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第三百六十七話 いま、麻衣を追いつめているの

わーい!

評価ありがとうございます!

<視点 メリー>


 「・・・えっと。」

麻衣が再び手を挙げる。


 「あたし・・・そんな悲観・・・してないんですよ。」


 「どういうこと?」


 「少しだけ・・・その子のこと夢で見ました。

 その子の不幸の・・・発端になったその子のお兄さんのことも。

 ずっと後悔してるみたいです。

 地獄のようなところで、自分の犯した罪に苛まされて・・・。」


・・・ああ、そういえばあの子の血の繋がっていない兄は法王庁に殺されたんだっけ。

宮廷内でその話はタブーだった。

誰もが知っている話ではあるが、他国から嫁いできた私は知らないことになっている。

すなわち私にその話を持って来た者は彼女に悪意を持っていたという事。


 「・・・話は聞いてるけども、私はその男に会った事もないわ。

 正直どうでもいい。

 罪を犯したのならば相応の報いを受けるべきよ。」


 「ああ、そこで・・・でも。」


 「?」


 「あたしそこで思ったんですよ。」


 「なにを?」


 「その子のこと、救えるんじゃないかって。」


救える?

なに?

歴史を変えようとでも言うの?


 「・・・どういうこと?」

 「あ、いえ、どう言えばいいのかな・・・

 救えるというか・・・もう、救われているのかもしれません。

 あたし、その場で神様に会った気がするんです。」


はい?


 「信じてもらえる根拠はどこにもないです。

 メリーさんがあたしの話を疑っても、あたしはそれを信じてもらえるようなものは何も見せられません。

 あくまで『闇の巫女』がその目で見て、その耳で聞いて、そのあたしが思ったことしか言えません。

 それでもいいですか?

 聞きますか?」



 「教えて。」



 「その子は・・・自分で選んだんです。」



 「・・・なにそれ・・・」


 「正しい道なのか、それが彼女に相応しい道だったのかはあたしにもわかりません。

 でも・・・目の前にあるいくつもの道の、その内の一つを選んだのは彼女自身なんだと思います。」


再びカラダが張り裂けそうになる。

 「・・・ふざけないで。

 このカラダの前任者の娘と言えど、私は容赦しないわよ。」


麻衣は優れた感知能力者だけど身体能力はあくまでも一般人。

私の鎌の一撃から逃れる事など出来はしない。


 「・・・あたしはリーリトです。

 ママもそうです。

 他人の命令や思惑に乗せられることを誰よりも嫌います。

 ママがあたしのために命を投げ出したのは、運命だとか誰かのせいとかじゃないです。

 そりゃあたしだって、

 ママが死んだのは自分のせいだと思ったこと何度だってありますよ!

 でも違うんです!

 メリーさんにも娘さんいらっしゃったんでしょう!?

 その子があたしと同じような目に遭ったら、

 メリーさんだって自分の命は惜しくない筈です!!

 それを・・・それを娘さんのせいだって思いますか!?

 誰か他の関係ない人たちのせいだって思いますか!?」


この子は私が殺気を見せても全く怯まない。

この場の誰よりも高い感知能力を持っている筈なのに。

そこまで意志の力が強いというの?

むしろこの私がやり込められている?


けれど・・・ミカエラのことを持ちだされてしまえば麻衣の言葉に反論できない。


 「それは・・・でも麻衣、あなたにだって仕える人がいるでしょう・・・」


 「自由にさせてもらっています。

 ・・・まぁこの異世界転移については文句言わせてもらいますけど、

 犯人、それこそ天使君の可能性もありますしね、

 ただ、これだけは言えますよ。

 その神様、その黒髪の女の子のこと、目をかけてます。

 悪意は全くありません。

 とても優しい目でいつも見ています。」



 「そんな・・・そんなの、どうやって信じろと・・・。」

だいたい、麻衣の言う神様って・・・



 「ちょ、ちょっと待ってくれ、麻衣さん!!」

 「はい?」


カラドックが口を挟んできた。

何を言いたいか予想できる。

私の感じた疑問と同じだろう。



 「き、君は・・・君の主人はアスラ王ではなかったか!?

 だが今の話の中心人物は・・・私の・・・天使シリスの直系ではないのか!?

 なぜ、アスラ王が・・・いや、そもそもアスラ王とは何者なんだ!?」


あら、

さっきまで私に向かって啖呵切っていた麻衣が、

ぽかんとハトが豆鉄砲食らったみたいに。

 「あ・・・」


 「麻衣様・・・サイレンスかけた方が・・・いえ、もう手遅れですね。」

女神が呆れたように口を挟む。

あなたも役に立っていないわよ?

ていうか、それ、麻衣に言い訳する逃げ道封じちゃったんじゃない?


 「・・・ああああ~、え、と、

 それは誤解されちゃったかな・・・?

 カラドックさん、あたしが今しゃべってた神様ってのは、人間を作った人の事ですよ?」


うん?


 「・・・え?」


カラドックが何言ってるんだって顔してるけど、私もきっとそんな顔してるんだろう、

顔の筋肉ないけども。


 「人類の創造主ですよ、

 ですから、この世に生きる人間は、イブの子孫だろうとあたし達リーリトだろうと、

 全てその神様にとっては自分の子供です。

 天使君の子孫だとか関係ないと思いますよ。」


 「え、いや、それ・・・ちょ?」


 「それに何度も言いますけど、あたしアスラ王って人には会った事もありません。

 二年前にあたしを殺人鬼から助けてくれた人は、あたしのリーリトとしての本能みたいなものでその人の正体を予想しているだけで、

 誰にもその人が神様本人かは保証できないんですよ?

 もともとあたしも完璧に状況把握してるわけでもないし。」


 「え、でもさっき私の子孫を優しい目で見てるって・・・。」

 「ですからそれもあたしの夢で見た印象なんですってば。

 信じろって方が難しい話だと理解して喋ってます。」


とはいえ「闇の巫女」の口から出るお話なのよね。

信じがたい話なのは確かだけど、はっきり否定するのも難しいものね。


ただ・・・麻衣の話を事実だとすると、

新たな問題が浮上してくる。


 「麻衣?」

 「はい、なんでしょう?」


 「貴女の話を聞いて、ある一人の人物の姿が思い浮かぶの。

 それは私が会った事もないアスラ王の話ではないわ。」


 「え・・・は、はい?」

ずいぶん分かり易い反応ね。


 「そういえば、あなたの夢に出てきたって言ったわよね?

 黄金色きんいろの瞳の男・・・、

 あなたは彼のことを知っているの?」



 「う・・・。」


麻衣の表情が固まった。

いま、彼女はとても困っている。

何か隠し事があるのか、

自分の説明に矛盾があるのか、

自分でも何が何だかわからなくなってしまったか?


いや、最後の可能性はあり得ない。



麻衣が口を開けないなら開くようにしてあげよう。

 「彼は自分のことを『第三の男』と言っていたわ。」


 「ぐはっ?」

もっと正確には「光の天使」と言っていたけども、

そこまで言ってしまうとカラドックの更なる追及を受ける。

それは私にとっても麻衣にとっても、

理由は別だが歓迎すべき事態ではないだろう。


 「そ、その人のことも直接会ったことはないので・・・。」

でも麻衣はその男のことを特定したようね。


 「そうよね、私たちの時代の人間だもの。

 私もそいつには2回くらいしか会ってないけども、

 不思議と麻衣のさっきの話に重なる事が多いような気もするのよね。」


「人間を創った」とか、突拍子もないところが特にね。

いくらなんでも話の規模が大きすぎるし、私は勿論、「あの子」ですら疑っていた。


人間以上の力を持った何らかの存在、

それは間違いない。


その意味では「天使」と名乗るのも間違いないのだろう。

でもそれが人間の作り手などと誰が信用できよう。


 「あ、あたしがその人のことで言えるのは、

 夢の中で、『自分はいつか愛する人間たちに殺される』と言ってたことくらいですよ。」


 「人間たちに殺される?」


どうだったろうか?

あの男はそんな事を言っていただろうか?

私もそんなに詳しく覚えていない。

確かに彼はイズヌ国と東方教会の名のもとに処刑された。

でも、その後、墓場から這いずり出て来るのよね?


人間を神という存在に進化させると公言していたのは覚えている。

自分で自分の能力を「完全未来予知」とも公表していた。

ならば、今の麻衣の発言はそれに適合しているようには見える。


 「他にあなたの印象は?」


 「・・・あ~・・・あとはですかぁ・・・

 うーん、強い光のイメージですかねぇ・・・

 それこそあたしの『闇』属性とは『正反対』になるんですかねぇ?」



 「え?」

あ、それは・・・そうか、

自分で「光の天使」というくらいだから・・・。


でも・・・この違和感はなにかしら?


いよいよ次回、

「黒髪の女の子」を主人公とする世界で、決して明かす事のない真実の一端を・・・。

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