第三百八十七話 ぼっち妖魔はハブられたわけじゃない
うーん、重ね着機能はいいんだけど、ボディサイズいじくると、アウターが連動しないぞ? インナーの胸の部分が突き抜けてしまった・・・。
画像は開発中のものです。
今後全く変わるかもしれません。
え? 誰かって?
そりゃ・・・
アガサ
「当然私も作成予定?」
は・・・はい・・・いつか・・・。
<視点 麻衣>
はい、では本題行きます。
魔人ベアトリチェさんとの絡み以前までの話はエルフの方々に伝わっていたので、
まず、それからの経過報告をすることに。
最初に魔法都市エルドラの深淵の黒珠奪還の件。
エルフどころか人類全てを巻き込む、死んだ人の魂を邪龍に捧げていた魔人ベアトリチェさんの死・・・。
・・・これについては、冒険者パーティー「蒼い狼」に依頼していたミッションの完了を確認、またもやケイジさん達にお金が流れる。
「クックックック・・・。」
気のせいか部屋の中に邪まな気配が・・・
そして転生者でもあり魔王でもあるミュラ君の誕生。
これもちょっと微妙な立場のリィナさんとの関係を明かし、
現段階で人類と敵対する可能性はなさそうであると説明。
・・・ノードスおじさんが頭を抱えていた。
本来なら魔法兵団は先鋒となって魔王軍に立ち向かう役目なのだけど、
こうなってしまうと、どう対応していいのかわからないのだろう。
ちなみに魔王のお世話役に就いている、ハイエルフの神学校を首席で卒業したというオスカさんの存在を告げると、アラハキバぱぱが両手で顔を覆っていた。
神学校って、ここの中央神殿の管轄になるんだって。
この後、責任を追及されるのかもしれない。
その後、今の世界樹の女神が異世界からの転生者であると報告、
アガサさんとタバサさんが、その女神から祝福をもらってランクアップしてることも公表したよ。
アキ・・・じゃなくてアラハキバぱぱもウギスダーニャままも凄い嬉しそう。
さて、最後にして最大の問題だよ。
邪龍。
「エルフ各神殿の有力な巫女たちが、邪龍復活の神託を受けた。」
アラハキバぱぱからの驚くべき報告。
え?
どういうこと?
別に邪龍復活のことはあたし達にとって衝撃的な話という訳ではない。
既にベアトリチェさんを殺害したのが邪龍だと、目の前で目撃してるから。
それに女神さまからも聞いている。
この話の意味は、
まず、あたし達だけでなく、エルフたちが自分たち独自の方法で邪龍復活を認めたという話と、
それとは別に、巫女職に就いてるあたしにそんな神託届いてないよ? というあたし個人の戸惑い。
現に蒼い狼パーティーみんなに視線を向けられる。
「あ、あれ?
あの・・・あたしに神託とかって来てないんですけど、
エルフの方々の巫女って、あたしがまだ至ってないレベルの方々とか?」
アラハキバぱぱは一瞬怪訝な顔をした後、その訳に気付いたようだ。
「ああ、伊藤殿は巫女職を持っていたのだったな。
心配する事でもない。
神託を受ける巫女にもレベルが必要なのはもちろんだが、
それには神託を授ける神との繋がりも重要だ。
伊藤殿はこの世界のいずれの神とも関係を持っていまい?」
あっ、そういうことか。
あたしに神託を授けるとすれば・・・
「ご主人様」ですもんね。
もう分かり切ってることを伝える必要もないし。
・・・ていうかあの人、そんな世界の大事みたいなもの、あたしに告げるつもりは絶対なさそうな気がする。
ん? 女神アフロディーテさまは関係ないのかって?
女神さまはご主人様を中心に見た話では、あくまで男女の仲の一人としてしかあたしは見ていない。
もちろん、持っている能力としてはあたしなんか足元にも及ばないけど、
あたしは女神さまの眷属というわけではないのだ。
むしろ対等に近い関係だと思ってる。
だからあたしはあの人の加護も祝福もない。
というわけでこの話はこれでお終い。
「あっ、すいません、アラハキバぱ・・・さん、話を続けてください。」
やばいやばい、ナチュラルにぱぱと言いそうになった。
油断良くない!
「・・・ふむ、それでは続けよう。
とはいえ、邪龍の復活は前回でも五百年も昔の話で、
残された資料や言い伝えもかなり限定的なのだ。
邪龍は意志も知能もあるとされるが、
どんな能力を持ち、どんな魔物に近い存在かも詳細は不明だ。」
ではカラドックさんからも情報開示を。
「魔人の館で見た限りは、予め徴を残した場所にカラダの一部分を転移できるような能力でしたね。
・・・触手のようなものを操っていました。
口は見えませんでしたが、どのような手段によってか会話も人間同様に行っていました。」
「ふむ、それは貴重な情報だ、
関係者すべてに共有させよう。
それで伝え聞く形では、その姿は途轍もなく巨大で、まるで動く小山のよう、
その吐息は生きとし生ける者すべての命を枯れさせ、
何者もその行進を妨げることは出来ないとあった。
・・・邪龍とは呼んでいるが、ドラゴンとは似ても似つかぬ姿だという。」
・・・帰りたくなってきた。
よくよく考えればあたし要らないよね?
カラドックさん、アガサさん、リィナさんの魔法や雷撃で止め刺していただいて欲しい。
切に。
「魔王のように軍団を率いて攻めてくることはないと聞きましたが・・・。」
「うむ、邪龍自らが軍を率いることはない。
だが、当時は邪龍の影響なのか各地の魔物が急速に湧き出し、世界は大混乱に陥ったという。」
こちらは苦虫を噛み潰したような表情のケイジさん。
「・・・厄介だな。
敵が単体なら、どんな強力な存在だろうと、集めるだけの戦力と火力を結集すれば倒せないこともあるまい。
けど、魔物の防衛に戦力を割く必要が出て来るとなると、結局は少数の精鋭に頼らざるを得なくなる。」
・・・実際苦虫を噛み潰すと、人はどんな表情になるんだろう?
今度機会があったらゴッドアリアさんの口の中に押し込んでみようか?
友達なんだから、そのくらいやってくれる筈だ。
あれ? メリーさんがこちらを一瞬見た気がする。
まさか、「その時は私も呼んで? 味の感想聞きたいから」なんて思ってないよね。
何の脈絡もないもんね?
「君たち冒険者はどうするね?
リィナ殿に冠された勇者の称号は、あくまで対魔王のもの。
もちろん、その称号に便乗する形で邪龍討伐に立ち向かってくれるのなら、
我々エルフ五大都市はそのまま、君たちを勇者として認定し続けるが。」
「・・・正直オレたちだけで倒せと言われると辛いものがあるが、
エルフ達やヒューマンの軍隊や冒険者に協力が得られる前提があるなら、
その最先鋒に就いてやる。
異世界からの転移者・・・カラドックや麻衣さん、メリーさんがこの世界にいるのはそのためでもあるんだろうしな。」
「なるほど、
アガサ殿もタバサも、見違えるほど能力を伸ばしている。
異世界からの助力者とエルフの最高戦力を手に入れた君らなら、その資格は充分だろう。」
「あとヒューマン側の方は、オレの叔母のマルゴット女王が動いてる。
もっともヒューマンの国家群はエルフほど結束もないし、一枚岩の種族ではないが、邪龍復活となれば小競り合いなどしている場合じゃないので、ある程度まとまれると思う。
エルフ達も共闘してくれると考えていいんだよな?」
「別にエルフも仲良しなわけじゃないんじゃがのう?」
と、ダークエルフのフリードマンおじいちゃんが意地悪そうに笑う。
それをアラハキバぱぱは聞こえないふりをしたようだ。
「うむ、この後、グリフィス公国に使節団を派遣する。
そこでヒューマン側と細かい打ち合わせをすることになるだろう。」
「問題は邪龍側の動向だな。」
「そうだな、邪龍は空を飛ぶという記録はないから地上の移動に限定されるだろうが、
それもどの程度の速さで人々の街まで辿り着くのか・・・、
それまでに奴を抑えねばならん。」
そこでノードスおじさんが現実的な話を振って来た。
「・・・肝心の邪龍の現在の居場所ですが・・・。」
その情報を明らかにするのは、賢王カラドックさん。
「それは世界樹の女神からある程度情報は得ています。」
「「「おおお!!」」」
ちなみにアフロディーテ様の所在については、誰にも明かさないようにと、ラプラスさんから口を酸っぱくして注意されている。
もっとも、行きも帰りも途中までダークネスで真っ暗にしてたから、本当に女神さまの所在地はわからないんだけどね。
えっ?
遠隔透視?
やりませんよ、そんな失礼なこと!
だいいち向こうの方が能力上なんだから、怒らせたら痛い目見るのこっちですよ!!
・・・っと、カラドックさんのお話を続けましょう。
「場所はこの星の赤道直下・・・
秘境カスタナリバ砂漠にある地下ダンジョン、その奥深くに眠っていると・・・
いや、もう起きたのかな。」
「カスタナリバ砂漠?
我々エルフは外の世界に詳しくないが、赤道直下といえば・・・
あまり栄えた国家もないと思ったが・・・。」
やっぱりエルフって引き籠り気味なのかな・・・。
とはいえ、ヒューマン側も似たり寄ったりらしい。
「その辺りはオレたちも同じ認識だな。
むしろ冒険者ギルドの方が詳しい情報を蓄えているかもしれない。
いずれにしても、この後オレたちはグリフィス公国に戻る。
そこで各国の軍の動きと合わせて体勢を整えることになるだろう。」
・・・
あれ・・・
・・・気のせいか、
なんか背筋がぞわぞわするな。
「・・・いいかしら?」
「え? メリーさん!?」
カラドックさんがその問いに反応する。
「おお、これは異世界の人形殿、なにかあるのかな?」
アラハキバぱぱさん達はまだ何が起きているのか分かってないのだろう。
「悪いけど、あまり時間はないみたいよ?」
メリーさんはみんなとは違うものを見ていたのだ。
「「「「え?」」」」
みんなが意味不明と間抜けな声を出した。
あたしも似たような反応するところだったけど・・・
他の人たちより先にメリーさんの言葉の意味を理解してしまった。
だって・・・
あたしの危険察知能力が、気味の悪い反応を感知したのだから。
それも、
この部屋の中に。
>気のせいか部屋の中に邪まな気配が・・・
壮大な前振り。