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第三百九十三話 帰還

ぶっくま、ありがとうございます!

<視点 ケイジ>


 「宮殿が見えてきたぞ!!」


何年ぶりだろうか?

上空から宮殿を見下ろすのは初めての経験だが、

あれは紛れもなく、グリフィス公国のホワイトパレス。


 「速度減速!

 エアスクリーン解除!!

 当馬車は宮殿正門前にて上空待機いたします!!」


アークレイ程の寒さではないとはいえ、冷たい空気がオレたちを出迎える。

・・・それと共に懐かしい・・・

冬だってのに各種いろんな花の匂いが獣人の鼻に流れ込んでくる。

窓から顔出して下を見下ろせば、

色とりどりの咲き乱れた花の庭園を見る事が出来るだろう。


まぁ、花なんかは後でゆっくりと近くで見れる。

いまはこれからの着陸準備に気を向けよう。

ラプラスのスキルなら城内に一気に着陸可能だが、いくらなんでもそんな人騒がせなマネは出来ない。

本来であれば今晩宿屋に泊まって、宮殿には先触れだけ届け、向こうの案内を待つのがマナーだろうが今は緊急時である。

それに事前にマルゴット女王と打ち合わせ済みだ。


 「アガサ、一発頼む。」


 「では全員瞑目!

 特別に特大の一発をお見舞い!

 『ライト』!」


宮殿の上空に巨大な光球が放たれる!

まぁ、オレも見ちゃいないんだがな。

この至近距離で直接それを見たら目が潰れかねない。


 「え・・・それってコスパ最強の拘束魔法なんじゃ」

麻衣さんの声が聞こえたような気がするけど、距離があったせいか内容までは分からない。

声の感じからして今の状況下で気にするような話でもないだろう。


さて、

「ライト」は光系魔術の基本術。

光の玉を作り出して周辺を明るくするだけのもの。

いわゆるランプに火を灯すのと変わらない。

周辺全てを明るくしたいのなら、その発展形の術である「ライトネス」を使う。

こっちはフィールド全てが明るくなる術で、その場合は光源など何もない。

その為か影も一切生じなくなってしまうのだ。


ところが今回、アガサに頼んだのは、

その基本術に込められるだけの魔力を注いでもらった。


・・・そう、小さな太陽の出現である。

もちろん本当の太陽みたいに熱も紫外線も・・・たぶん・・・ない。


一応、オレにも元の世界の知識は少なからずあるからな・・・。

きっとLEDとかいう照明と一緒で余計な熱とかの発生を抑えたスキル?

人体に害はない・・・と思う。


そもそも、オレたちの来訪を知らせるには、

正規の手続きを取っていては時間がかかり過ぎる。

なので宮殿にいる人間全てが一発で理解し、

なおかつ被害が起きないだろうと想定される手段がこれだった。


カラドックでもアガサでも麻衣さんでもいいが、

フィールドに効果を及ぼす魔法など傍迷惑以外の何物でもない。


竜巻・・・アウト!

氷漬け・・・以ての外!

真っ暗闇・・・・みんな泣くぞ!

雷撃・・・どこに飛んでいくかわからん!

ストーンシャワー・・・宮殿に何か恨みでもあるのか!


最後まで共に候補に残っていたのはウォーターだったが、

これも被害はないだろうけど、きっとメイドのニムエさん達に多大な迷惑をかけそうだとのことで見送りになる。


そして光呪文だけが残った。


当然その強烈な光は、宮殿内の全ての窓から入り込む!

女王の執務室は警備上の観点から、内庭に面してのみ窓があるが、

宮殿の警護兵にはもちろん、そこからでも上空が明るくなったのは観測できただろう。


 「・・・おっ!?

 これはアガサ殿の光魔法じゃな!

 ケイジ達がようやっとのご帰還じゃ!!」




 「・・・30秒経過・・・。

 ライト解除!」


そしてオレたちは全員目を開ける。

馬車の窓から下を見下ろすと、

既に警備兵がこちらを見上げ、馬車の着陸スペースはこっちだと手を振っている。


・・・眩しそうに目をこすっているようだけどな。

30秒も必要なかったかもしれんが念のために・・・さ。

すまなかったと心から思う。


ラプラスはオレたちに衝撃を与えないように、安全かつゆっくりと着陸してくれた。

降りるのは先ずオレからだろうな。

何しろ一時的だろうがオレはこの宮殿に住んでいたのだ。

かつて知ったる何とやら、というだろう?


「帰って来た」と言っていいのかどうか悩む所ではあるが、

この宮殿の主たるマルゴット女王とは既に何のわだかまりもない。

重臣たちの中には、いまだ獣人であるオレに対し色眼鏡で見て来るヤツもいるだろうが、

それこそここに永住するつもりで戻って来たわけでもない。

つまり気にすることは何もないという訳だ。


そうして、オレたちが一人一人馬車を降りる頃には、

宮殿の正面門内には、その場の警護兵全員が左右に並んで整列してくれていた。

そして正面には位の高そうな軍人が見える。


・・・あいつも懐かしい顔だな。


 「冒険者パーティー『蒼い狼』の皆さま!

 遠路はるばるようこそおいで下さいました!!

 我ら宮廷騎士団一同、歓迎させていただきます!!」


そうだ、

オレも剣の修行で世話になったことがあるな。


 「久しぶりだな、ブレオボリス騎士団長。」

 

そのいかつい顔の男はオレを凝視して・・・ニヤッと顔を歪めた。

 「久しぶりですな、ケイジ『様』。」



別に嫌な男だという訳でも、悪い思い出があるわけでもない。

強いて言えば一言多いというのか、

昔のオレに対して、一歩引いた態度を取っていた印象だ。

身の程を弁えているのなら、喰うには困らない程度の生活は送れるだろうに、というニュアンスの言葉を吐かれた記憶がある。

同情は多少してやるが、自分は関わり合いにはならないぞということだろう。



何度か剣を交えた事もある。


試合?

やらんよ。


ていうか、やらせてもらえなかった。

やったのは、あくまでも指導の範囲内での打ち合いだ。


幼い頃ならともかく、カラダが出来上がりつつあった宮廷出奔間近の時点なら、

多分ガチでオレが勝ったろう。



前世での経験値に、この世界の獣人の肉体が加算されているんだ。

初見殺しの裏技でも持ってなければオレに勝つのは不可能だ。


ん?

前世の頃なら?

どうだろうな?

やってみないとわからんが、それでも6:4でオレの方が有利じゃね?

この世界でオレが身につけている「イーグルアイ」は前世から繋がっている能力だ。

もちろん、当時は「動体視力に優れている」というだけの認識だけどな。


 「出迎えありがとう、ブレオボリス騎士団長、

 ブレモアは頑張ってくれたよ、

 この場にはいないみたいだけど、彼にもよろしく伝えておいてくれるかい?」


カラドックもこの宮殿の連中には世話になったようだからな。

面識があるのは当然だろう。


 「ははっ、我が騎士団の者に温情あるお言葉、感謝に堪えません。

 おかげで奴も一皮むけたようではありますな。

 ・・・いろんな意味で・・・。」


少し含みがあるような気がするのは気のせいだろうか・・・。

そういえば、ブレモアの奴、いろいろと・・・いや何でもない。


そして一通り挨拶が終わった後、

オレたちは宮殿の中にへと案内される。

・・・途中カラドックの視線が騎士団長の後頭部に向けられていたのが気になった。


 「どうかしたか、カラドック?」


 「・・・いや、

 確かめようもない話なんだが・・・。」

 「む? 何かあったのか?」



 「私が生まれ故郷を出る前の話なんだけどね。」

 「カラドックの世界の話か。」


 「・・・ああ、

 その時の国を治めていた叔父の家臣に同じ名前の男がいてね、

 私とはそんな接する機会がなかったんで記憶も朧気だけど、

 顔つきとかも似ているような気が・・・。」


マルゴット女王だけじゃあないのか?

頼むから変なフラグは作らないでくれよ?


 「良く戻ってきおったの、ケイジ!!

 待ちかねておったぞ!!」


宮殿のエントランスにはマルゴット女王、その家族たち全員が並んでいた。


ベディベールもイゾルテも・・・相変わらず女王の首元には妖精がしがみついている。

まぁ、こいつらはこないだ会ったばかりなので・・・


 「でかくなったな、コンラッド。」

オレたちは握手でもするような挙動で互いの手をパチンと叩く。

以前の記憶だと「まだ少年」といえる体格だったが、今はがっしりと筋肉もついているようだ。

剣の鍛錬は怠っていなかったと見える。


 「久しぶりですね、ケイジ兄様。」


・・・案の定カラドックが生暖かい目でオレたちを見てめてやがるな、ちくしょうめが。







あれ?

あんまりストーリーが進んでない?



「コスパ最強?

いやいや、麻衣、

あれは私の膨大な魔力があって成せる技、

他の魔術士にはほぼ不可能。」


「あっ、そ、そうですよね?

それにその魔力を殆ど使い切っちゃったら、

次の行動に支障出ますもんね?」

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