表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
384/748

第三百八十四話 ぼっち妖魔は気づかない

ぶっくま、ありがとうございます!



<視点 麻衣>


出雲t・・・いや、エルドラ大神殿の正面の石段を・・・あ、これも木材か!

木段って言わないよね?

ただの階段でいいの?


まぁ、その先には豪勢な神官服を着たおじいちゃんが顔を綻ばせて立っていた。

少し腰は曲がっているけど元気・・・いや、目の下のクマが凄いことになっている。

良かった、ギリギリだったみたいだね。


あたしは金糸使いの巾着袋を腰から外し、袋口を拡げる。

中身を取り出せるのは装備者であるあたししかできない。

神官長の前で跪いたアガサさんの隣にしゃがみ、手渡しで深淵の黒珠を・・・




そして周辺一帯に強大な闇属性の魔力が・・・。


 「「「おおお・・・!」」」


ここで再びアガサさんの独壇場だ。

 「エルドラ大神殿神官長、フリードマン様!!

 エルドラ魔法兵団第一部隊アガサ!

 冒険者パーティー『蒼い狼』と共に、深淵の黒珠を奪還!!

 謹んで返却の儀、執行するもの也!!」


 「おうおう! 良い働きでしたよ、アガサ殿!

 これで全てが元に戻ると言うものじゃ!!

 ・・・それでアガサ殿?」


 「は!」


 「当然、この深淵の黒珠をかっぱらってみせたにっくき盗賊団は皆殺しにしてくれたんじゃろ?」


えっ?

あ、あ、あ・・・おじいちゃん、微笑みながらすっごい黒い事を・・・。


 「は・・・いえ、あの・・・。」

 「どうしたのじゃ?

 アガサ殿は魔法兵団名実ともにトップクラスの攻撃魔法の使い手と聞いておる。

 もう盗賊どもを五体バラバラに斬り刻んで魔物に食わすくらいの報いは味あわせてあげたんじゃろと聞いておるのじゃが・・・。」


あ、あれ?

アガサさんの見事な巨乳がこの星の重力に負けてる!?

別にアガサさんに不備はないはずだけど、説明に困っているのかな?


 「恐れながら、神官長殿。」

おおお、ここでさすがのカラドックさんだ!


 「ふむ? そなたは何者じゃ?」


 「初めまして、異世界からやって来たカラドックと申します。

 ・・・なんでしたら鑑定でどうぞ私の詳細を・・・。」


 「ほう!?

 異世界の賢王とやらか!

 これはこれは我らの厄介ごとの解決に助力していただいたこと感謝いたしますぞ!」


 「いえいえ、私の手助けなどアガサ殿の活躍の前には微力なもので・・・。

 それより、まだそちらには情報が行っていなかったようですが、

 今回、そちらの深淵の黒珠を必要とされていたのは、世界樹の女神です。」


おじいちゃんの顔から気が抜ける。

 「・・・ほわ?」


そこでアガサさんが、「好き!」とばかりにカラドックさんににじり寄る。

アガサさん!

気持ちはわかるけど、それ以上はヨルさんが暴れ出すからステイ!!


 「い、いちおう、ダークエルフの方々でも広く信仰の対象となっていたと聞いておりますが・・・

 そうそう、麻衣さん、世界樹の女神からお詫び代わりの品々を預かっていたね?」


アガサさんの行動を辛うじてスルーしたカラドックさんが、あたしに合図を送って来る。

出番ですね!


 「はい!

 ここで広げちゃっていいですかね?」


どうやらダークエルフのおじいちゃんは拳の振り下ろし先を失ってしまったようだ。

その困惑している隙に、あたしはお土産のお宝をぶちまける!!


どりゃあああああああああああっ!!



 「「「わわわわあああああああああっ!?」」」


でるわでるわ、黄金細工やら宝玉やら使い方のよくわからない魔道具やら。

あっという間に広場がうずたかく宝物で積まれるのだ。


 「いや、たぶん、マジックアイテムにそれだけ突っ込める麻衣さんの魔力量にも驚いていると思うぞ?」


ケイジさん、気のせいですよ。




 

どうやら無事に話は進んだようだ。


フリードマンというお爺ちゃんや神官の皆さんで、

早急に都市の復旧作業を始めないとならなかったせいもある。

この街は膨大な魔力に包まれているけど、

その力が強力すぎて住人に副作用を及ぼしたり、町を流れる水の浄化にもよくなかったりで、

深淵の黒珠を使ってコントロールしないといけないのだとか。


カラドックさんの精霊術に近い原理で・・・(さっぱりわかりません)、

一度起動してしまえば、あとは監視したり微調整は必要だけども、

それほど労力はかからないとのこと。



その夜は、宿を用意してもらって、ささやかな宴席を設けてもらう。

まぁ、主に魔法兵団トップのノードスさんという人と、

神殿から代表者が二、三人やってきて、アガサさんやタバサさんと細かい打ち合わせ。

それに対してケイジさんとカラドックさんが補足やフォローを行ってあたしたちは美味しいご飯をご相伴。


これで一つのミッションが終了ということならば、

明日はゆっくりダークエルフの街をみんなで探索と行きたいんだけどね、

もう一つのミッションの経過報告をしないといけないので、

次はタバサさんの森都ビスタールに行かねばならないのだ。



あ、そうそう、アガサさんが新しい能力を身につけたということで、

スキルのお披露目もあったよ。


 「アガサ・・・、木属性魔法など初めて聞いたぞ?

 そもそもこのエルドラの街にさえ、魔導士のジョブに就ける者は10人といない。

 もはや、お前はこの魔法兵団で名実ともに突き抜けた存在となった。」


 「他の術系統だと基本スキルはその事象を発現するだけだよな?

 木属性ってどんなんだ? 

 植物をその場に出すのか? 種類は?」


ノードスおじさんも興奮してるし、ケイジさんも興味アリアリですね。

そしてアガサさんは実際に術を展開するようだ。


 「ふふふ、百聞は一見に如かず、

 まずはこちらの植木鉢。」


アガサさんは既に自分で術を検証していたらしい。

どこからか、植木鉢を4つほど用意していた。

でも、何も植わってない鉢もあれば、支柱に蔓が伸びて葉っぱが生えるくらいに成長してる鉢もある。

みんなバラバラ。


 「木属性魔法基本術はグロウ。

 対象となる植物を4段階に成長させる。

 まずは『発芽』。」


お?

何も植わってない鉢にアガサさんが掌を向けると魔力が流れた!

既に無詠唱か。

まぁ、基本術だそうだからね。

・・・あ、表面の土が盛り上がって、豆科の何かだと思うけどぱっくりと芽が出てきた!


 「「「「おおおおおお!」」」」


 「続いて第二段階は『生育』!」

今度はちょっとだけ葉っぱが開いてる鉢に・・・。


おおお、みるみるうちにニョキニョキ大きくなっていく。


 「そして第三段階、『開花』!」


次の鉢植えは、お花どころか蕾もなかったのに、一気に綺麗な花が開いていくよ!


 「最後は『結実』!!」


4つ目の鉢植えは薄紫の小さなお花が咲いていたんだけど、

それが萎れたかと思ったら、みるみるうちに緑の房になって・・・


ああ、枝豆かあ。


今までど派手な攻撃魔法ばっかり見てきたんで、一見地味に見えるけど、

よくよく考えると凄い便利だよね。

しかも、これ、今は実験的に使ったんだろうけど、

アガサさんの魔力量ならもっと広範囲に使い方を拡げられそうだし。


・・・ただこの場に至っては、ケイジさんをはじめ多くの男性陣が舌なめずりしているのは気のせいだろうか・・・。


あ、うん、美味しいよね、塩ゆで・・・。


アガサさんの検証によると、全ていっぺんに、発芽から結実までは連続して術をかけることは出来ないという。

何らかの制約がかかるらしい。

・・・まぁ、それ全部いっぺんに出来たら、アガサさん無敵のサバイバル生活送れちゃうもんね。

チートにもほどがある。


ちなみのこれ以上の術についてなんだけど、

スキルポイントはいくらでもあるのだけど、

木属性魔法を入手してから一度も戦闘を行ってないので、レベルアップできず基本術以外は使用できないとのこと。


まぁ、戦闘用の術ではないらしいから急いで入手する必要はないのかもしれない。




特にこれ以上は説明する話はないと思うので、後はお風呂などに入らせてもらって就寝するだけ。


・・・なんだけど、あれ?

メリーさん・・・?

気のせいかな、

部屋の隅でほぼ空気と化していたメリーさんがやけにキョロキョロしてるような・・・。



 「あら? 麻衣、どうしたのかしら?」

 「あ、いえ、メリーさんこそ?」

 「ああ、麻衣はアガサの術や闇属性の街の空気に触れて気づきにくかったかしら。」


ん?

メリーさんは何を言っているのだろう?


 「・・・別に今のところ、害になるようなものではないわ。

 気にしなくても大丈夫よ・・・今は。」


それっきりメリーさんは黙ってしまった。

正直に言おう。

人並外れた感知能力を持つあたしでもこの時は全く気付かなかった。


これが普通の街中であったとしたら、あたしも気づいたのだろう。

今回・・・メリーさんの言う通り、

周りの濃密な魔力に紛れてあたしは「それ」を判別する事が出来なかった。


例えて言うならば・・・

家具や荷物が何もない部屋の中にいたら、

その部屋の片隅で小さな虫が湧いたらすぐにわかるだろう。


けれど、片付けもされてない荷物だらけの部屋で、

その片隅に小さな虫が蠢いていても、中々気づくことはできない。

「それ」がどんな悍ましいものだとしても。




それは・・・この後向かう、森都ビスタールで明らかになる。


 

木段・・・名称は丸太階段でいいのだろうか。

もちろん作者が知らないことを麻衣ちゃんが知り得る筈もない(確信)!!


次回はお久しぶりの森都ビスタールです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ