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第三百八十九話 ぼっち妖魔は対策を練る

投稿間に合えーっ!

<視点 麻衣>


 「それにしても、こいつらはいったい・・・。」


ケイジさんがピクリとも動かなくなった虫たちの死骸を覗き込む。

え? あたしは気持ち悪いから見に行きたくありません。


虫に噛まれた神官の人は、自分の僧侶呪文でケガを治していたけど、

完治しきれてないようだ。

ダーニャままが優しく追加の治癒呪文をかけてあげる。

・・・さすがに一発か。

 「あ・・・ありがとうございます!!」

 「うふふ、あとで患部をよく洗っておくのですよ?」


一方、ケイジさんのところにタバサさんとノードスおじさんが近づく。

何やら試したい事でもあるようだ。


 「ケイジ、ここは私の出番、ホーリーシャイン・・・!」


タバサさんが手を翳すような自然な動作で、不気味な虫のようなものの死骸に術法を使う。

この術は広域型光系呪文だ。

単体相手に使うホーリーレイより威力は弱いので、普通の人間に使っても殺傷力はあまりないらしい。

ただ、アンデッド系には効果大だろう。

ということは、普通の虫相手に使っても嫌がらせ程度の効果しかない筈・・・。



あっ・・・

塵のように虫が分解して消えていく・・・。

もしかして、あたしの召喚術必要なかった・・・?


うわっ、恥ずいっ!!



 「・・・初っ端から光属性呪文を使えば手っ取り早かったか・・・。」

ノードスおじさんはそう言うけど、魔物の情報が何もなかったんだから仕方ないよね。


それにしても凄いね、タバサさん。

今やこのレベルの術を使うのに、詠唱どころか精神集中する必要もないのか。


 「だがこれで間違いない・・・これは邪龍の末端・・・!」

アラハキバぱぱがとんでもないことを言った。

まぁ、やっぱりそんなとこだろうとは思う。


 「なんだって!?

 それがどうしてこの中央神殿の内部に!?」


もちろんケイジさんの疑問は当然だ。

大体どこから湧いて出た?

ベアトリチェさんの時みたいに転移?

それこそ有り得ない。

ここには転移の目印になるようなものなんてない筈だ。

だいいちこんな木っ端な虫ども送り込んだって、邪龍にしてはせこすぎるでしょうに。


そこであたしも思い出す。

そういえば・・・


 「え・・・と、メリーさん気づいてましたよね?

 もしかして昨夜、言ってたのもこのことですか!?」


 「えっ、昨夜!?」

カラドックさん達みんながあたしとメリーさんの会話を注視する。


 「そうよ、

 この気配は昨日のエルドラにいた時から感じていた・・・。

 こっちの世界では瘴気と呼ぶべきか、邪気とでも言うのか・・・。

 もっとも、昨夜はまだその濃度は薄かったわ。

 それこそ放っておいても何の問題もないくらいに・・・。

 それが、ここに来て濃度が深くなり・・・それが凝固するような形であんな虫みたいなのが・・・。」



 「それって・・・。」

あたしは言葉に詰まる。


みんなも何も言えないようだと思っていたら、外が騒がしい。

怒鳴るような声や悲鳴のようなものも。


 「まさか!?」

ケイジさんがいち早く反応。

もっともこのタイミングで考えることはみな一緒だろう。

すると廊下を走るような音が近づいてきて・・・

 

 ガンガン!!


 「会議中に失礼いたします!

 緊急事態でございます!!」


 「入れ!!」

アラハキバぱぱが許可すると、扉を壊さんとばかりに一人の神官の人が現れる。

うわ・・・目が血走って、顔色も青ざめている・・・。


 「も、申し訳ございません!

 報告いたします!

 神殿のあちこちで気味の悪い虫どもが現れ、参拝客や神官の一部が怪我を負っております!」


うわ、やっぱりか!!


 「まだ駆除できぬところはあるか!?」

 「は! 現段階ですが、人のいるところに現れたものは全て対応済みです!

 しかし、この神殿の隅々まで捜索する余裕はありませんでしたので、

 もしかしたら、まだ何体も残っている可能性が・・・!」


 「ふむ、虫どもには光呪文が効果的だ!

 僧侶系でも魔術士系でもどちらでもよい!

 生死構わず、見つけたら灰にしろ!

 怪我人は治癒呪文を使え!!

 ポーションでは心許ない。

 それと、この騒ぎ・・・街全体に及んでいるかもしれん!

 すぐに動けるものすべてで怪我人が殺到したら対応できる体制を整えよ!!」


おお、さすがの神官長・・・!

決断と指示が素早い!

ちなみにポーションはケガの回復には有効だけど、

毒素を取り除くことは出来ないし、患部が瘴気のようなものに冒されても効果は出ないそうだ。


・・・うーむ、

それにしても虫かぁ・・・。


ここのところ、出くわす敵がとんでもなく戦闘力高い人たちばっかりだったけど、

ここに来て、風向きが全く変わってしまったような気もする。

数匹とか、あるいはいつかのロックワームみたいに、大きくても一匹相手なら何とかなるけど、

集団になるとなぁ・・・。


いっそのこと覚えてしまおうか、あたしも。

昆虫召喚。

・・・いやいや、もちろんこんな気味の悪い虫呼ぶつもりはないですよ?

ただ、こう虫には虫というか、

それとは別に、こないだの鬼人さんみたいに圧倒的な攻撃力持つ相手に、

真正面からぶつかるの怖いでしょ?

戦術としてそういうのもありかな~って思うんだよね。

えっ?

蛇さん大量召喚できるだろって?


できますけどね、

四つ腕クマで痛い目見ちゃいましたからね。

かわいそうなんで。


おっと、現場に話を戻しましょうか。

虫さんについてはまた今度考えましょう。



 「しかし、あれだけ小さいと発見するのも面倒だな・・・。」

ケイジさんの呟きももっともだ。

部屋の隅や物陰に隠れていたら発見自体出来ないものね。

気が付いたら足をがぶりとやられてしまうだろう。

しかも数で来られたら、あたしのような感知術をもっていたって対処できないかもしれない。


 「タバサちゃん?

 あなた、大僧正のジョブに就けたのよね?

 もう光結界のスキルは覚えた?」


 「母上、完璧にバッチリ。」

 「まぁ、素敵だわ。

 ならこの神殿はタバサちゃんが結界かけて?

 ハキバ、あなたはフリードマン様達と共に・・・。

 そしてお爺様も・・・。」


 「そうだな、猊下、お願いできますか。」


 「やれやれ、ハナからこれでは先が思いやられるの、

 では可愛いひ孫の活躍を見届けてから行くとしようか。」


 「うん?

 タバサ、まだ大僧正ジョブに就いてからレベルは上がってないだろ?

 もう結界呪文を身につけたのか?」


 「ケイジ、心配不要。

 アガサと違って大僧正はプリーストの上位ジョブ。

 最初に覚える術が光結界。」


タバサさんが頼もしすぎる。


 「お前はここの警備はいい。

 すぐに神殿の敷地周辺に封魔石を設置しろ。

 準備完了したらここへ報告に戻るように。」


アラハキバぱぱが残っていた神官の人に指示をする。


 「うん? 封魔石ってなに?」

あ、リィナさんありがとうございます。

あたしも知りません、それ。


それについては、ダーニャままが教えてくれた。


 「一部の魔法の効力を存続させる特殊な魔石よ。

 これがないと、せっかく結界作っても、術者をそこにいさせ続けないといけないし、

 魔力がもたないわ?

 だから高度な結界を維持するには優れた術者と、この封魔石が必須なの。」


へぇ、

あっ、もしかして黄金宮殿で結界作ってたオスカさんはそれを使ってたのかな?

いや、ていうか、オスカさんが凄かったのは、その結界で常時、気を張ってたことだものね。

結界の種類、用法も異なってるのだろうから、比べるのもちょっと違うかな。


 「タバサよ、この敷地の確認は不要か?」

 「父上、当然。

 子供の頃から育ったこの神殿は隅から隅まで把握済み。」



さすがですね、

あたしが虚術で必要な空間認識も、

目で確認できるか、もしくは魔力感知で把握できる前提が成立して術を展開する。


だから例えばあたしがここで虚術を使うならば、

この部屋内だけだったら簡単にできる。

でもどこがどうなってるのか、この建物に不慣れなあたしが建物どころか敷地全体に術をかけることなど不可能だ。


まぁ、遠隔透視を使えばいいんだけどね。

もっとも、先にそれをやるとなると時間も精神力も半端ない負担がかかる。

無理はよくないのだ。


あと実は、裏道もあって、

術者が周辺の地理を把握してなくても、

封魔石の設置を認識してれば、封魔石の存在を以て境目と認識できるらしい。

もっともこれは、術者の熟練度によっても成否が分かれるそうだ。



というわけで、次回はタバサさん初の大僧正スキルお披露目だよ!



残り20分で間に合った・・・。

いえ、下書きは出来てるのだけど、分量が半端でどこで切ろうかなと・・・。

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