妖魔、異世界に辿り着く

さっそく評価いただきました!

ありがとうございます!!

<視点 伊藤麻衣>


なんか頭に衝撃が来た。

窓ガラスが割れたような大きな音も聞こえたけども、やっぱり自分のカラダに起きたことの方が重要だ。


カラダが吹っ飛ぶ。

それ以上は何も知覚できない。

急に目の前が真っ白になったからだ・・・。

みんなの騒ぎ声が聞こえたような気もしたけど、すぐに何も聞こえなくなった。


それでも何故かあたしの頭の中で一つの言葉が浮かんだ。


 「またあたしか・・・。」


それが理解できた理由を考えるまではできなかった。

すぐに意識が薄くなったからだ。


自分は死んじゃったのかなと、自然に考えれるようになったのは、ようやく周りの景色に色が戻り始め、自分の思考能力を取り戻してからだ・・・。


と言っても、何がどうなったのかすぐに理解できたはずもない。


さっきまで教室の中にいたはずだ。

ここはどう見ても屋外・・・。

屋外というか視界の中に人工の建物が何もない。

山の中? 林の中? 

ていうか見渡す限りの平原・・・?

うーん、真っ平というわけでなくなだらかな傾斜があちこちに・・・。

木々が密集した林やあたしの身長を超えるような茂みが無数にある。

なにがどうしてこんな所に・・・?


挿絵(By みてみん)

あたしは自分の最後の記憶を辿る・・・


 「確か左の頭に・・・。」


衝撃はあったけど痛みは何もないんだよね?

それに奇妙なのは、

「このあたし」に何の予兆も感じさせなかったことだ。

誰かの悪意や、身の危険に及ぶような事態なら、あたしの「能力」に引っかかるはずなんだけど・・・。


そして・・・


 「・・・ある。」


間違いじゃない。

左手が頭に刺さってる矢のようなものに触れた。


 「これはなに・・・!?」


触れるだけだよ。

頭に直に刺さってるこんなものに迂闊に動かしたら脳みその危機だ。

頭蓋骨で留まってることを真に願う。

一応、今現在間違いなく生きていて、カラダも動くし、考えることもできるし、声も出る。

現状でできることをしなければ!


そんな時だ。

 ピンポーン!


頭の中で電子音が聞こえた。

 「は!?」

なにこれ?

鼓膜から聞こえた音じゃないよ?

テレパシー? とも違うようだ。


続いて目の前に文字が浮かぶ。

 「え? え?」


思わず手を持ち上げ、その文字を下から指で掬いあげようとするが空振りだ。

文字に触ることができない。

なんというか、VR画面で見た物に生身の手で触ろうとして、かすりもしなかったような感覚か。

そしてその文字とは・・・


 『メッセージが届いています』


マジですか・・・。

なんか思いっきりとんでもないことに巻き込まれた気がする・・・。


どうしていいのかしばらく判断できずにいたけど、もう一度指を伸ばしてみることにしよう。

今度は下から物をかっさらうような動きでなく、キーボードに指を触れるような感じで、文字の上から・・・


すると目の前の文字が・・・

っていうか、画面が切り替わったような感じに文字が一新された。

パソコン画面のような文字がダラダラダラっと羅列されたのだ。


そこには・・・


 『突然のメールを失礼します。

 主人がオオアリクイに殺されて一年が過ぎました。』


 「は?」

思わず声が出てしまった。

なんで突然オオアリクイ?

ところが次の文面がまたガラリと変わる。


 『ああ、じゃなかった、間違えました。

 コピペする文面間違えました。

 オオアリクイの件は忘れてください。』


 「いや、普通に文章削除しようよ。」

ていうか、こんな文面なんで保存してんの?


 『伊藤麻衣様、はじめまして。

 突然ですが、厳正なる抽選の結果、

 あなたは異世界に転移することになりました!』


 「なんだとぉ!? 異世界ぃぃ!?」


あらためて周りを見回すけども、それを判断できる材料が何もない。

草や木々の種類なんかそんな詳しくないしね。

近所じゃないのは当たり前にわかるけども、日本国内でも場所場所で動植物の種類なんてまちまちだ。

 

 『まず、麻衣様の頭に矢が刺さっているかとは思いますが』


そうだ、

思わず再び左手でそっと矢に触れる・・・。


 『その矢は、転移者の目印のようなマーカーの機能を担うものだけに過ぎず、麻衣様の身体には何のダメージもありません。』


 「ホントに!? 信じるよ!?」

よく考えると、ただの文字であるメッセージに話しかけても意味はないんだけど、動揺しているせいだろう、あたしは間抜けみたいな声を出し続けていた。

周りに人がいなくて本当に良かった。


 『それで今現在、見た目にあまりよろしくないと思いますが、矢の方は体の細胞組織に溶けるような仕様となっていますので、一日もすれば完全に消えてなくなります。

 もちろん、体組織に溶け込んでも一切の害はありません。』


つまり無機物の人形とかだったら刺さったままというわけか。

そちらも問題はない。

強引に引き抜けばいいからだ。

人間の身体でそれをやったら怖い気がするけども。


あれ?

ていうか、なんで人形の話なんか出すんだろうね、あたしったら?

まぁ、いいや、次行きましょう、次。


 『次にご説明いたしますのは、

 いま、貴女が存在するその世界が地球とは全く異なる別世界と言う事です。』

 「・・・いきなりそんなこと言われて信じろっていうの・・・。」


あたしはため息をついた。

でも今はそれを否定も肯定もできない。


 『ぶっちゃけると、そこはいわゆる剣と魔法のファンタジー世界です。』

 「ぶっちゃけ過ぎるよ!!」


とは言っても、あたしはあんまり詳しくない。

クラスの友人の何人かがハマっているので、世間話程度に聞いたことがあるだけだ。

もっと詳しく聞いておけばよかった。


え? ちゃ、ちゃんと友人ですよ?

そ、そんなに親しくはないけど・・・うん。


 『まず「ステータスウィンドウ」と唱えてみてください。』


え・・・マジ?

 「ス・・・ステータスウィンドウ!」


その瞬間、目の前にもう一つの画面?が新たに浮かび上がった。


絶句・・・。

これは疑いようがないところまできたのかもしれない。

そこには大きくあたしの名前が書かれていた・・・。


  伊藤麻衣 15才 女性 (状態 通常)

  レベル3

  種族・・・半妖(妖魔、ヒューマン)

  職業・・・なし

  適性職業 召喚士、鑑定士、巫女・・・


ふわぁぁあ!?

あたしの正体バレてる?


その後は、本当にゲームみたいにあたしのHPだかMPだかのステータスが並んでた。

MPだけかっとんでる以外は平均的な数字っぽい。

たぶん、この世界の人間と大差ないのではないだろうか?

・・・って、ここ人間ちゃんといるのかな?


その後に続いている文字は「取得スキル」とやらだ。

・・・そこには心当たりのある単語が並んでいる。


「鳥獣召喚」、「危険察知」、「物品鑑定」、「遠隔透視」、「未来視」、「精神障壁」、「妖魔変化」・・・「この子に七つのお祝いを」? 


なるほど・・・これらは確かにあたしが持っている能力だ。

でも、最後のは何だろう?

さっきのメッセージは「剣と魔法」と言ってはいたけど、あたしは剣も魔法も使えない。

その代わりに特殊能力は持っている。

このスキルを使ってどうにかしろということか。


 『システムはいたって簡単です。

 魔物や人間と戦って勝利すると、レベルが上がったりスキルポイントが入ります。

 職業がないままでもポイントは入ります。

 特定の職業に就くと、レベルに応じて新しいスキルが取得可能になります。

 実際のスキルはスキルポイントを消費して取得されます。』


バトるんですか?

あたし、人畜無害の一般的などこにでもいるか弱い女子校生なんですけど。

 

 『職業は街の冒険者ギルドにいけば、自分のジョブを固定したり変えたりできます。

 一つの職業に定めてその深奥を極めるも良し、

 いくつもの職業を転職し、スキルを増やしていくのも良し、戦略はあなた次第です。』


あんまりそういうゲーム得意じゃないんだよね?

 

 『なお、スキルの種類には、

 職業の熟練によって入手できるものと、

 種族特性や進化によって入手できるものがあります。

 その場合、レベルアップと共に取得可能リストが更新表示され、

 職業と同様にスキルポイント消費によって取得できるようになります。』


いま、あたしが身に付けてるスキルって、どっちかというと、種族特性で身に付けたものってとこなのかな?

それとも元の世界でも使えたスキルは、この世界のルールの対象外という事なんだろうか?


あと、鑑定って、自分の事に関しても分かるのだろうか?

試しにスキル「鳥獣召喚」の文字に指を這わせてみた。

「鑑定!」と読み上げないといけないのかと思ったけど、ポップアップウィンドウみたいに「鳥獣召喚」の文字の上に、吹き出しに入った説明文が浮かび上がった。


『召喚士Lv.1、

スキルポイント50消費で覚えられる。

契約に成功した獣類または鳥類を召喚できる。

爬虫類も可能。

召喚できる動物の強さや個数は自らの魔力に比例する。』


契約ねぇ・・・?

そんなものした覚えないけど・・・

呼び出せそうなものには心当たりある・・・。



そもそもこの世界であたしは何をすればいいんだろう?

よく魔王を倒せとか言うんだろうけど、どっちかというとあたしは魔王側じゃなかったっけ?


メッセージに文句言っても仕方ないのだけど、あたしは早急に確認したいことがある。


すなわち、元の世界へ帰る方法と、

ここで何をすべきなのかと。

そしてもっと気になるのは、

このゲームのようなシステムの世界で死んだら、あたしは普通に死んでしまうのか?

最低でもそれらだけは確認したかった。


けれどメッセージは非情だったと言わざるを得ない。

それらに関する記述はついに現れなかった・・・。

諦めろんということだろう。

なら気を取り直して次の話に進むしかない。


 『スキルの中にはユニークスキルというものがあります。

 これは誰でも覚えられるものでもなく、なんの法則性もありません。

 今回、伊藤麻衣様の転移に特別に与えられたスキルが一つあります。』


ユニークスキル? 

もしかして「この子に七つのお祝いを」ってやつ?

「かごめかごめ」の歌詞に似てるのは何か意味があるのかな・・・。


 『麻衣様に与えられたユニークスキルは、一見、支援系スキルに見えるでしょうが、

 実際は攻撃補助系として使える超極悪スキルです。

 レベルが低いうちは気休め程度の効果ですが、

 巫女系職業のレベルをアップさせると、とんでもないチートスキルとなります。

 これは元の世界で攻撃力を持たない麻衣様への配慮と思って頂いて構いません。』


そ、それは有難く・・・。

でも字面がかなりやばそう・・・。



 『それでは説明はこの辺にして、実際に戦ってみましょう。』

 「なんて!?」


 『危険察知を使ってみてください。』


あ、スキルの方か、ってどうやって使うの?

技の名前を口に出せばいいの?

それともいつものように心を鎮めて・・・


あ、いつものやり方で良かったのか、

あたしの脳裏に一匹の・・・一羽っていうんだっけ?

真っ白なウサギの姿が浮かび上がった・・・。


なんかやたらと凶悪な顔つきなんだけど・・・。

角生えてるし・・・。


 『ホーンラビットです。

 戦闘力はさほどでもありませんが、

 ダッシュのスピードと角による突進攻撃の威力は侮れません。

 急所を貫かれると命にかかわります。』


 「ちょーっ!!」


肉眼で確認すると、向こうの丘から一羽の兎がこっちに飛び跳ねてくるのが見えた。

間違いなく角が生えている。

だいたい、なんでメッセージのくせしてこっちの状況がわかるのよ!?


 「や、やめてよ、あたし武器も何にも持ってないのに!!」


泣き言吐いても誰も助けてくれる人はいない。

そ、そうだ、今使えるのは召喚術。

本当にできるのかどうかわからないけど、試すのも今しかない。

兎はみるみる目前に迫ってきた。


ウサギって草食でしょ?

なんで攻撃されてもないのにこっちに向かってくるのよ?


躊躇ってる時間はない!

あたしが呼べるものものといったら・・・。


 「しょ、召喚・・・蛇さん!!」


その瞬間、あたしの足元に白く光る円周のようなものが現れた!

魔法陣のようなものなのか、その中央に鮮やかな緑色の胴体をもった蛇さんがとぐろを巻いていた!


あたしと目が合う。

意図的に呼ぶのは初めてだけど、たぶん成功したんだろう。

目と目で通じ合った気がした。

 「あの兎をやっつけて!!」


すぐに緑の蛇さんは鎌首をもたげ、後ろの兎をロックオンしたようだ。

舌先をチロチロひっきりなしに動かし威嚇行動を取る。

対する兎も接近を急停止して警戒しはじめたようだ。


 「キーッ!」

 「シャーッ!!」


凶悪な目をたたえたホーンラビットが突っ込む!

対して緑の蛇は、鮮やかな動きで兎の動きをかわす!

その際、兎の身体に牙を突き立てることに成功したのか、兎の白い毛が宙に舞い上がる。

と言ってもかすり傷程度だろう。

ダメージはなさそうだ。


体格の違いからはどちらが有利か判断できない。

兎のあの角に貫かれたら蛇さんと言えども致命の一撃になるだろうし、

蛇さんの鋭い牙で兎の喉元でも穿てば、それでも勝負は決まると思う。


あ・・・そう言えばあの蛇さんて・・・?


一進一退の攻防が続いていたかに見えたけども、ホーンラビットの動きがどんどん鈍くなっていく。

口から泡も吹いているようだ。

やっぱり、あの蛇さん毒持ちだったみたいだね。

動きがままならなくなったホーンラビットに、緑色の胴体を巻き付けて完全にその体の自由を奪う!


もはやホーンラビットの赤い瞳には捕食者のそれではなく、絶望の色しか映していない・・・。

蛇さんは勝利の勝鬨を上げる代わりに、その顎をめっちゃ拡げてホーンラビットの頭にかぶせてゆく。


えーと、食べるのはいいけど、

角大丈夫?

消化できる?

胃とか食道に刺さったりしない?


蛇さんは一度こちらに視線を向け、尻尾を振って「大丈夫です」と言いたげだ。

うん、きっとそう言ってるんだろう。

そう思うことにする。


しばらくすると、綺麗にホーンラビットを飲み込んだ。

蛇さんの首の下がラグビーボールでも入っているかのように膨らんでいる。

しばらく食事しなくて良さそうだね。

メッセージ画面に意識を向けると続きの文章が書いてあった。


 『無事に魔物をクリアしましたか?

 魔物で一番最弱の、ホーンラビットかスライムが相手だったはずです。

 街へ行って、魔物の死体や魔石を売るとお小遣い程度にはなりますので、忘れずに回収しましょうね?』


 「え?」

思わず蛇さんに視線を向けると、

向こうも「え? 聞いてませんよ?」

とでも反応したような気がする。

ま、まぁ、蛇さんに罪はないよ・・・うん。

大丈夫、そんな今更吐けなんて言わないよ、大丈夫・・・。


その時、目の前のステータスウィンドウに文字が流れた。


『レベルアップしました!』

『レベルアップしました!』

『レベルが5になりました!』


こうなるのか・・・。


あたしはその後、蛇さんにお礼を言ったら、召喚時と同じ光に包まれてどこかへ帰っていった・・・。

またよろしくね・・・。


 『では街に向かいましょう。

 冒険者登録を行えば、いろいろな知識も手に入るし、お金も稼ぎやすくなります。

 パーティーを組むのもいいですね!』




<ステータス画面>


伊藤麻衣

レベル5

スキルポイント50取得

トータルポイント1750 

取得可能スキル 爪格闘術、吸血、ステータス隠蔽、昆虫召喚


次回はメリーさんの出番です。

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