第三百七十九話 語られない物語~王妃の決断
おっ? 評価あがった!?
どうもありがとうございます!
・・・他の人の作品読んでて下書きが一向に進まない・・・。
10日近くかけて読み終わった・・・。
面白かったけど目が辛い・・・
<第三者視点>
イザベルの最後の命令・・・。
王妃である自分ではなく、王女フラアを守れという。
それもこの先の人生ずっととは?
ザジルがフラアに対して、淡い恋心を抱いていることは、既にイザベルに看破されている。
ならば、それが意味するところは一つしかない。
「私の言ってる意味、わかるわね?
お前に神聖ウィグル王国最大の犯罪者になれと言ってるのよ?
そしてあなた達は誰の目にも触れないところでひっそりと生きていけばいいんだわ?
・・・ああ、そういえばフラアの生みの父親も王女と駆け落ちしたんだっけ。
前例があるなら是非参考にするといいわ。」
フラアは自分を産んでくれた両親の顔を知らない。
母親は赤子の彼女をその胸に抱いたまま、雪の降る寒い夜に行き倒れていた。
王宮の親衛隊長であった父親の生死も不明のままである。
もっとも、親衛隊長を務めるほどの武芸を持っていたならば、
余程のことでなければ、産まれたばかりの子供を抱えていたとて、家族揃って無事に生きていくことくらいは出来た筈。
何らかの事故に巻き込まれたか、病にでもかかってしまったのかもしれない。
話を戻そう。
このままザジルがイザベルの元を離れ、
イズヌに戻る、或いはフラアの元へ行く、どちらにしてもイザベルの警護がいなくなってしまう。
もちろん、王宮には常に部外者が立ち入られないよう警備されているが、
その隙を突いて侵入された例もある。
ましてやイザベルは、過去の仲間たちの情報を晒しているという理由で、いつ裏切り者認定されてもおかしくない状況だ。
「そ、それは・・・それにイザベル様の安全は・・・!?」
「私はなんとでもなるわ?
陛下にお願いすれば大体の望みは通るしね。
それに考えてみて?
イズヌから迎えた王妃の護衛が、王位継承権第一位の王女を攫って行方不明になるのよ?
国内も国外も大騒ぎ!
神聖ウィグル王国もイズヌもメンツ丸つぶれ!!
それだけじゃない!!
このまま私に子供が生まれなければ、天使シリスの直系の子孫もこの国からいなくなるということよ!?
斐山優一ザマァ!!
よくも私を殺してくれたわね!!
これが私の復讐よ!!
他の仲間たちには出来なかった事をこの私が平然とやってのける!!
痺れなさい!
憧れなさい!!
うーふっふっふっ!
これが完全勝利というものなのよ!!
第三部完ッ!!
あーっ、気分がいい!!
最高にハイッてやつだわーッ!?」
立ち上がったと思ったら、両腕を広げてくるくると回るイザベル王妃。
本当に嬉しそうだ。
ちなみに以前もどこかで明らかにしたが、
イザベルには21世紀の記憶があるので、当時のサブカル知識にも明るい。
また、フラアを主人公とする話は、全ての物語シリーズの中で第三部と位置付けられているので、イザベルのハイな発言も間違いではない。
・・・間違いじゃないったらない。
「・・・。」
ザジルはそれを暖かい目で見詰めている。
「それ」ってどれだよ、というツッコミは不要だ。
無理もない。
さっきまでは娼婦のような表情で男を誘っていたかと思えば、
次の瞬間には無邪気な少女のような笑顔も見せる。
イザベルは見てて飽きないのだ。
そして回転していたイザベルは機械のようにピタッと止まった。
「・・・ということでいいかしら?」
「そういうことにしておきますね。」
「どういうことかしら?」
「王妃殿下の演技の才能は素晴らしい・・・。」
「それって私の演技が下手って言ってるように聞こえるのだけど?」
「自白しましたね、わかります。」
「口が上手くなったわ?
この私から一本取るだなんて。」
「ここのところ王妃殿下の表と裏の顔の変化をずっと見続けされましたので。」
「ご褒美に私にその一本使ってみる?
やり方は私とアイザス王の営みを見続けていたそうだから知ってるでしょ?」
「すいません私の負けです勘弁してください。」
「ふふふ、心地いいやり取りだわ?
でもいいの?
あなたは私の共犯者になるのよ?」
「・・・いいえ、私の単独犯です。」
「本当にいい子ね・・・。」
自分の描いた絵図通りに動いてくれるというのだ。
飼いならした甲斐があるというもの。
なんと可愛い子だともイザベルは思う。
「ですが王妃殿下、大きな問題があるのですが・・・。」
「言ってごらんなさい?」
「そもそも、ですが、フラア様が・・・その、私などに・・・。」
それはそうだろう。
大国の王女がザジルのような護衛などにどうにか出来る筈もない。
しかしイザベルならその王女の内心すら覗き見る事が出来るのだ。
「ああ、そこは保証するわ。
あの子に手紙を渡して、あなたと二人っきりで会うと彼女が了承した段階で、
お前たちが相思相愛だと証明されたようなものよ。
そういう風に受け取れるような文章にしておいたから。」
「はいっ!?」
「ふふふ、あとはお前がどうやってあの子を口説くかだけの話。
・・・ただ、北伐を済ませないうちにお前があの子を攫うのは悪手よ?
私の仲間たちの息の根を止めるか、政治的にでもいいから彼らを無力化するまでは、
この王宮であの子を守るべき。
あいつらはしつこいからね。
草の根を分けてでもフラアを探し出すでしょう。
いくらお前でも組織相手に一人ではフラアを守れない。」
「・・・わかりました。」
「もう一度、確認するわ?
まずこの後、フラアに会いに行くこと。
そして彼女達が北伐を行っている間に、お前はイズヌに戻りラスボスの正体を探って、
ここに『生きて』帰ってくること。
以上よ・・・!」
「・・・かしこまりました、必ずや!!」
彼は自分の計画通りに動いてくれる・・・。
動いてくれるが・・・それは
「ザジル?」
「はい?」
「こっちへ来なさい・・・。」
「は? はい・・・。」
「私の足元でしゃがんで・・・?」
いぶかしながらしゃがむザジルの頭をイザベルが抱きしめる・・・。
「イ、イザベルさま!?」
メガトンクラスの破壊力を持った女の匂いがザジルの鼻から脳内に叩き込まれる。
これは何の匂いだろう。
甘い香水のせいもあるのだろうが、それだけではない。
イザベルの口の中から発せられるのか、それとも腋の下からか・・・。
張りのある二つの柔らかい盛り上がりが、自分の口元で潰れてゆく。
このままザジルの手でその塊に手を添えれば、イザベルは優しく微笑んでくれそうだ。
「ふふ、悲鳴なんてあげないから安心して?
でも、必ずよ・・・。」
「は、はいっ?」
いや、違う。
この雰囲気は誘惑されているのでも、からかわれているのでもない。
イザベルは・・・
「必ず生きて帰ってくるのよ・・・。
あの子を幸せにしてあげられるのは・・・あなただけなのだから・・・。」
ザジルには家族などいない。
家族がいたという記憶すらない。
母親がいたら・・・息子をこのように抱くのだろうか?
年の離れた姉がいたら、このように弟を可愛がるのだろうか?
そんなことを考えながら・・・
ザジルはイザベルの好きなように自分の頭をいじらせた。
「イザベル王妃殿下・・・
こんな・・・・こんな卑しい生まれのオレなんかに・・・
ありがとうございます・・・。」
「言ったでしょう、
私は生まれた時、陽の光すら浴びる事が出来ない場所に捨てられたのよ?
出生の身分なんて気にもならないわ。
それじゃ・・・お行きなさい・・・。
手紙を忘れないでね・・・。」
「あなたに仕える事が出来たことは、このザジルの一生の誇りとなるでしょう・・・。」
「帰ってきたら、もう一度そのセリフを聞かせてね・・・。」
「はい、必ずや・・・!」
腕を解かれたザジルは立ち上がりゆっくりと一礼して・・・
二通の手紙を懐にしまう。
そして彼は天井裏へと帰って行った。
もちろんいくら身軽とは言え、何の仕掛けもなく身体能力だけで天井まで飛び上がれるはずもない。
縄梯子を使っている。
そして・・・ザジルの気配が完全に消えたのを確認して・・・
王妃イザベルはひっそりと呟いていた・・・。
「これでまた、あの子の守りは一枚減ったわ・・・。
ええ、私は目的を忘れてない・・・。
計画は滞りなく進行中・・・。
でも、・・・ザジル・・・
ごめんね、ごめんなさい・・・
あなたは・・・決して生きて戻ってこれない・・・。」
黙祷でもするのかのように目を瞑るイザベル。
・・・やがて気持ちに一区切りつけたのか、
目を開いた彼女は次のターゲットに狙いを定める・・・。
その名はアルヒズリの将軍ランディ。
後は彼を陥落させれば・・・イザベルの完全勝利・・・!
イザベルはザジルに対して全く恨みはないので、
彼を騙して死なせてしまうことに心を痛めてます。
なお、ザジルが生きて帰って来たとしても彼女は何も困りません。
その後のいざこざを楽しんで見守るつもりです。
この場はあくまでも、フラアの周りから彼女を守る駒を一枚排除しただけの事。
けれど、この後、事態はイザベルの全く予想のつかない方向へ。