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第三百九十二話 命の危機×2


※)一部ショッキングな表現有り!

<視点 ケイジ>


 「皆さま、お帰りをお待ちしておりました。」

 「ラプラスは無事だったか?」


 「はい、マスターから事前に警告がありましたので、

 突然魔虫どもが現れても容易に対処できました。」


オレたちは森都ビスタールでの会議を終え、エルフ勢より一足先にグリフィス公国へと向かう。

3、4人追加するだけなら、このままラプラス観光ツアーに便乗させても良かったんだが、

肝心のハイエルフ、ダークエルフの有力者たちは、街の結界作成やその他の防衛体制を済ませないうちは動けないので、結局別行動となる。


 「ん? マスターの警告って・・・

 もしかして向こうにも現れたのか、あの気味の悪い虫ども。」


 「そのようです、

 少し心配ではありますが、あの程度ならオデムは余裕で一掃できるとのことです。」


そうか、ラプラスは本来、女神の護衛だものな。

テレパシーのようなもので常に連絡しあえるとは言え、心休まるものでもないだろう。


 「ちなみにオデムはお腹を壊さなかったとのことです。」

 「そ、そうか、それは何よりだ・・・。」


そういや、あの少女の姿は擬態なんだよな・・・。

本当の姿はオレも見た事はない。

どうやってあの虫どもを・・・

ちくしょう、ラプラス、今の説明、絶対余計だったぞ。


 「しかし、私はともかく、周辺の者達は大変だった様ですな。」


森都ビスタールの外にもエルフの集落がある。

当然そこは結界の外だ。

一応、神殿の方も手近なところから対応していくそうだが、

これからもかなりの困難が待ち受けていることだろう。


 「ラプラスさん、あの虫どもに関して女神さまの見解を確認したいんだが。」

カラドックがオレたちの間に顔を出す。

そうだよな、女神とその擦り合わせも必要だろう。


もっとも、基本的にオレたちの推測とそう変わるところはなかった。

明確になったことと言えば、

あの瘴気のようなものは、この地上全てにあふれ始めているが、

強い生命力のある所に引き寄せられる習性だということ。


つまり虫や小動物しかいないような森には問題ないが、

人間の集落、街、都市には多大な影響が現れるのだという。


ただし、一度でもその瘴気のようなものが凝固して魔物になってしまえば、

しばらくは瘴気は再凝縮しないらしい。

ただしやはり時間の問題で、このまま放っておくと何度でも湧いてくるそうだ。

しかも時が経てば経つほど魔物は強力になっていくと。


あの光結界にも限界があるらしい。

これから向かうグリフィス公国の都は大丈夫だろうか?



そうそう、昨夜だが少しいざこz・・・いや、

大した騒ぎじゃないんだが、ちょっとした言葉の誤解から不幸な行き違いがあったことを伝えておこう。



森都ビスタールの境界に封魔石を設置したのはハンターギルドの連中である。



その設置完了の報告をしてくれたハンターの一人に見覚えがあった。


 「あれ? そこにいるのケイジ?

 わぁ! 久しぶりー!! 元気だった!?」


満面の笑みを浮かべて近づいてきたハンターの女性・・・確か・・・


 「ミストラン、・・・だったか?」

 「あー、覚えててくれたんだ―!

 嬉しいっ!!

 え? なに? 中央神殿にいるってことはこの騒ぎ関係?」


 「あ、ああ、話すと長くなるんだが、神殿の依頼でいろいろ動いている。」


笑顔で話かけてくれるのは普通に嬉しいんだが、やけに距離が近くないですか、ミストランさん。

この人のパーソナルスペースはどれだけ狭いんだ。

背中を誰かに押されたら、あっという間に抱き合っちまう事になるぞ。

オレからカラダ離すのも失礼な気もするし。



・・・ここで話が終われば何も問題なかった。

少しリィナからの視線に痛みを感じたがそれだけで済んだはずだった。


恐らく・・・

全く悪意も・・・何の予想もできなかったのだろうが、

そこにカラドックが入って来たのだ。


 「あれ?

 割り込むような形で申し訳ありませんが・・・

 ミストランさん、と仰いましたか?

 あの・・・貴女によく似たハイエルフの方でミストレイというお名前の方は・・・。」



え?

なんだ、カラドック?

ハイエルフのミストレイ?


 「あーっ、それ、あたしの妹!!

 えっ? お髭のおじさん、妹を知ってるの!?」


さらに予想外だったのはメリーさんも参戦してきたこと。

 「あら? そういえばあの子もハイエルフだったわね、

 それに何だったかしら?

 確かデストラクションアローとかいう土属性の技を得意にしていたわ。」


 「ええっ、こっちの綺麗な女の人も・・・って、

 キャー!? 人形っ!?」


世間は狭い。

まぁ、異世界転移または転生してきた奴らに共通の知り合いがいたなんて話よりかは穏やかなんだが、


・・・この辺りも、これだけで話が済めば良かったはずだった。


なんでもカラドックとメリーさんは別々の時期に、

ミストランの妹さんが所属している冒険者パーティーに参加したらしい。


ならオレも彼女の紹介をするしかないだろう?

うん、オレの対応は間違ってない。


 「ああ、こちらは昔、少し世話になったことのある・・・」



ここで致命的な事件が起きたのだ。



 「ケイジさんが、昔関係を持った女性の人なんですよぉっ!?」


ちょっと待て、ヨル?

その言い方だと、オレと彼女に何かあったみたいだろが!?


 「ちっ、ちがっ!

 紛らわしい表現はやめろっ!!」


オレも普通だったら「何バカなこと言ってるのか」とスルー出来たかもしれない。

ただ、ミストランについては前回も余計な誤解を生じさせた記憶がある。

あの、大きくて柔らかい・・・いや! 違う!!


だから、今回も同じ目に遭うのを恐れたのか、勝手にオレの視線はリィナに・・・。





 「ふぅん、

 ・・・やっぱりそのお姉さんと何かあったんだね・・・。」


ぎゃあああああああああああああああああああああああああああっ!?





ほっ、放電!?

パチパチとリィナのカラダから青白い光が纏わりついてっ!?

なんで抜剣してないのに天叢雲剣発動できんだ、リィナ!?


命の危険を感じたオレに救いの手が差し伸べられる!!

 「お二人とも、落ち着いてください、

 この方は『素』です。

 コミュりょくのステータスがめっちゃ高い人なだけです。

 ケイジさんとは勘ぐるような間柄のようなことはない筈ですよ。」


麻衣さん、まじエンジェル!!

本当に麻衣さんには、地に頭をつけて拝んでもいいと思えるほどだ!!


そして当のミストランも、コミュ強というだけあって、

空気を読むのが圧倒的に上手い!


 「あー、もしかしてそっちの可愛い女の子、彼女さん?

 ごめんねー、誤解させちゃって!

 あたし、いつも大体こんな感じだから気にしないでねー?」


・・・他種族には排他的だという、ハイエルフにしては希少且つ友好的なのは望ましい人材なんだろうけどな・・・。


そこでようやくリィナの放電が収まった・・・。

こんなところで命の危機とか本当にやめて欲しい。

その後、ミストランの興味がカラドックやメリーさんの方に向かったので、ようやくオレは助かったと言えるだろう。

ミストランも妹さんとやらの消息を聞けて嬉しそうだったな。


ただ・・・

 「でもケイジさんも油断しないほうがいいです。

 さっきも言いましたけど、『素』だけに、男の人がドキっと思うようなことを、

 何の遠慮も躊躇いもせずに仕掛けてきますからね?」


麻衣さん、マジか・・・。


そしてその言葉通り、

その後ミストランは、とんでもない事を平然と提案してきたのだ。


 「ねえ?

 この後、予定なかったら飲みにでも行かない?

 他種族でも気軽に入れるいいお店知ってるよー?」


・・・男としてはとても嬉しい・・・

いや、打算とか下心とか抜きにしてもとても嬉しい申し出なんだが・・・


 「あー、もちろん、彼女さんも一緒に来てもらってもだいじょぶだよー?」


ミストランすげぇ・・・。

獣人のオレたちに対し、ここまで開放的な人間をオレはかつて見た事がない。

マルゴット女王、カラドックと、オレが勝ち目のない人間は何人かいるが、

また一人、そこに彼女の名が加わった。


 「申し出は・・・非常に嬉しいが、

 こっちは今回、八人パーティーの大所帯なんでな、

 あまり別行動したくない。

 いくらミストランでも一人で全員の相手は出来ないだろう?」


 「・・・あー、そりゃ確かにね・・・。

 まぁ、こっちも飲み仲間連れて来れば、お相手するのは問題なくなるけど、

 そうなると何の集まりか分からなくなっちゃうもんね。」



・・・対応できるってのかよ・・・。


しかし、そりゃ当然か、

こんだけコミュ力高い女なら、飲み友達なんていくらでもいるだろうしな。


 「いえ・・・あたしは、街にこれだけの騒ぎが起きて、

 殆ど知らない人たちと、平然と飲みに行こうと言えるノリが凄いと思います・・・。」


・・・だよな。

麻衣さんの感想が正解の筈だ。


いかん、オレも平常心を失っているらしい。



結局、飲み会の企画は流れた。

当たり前の話だと思う。

オレたちは神殿の皆様にお世話になる身だ。

昔の知り合い・・・いや、ちょっとした知り合いに声をかけられたからと言って出歩ける身分などではない。


まぁ、ミストランに悪気なく、単純にオレたちを歓待してくれるつもりだったのは間違いないだろうし、

オレも誘われること自体は嬉しい話だったので、本当に残念だと頭を下げた。


 「あ、うん、こっちも気を遣わせちゃったみたいでゴメンね?

 うーん、でも、今度また機会があったら絶対飲みにいこうね!

 きっとだよ!!」


・・・すげぇ・・・。




 「・・・あれがリア充・・・。」

麻衣さんも化け物でも見るような目で去り行くミストランを見送っていた。


なんでも麻衣さんの元の世界なら、同世代でああいうノリの子はたまにいるらしい。

しかしそれはあくまでも学生のノリで、

社会人になってまで・・・つまり大人の世界を知ったうえであそこまで開放的になるのは、極端に減るそうだ。


単に男好きなヤツはどこにだっている。

けれど、そういう女は大体、コソコソ人の・・・特に同性の目を盗んで動くからな。


 「ケイジさん、もしあの人と一緒に飲む機会あったらあたしも誘ってください、

 お酒はあんまり飲めませんけど、勉強になります・・・。」

 「ああ、・・・機会があったらな・・・。」


何の勉強をするつもりなのか?

まぁ麻衣さんは逆のタイプだろう。


きっと彼女は陰で暗躍するタイp・・・











挿絵(By みてみん)


きゃあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!


ギョロんて睨まれたあっ!?


ラスボス直前にて新キャラとか新展開とか違和感あるのだけど、

今、下書きがいい感じに進んでます。

自分でもどんなキャラになるのか不明。

ある程度方向付けだけしといて、あとは流れに任せてキャラが出来上がるので。

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