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第三百五十三話 黙ってられない

またちょっと長めです。


<視点 変わることなくケイジ>


 「まず先に断っておきますが、確かに私の称号には、

 『世界樹の女神』、『泡の女神』、『愛と美の女神』がついておりますが、

 もともと人間以上の存在たる『神』などではありません・・・。

 一部の人間たちにそのように崇められていただけに過ぎません。」


女神との会話は相変わらずカラドックが行っている。

異世界出身同士ってことでな。


 「な、なるほど、ではあくまでも、元の世界では私達と同じ人間だという事ですね?」


少なくとも今の状態を見て人間とは言い難い。

外見上は確かに人間のようなのだが、

完全に世界樹と一体化しているらしく、飲食の必要がないらしい。

えっ、じゃあ排泄はどうなってとオレが言いかけたところで、リィナに足を踏まれた。

デリカシーに欠けた発言だったということだな。

女神は一瞬オレを睨んだ後、話を続ける。


 「ええ、ですが、私達は先祖代々神々の子孫であると信じ続けられてきました。

 神々の権能だけでなく、寿命も通常の人の倍は生きます。

 中には300年以上生き永らえている者もおります・・・。」


300年!?

それ、エルフより長生きだろ!!

後ろで麻衣さんも驚いたらしい。

 「それ、下手するとあたし達リーリトの一族より長生きかも・・・。」


麻衣さんの一族ってどれくらいの寿命なんだ?


 「カラドック様が先ほどおっしゃったように、私が冠するアフロディーテという名は、

 先祖が地上で暮らしていた時代に奉じていた女神の名前です。

 地上の戦火を逃れ、地底世界で暮らすうちに、いつのまにか女神を奉じる神官が、

 そのまま女神の名を取り込んでしまったのではないかと言われております。」


ん? なんだ? 地底世界?


 「・・・え? 地上? 地底世界・・・とは?」

カラドックだってそこは聞かずにはいられないよな。


 「私が出会った方のお話だと、

 地上のギリシアという土地で暮らしていたのが、紀元前1300年よりもっと昔の話ではないかと・・・。

 その時に火山の噴火や津波、そして海賊たちの襲来により、私たちの先祖は故郷を捨てたそうです。

 その一団は地底世界への入り口を発見し、地底世界に一つの大きな国を創りあげました。

 そしてそのまま、地上の喧騒も知らず、裕福ではなくとも穏やかに暮らしていたのですが・・・。」


紀元前からか・・・。

随分と大掛かりな話になって来たな。


 「ある時、地上に大きな争いが起き、続いて天変地異が起きたようです。

 その時のゴタゴタで私は黒十字軍を名乗る人間に攫われ地上に連れ出されたのです。」


黒十字軍・・・アスラ王のスーサにおいて軍部の母体となった団体・・・。

確かそのトップは宰相でもあったルードヴィッヒという男だったと記憶している。

そいつ自身はアスラ王に処刑されたんだったか・・・。


 「黒十字軍が絡んでいるのですね、

 ・・・ということは、あなたはその、地上の時間軸で言うと、

 まだ大破局が訪れていない麻衣さんの時代と、

 既に大破局が起き、30年近く経っている私の時代の中間からと考えていいのでしょうか?」


そこで女神は不思議そうな顔をした。

 「大破局・・・ですか?」

 「はい、先程天変地異と仰いましたよね?

 私たちはそれを大破局と呼んでいるのですよ。

 正確な原因は不明ですが、地軸の変動とも磁極の逆転現象とも言われています、

 その為に異常気象や大地震がずっと続いて・・・。」


 「自然現象ではありません・・・。」


は?

 「・・・えっ!?」


 「少なくとも・・・私の世界で起こったそれは自然現象ではありません・・・。

 精神能力・・・たった一人の誰かが起こした能力にて、大規模な地殻変動と海底火山の噴火、

 そして街を飲み込む程の大きな津波が世界各国の海岸を襲ったと聞いております。」


ああっ?

世界中に被害を与える規模の天災をたった一人の人間が超能力で起こしたってのか!?


 「そ、そんな有り得ない!!

 私の知るアスラ王でさえ、一つの山を吹き飛ばすとか局所的な自然破壊はできたでしょうが・・・そんな世界規模の災害を起こす超能力なんて・・・

 一体だれがそんなデタラメを!?」



 「私です。」

こ、この女神本人がその力を確認したって言うのか!?


 「そ、そんなバカな!?」


 「もちろん私だけではありません、

 私のような能力者なら、誰でもあの途轍もないエネルギーを感じ取ったでしょう。

 もっとも、確かにその世界的な災害被災そのものは私も見ていませんね、

 私が地上に連れ出された時には、既に地上は壊滅しておりましたので・・・。」


 「じゃ、じゃあ誰がそんな恐ろしいマネを!?」

 「・・・わかりません、

 その能力者の気配はあっという間に消えてしまいましたので・・・、

 地上に出てからも一度も感じませんでしたね。」


アスラ王よりも・・・さらに、もっと凶悪な能力を持った存在!?

そんなヤツが・・・。



カラドックはこれ以上聞いても話の進展はないと思ったのだろう、話を切り替える。

第一、世界が違うのならそれ程重要視しなくてもいいだろうしな。

 「あなたが地上に出た後に、ウィグル王国やスーサという国の名を聞いたことは?」


なるほど、その確認からだな。

女神は首を振r・・・あ、世界樹に埋まっているので振れないのか。

オレの目の錯覚だった。


 「いえ、聞いたことがありません、

 そもそも生まれてからずっと地下世界で暮らしていた私には、地上の知識など何もなかったのです。

 いまこの地にあって『異世界の知識』を持つラプラスさんの方が、旧世界については詳しいでしょう。」


そこでラプラスが口を開く。

 「ただ、私めの知識もそのような大災害は知りませんな。

 スマートフォンとか電気自動車くらいの知識はあるのですが。」


すげぇな、それ。

下手したらこいつの知識でこの世界に革命起こせるんじゃないだろうか?


 「あ、あの途中だと思うんですがすいません。」

麻衣さんが申し訳なさそうに割り込んできた。

何か気になることでも?


 「どうぞ、麻衣様。」

 「あ、はい、先程の話で、その大災害の前に戦乱が起きたって言うのは何ですか?

 少なくともあたしの世界ではまだ何もそれらしいものが起きてないので・・・。」


なるほど、それは気になるよな。

もし麻衣さんの世界でも同じよう天変地異が起きるなら、

その戦乱を天変地異の前触れとして注意する事が出来るだろう。


 「ええと、それは確か騎士団という人たちが全世界に宣戦布告をした話だと思います。

 ヨーロッパの国々の主要都市や軍事施設にテロを行い国家機能をマヒさせたと・・・。」


えっ?

騎士団っ!?


 「ちょ、ちょっと待ってくれませんかっ?

 騎士団!?」

カラドックもその名前を出されたら慌てるしかない。

オレは落ち着いてる振りをする。


 「はい、首謀者はウーサーだったか、アーサーだったか、

 どちらにしろ、私の・・・この後本題ではある私の愛する人が、

 彼らの愚行を食い止めました。

 私が地上に連れ出された時にはその争いは終結していましたよ。」


 「バッ、バカな!?

 騎士団が世界侵攻!?

 そ、そんな有り得ないっ!!

 いくらあなたでもそんな話を信じることなどできるものか!!」


そうだよな、

カラドックの立場からしたら肯定できるはずもない。

カラドックにとっては古巣のようなものなのだから。


 「・・・あなたはもしかするとその騎士団の関係者の方なのですか?」

 「今あなたが名前を出したアーサーは私の叔父だ!!

 そしてウーサーは私の祖父に当たる!!

 祖父には会ったことはないが、あの高潔な叔父がそんな事をする筈がない!!」


興奮してるなカラドック、口調が荒くなっている・・・。

オレもアーサーさんがそんな事したとは思いたくないんだが、

もしかしてその件、あのベアトリチェが関わってないだろうな?


 「た、度々お話の邪魔してすみません・・・。」

 「麻衣さん! 大丈夫だけどなにかあるのかい?」


 「い、今の話ってベアトリチェさんが言ってた奴じゃないですかね?

 カラドックさんのお爺さん? が、拳銃自殺したとか・・・。」


麻衣さんもオレと同じことを思ったようだ。


 「え・・・あ!?」


 「それに思い出しました。

 あたしの世界でも、イギリスの方でテロがあったって・・・。

 ただ、ごめんなさい、そんな詳しくなくて、いつの間にか沈静化してたみたいで、戦乱てレベルでもないし、もう終った話なのかなと・・・。」


オレたちの知らない世界では騎士団がとんでもない悪行やらかすのか・・・。

オレが言えた話じゃないけども。


そこで女神も何か思い出したようだ。

 「ああ、そう言えば私も思い出しました。

 あの方は騎士団のアーサーという人と和解して、ともに黒十字軍を倒すために別行動をしていたそうです。」


なら、そんな騒ぐような事でもなかったか?

ようやくカラドックも落ち着いてきたようだ。

いや、まだ動揺しているな。

 「す、すると・・・女神よ、

 あなたがやってきた世界は、魔人ベアトリチェが思い出したもう一つの別の世界・・・?」

 「ベアトリチェのことは知りませんが、あなた達とは違う世界なのは確かかもしれませんね。」


 「それと、アフロディーテ様?」

麻衣さんはまだ確かめたいことがあるようだ。


 「はい、なんでしょう?」


 「その・・・布袋さんからも少し聞きましたけど、

 その騎士団との戦乱を止めた人が・・・あなたの愛する人、

 そしてすなわち私達リーリトの主、ということになるんですかね?」


リーリトの主?

リーリトってのは麻衣さんの種族のことだよな?

妖魔の主ってことか?


 「リーリトの主というのは分かりませんが、

 あなたが過去に命を救われた人、というのは布袋さんから聞いています。

 間違いなく同一人物でしょう。」


 「じゃあ、え、と、カラドックさん。」

 「麻衣さん、なんだい?」


 「あたし、以前にリィナさんの天叢雲剣をサイコメトリーしたの覚えてます?」

え、ちょ、今それ蒸し返す? 


 「ああ、ケイジを叱った時だな。」

みんなでこっち見ないで!


 「そしてカラドックさんは、日浦のおじさんやライラックさんもご存知と。」

 「ああ、前にそう言ったね。」



 「リィナさんの天叢雲剣に、

 恐らくアフロディーテ様の愛する人・・・

 あたしを二年前、殺人鬼から助けてくれた人が、

 剣を握りしめて、日浦のおじさんやライラックさんを殺した映像が生々しく残っているんです。」


オレはその二人の名を知らない。

いや、一度アークレイの領主の館で聞いた気がするな。

流れからしてカラドックの故郷にあった騎士団の幹部だったのだろう。

一人は日本人のようだが。


この話はカラドックにとっては重要な話かもしれないが、オレを含めてアイツ以外のものにはさしたる興味も・・・


と思って一度後ろを振り向いたら、

何故かメリーさんとオデムが地べたにペタンと座ってあやとりをしていた。

いいのか、お前らそれで。

 


 

麻衣「ああ、言っちゃった・・・」

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