第三十九話 ぼっち妖魔は異世界でリア充となる
今回は伊藤麻衣ちゃんを中心とした人物関係です。
父親・・・伊藤。(名前はまだない)
母親・・・百合子(戸籍上は生存)
同居人・・・マリー(百合子の体の中)
同居人・・・エミリー(百合子の体の中)
マリーもエミリーも、かつてとある人形に封じられていました。
また、麻衣のお婆ちゃんもどこかに生きているらしいです。戸籍上は死亡しています。
高校には中学から一緒だったなつきちゃんが隣クラスに在籍。
麻衣は生物部で、一つ上の学年に偶然、同族のリーリト、御神楽ルカがいる。
余談ですが、
初めて作者がメガテンをプレイして、ゲーム途中でリリスの百合子が出てきた時は感動しました。
キャラ作成のきっかけは、
GenesisのLillywhite Lilith「百合のように白いリリス」を聴いて。
さらに沼地では赤金亀の捜索。
これも蛇さん達大活躍。
お目当ての亀を見つけてくれた。
・・・ただ、一応この亀は魔物の分類になるらしい。
その顎と牙は簡単に人間の骨を砕き切るという。
・・・てか、のっしのっしって向かってくるんだけど、
これ、リクオウガメ並みの大きさが・・・。
「やぁ! やぁ!」
甲羅が固くてダナンさんの槍も通さない!
これ、どうやってやっつけるの!?
「えええい、『母なる大地よ、我が盾となれ!! アースウォール!』」
お、? ダナンさんの魔法発動!
高さ30センチ位の壁が・・・微妙・・・。
すぐに亀は土の壁を乗り越えて・・・
「ここだ!」
亀が壁を乗り越えようとした瞬間、
ダナンさんの突きが亀を落としてひっくり返した。
あ、これ・・・。
亀はジタバタ暴れるも、もう元の体勢に戻れない。
そして無防備なお腹を見せているままだ。
「このままお腹を一突きですか!?」
「いや、お腹も結構固いんだ、
うまく突き刺せたとしても、抜く時も難しくてね、
ここは一つ・・・。」
「炎よ、集え! ファイア!」
あ、それ、ただの生活魔法・・・。
とはいえ、首を引っ込めた亀の頭に直接浴びせてる!
えぐい!
一度、やぶれかぶれで頭出してきて、ダナンさんの腕をかじろうとしたけど無駄だった。
ダナンさんは器用に槍を盾代わりにしながら炎を浴びせ続けたのである。
むう、地味だけどなかなか頭いいのかな、ダナンさん。
ちょっと見直したぞ?
しばらくジタバタ暴れていた亀さんはそのうちグッタリと動かなくなった。
「ええと、この後、手足を切断すれば目的の素材は回収できたことになるんだけど・・・。」
はいはい、ダナンさんの言葉の先は分かりますよ。
「ええ、あたしの巾着に丸ごと入れちゃいましょう。
甲羅とか売れそうですもんね?」
「あと、肉とか生き血も・・・あ、死んだらダメかな?」
「でも巾着の中は時間経過しないらしいですから新鮮なままだと思いますよ?」
すっぽんとは違うのだろうけど、
四つ腕熊が食えるのなら、
この亀さんも食べられると思う。
うん、いや、現地の人に丸投げしましょう。
結局、この亀は三匹見つかった。
全部ダナンさんの戦法が決まったかと言うと、うまく亀がひっくり返ってくれなかったり、腕を齧られそうになったりと危なかったけど、無事に採取できました。
あとは、ピンクスライムと昼虫夜草。
スライムには何種類かいるそうだけど、
基本的には、その地の環境や食べるものによって変異していくらしい。
何を食べてそうなったかは知らないけど、
ピンクスライムは毒を持っているそうだ。
オックスダンジョンにいたアシッドスライムは、その名の通り酸を吐く。
どっちも直接肌に触れるのは厳禁。
遠距離から魔法か武器で仕留めること。
まあ、通常のスライムも酸というか、
捕食する時に相手を溶かすんだけどね。
通常スライムの酸はそんなに厳しくない。
触れても後で洗えば肌に影響ないレベル。
というわけで、テイムした蛇さんたちにピンクスライムを見つけてもらえるよう、指示をしたけど、
・・・難しい指示はできないみたいだ。
スライムの種類を区別できないのだろう。
となると・・・。
「ダナンさん、昼虫夜草って?」
「毛虫に寄生するキノコだけど、
昼は動き回って夜は動かなくなるんだよ。
生息場所は大体わかるんだけど、
動き回る分、前回見つけた場所にもういない場合が多いんだ。
それに草っぽく見える部分もそんなに育たないから見つけづらくてね。」
なるほど、それは大変そう。
とりあえず、蛇さんたちには、
スライムと毛虫を見つけてもらうよう指示。
あたしにしたところで、
一度現物見れば透視で見つけやすくなると思うんだけど、特徴を聞いただけだとなあ。
ダナンさんと二手に分かれて捜索してみる。
他の魔物や動物に襲われないよう危険察知スキルはオンにしておく。
あたしが探索するエリアは、膝丈くらいまでの草木が伸びている。
なだらかな傾斜になってる部分もあるから足元にも気を付けなきゃ。
おっと、蛇さんから合図が。
「ん? スライムかあ、
どうしようかな。」
とりあえず経験値もそんな多く取れないし、素材的にも旨みないからなあ、
蛇さんたちでも倒せるけど毒ヘビの毒じゃないと対処しづらいようだ。
「仕方ない、まあノーマルスライムならあたしでも・・・。」
ホーンラビットの角を未だに使ってるわけだけど、魔石を砕けば如何なる魔物も死んでしまうと聞いている。
スライムなんて突けばいいのか、切ればいいのかわからないけど、
魔石にホーンラビットの角を突き刺して砕けばいい。
あたしでももう十分。
そこであたしは草むらに足を踏み出した。
危険察知!!
えっ!?
ぐにゅううっ!!
なに、いまの足ごたえ!?
世界が反転、
足が滑っていく
いや、これ・・・体ごとどこかに動いて・・・
「・・・麻衣ちゃん!!」
誰かに抱き締められている。
目の前がチカチカして何が何だか分からない。
「麻衣ちゃん、しっかり!!」
誰かあたしを呼んでる・・・。
ええと、ここにはダナンさんしか・・・
あ、れ?
そこであたしは現状認識できた。
外套の右半分が土や草で汚れている。
手とか足とかにも土がついている。
もしかしてあたし倒れてたのかな?
まだ思考能力が回復してないけど、
ぼおーっと見上げるとダナンさんが心配そうにあたしの顔を見つめていた。
「麻衣ちゃん、無事かい?
足下にもう一匹、スライムがいたんだ。
君はそれを踏んづけて足を滑らせて斜面を転がりそうに・・・。」
うわあ、そりゃ恥ずかしい。
でも手足は無事かな?
倒れた時に頭ぶつけたんだろうな、
頭の右側がズキズキする。
とりあえず下ろしてもらわなきゃ、
・・・あれ?
「ダナンさん。」
「な、なんだい?
どこか痛む!?」
「いえ、やっとあたしの顔を見てくれましたね?」
「・・・あ、え。
そ、そうだね、ホントだ。
それより、気分はどうなんだ?
立てそうなら下ろすけど・・・ああ!
ご、ごめん、いきなり君を抱いちゃって・・・!
もうなんか、色々ズレてる気がするけど、もん笑うしかないな、これ。
ていうか危なっ!
地面に落ちるっ!
このまま落っことされては敵わない。
あたしは両手をダナンさんの首に回すしかない。
しょうがないよね?
カラダのいろんな場所が密着してる気がするけど緊急事態だもの。
うっへっへっへっ、仕方ない。
と、それより!
「ダナンさん、抱きしめるか地面に下ろすかはっきりしてください!
別にこっちは男の人に抱きつかれたって、不可抗力なら騒ぐ必要全くないんですから!」
「あ、ああ! も、申し訳ない!
まだご両親に挨拶もしてないのにこんなマネをしてしまって!!」
だからおかしい、
いろいろおかしい。
もうね、ダナンさんに下心ないのはわかってるの。
ただ、ダナンさんの方が、あたしのような女の子にとっては重大な事をしてしまったと認識してるようだ。
もおおお面倒くさい。
この人はどんな女性経験してきたんだ?
ようやくあたしの足は地面を踏みしめた。
まだ膝に力が入らないのでダナンさんに寄りかかる。
「すいません、ちょっとこのままでいいですか?」
「あ、ああ、全然大丈夫だけど、君の方は・・・?」
「意識はしっかりしてるのですぐに動けるようになると思いますけど、
・・・さっきのスライム、二匹いたんですね?
一匹認知した時点で油断して、サーチを怠るなんて、
あたしもまだまだ能力を使いこなせてないんだなぁ。」
敵意や悪意など強い感情を向けられたのなら、こっちも反応は容易い。
でも今のスライム、あたしの存在に気付いてなかったんだろう。
だからあたしの足に簡単に踏んづけられた。
普通ならそれはそれとして、戦闘開始になるんだろうけど、
間の悪いことに、あたしは斜面にカラダのバランスを崩した。
他に強そうな魔物がいなくて良かったよ、ほんと。
はっ、そういえば?
「ダナンさん、そのスライムは?」
「ああ、一匹やっつけたど、もう一匹は逃げちゃった。
もしかするとその辺にまだいるかも?」
蛇さんたちのテイミングはまだ有効だ。
みんなに念話で指示をだすと、
逃げたスライムは既に何匹かの蛇さんで仕留めたそうだ。
「あ、蛇さんたちが倒したそうです。
・・・うん、あたしももう歩けるかな?
ダナンさん、いろいろすいませんでした。」
「い、いやいや、無事で何よりだよ、
苦しゅうない、よきにはからえ。」
どこでこんな言葉遣い、覚えて来るんだこの人は。
それはともかく、あたしは常識レベルの行動として、にっこり笑顔を見せた。
もちろん他意はない。
お礼を言う時に相手に微笑むのは当然の礼儀だと思う。
まぁ謝罪的な意味なら申し訳なさそうな顔をすればいいんだろうけど、
この状況なら笑顔でも構わない筈だ。
だが、ダナンさんはかなり動揺したらしい。
またあからさまに視線をずらせちゃったのである。
うーん、この人の仕事柄や性格考えるなら、
女の子のお礼なんか結構あると思うんだけどなぁ。
そこへ蛇さん達から合図が。
「あっ、もしかして昼虫夜草見つけたかも?」
「えっ? ほんと!?」
二人とも仕事モードになりました。
さっそく、蛇さんたちの示す場所に。
あたしは昼虫夜草の形状知らないから、
ダナンさんに大体の位置を指差す。
すると彼は注意深くその辺りを観察し始めて・・・
突然飛び上がって振り向いた!
「麻衣ちゃん、当たりだ!!
間違いなく昼虫夜草だ!」
「ほんとですか!?
どれです? ・・・・はぁ~、おお、
なんか植物生やして動き回ってるぅ~。」
よしよし、一回見ちゃえば後は任せたまえ。
「遠隔透視、この辺り一帯の昼虫夜草を・・・。」
む、むむむ?
「ダナンさん、そこの茂みの下にも・・・。」
「ええっ!?」
「あと、目の前の小さな花が咲いてる草の下にもいますね。」
「おおっ!!」
「それと、そこの木の上の枝に。」
「わんだほーっ!!」
ノラせると愉快な人だ。
ただ木の上のは高くてダナンさんでも背が届かない。
「あーっと、どうしよう・・・?」
「2メートルちょっとぐらいの高さですかね?」
これは・・・
「あのー?
大変失礼ですが、ダナンさんさえよろしければ・・・。」
「な、なんだい、あらたまって!?」
いや、あの、とって食おうってわけじゃないから、そんな構えなくとも・・・。
「ダナンさんに肩車させて貰えれば、私でも採取できますよ?」
「えっ?」
何故そこで赤くなるっ?
「肩車・・・ですよ?」
「そ、そんなっ、はしたないっ、
いや、大胆なっ、麻衣ちゃん、君って子はっ!?」
「ちょっと待って下さい、
この世界、肩車するの、なんかのタブーなんですかっ!?」
ピンポーン!
えっ、何今の頭の中からのっ?
まさか、最初にこの世界来た時のメッセージが、こんなタイミングで?
「ステータスウィンドウ。」
とりあえずダナンさんをほっといて緊急の話もあるのかなと、メッセージを探そうとした。
ところが。
そこには簡素な一文。
「この世界の性文化は現代日本とそんなに変わりありません。」
はああ!?
今のタイミングで答えが返ってくるの!?
てゆーか、まさか・・・。
「メッセージはどんな条件で送られてくるの?」
ピンポーン
きたっ!
そしてウィンドウに新たな一文が。
「鑑定士の職業に就いている時、
世界のシステムに関わる質問をすると、運営側の回答可能な範囲でメッセージを送ります。」
最初に言ええええええっ!!