第三百八十二話 語られない物語~果たされぬ誓い
ぶっくま、ありがとうございます!!
メリーさんの3D改造したんで置いておきます。
心臓弱い方は心構えをお願いします。
暗闇でも目が光るようになりました!
メリー
「私この物語ではそんな怖くないでしょ?」
・・・どうでしょう?
<第三者視点>
「確かにあの化け物に止めを刺したのはオレだ。
だがザジル、
オレが止めを刺せたのは、お前が死に物狂いで隙を作ってくれたからだぞ?
そうだな・・・やはりフラアはお前に任せるべきだ。
他の誰でもない。
フラアを守るのはお前が相応しい・・・。」
「で、ですが、オレは卑しい身分の殺し屋で・・・!」
「何が卑しい身分だ?
オレなど、元々は売春宿の用心棒だぞ?
お前とどれだけの差があるというんだ?
お前なら立派に惚れた女を守るだろう。
敵を殺す力なんて男には要らない。
自分の大事なものを守り通す力こそ、なによりも尊い。
お前にはそれがある。」
「ランディ将軍・・・。」
「彼女が泣いた時、お前はどうした?
身分の差に遠慮して、黙り込んで見守っていただけか?」
前回はそうだった。
他に人の目があったのも確かだったが、何より身分の差がそれを許されないと思った。
でも今回は・・・
フラアの目が、その唇が、
全力で「慰めてお願いだからっ」て言ってる気がして・・・
「い、え・・・、
彼女の・・・肩を、ぎゅっと・・・。」
「喜んでいたか・・・。」
「はい、今までに見た事もないような笑顔で・・・。」
それ以上は言えない・・・。
先のイザベルに抱きつかれた時とはまた違う、甘美な一時・・・。
フラアは首を傾けて、無言で何かをザジルに訴えていた。
最初、何を求められているのかザジルには理解できなかった。
けれど、吸い込まれるように彼女の顔に近づいた時に気が付いた。
訴えていたのは彼女の唇・・・。
・・・そんな事が許されるのか・・・
試すかのように、ザジルが自分の口をそれに近づけると・・・
フラアはゆっくりと瞳を閉じた・・・。
今この時、フラアがベッドの中で、枕を抱えてごろごろと悶えまくってることはザジルも知らない。
まあ、ザジルにしても放心状態で階段を降りていたのだからお互い様だろう。
「・・・そこで指をくわえて見続けることしかできないヘタレでなくて何よりだ。
ザジル、お前は勤めを無事に果たしてこい。
・・・それまでの間なら、
それまではオレがフラアを守ってやる!!」
ザジルにこれまでの記憶が蘇る・・・。
九鬼の暗殺組織で、死と隣り合わせの生活を強いられ、
一緒に育ったものは弱いものから死んでいった。
彼の頭の中はどうやって今を生き延びるか、
そしてどうやって指令された対象を殺すか・・・
彼の世界にはその二つしかなかった。
組織の命令通りに人を殺し続け、
殺人を何とも思わないようになっていった。
それでもこのままでは、遠くないうちに自分も殺されるだろうと思い至り、
21世紀の宇宙飛行士と出会ったチャンスに、二人で九鬼を飛び出しイズヌへと亡命した。
九鬼の国境を越えた時、
ザジルの見ていた景色が大きく開かれた。
ツナヒロの言葉にまさしく世界が広がった。
・・・それでも、あとから思えば、以前の暮らしからはまだマシ、というところだったろう。
イズヌで待遇が格段に良くなったわけでもないが、
その宇宙飛行士との帯同が許され、護衛としてその後も共に行動した。
もちろん、それはザジルの意志を汲んでくれたとかそんな甘い話ではなく、
ある意味、九鬼での扱い同様にツナヒロの意向が尊重されたからだ。
そんなある日、国交がない筈の神聖ウィグル王国から、
あの、月の天使の従者だというツォンが、
空飛ぶ船からイズヌの王宮に降り立った時はその場にいる全員が度肝を抜かされた。
そしてザジルがイズヌの使節団の護衛としてウィグルのザラスシュトゥという町に訪れ、
そこで偶然、馬車で事故を起こした男の治療を行っている医師見習いだという少女と初めて出会った時、
あの時、初めてザジルが視ていた景色に色が付いた。
どくどくと血を流す怪我人に、その少女はどうすればいいか対応は知っているが、今は治療の道具もないという。
ならば自分がその道具となれる。
ザジルが気まぐれ程度に見せたその特殊能力に、少女は目をひん剥きはしたけども、
その後も、必死に的確な治療を行い、彼女は自分の外套を惜しげもなく斬り裂いて包帯代わりにしてしまう。
全ての治療が終わり、ほっと一息ついた彼女は、
満開の花のような笑顔を自分に向けてくれたのだ。
「あなたがいてくれて良かった!」
気が付いたら、お互いの息さえ感じ合えるほどの近距離で。
心臓を根こそぎえぐり取られたと思った。
しかもただの町娘かと思っていたら、その正体はこの国の王女。
ランディとは真逆のような出会いをしていながら、見た目とのギャップに騙されたと思うのはザジルも同様だった。
・・・あれから。
その不思議な縁は今も続き、
先程などは大人の女性に成長した彼女が、自分の腕の中で微笑んでくれる。
いったい、どんな奇跡が自分に舞い降りたというのか。
ザジルの両眼に涙があふれる・・・。
「ランディ将軍・・・
自分は・・・自分は幸せ者です。
ツナヒロに会い・・・
フラア様と出会い、
イザベル様やあなたと出会う事が出来ました・・・。
果たして・・夥しいほどの血で手を汚した私が、
これほどの幸福を手にして良いのかと思えるほど・・・。」
「・・・ふっ、大袈裟だ・・・。
誰だって自分と深くかかわった人間には幸せになって欲しいものだろう?
特に、そんなものはオレには決して手に入れられないものだ。
せめてお前たちは・・・そう思っただけなんだよ・・・。」
・・・けれど、二人は知らない。
いや、渦中にあるフラアという王女でさえも。
舞台のお膳立てをしていた筈のイザベルが、
この後どんな企みを巡らしているのかを。
「ふーふーふー、私の大好きなフラアちゃ〜ん?
待っていてね~?
もうあの子はいないからね、
誰も私の行動は見てないわ。
ううん? 心配しないでね、
私はあなたの敵じゃないのよ?
これから私はあなたの苦しみを解き放とうとしてるだけ。
ずっと、その心の裡を隠し通してきたんでしょう?
だから私がその重しをとりはらってあげるの!
心配要らないわ?
あなた達はきっと両想いよ。
私はあなたが『どちら』を選ぶのか知りたいだけよ?
うふふ、もてる女は辛いわよねぇ?
横取りなんかしないから安心してね?
あなたは自分の好きな方を選べばいいだけよ。
くすくすくす、こればっかりは私にも先は読めないわ~♪
ああ、なんて素敵な物語なのかしら。」
・・・その物語とやらの結末は、もはや皆様にはご理解いただけているだろう。
ザジルはイザベルを疑わなかった。
ザジルはランディも疑わなかった。
愛するフラアのことも最後まで疑わなかった。
・・・であるならば、
果たして彼は・・・幸せな人生を送ったと・・・言って良かったのだろうか・・・。
自らの能力も封じられ、
生きながらその腕を引きちぎられ、
それでも愛する女性の名を呼び、彼女の元へと這いずりながらも・・・
・・・そして王女も、将軍も、
二人とも敵の手に落ち、一切の抵抗も出来ない状態で、
二人はその死を告げられる。
男は叫ぶ。
「あいつがそんな事で死ぬはずがあるかっ!
お前を動揺させるためのデマだ!
信じるな!!
アイツは絶対に生きて帰ってくるとオレと約束した!!
そんな・・・そんな馬鹿な結末があって堪るかあああああっ!!」
・・・けれど、彼女にはわかってしまったのだろう、それが真実であると。
男の泣き叫ぶような咆哮にも、彼女はいつものように言い返すこともない・・・。
ただ、顔を歪ませて、両目から溢れてくる涙を流すのみ・・・。
そして彼女は「闇の司祭」の意味を理解する。
・・・受け入れる。
その運命を。
後になって・・・彼もまたそれを知ることになるのだが。
「後から全てを知る者」、
すなわち、この時代のアダムにも。
破滅の足音はすぐそこまで・・・
・・・最終的にはこの男が主人公を・・・
まぁもういいですかね。
フラア
「・・・あのー、ずっと言いたかったんだけど、
これ、あたしは登場してないって言っていいの?
何か寄ってたかって丸裸にされてる気がするんだけど・・・。」
気のせいです。
次回からストーリーが戻ります!