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第三百六十三話 いま、かつての大事な人たちを紹介するの

あっ!

久々に評価ポイントあがった!


ありがとうございます!

<視点 メリー>


ここまで長々と過去を振り返ってみたけれど、

実はまだ本題に入ったわけではない。


ただ女神のお節介の理由については納得した。

なるほど、私たちはともに「弾かれてしまった者」というわけだ。


ただこれから具体的に何を聞けばいいのだろう?

そもそも私自身よくわかってないのだ。


新入社員研修で、「何かわからない事でもあるかね?」と聞かれて、

「何がわからないのかわかりません」というところだろう。

就職したことないけども。


 「どうしました?

 納得はしていただいたようですが・・・。」

女神アフロディーテがこちらを窺う。

とはいえここで黙っていても話が始まらない。

先に進めるとしよう。


 「ええ、とりあえずは。

 ただ、いつも自分の中で取り留めもなく考えていたことだから、

 人に話すとなると何から喋っていいのかわからないのよ。

 元から人に相談する考えもなかったし。」


 「なるほど、それはそうでしょうね。

 ではこちらから誘導してみましょうか?

 話が見当もつかない方向に飛びそうでしたら、遠慮なく言ってください。」


気のせいか、深淵の黒珠で元の世界から帰ってきて雰囲気変わった気もするわ。


 「・・・ずいぶん親切ね・・・。

 ていうか手慣れてるような気がするのは気のせいかしら?」


 「ふふふ、一応これでも『愛と美の女神』ですので、

 故郷で村の若者たちの恋愛相談なんかもやっていたのですよ?

 あなたの言うように、わざわざ自分から首を突っ込む程ではありませんでしたけど。」


なにそれ楽しそう。

「あの子のハートを射止めるには抱えきれない花束を」、とか優雅に話していたのだろうか?


・・・なるほど、

それは私の方が甘く見ていたようだ。

ただ・・・


一度私は周りを見回す。

 「ええ、と、話が長くなるかもしれないけど、

 みんな大丈夫なのかしら?」


カラドックが頷いてくれる。

 「ああ、意外と深淵の黒珠の儀式が早い時間で終わったからね、

 メリーさんがこちらを気にする必要ないよ。

 ・・・でも私達に聞かれると不味い話になりそうかい?」


 「そうね、その可能性はあるけども、

 たぶん、私のプライベートな人間関係の話が中心になる筈だから、

 私が気を付ければいいと思う。

 その時になったら麻衣にサイレンスを掛けてもらおうかしら?」


自分に振られると思っていなかったのか、麻衣が慌てて反応する。

 「あっ、はい、あたしの方は構いませんよ?」


 「じゃあ、女神さま、お願いできる?」


 「はい、畏まりました・・・。

 ええ、と、あなたのプライベートな過去こそ、ここで喋ることになっても大丈夫なのでしょうか?」


 「それこそ、こんなカラダになってしまっているのだもの。

 今更恥ずかしがるような身分でもないわ。

 ただ・・・そうね、後でいろいろ突っ込まれるのも面倒なので、

 私が化け物だった時のことは避けてもらえる?

 それこそ、私が知りたかった真実とやらには何の関係もなさそうだから。」


そもそも普通の女の子なら、恥ずかしくて俯いてしまうケースかもしれないけど、

人に話せるような経験もないからね。

逆に化け物時代の話をして、気持ち悪いものを見るような目をされるのも、同情されるのもごめんだし。


 「そうですか、ではあなたが美しいお姫様だった頃の話を中心にしましょう。」


別にお姫様とまでは言えないわよ?

辺境伯の娘だったけど、そこまで華やかなものでもないし。

まぁ、一々反論するレベルの話でもないか。


 「というか・・・いきなり凄い経験をされたのですね・・・。」


もう既に私の過去は見終わっているのね。

ていうか、さっそくそこから来たか。

しかし「私」の始まりの場所なのだから仕方ない。

それにしてもさすが女性同士というべきか、それとも女神という存在の為せる業か、

余りに衝撃的な話はぼかして喋ってくれているみたいね。

傍で聞いているカラドック達には何のことかわかるまい。


 「私自身、よく分かってないのよ。

 果たして私は一人の娘のカラダを奪った悪霊なのか、

 それとも暴走した霊感能力を持つ一人の娘が私なのか。」


もちろん、自分で明かす分には何の配慮も要らないけど。

あら?

ケイジやカラドックが動揺しているのかしら?

動く人形をその目で見ておいて、今更そんなものに怯える必要ないでしょ?


 「・・・他にも仲間の方がいらっしゃるのですよね?

 であるならば・・・。」


その場合だと私・・・私達は悪霊よね。

 「他人の記憶を焼き付けられただけという可能性もあるわ。

 ・・・でも、これすらもどうでもいい話だとは思っている。」


 「どちらにせよ、あなたの二回目の人生は、その時から始まったと見て良いのでしょうか?」


もうどちらが「私」なのかわからない。

当初、辺境伯の娘の「私」は、日に日に自分の精神を浸食してくるもう一人の「私」に、

気が狂う寸前になるまで怯えていたけれど、

二人の記憶はそのまま残っているのだ。

人格と言えるようなものはいつの間にか融合してしまったのかもしれない。


 「ええ、それで構わないわ。」


 「では・・・次にあなたの心の中を占める人たちを視てみます・・・。

 貴女の記憶の中に、黒髪の可愛い女の子がいますね・・・、

 明るさと儚さを同時に併せ持つような・・・、

 いつの間にかみんなの中心にいるような不思議な魅力を持った・・・。」


 「私というフィルター越しではあるのだろうけど、その通りね。

 私の見た舞台の主演女優というところかしら。」



 「それと・・・あら?

 こちらも黒髪の子だけれど、顔つきは全然違いますね、

 赤ちゃんの姿から、成長する様子や花嫁衣裳まで・・・あなたのお嬢様ですか?」


 「ミカエラね、

 その子のことも詮索する必要ないわ。

 片親で育てたので裕福な暮らしはさせてあげられなかったけど、

 幸せな関係を築けたと思っているし・・・。」


彼女が産まれてからは特に不満などと言うものはない。

生きることと彼女を育てるのに精いっぱいではあったが、

誰に邪魔されるということもなかった。


 「メリーさん、いいお母さんだったんだな・・・。」

 「いいお母さんだったんですね・・・。」

ケイジと麻衣がキラキラした目でこっちを見てるような気がするのだけど。


 「え・・・この子はっ?」


 「どうしたの? 女神さま・・・。

 人の娘に文句でもあるの?」

私は死神の鎌を持つ手に力を込める。


 「あっ、いえ、そういうことでは・・・

 あっ、あの、お嬢様がつけてる胸元のアクセサリーは・・・!?」

ああ、その件ね。


 「・・・ミカエラが物心つく前に死んだ、彼女の父親の遺品よ?

 それがなにか?」


今度はカラドックが反応した。

 「えっ、私の子孫はそんな早死にしちゃったのかい?」


あら、バレちゃった。

別に構わないけども。

 「・・・ああ、ごめんなさい、カラドック、

 ちょっと私の方がいろいろやらかして王宮にいられなくなってしまったの。

 今の話は再婚した相手の娘の話よ。」


 「そ、・・・そうなんだ。」

そんなガックシ肩を落とさないで?


それより女神の方ね、

回答によってはタダでは済まさない。


 「あ、あの『紋章』は・・・私の愛した方が先祖代々身につけていたという神器ですよ?

 何故それを貴女のお嬢様が・・・。

 あ、メリーさん、あなたの夫やお嬢さまは・・・まさか。」


 「ああ、それで驚いたのね。

 ええ、400年も経っているから血筋については何とも言えないけど、

 確かに私の夫はアスラ王の子孫と言われていたわ。

 それに、あの『紋章』とやらは、アスラ王の息子である朱武も身につけていたもの。

 まず間違いないわ。」


再びカラドックから物言いが入る。

後回しにしてもらえない?

 「えっ!?

 ここに来てそんな新情報!?

 ちょ、ちょっと、待って欲しい!!

 アスラ王に子孫が!?

 しっ、しかし、リナちゃんは死んでしまって、

 梨香さんも朱全も子供はいない筈・・・。」


 「行方不明になった朱武の息子がもう一人いるでしょう?

 私達が暮らした国には、アスラ王の血を引く者がオアシスを根城にした魔物をたった一人で討伐した英雄の物語が残っているわ。」


そこでカラドックは安心したような柔らかい笑みになる・・・。

 「あ・・・朱路か・・・。

 あいつ・・・無事に生きているんだな・・・。」


それ以上は語らないほうがいいだろう。

その後、彼は再び旅に出たそうだが、その後の足取りはぷっつりと途切れている。

魔物を倒す時に「雷」を使ったという言い伝えがあるから、

彼も紋章を所持していたのだろうが、それが如何にしてアスラ王から託され、またその子孫に手渡されたのかは誰も知らない。


女神の方はまだ驚いたままね。

 「も、紋章の方も驚きましたが・・・そのお嬢様・・・まるで。」


 「まるで何かしら?」

 「あ、いえ、失礼しました。

 と、とても理知的で利発そうに見えたので・・・。」


当たり前じゃない、何言ってるのかしら♪

 「ええ、あの子は天才よ、

 それだけじゃないわ、

 人に思いやりがあって、とても可愛くて、それでいてそれをハナにもかけないほど謙虚で、リーダーシップがあって、いつも明るくて、料理も上手で、相手が金持ちだろうと乞食だろうと一切差別もせずに、運動神経も抜群で好き嫌いもないし、時々近所の悪ガキ相手を懲らしめる程度の悪戯心もあるけれど、ちゃんと相手のフォローも」

 「メリーさんメリーさん。」

何かしら、いまいいところなのに。


 「あ、あの、素敵なお嬢様のことは分かりました。

 次のお話に移ってよろしいでしょうか?」


 「あと百個くらいはノンストップでミカエラのいいところを紹介できるのだけど?」


 「い、いえ、それはまたの機会に・・・。」


なに引いているのかしら?

あなただって、自分の男を同じように自慢していたではないの。


 

女神アフロディーテ

「び、びっくりしましたよ、

だって、メリーさんのお嬢様って・・・ふぅ、紋章の話にしてうまく誤魔化せましたかね?」




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