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第三百五十六話 400年後の子供たちを二人に

・・・「それ」はオリオン座の彼方からやってくる・・・

<視点 ケイジ>


女神アフロディーテは自虐的な笑みを浮かべていた・・・。

 「・・・この私に何か異世界転移の謎でも解き明かしてもらおうと思ったのではないですか?

 申し訳ありません。

 私はあなた方に何もできない・・・。

 そんな・・・ちっぽけな・・・卑怯で・・・嫉妬深い存在・・・。

 期待してここに来られたなら、本当に申し訳ありませんが・・・。」



ヨルが号泣している。

リィナも真剣な表情だ。

一歩間違ったら、リナの祖母はこの時点で死んでいたということになる。

この話の後・・・無事にアスラ王はそのミィナという女性に追いついたのか。


麻衣さんは・・・本来無関係なはずなんだが、

そのアスラ王に仕える立場らしいことを考えると、そんな他人事ではなさそう・・・

いや、ていうより悲痛な表情を浮かべている?

ここはオレが声をかけよう。

 「麻衣さん、どうかしたか?

 何か辛そうじゃ・・・。」


 「酷すぎますよ・・・。」

 「酷い?

 ああ、その・・・ミィナさんて人を騙したことか?」


珍しい・・・彼女が怒っているように見える。


 「いえ、違います。」

 「え、違うって・・・じゃあ、女神様を殺してしまったことか?」

ん? でも麻衣さんはアスラ王を支える立場だろ?

なんで?


 「違います・・・!

 それ・・・その男の人の・・・お兄さんの精神をいたぶるためだけの罠です。」


 「いたぶる? な・・・なんだよ、それ?」

いたぶるってなんだ?

意味がわからない。


 「少なくとも・・・その世界では、

 あのお兄さんは、ご両親も殺され、お姉さんも殺され!

 友達も、仲間も・・・みんなみんな殺されてるんです!!

 それも・・・殺されるだけじゃなく、もしかしたら自分のお姉さんを幸せにしてくれたはずの、

 日浦のおじさんまでも自分の手で殺さなきゃならなかったし!

 自分の信じた仲間からも裏切られる羽目になったし・・・それ全部!

 あの人の中に眠る神様の力狙いですよ!!

 その力を引き出すために!! あのお兄さんの人格は邪魔だった!!

 あの人の人格が崩壊するような目に遭わせて、神様の力を手に入れるためだけに!!

 その為に執拗にあの人は狙われ続けたんです!!

 女神さまもその犠牲ですよ!!

 その目的の為だけに、女神さまは誘拐されていいように操られていたんです!!」


えっ、えっ、えっ、えっ、

ちょっと待てちょっと待てちょっと待て、


 「麻衣さん・・・今の話は・・・。」


 「あ・・・すいません、興奮して・・・。

 こないだの天叢雲剣からのサイコメトリーで得た情報です。

 たぶん・・・その解釈で間違いないと思います・・・。」


麻衣さんは少し落ち着いてくれたようだ。

だが待ってくれ、

その流れで・・・オレたちの世界のヤツの話と照らし合わせると・・・

もっと悲惨・・・いや、悲惨なんてもんじゃないぞ。


あの男は実の息子の朱武さんもその手に掛けている・・・。

子供たちの命を守ろうと、敢えて父親を名乗らず遠くで見守るだけにして、

いざ、名乗りをあげたそのタイミングで息子を殺してしまった。

あれが事故だったっていうのも痛ましい・・・。


挙句の果てには世界最強の軍事国家を創りあげても・・・

あの月の天使シリスは、まるで「無駄働きご苦労さん」とでも言わんばかりに、

街ごと消滅させてしまったのだ。


・・・折れる。


オレなら絶対に耐えられない。


リナを見殺しにしてしまったことで20年間捻じ曲がったオレからは、同情の声一つあげるだけで不遜に感じる。

オレごときの不幸で思い上がるなと。

ああ、そうだよな、

オレもその不幸に手を貸してしまっている。

元の世界ではヤツの孫のリナを助けられなかった。

何の因果か、別世界ではそのお姉さんとやらを殺したのもオレのようだ。

・・・オレはいったい何を・・・



 「麻衣様・・・今のお話は本当でしょうか・・・。」

女神の目の色が変わっていた。

あれは・・・何の感情なんだ・・・。


 「あ・・・それは・・・」

 「なるほど、・・・私は本当にうまく利用されてしまったのですね・・・。

 あの心優しき方を・・・そんな目に・・・!

 私があの方を・・・あの方の心を無惨にも傷つけてしまった・・・!

 やはり、やはり私はこの世界で、この牢獄に磔のまま、永久に罪を償うという罰が相応しいのでしょう・・・。」


女神の表情が本当に辛そうだ・・・。

怒りと悲しみで後ろの世界樹を破壊しかねなさそうなほどだ。

これ・・・メリーさん反応しないやつだよな?


いや待てよ?

罪を償う?

ただそれが・・・

それがこの女神が転生した理由・・・だってのか?

嘘だろ!?

 「い、いやいやいや!

 それは違うんじゃないか!?」


 「ケイジ?」

 「・・・ケイジ様?」

しまった・・・勢いで何も考えないまま声出しちまった。

女神は自分の話を否定されたんだから当然だが、

話に一応の理解をしたらしいカラドックは、オレが何を言い出したのかとこっちを見る。


え、っとどう言えば・・・!

だって、オレはリィナと・・・

あ、そうだ!


 「ま、待ってくれ、

 カラドック、お前はベアトリチェの話を知っているだろ?

 彼女は短い間だったけど、息子のミュラと・・・正しい関係をやり直すために転生したんじゃないのか!?

 あれを『償い』と言ってもいいかもしれないが、少なくとも転生は罪でも罰でもないよな!?

 だったら、この女神も!

 何らかの償いは必要かもしれないが『罰』じゃないんじゃないか!?

 何か他の意味がある筈だろ!!」


そう、そうだよ、オレだってリィナとやり直す機会を与えられた!

この女神の愛した人が・・・

え? まさかこの世界にいないよな?

来てないよな?

そんな伏線なかったよな!?

まあいい!

女神の愛した人がいないってんなら、何か他の・・・。



 「ちょっと、いいかしら?」


あれ?

今まで後ろでオデムと遊んでいたはずのメリーさん?

なんか二人の足元に、そこら辺の石で描いたような丸い円の模様がいくつも・・・

あれ、ケンケンパッってやつだったか?


 「はい、メリーさんでしたね、どうかなさいましたか?」

 「私には全く関係ない話だと思って、後ろで控えていたのだけど、

 気になる名前がセットででてきたので・・・もしかすると偶然じゃなかったのかと思って・・・。」


 「気になる名前・・・ですか?」


 「ええ、アフロディーテなんて名前は有名ですものね、

 それだけなら特に気にも留めなかったのだけど、ミィナという名前とセットにされると、

 ・・・・恐らく意図的につけられた名前だったのかなって。」


何のことだ?

女神の方も何が何だかわからないらしい。

メリーさんは何を知っている?


 「カラドックの治世から400年以上の後の話なのだけど、

 天空の彼方から災厄がやって来る。

 それを防ぐ事が出来なければ、地上から人類は全て死に絶えるとまで言われた最悪の災厄よ。

 ・・・結果は人間たちが必死の努力で防ぎきる事が出来たわ。

 その過程で勇敢な人たちが犠牲にはなったけども、

 当時の英雄たちは、『21世紀の』科学技術を用いて、その災厄を防ぎきった。」


ん?

21世紀の?

当然カラドックも理解できない。

 「メリーさん、それは・・・え? 21世紀!?」


 「その話は一先ず置いて欲しいの。

 カラドックに・・・ラプラスも理解できるのかしら、AIってわかる?」


知識としてはラプラスの方が当時の世相に近いせいなのか、

ラプラスの方が速い反応だった。

 「人工知能・・・のことでしょうか?」

 「人工知能? ああ、もちろん、知ってるよ、

 大破局の後、失われた技術だけども。」


それがどうしたっていうんだ、

女神だってまだ理解できていない。

 「あの・・・それが私の名前と、何か?」


 「迫る天空からの災厄を前に、天使『たち』は21世紀の科学技術を残したわ。

 その内、二つの人工知能が、400年後の閉ざされた軍事施設に稼働していた。」


な・・・!?


 「メリーさん! 君は何を言っているんだ!?」


 「人工知能は所詮プログラミングされた仮想人格なれど、

 当時の技術員たちと交流を深め、まるで本物の人間と会話するように喋っていたというわ。

 あ、残念ながら私はそれを目にしたことは一度もないの。

 もう・・・その技術は永遠に失われてしまったそうなので。」


 「そ、それがいったい・・・。」


 「二つの人工知能・・・

 地上に残されたその人工知能の愛称が『ミィナ』、

 そしてもう一つ、天空からの災厄を防ぐ最後の砦、

 夜空に浮かぶ月の裏側に作り上げられていたもう一つ・・・

 そこに地上とは切り離されたもう一つの人工知能、

 その名こそ『アフロス』・・・

 これって偶然だと思う・・・?」


 「アフロス・・・それは、あの方が・・・私を呼んでくれた名・・・そんな。」


カラドックが吠える。

 「メリーさん!?

 今の話はなんだ!?

 未来に・・・400年後の未来に・・・!

 月の裏側に人工知能!?

 それもその話が事実なら、それを作ったのは・・・アスラ王ってことに!?

 いや、先程『天使たち』って・・・父上もそれに関わっているとでも!?

 一体君は何を言っている!!」


 「・・・言ったはずよ、

 未来のことは教えられないと。

 カラドック、ウィグルの王とは言え、あなたは知らなくていい事。

 この話は忘れてもらえるかしら。」


ならオレも口を挟ませてもらう。

 「えっ、ちょっと待ってくれ、

 こないだ天使たちの目的は、シリスに人の心を覚えさせるとか、

 不老不死を与えるとかそんな話になってなかったか!?」


だが、オレに向けたメリーさんの瞳はとても冷たかった。

 「それが真相と決まったわけではないし、私も同意した覚えはないわ。

 それに彼らの目的を一つに限定する必要すらないでしょ?」


あ・・・それはそう・・・か、もしれないけど!



 「では・・・少なくとも・・・あの方は・・・

 私のこともその後も想って頂けていたのでしょうか・・・。」


あ・・・今は女神の話だよな・・・。

メリーさんは無情にも首を振る。

 「わからない。

 さっきも言ったように、ただの偶然かもしれないし、

 そもそも世界が違うのだから、あなた達が私の世界で、どういう出会いをしていたのかもわからない。

 全て想像するだけしかできないわ。」


メリーさんの言葉を聞いてはいたのだろう。

けれど、女神は一人で納得したかのように視線を下ろしていた・・・。

 「忘れないでいてくれた・・・。

 いえ・・・でも、とても・・・

 とても嬉しい話を聞かせて頂きました・・・。」


 

AI(仮想ミィナ)

『なぁ、このままだと二人ともおっぬぜ?

ここであたしと心中する気か?』


ディジタリアス(神聖ウィグル王国、王弟)

「国に戻ってもまた病室のような狭い部屋に閉じこもるだけの人生だ。

ここを人生の終着地にするのもいいだろう。」

九鬼実彦(九鬼帝国、みかど

「余も、ここまで面白いものを見させてもらったしな、

最期はディジタリアス殿と杯を交わして世界を救うのも一興よ。」


AI(仮想ミィナ)

『はぁ、しゃーねーな、

んじゃまぁ、先の短いおっさんたちに特別大サービス!

ミィナさんの水着姿で鼻血出せ!!

ホレホレ! この格好でお酌してやんよ!!』


ここで3Dホログラム投影!

ディジタリアス

「ぶほっ!? 半裸の女の子が現れたああああああああああっ!?

た、ただ私はオッサンではない!」

九鬼実彦

「ふぉぉぉぉぉぉっ! その布地の少ない破廉恥な衣装はあああああああ!?

国の踊り子たちに装備させるべきだったかああああああああっ!!」


「プログラムコード『最後の槍』」


この後、彼らは天空の災厄に突っ込んでいく。

なお、元からそういうプログラムが為されていたわけではない。

あくまでもAIが独自に学習していった結果である。

あ、水着公開の話ね。


ディジタリアス

「水着のデータはどこから・・・。」


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