第三百九十七話 カラドック、勝利を誓う
前回タイトル入れ忘れました。もう対応済みです。
そして今回、ほんわか路線です。
・・・いえ、嘘です。
もしかしたらホラー。
詳細は後書きに。
そして今のうちに画像アップ。
カラドックが初めてタバサやアガサと出会った酒場。
VRoid Studioはポーズを付けられるけど3Dオブジェクト置けないし、
VRM Live Viwerは3Dオブジェクト置けるけどポーズは自由に組めないし。
無理やりくっつけたのでお粗末な部分は気にしないでください。
<視点 カラドック>
・・・気のせいだろうか、
随分と久しぶりな気がする。
いや・・・何がと言われても困るんだけどね。
どうも意図的に私が話す機会を削られているようだ。
理由はだいたい見当がついている。
変に気を回す方もいるかもしれないが、いたって真面目な理由だよ。
私に語らせると面白みがないとか、
女の子出した方が受けがいいだろうとか、そんな話じゃない。
誰かが考えそうなことだけど。
ああ、今の状況を話すべきだろうね。
本来なら、もっと事前の準備や段取りをしっかり整えて出発するべきなんだけど、
日増しに強くなっていく邪龍の瘴気を前に、
応急処置に過ぎない光結界ではいつか限界を迎える。
しかも、結界を張ることもできない周辺の村落の被害は増える一方だ。
もちろん彼らが一時的に大きな町に避難することは可能だが、
それも備蓄食料に限界がある。
一刻も早く邪龍をどうにかしないといけないわけだ。
そこでタバサによる宮殿の結界が完成した翌日、
つまり今日、たった今、私達はラプラスの長馬車に乗ってローゼンベルクという街に向かっている。
・・・普通に宮殿の馬車でも一日程度で辿り着ける距離だというが、
今やそれすらの時間も惜しい。
ラプラスの方は、女神様から私達に協力するよう言われているので、
このまま邪龍のところまでと、その帰りも私達を運んでくれるようだ。
「協力は致しますが、対価は頂きたいですな。
もちろん報酬の出どころは、グリフィス公国だろうと国家連合だろうと、冒険者ギルドだろうと一向に構いませんが。」
その辺はマルゴット女王がしっかり手配してくれるとのことだ。
ラプラスは私達のパーティーの一員ではないが、その協力者としての扱いになるという。
しかし一気に事態が変化したな。
周りの状況もそうだが、メンバーの戦力アップも無視できない。
私達異世界からの転移組に変化はないのだけど・・・
いや、麻衣さんがまだ手札を伏せていたのは驚いたけど、
麻衣さん自身は特に強くなったわけでもないという。
・・・まだ何か隠しているのだろうか・・・。
まずタバサとアガサのクラスアップが大きい。
既に冒険者ギルドの基準では、ソロで二人ともSランク認定されてもおかしくない。
深淵の黒珠の奪還と、魔人討伐が冒険者ギルドの依頼だったならば、
間違いなくパーティーごと、昇格していたであろう。
・・・まぁ、
本来の予定だと、邪龍討伐軍結成のお披露目式に、私達もその象徴として参加させ、
その場の席で、グリフィス公国のギルドマスター、ヴァルトバイスにSランク認定させようとしていたらしいのだけど、状況変わっちゃったからね。
ただ、アガサにしてもタバサにしても、まだ職業レベルがアップしてないおかげで、
その他のスキルが取得できていないのだ。
これはもう、邪龍到達寸前までに戦闘を繰り返して手に入れるしかない。
それらのスキルを活かした連携の醸成も含めてね。
・・・それが私の役目でもあるのだが・・・うわぁ、ハードだ。
ヨルさんの魔闘法exは順調に見える。
宮殿の騎士団に借りたミスリルの槍は魔力伝導率に優れ、
着実にヨルさんもスキルに慣れ始めた。
これは彼女自身のセンスもあるのだろう。
あとはローゼンベルクの街で新しい武器を手に入れるだけ。
反してリィナちゃんは苦労しているようだ。
天叢雲剣の更なる能力の引き出し方・・・。
理屈ではわかっていても感覚が掴めないのだろう。
お手本もないからな・・・。
「そういえば、リィナちゃんは職業設定を勇者にしてるけど、
身につけられるスキルってあるのかい?」
実はこれ、以前聞いたセリフ。
そして返ってきた答えがこちら。
「あー、特に勇者にはレベルアップで獲得できるスキルがないみたいなんだ。
でも、勇者の職業設定とともに、
取得経験値倍、クリティカル発生率大幅上昇、対BOSS戦特効がつくんだって。
ちなみに最後の二つは職業レベルアップとともに、補正率が加算されていくみたい。」
・・・頼もしい・・・。
それでケイジだ。
あいつめ、ここに来て上級職に転職しやがった。
しかも獣騎士とかいう格好いいレアジョブ。
この世界の社会情勢次第では、もっと一般的に広まっていてもいいジョブなのかもしれない。
恐らく騎士からの派生職である、重騎士、軽騎士、弓騎士に相当するランクだろう。
それ以上だと、いわゆる英雄職の扱いだ。
適性がないと就けない聖騎士や黒騎士もこの英雄職内に位置づけられる。
ちなみに個人技に特化すると、騎士からソードマスター、剣聖へと続くのだとか。
まぁその獣騎士職のランクなら、普通の国で部隊長、軍団長を任されてもおかしくない。
ケイジの話によると、獣人の一団には大幅なバフがかかるそうだから、
獣人の国や軍団を率いたとなれば、引く手あまたの職業になるだろう。
・・・ただアガサやタバサと同じく、こちらも戦闘して職業レベルをアップさせたり、
新しいスキルを手に入れねばならない。
・・・本音を言うと全部投げ出したくなる。
私は本来、この世界にとってアウトサイダーに過ぎない筈なんだけどな。
マルゴット女王やリィナちゃん、
・・・それにケイジの件があるから積極的に関わっているけども、
もはや私の立ち位置は「協力者」で収まるものでないと思う。
個人的事情は置いておくとしても、「蒼い狼」に参加した時は、
ここまで大それた話になると思っていなかったんだから、仕方ないといえば仕方ないけども。
冒険者パーティー「蒼い狼」が受けた依頼は全てクリアした筈なのに、
いつの間にかこの世界全ての命運を懸けられてしまった。
・・・・釈然としないものもあるのだが、
どうも今も私の耳元で誰かがささやいている気がする。
『その代わり、元の世界に戻っても、お前が未来のことで心を悩ます必要はない』
・・・ふっ、と辺りを振り返るも、
この馬車の中にいるのはパーティーメンバーだけだ。
うん、部外者など誰もいない。
麻衣さんも何も感じていないようだし、メリーさんも静かに目を閉じている。
「カラドックさん、どうかしたんですか?」
その麻衣さんが私の視線に気づいたようだ。
「あ、いや、何でもないよ。
ちょっと物思いに耽っていてね・・・。」
「ううううっ! カラドックゥゥ!!
ヨル以外の女の子に色目を使うなんてぇぇ!!
カラダが寂しいのならヨルがいくらでも奉仕するのにぃぃぃっ!!」
色目は使ってないし何も寂しくない。
「・・・えっ、カラドックさん、こ、困るな・・・
妻子ある人と・・・そ、そんな・・・。」
麻衣さん、ふざけてやってるでしょ。
いけないな、悪い女の遊びを覚えかけているのかもしれない。
・・・ふぅ、と腰を落ち着ける。
この場で最大の感知能力を持つ二人が何も気づいていないなら、
私の気のせいだろう。
・・・まぁ、仮に誰かが本当に傍にいたとして、
私に害があるわけでもない。
だから私は心の中に語りかける。
『無事に「役目」は果たしますよ・・・』と。
「・・・心なしかカラドックさん、嬉しそうですね?」
麻衣さんがまだ私の反応を窺っていたようだ。
もしかして私の顔は綻んでいたのかな。
「うん? そうかい?
・・・そうかもしれないね。」
「何かいい事でも?」
「いやいや、なんとなくこの先、負ける気がしなくなってね。」
ケイジも何か感じたのだろうか。
「なんだ、カラドック?
全てが終わったようなツラをするにはまだ早いぞ?
お前には最後まで役に立ってもらうからな。」
「ああ、ケイジ、
私の役目はこのパーティーの軍師だからね、
パーティーリーダーの君でもこき使ってやるさ。」
「フン、上等だ・・・。」
鼻を鳴らしてるようだが、お前も口元が緩んでいるぞ、ケイジ。
まぁ、さすがにリィナちゃんとミュラの件には介入しないからな。
そこまで私も野暮じゃない。
最悪寝取られても、強く生きて行けよ。
「・・・今なんか、背中に寒気が・・・。」
気にしたら負けだぞ。
懐かしい誰かがまた私に語りかけたようだ。
『すまないな』
・・・いいえ、あなたの息子ですからね。
冒頭のカラドックの思わせぶりなコメントはスルーしましょう。
おまけ
今回の物語、私の処女作品を意識しています。
ネットには転がっていません(確か上げてない筈)。
学生時代にサークルの機関紙に載せた短編四部作の一つ。
緒沢美香、及びタケルの失踪、
そして彼らの幼馴染でもある白鳥さんが、二人の行方を追い求めるストーリーなのですが、
手掛かりが何もなく、事件の関係者は口を噤み、
最初は協力的だった者も、誰かに脅されたかでもしたかのように態度を変える。
そのうち主人公である白鳥の身の回りにも不思議な出来事や、
気味の悪い現象が起き始める。
運転席が見えない車に追い回されたりとか、
誰も侵入した形跡のない自分の家の中の家具の配置が変わっている、
自分の家だけ停電、そしてすぐに復帰。
数日後、さらには部屋の中には何も見えないのに、
自分の目の前で、ベッドの一部分が、
まるで誰かが座ったかのようにベッコリとへこみはじめる・・・。
ついに精神の限界に達した白鳥さんが最後に頼ったのは、緒沢姉弟の最後の家族。
(最初の設定では彼らは三姉弟)
そして彼が主人公に明かす驚愕の事実。
すなわち古代から続く大地の神と天空の神々との長きにわたる争い・・・
それに自分たちは巻き込まれただけだ。
だから人間に出来ることは何もない。
死にたくなければ何もするな。
彼らは全知全能だ。
隠し事は出来ないし、彼らの目を欺くこともできない。
時間も距離も意味をなさない。
今も我々の横で、仲の良い友人のようにこの会話を聞いているのかもしれない。
それでも我々は、彼らの存在を知覚できないのだ。
彼らが自らの姿を見せようとしない限り。
そして・・・絶望した白鳥さんが・・・大雨の中、車を走らせると、
バックミラーの中の後部座席に、
胎児のような生き物が運転席に向かって・・・
その後・・・高速道路で自損事故を起こし、
大破した車の中には・・・
というストーリーです。
今作とは何の関係もありませんが、
強いて言えば「白いリリス」、
すなわち百合子ママが夫の伊藤さんを食い殺してしまう世界の物語。
「少年」ことシリスは、初めてそこで自らの姿を現すことに。
さて、次回より新展開。
と言ってもメインストーリーにはあまり影響を与えません。
とある貴族の一家、
そこに仕える一人の獣人少年。
ゲストで過去に登場した人達も。