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第三百七十五話 さらば世界樹洞

ぶっくま、ありがとうございます!



・・・おかしい。

もう更新日だなんて・・・。

時間が飛んでる?


<視点 ケイジ>


短いようでかなり濃い時間を過ごした女神との謁見が終わる。

目的は、ダークエルフの至宝、深淵の黒珠を回収するだけだったはずだが、

あのメリーさんという人形中心にいろいろ衝撃的な話があった。


・・・もっとも、

もうこの世界で生きるオレにとっては、あまり関係はないと思う。

400年後に恐ろしい天災に見舞われるとなれば、カラドックも気が気ではないだろう。

けれど、余計なことをしてしまえば歴史が変わるかもしれないというのなら、

迂闊なことは何もできない。


メリーさんも大変だろうが、彼女にしてみれば終わった話なのだし、

やはりオレはカラドックのフォローに入るべきだろう。


 「・・・大丈夫か、カラドック?」


 「ああ、ケイジか、

 大丈夫って・・・何がだい?」


 「いや、何がって・・・お前のこれからだよ、

 肩に余計な荷物しょいこんでないかってな・・・。」


 「ああ・・・。」

カラドックは乾いた笑みを浮かべる。


 「そうだな、衝撃的な話ばかりだったが・・・

 今更なにを、とも思うんだよ。

 父上の秘密なんてそれこそ最初からだ。

 いちいち気にしてもいられない。」


・・・舐めてた。

本当にカラドックは凄い奴だと思う。

ていうかそれこそ、そんな最初っからこいつはスルースキルを身につけていたってのか。


まぁ、今になって思えば、あの男に対してオレたちは最初から別々の姿を見ようとしていたのだろう。


オレはあいつを普通の「父親」として見ようとして間違えた。

カラドックは最初からあいつを「天使」として扱った。

けれど・・・カラドックはあいつを天使として見做していたにも拘わらず、

あいつの姿の中に「父」の姿を見つけてしまったのだろう。


だから・・・前の世界でオレが殺される時、

地上に二度と姿を見せないと言っていた「あいつ」は、

カラドックの願いを聞いて、カラドックやオレの前に姿を現した。

・・・「天使」がそんなマネする必要なんてどこにも無かった筈なのにな。


まぁ、この話もオレの目の前にいるカラドックにとっては未来の話だ。

メリーさんではないが、オレとて過去やカラドックの未来を変えるわけにはいかない。


オレに言えるのは気休めだけだ。


 「・・・さすが一国の王だな・・・。

 だが、お前も無理はするなよ?

 今はカラドックも、この『蒼い狼』の大事なメンバーだ。

 愚痴くらいならいつでも聞いてやるからな。」


あ、カラドックの奴、微妙な表情浮かべやがった。

 「フハっ、ケイジにそんなこと言われるとは思わなかった。

 一応、礼を言っておくよ。

 ・・・そうだな、お礼代わりと言っては何だが・・・

 ケイジ、他人に気を遣うなら、君はもう少しリィナちゃんを気にするべきだ。」


あ?

なんでここでリィナが出る?

・・・アイツの場合、直近の問題は・・・

 「あ、ミュラか・・・。

 そ、そうだな、わかった!

 カラドック、サンキューな!!」


そうだよ、リィナを守るのはオレしかいない。

それはオレだけにしかできないんだ。


 「・・・いや、そういうことじゃ・・・

 それも、間違ってはいないんだけどもさ・・・。」

カラドックが小声で何か言っていたが、オレの耳でも捉えきれなかった。

きっと冷やかしか何かの言葉だろう。

無理に追及しないことにする。



それから少しして、リィナと麻衣さんが女神の所から帰って来た。

さっき麻衣さんが驚いたような声を上げていたが大丈夫だったのだろうか?


 「リィナ、どうだった?

 オレに聞かせていい話かどうかともかくとして・・・。」


二人はオレを前にして、戸惑うような表情を浮かべてから互いに顔を見比べて・・・。


 「あ、ああ、あたしたちはちょくで関係ある話じゃなくて・・・っ。」

 「そ、そうなんです、ケイジさん、

 あ、あの、お、女の子のだけの内緒話なんで・・・っ!」

 「そ、そう! 悪いけど男のケイジにはちょっと!」


・・・それはどう受け止めたらいいんだ?

けれど、女の子の内緒話と言い切られてしまうとそれ以上追及できないな・・・。


一応、カラドックにも振ってみるか・・・。

 「いや、それなら私も首を突っ込めないさ、

 念のために聞くが、君たちに危険があるような話じゃなかったんだね?」


リィナも麻衣さんも全力で首を縦に振っている。

どうやらそれは安心していいらしい。

ならオレたちは出発の準備に戻るとするか。



それからしばらくして・・・。


 「気になるかい、ケイジ?」

 「うわっ、って・・・え、さっきの話か?

 カラドックは内容を予想できるのか!?」


 「いや・・・見当もつかないね・・・。

 と言いたいところだけど・・・。」


 「わかるのか、カラドック!?」


 「自信はないけど恋バナ関連かもね。」

 「あ? この非常時にか!?」


 「何言ってるんだ、

 さっきケイジ自身だって、ミュラからリィナちゃんを守るとかなんとか言っていただろ?」


 「え・・・あれ恋バナのカテゴリーに入るのかよ・・・。

 魔物から狙われているリィナをどう守るか、という話のつもりだったんだが。」


 「・・・どうやら私とケイジの間には大きな認識の齟齬があるらしいな・・・。」


なに、溜め息ついてんだ、カラドック・・・。

だが、もしミュラの件なら女同士の会話とはいえ、情報を共有したいな。

麻衣さんは・・・

今はオレたちの5メートル程後ろにいるが・・・


あ、オレの視線に気づいて両腕でバッテン作りやがった!

ダメかよ、ちくしょう・・・。




 「それでは我々はこれで・・・。」


そしてオレたちは女神アフロディーテに別れを告げる。

巨漢の布袋も人工少女オデムも、女神の傍でオレたちに手を振っている。

 「狼のお兄ちゃん、またね!」


・・・そういえばなんでオレは懐かれていたんだ?

特に餌をあげてたわけでなし、なにかしてあげたわけでもなし。


 「たぶんケイジの体毛の魔力。」

 「きっとケイジのお肉が魅力。」


 「どっちもやめろ、

 身の危険しか感じない。」

二人のエルフは相変わらずマイペースだな。

もっとも二人とも新しいジョブやスキルを手に入れて機嫌良さそうだ。

とくにアガサはこれで祖国のミッションをクリアできたんだからな。


魔族娘のヨルは能天気にカラドックの後ろをキープしている。

こいつの問題も片付いていないんだけどな。

あくまで男女関係レベルの話なら、それこそオレはスルーさせてもらいたい。


メリーさんはさっきの話のせいか、一人寡黙にオレたちの最後尾だ。

色々考えこんでいるのだろう。

それこそさっきのカラドックではないが、

悩むことがあったらオレに相談しろよなんて、オレの口からはとてもじゃないが言えないけどな。


・・・あ、そうか。

 「リィナ、麻衣さん・・・。」


 「ほえ?」

 「はい、なんでしょうケイジさん?」


 「さっきの女神の話って、もしかしてメリーさん絡み?」

当然のごとく、小さな声で二人の耳にギリギリ届くように言った。


あれ?

二人の顔が・・・。


 「ケイジ! 凄いな、なんでわかった!?」

 「ケイジさん、天才ですか!!」


 「お、まさかの大正解か!!」

たまにはそういうこともあっていいよな?


 「何かあったらフォローをって話ですから、ここでこれ以上の話は出来ませんよ?」

 「あ、ああ、わかった、了解だ。」

今回はカラドックの予想は外れたようだな、

フッフッフ、オレの勝ちだ。


 「いえ、ケイジさん、カラドックさんも当たr・・・いえ、いいです。」

また何か聞こえた気がしたけど、これもスルーした方がよさそうな気がする。

それが空気を読むってことだ。

うんオレはきっと成長している。




 「では、皆さま、馬車にお乗りください。

 このままダークエルフの街エルドラまでご案内いたします。」


洞窟の外はまだ明るい。

アークレイや魔族の土地は肌寒かったが、

この辺りは南に降りてきたのか温暖だ。

恐らくだが南半球に位置しているのかもしれない。

となると今頃はこの辺りは夏場なのだろう。

それで日が落ちるのも遅いんだろうな。


エルドラまでとラプラスは言ったが、実際は今晩最寄りの人間の街に泊まる。

別に世界樹洞内にテント張ったっていいとは思うのだが、

ラプラス達にやんわりと断られた。


まあ、金はあるし、ここいらは魔物がいるそうなので、

いくら人手があるとはいえ、リスクは少なくするべきだろう。


オレたちは来た時同様、一人ずつ長馬車に乗り込む。

そういえば・・・


オレは既に御者席に乗り込んでいるラプラスの後ろから声をかけた。

前から聞こう聞こうと思っていたことだ。

 「ラプラス会長、

 答えられたらでいいんだが『バブル三世』の三世って何処から来たんだ?

 バブルは『泡』の女神からだろ?」


 「ああ、ケイジ様、

 それは・・・。」


そこでラプラスの口がよどむ。

やっぱり何か秘密があるのかな?


 「あ、別に無理ならいいぞ?」

 「あ、いえ、隠すほどの理由はないのですが・・・

 私達も何故その名前にしたのか・・・布袋さんとなんとなく決めたのですが・・・。」


 「ん? そんなことってあるのか?」

わざわざ盗賊なんて目立つことしておいて、更には犯行後にメッセージまで残す奴らだ。

そのグループ名を「なんとなく」で決めるようなマネには違和感しか感じない。


 「ふふ、いえ、いまはもう理由が分かっております。

 我らのマスターは三代目なのですよ・・・

 ですから三世と名付けた。

 恐らく私や布袋さんが創られた時に、既にその知識が与えられていたのでしょうね。」


 「え? 三代目・・・

 あ、そうか、元の世界と・・・400年後の世界と・・・

 そしてこの異世界に生まれた女神が三番目という訳なのか・・・。」



ん?

というともしかしてオレもか?

そっちの世界については記憶がないんだがな。



 「では皆さま、お忘れ物はございませんか?

 これより、世界樹洞を出発いたします。

 ご訪問誠にありがとうございました!」


馬なし馬車がゆっくりと浮かび上がる。


 「エアスクリーン展開!

 進路確認よし!! 出発進行!!」


そして馬なし馬車は空中を動き始める・・・。

だんだんと速度を増して・・・。


オレたちと女神アフロディーテとの邂逅イベントはこれでお終いだ。

振り返ると、天辺が雲に隠れている世界樹の幹が見える。


 「リィナ。」

オレから離れて座っていた彼女を呼び寄せる。

 「ん? どうしたケイジ?」

大した用があるわけじゃないんだけどな。


 「見ろよ、世界樹が小さくなっていくぞ。」

 「・・・ホントだね。」


 「思えばよくこんなところまで来たよな。」


自分で喋ってから・・・

前にもどこかでそんな言葉を使ったような気がした。

それはいつのことだったか・・・。


 「・・・今はみんなもいるね。」


リィナもオレが言いたい事がわかったんだろうな。

オレたちが初めて出会って・・・そこから冒険を始めて・・・

このパーティーは期間限定とはいえ、ここまでやってこれた。

森都ビスタールまでは二人っきりで・・・

そこでアガサとタバサが加わって・・・

アークレイの街でカラドック、

魔族の街でヨル、

魔人ベアトリチェの黄金宮殿へ行く道中で麻衣さん、

そしてメリーさんが加わった。



そういえばさっき、麻衣さんとメリーさん、女神とで興味深い会話をしていたよな。

誰かの筋書きはあったかもしれない。

でもそれを選んだのは本人の意志・・・か。


そう、・・・だな、

これは間違いなくオレの意志だ。

このまま・・・誰も失わず・・・

最後まで・・・この旅を。



いつの間にか、オレの手をリィナが掴んでいた・・・。

オレはその手を握り返し・・・そっとカラダを寄せ合った・・・。



☆ ☆ ☆


 「旅立たれたようですね・・・。」

 「マスター、どうかした?」


 「いえ、オデム、心配しなくても大丈夫ですよ、

 ただ、昔・・・

 私の同胞であるアテナやデメテルも、

 こうして『あの方』をお見送りしたと聞きましたので、

 奇妙な巡り合わせというか・・・少し物思いに耽っていただけです・・・。」


 「イブとリーリトは同一人物かも・・・ですか。

 それは、私達の祖先もそうだったのかもしれませんね・・・。」



 

「ん? イブとリーリトは同一人物?

つまりその正体は炎の魔神、イーフリートだったんだよ!!」

「な、なんだってーっ!?」


・・・嘘ですっ!


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