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第三百九十六話 獣騎士

・・・タイトル入れ忘れた・・・

<視点 ケイジ>


力を込めて剣を振るう。

的確に盾を合わせてきた。

弾かれる剣の柄を握り直し、別の角度から打ち払う。

これも剣の方で防いでみせたが、足が止まっているぞ。

狼獣人の敏捷性についてこれるか?


お?

目では反応できたようだが、カラダがついてきていない。

驚愕の表情を浮かべているな。

まぁ、必死に体勢を合わせようとしたところで・・・



足払い!!

 「うっ!? うわあああああっ!!」


派手にすっ転んだな。

そしてオレはヤツの喉元に剣先を突きつける。


 「それまで!!」



騎士団長ブレオボリスが終了の合図を叫ぶ。


こんなところだろう。

オレは刃を潰した練習用の剣を左手に持ち、空いた手でコンラッドに手を伸ばす。


 「あ、いたた・・・。

 まだ敵いませんでしたか・・・。」


 「お前、オレは常に実戦で魔物と戦っているんだぞ?

 それこそ、コンラッドに勝たれたらオレの立場がないんだが・・・。」


 「しかしケイジ様の動きに反応はできてましたな。

 まだまだコンラッド様の成長は期待できそうです。」

 「そうだな、

 以前とは動きが見違えるようだった・・・。」


そこでようやくコンラッドの表情が明るくなった。

 「カラダが出来上がってきたんで重騎士職に就いたんです。

 それこそ実戦がないんでレベルも低いですが、

 防御に関しては、かなり自信は出てきたんですけどね・・・。」


 「お前・・・この国の第一王子が・・・

 いや、重騎士・・・有りっちゃあ有りか。」


この世界では隣国との小競り合いはしょっちゅうある。

そして王族や大物領主の跡取りが戦場に出ることも珍しくはない。

味方の士気を上げるのは勿論だが、政治的な名目を立てるためにもな。

ただそれでも、そんな身分の者が先陣を切って敵に殴りこむなんて出来る筈がない。

そう考えると、防御力が跳ねあがる重騎士という選択は悪くないように見える。



特に重騎士職で身につけることが出来るパリィは、技が決まると敵の動きを一瞬止めるスタン効果を持っている。

その隙に攻撃かけられる仲間と連携できると、有用性は高い職業と言えるだろう。

・・・対人限定効果なのが痛いんだがな。


 「コンラッド様の課題と目標はいつも申しておりますので、

 今はケイジ様の方ですかな?」


あ?

ブレオボリスの野郎、何言ってやがる。

オレは終始コンラッドを圧倒してみせたが何か問題あったか?

もちろん全力ではないが、手を抜いたというわけではない。

わかりやすく言えば、殺すつもりで戦ってないという意味だ。


 「いえ、隙らしい隙もございません、

 動きもかつて見た時より洗練されているでしょう。

 ですが、見違えるほどの成長とは言えないのでは・・・?」


 「この野郎・・・

 オレのレベル知ってるだろ・・・。

 そう簡単に伸びるもんか・・・。」


ズルと言えばズルだが、オレのレベルは前世の経験値込みの数字だ。

この世の誰よりレベルは上回っているが、その分伸びしろも少ないのだ。


 「いえ、レベルはその通りでしょう、

 ですが近接系職業は剣士、騎士職以外にもあるのでは?

 別系統の職業に就いて職業レベルをあげたり他のスキルを覚えたりとかするべきでは?」


 「・・・む、

 これまで金に余裕なかったからな・・・、

 別の武器を用意するのも荷物がかさばって移動の効率が悪い。

 となると、別の職に就くのもな・・・。

 聖騎士とか黒騎士みたいな上位職にも就けるわけでもないし・・・。」


ただでさえ、弓矢一式が場所を取る。

まぁ、今は麻衣さんのマジック巾着袋があるから楽は出来るんだが。


 「ああ、冒険者だとそこまで余裕はないのでしたか、

 これは失礼いたしました。

 ・・・しかし周りの方は、レアな職業に就いているばかりなのは・・・。」


えっ・・・と、精霊術士、召喚士、魔導士、大僧正、魔戦士・・・そんで勇者な!

ああ!

オレだけ平凡な騎士職だってことかよ!

ホントに一言多いな!!


ちなみに聖騎士になるには光属性への適性が必要だと言われている。

魔力量はそれほど重要ではないらしい。

なので一般的な強さの話として、レベル30の騎士と同じレベル30の聖騎士が戦って必ず聖騎士が勝つという訳でもない。

ただ上級職なだけあってステータスの伸びは聖騎士の方が有利だそうだ。

それと絶対数が少ないので、聖騎士は各国多くそろえた方が周りの目を惹きやすい。

反対に黒騎士は闇属性。

兵として運用する場合、もちろん部隊に組み込まれることもあるが、

その真価は単騎において顕著に発揮される。

なのでこちらは数を揃える必要はなく、その意味でやはり一般的に騎士が憧れる職業ではない。


そしてオレはどちらにも適性はないというわけだ。


 「ではケイジ兄様は職業上も、これ以上の伸びは難しいということですか?」

オレの心を抉るな、コンラッド。


 「今のメンバーで冒険者を続けるならそうだろうな。

 アーチャー系に転職できないこともないが、

 術士がこれだけ揃ってるなら前衛職の必要性の方が高い。」


確かに正直、パーティー内でオレの役目って盾役に近いんだよな。

そう考えると重騎士に就くのもいいんだが、

それなら狼獣人の敏捷性という売りを放棄することになる。

今の騎士職でさえ、敏捷性には若干のマイナス補正が入っている。

これ以上敏捷性を蔑ろにするわけにはいかない。

今現在反則的なレベルがあるからパワーもそこそこあるが、

本来オレはパワータイプのアタッカーではないのだ。


 「あ・・・あの。」


そこで少し離れた場所でオレたちの練習を見学していた麻衣さんから声がかかった。


 「うん? どうかしたかい?」

今回の訓練はこれで終わりでいいだろう。

オレは練習で使った革の防具を取り外しながら、麻衣さんの方を向く。


 「ケイジさんて・・・最近ご自分のステータス画面チェックしました?」



・・・そう言えば見た覚えないな・・・。

レベルも上がらなければ、何も変化することはないと思ってたしな。

悪魔や鬼人戦ではほとんど貢献できなかったし。


女神から加護を貰ったわけでもないし、

何も変化はないはずだ。


 「いや・・・見ていない。」


 「え、えっと、じゃあ、適性職業にあたしが知らないジョブがあると言っても・・・。」


 「なんだって?」


オレは慌ててステータス画面を拡げる。

まさかだよな?


適性職業・・・剣士、騎士、狩人、狙撃士・・・、



狙撃士ってのは狩人から派生する職業で、

命中率に多大な補正がかかるが、敏捷性にマイナス効果があるんで見送っていた職業・・・。


まぁそれはいい・・・。

オレの記憶だとここまでだったはずなんだが、その次が増えている・・・。


 「獣騎士・・・え、なにこれ?」



 「え!?

 ケイジ兄様、新しいジョブですか!?」


ちょっと待った!?

いつの間にそんなジョブが増えたんだ!?


 「あ・・・やっぱりケイジさん、気づいてなかったんですね・・・。」


 「獣騎士?

 初めて聞きますな・・・。

 いや、そもそも獣人が騎士職に就くことなど稀でしょうから・・・。」


オレはステータス画面のその職業欄に指を這わす。

 「・・・獣人のみが就ける種族職業・・・。

 生命力、力、敏捷性、耐久力に優れ、騎士系職業にある敏捷性低減のデメリットをゼロにする・・・。」


さらに追加情報を見ると、盾装備で敏捷性低減、ガントレット又は小手装備で防御力アップとあるな。

なるほど、盾を装備したときだけペナルティがあるってことか。

代わりに防御力を上げたければ腕周りを固めろと。



 「まぁ! ケイジ兄上様!!

 とっても素晴しい職業だと思いますわ!!」

イゾルテが喜んでくれるが実はオレもちょっと嬉しい。


 「獣騎士、ビーストナイトか・・・。

 ケイジが良かったら、この場で転職するけど?」

うむ、どっちの響きもいいな。


 「・・・断る理由はなさそうだな・・・。

 カラドック、やってくれ。」


そしてオレは無事に転職を果たす。

ふむ・・・レベルアップしたわけではないから、大きな変化はないが、

騎士職よりステータス補正効果が高いようだ。


そして職業Lv1で覚えられるスキルは・・・



「咆哮」


自分よりレベルの低い敵の集団にスタン効果を与える。


おおっ?

これ使えるんじゃないか?


少なくとも雑魚狩りで手間を取ることは少なくなりそうだ。

できればボス戦でも通じる高威力の武技も欲しいところだがな。


 「・・・なんとなくですけど、

 あると思いますよ、ノーリスクかどうかわかりませんけど。」


麻衣さんがそう思うのならあるんだろうな。

これはオレもこの先期待したいものだ。



それから話のついでに、

ヨルとリィナもただいま特訓中だ。

ヨルは魔力伝達率の高いミスリル製の槍を騎士団から借りて、魔闘法exとやらの練習。

リィナは女神から教えてもらった天叢雲剣の更なる威力の上げ方に励んでいる。

こればっかりはオレは何の役にも立たない。

オレ自身に魔力もろくにないし、そっち方面の知識もない。

むしろ元の世界のサイキックという概念に詳しいメリーさんが見てくれている。

彼女自身はいわゆる念動みたいな超能力を持っているわけではないが、

リナの父親だった朱武さんの能力を知っているらしいからな。

感想程度のアドバイスくらいならしてくれるとのこと。



そして・・・




 「・・・あっ。」


麻衣さんが辺りを見回す。

オレも何かの気配が変わったような感覚があるな。

もっとも嫌な雰囲気じゃない。

気分が高揚するような感じだ。

そしてこの感覚は覚えがある。

昨日森都ビスタールで感じたものと同じものだ。


つまりタバサたちが宮殿の結界構築を完成させたということだな。


 

ケイジ

「ようやくオレもレア職に・・・。」


麻衣

「あっ、やっぱり気にしていたんですね・・・。」


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