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第三百四十九話 「三人目」(画像有り)

ぶっくま、ありがとうございます!


・・・夜寝る前というか、布団の中で次回のプロットを考える。

よし、この話もいれよう、こんなセリフにしよう、などと考えをまとめて・・・


翌朝になると全て忘れる・・・

<視点 引き続きメリー>


例によって、私の沈黙の時間が長かったせいか、カラドックに訝しがられた。

 「メリーさん、どうかした?」

 「いえ、ちょっと考えを整理させて欲しいだけ・・・。」


ちょうどいいタイミングだったので、私の中の記憶と新たな情報のすり合わせを行う。

・・・どうもやはり彼らから聞いた話と、私が抱えているアスラ王に対するイメージがかけ離れている。


私は天使シリスが人間だったころ、すなわち彼が斐山優一と名乗っていた頃は知っているが、

アスラ王とは一度も会った事がない。

彼は超強力なサイキック能力を誇り、絶大な戦闘能力を持つ超人だという・・・

他にアスラ王に関して知っていることは、彼の血縁関係くらいか・・・、

これら全ては、カラドックが晩年に残した「ウィグル王列伝」に記載されていること。


すなわちその情報は今カラドックが語ったこととなんら矛盾しない。

するわけがない。


つまり違和感が生じているのは、この世界でカラドックが麻衣と出会ったことにより、新たな事実が判明している・・・

すなわち鍵を握るのは、世界情勢に疎い筈の麻衣・・・ということになるのか?


いえ、待って?

そもそも、アスラ王が歴史で伝えられる姿と異なるイメージを最初に私が持ったのは、

私が人間だったころではないのか?


そうだ、

大陸戦争勃発の発端となった、あの旧世界の軍事施設アトランティス・・・。

天使シリスの末裔のみしか解くことのできないという封印が施された秘密基地、

それを作ったのはアスラ王だという。

しかもそれが完成したのはウィグル王国のカラドック王が退位した後の話らしい。

歴史上からは、アスラ王も天使シリスも、その痕跡は完全に消滅した筈なのに、

一体それはどういうことなのか?

私が直接確かめた話ではないので、どこまでが真実なのかとも言えないのだが・・・。



そこまで考えていた時、再びカラドックが質問してくる。


 「メリーさんが、私に未来のことを伝えられないっていうのは、

 私がそれを知ることで未来に変化が生じるからってことだよね?」

 「ええ、そうよ。」

 「・・・君が未来の情報を私に伝え、

 その情報によって、私が元の世界に戻り、何らかの行動を異にする・・・

 それって余程のことだ思うんだけど・・・。」


 「余程のことよ、

 地球が滅ぶのだもの・・・。」


 「「「えええええっ!?」」」


カラドックには、私や私の大事な人たちの存在が消えてしまうという話より、

地球そのものが危機だという話をした方が効果的だろう。

何しろ彼は、当時世界最大の領地を持つ王様なのだから。

さすがに麻衣も、・・・あと何故か狼獣人のケイジも驚いているようね。

他所の世界のことなんか、そんな興味を持つ必要もないだろうに。

ただ麻衣の世界は危ないわね。

パラレルワールドと言っても、彼女の世界と私の世界はそんなに差はなさそうだ。

同じ太陽系の地球を舞台にしている以上、「それ」は必ず近づいてくる。




そう・・・天空からの災厄・・・。

中世ヨーロッパ程度の文明しかなかったあの時代に、

人類がそれを防ぐ手段などありはしない。


アスラ王が残した遺産、

そして21世紀に行方不明になった有人火星探査船の宇宙飛行士、

さらに天使シリスの従者ツォン・シーユゥ、

それらが揃っていたからこそ、あの災厄を防ぐ事が出来た。

まるで・・・400年も前に「災厄」がやって来ることを知っていたかのように。


いえ、「彼女」は私に教えてくれたではないか。

「あの男」を含む「三人」の天使が手を組んだ結果が「人類の救済」だと。


『手段は用意する、

ただしそれは人間自らが造り上げたものだけだ。

だからこそ、人間に干渉してはならない筈の私たち天使が、君たちに手を差し伸べられる。

あとは・・・天空からの災厄を払えるかどうかは、きみたち人間次第、というわけだったのさ。』


そう「あの男」から聞かされたと。

もっとも「彼女」自身、「あの男」の話を信用しきれてはいなかったようだった。

「あの男」のデマという可能性があるのなら、この場でカラドックや麻衣にその話を伝えるのも躊躇われる。



おっと、話を戻そう。

 「大丈夫よ、

 カラドックが元の世界に戻って、何も知らずにこれまで通り王として国を治め、

 歴史が変わらないのなら、地球も人類は救われる。

 国家の形態は変わったかもしれないけど、ウィグル王家も残っている。

 だからあなたは余計なことを知る必要は全くない。」


領土は小さくなってたみたいだけどね。

そういえば、ウィグル王国は第三代国王ウェールズの治世に、

突然歴史から一度姿を消すのよね。

いえ、それはウィグル王国だけでなく周辺諸国全ての歴史が消えている。

その間に何が起こったのかは、誰も知らない。



 「そ、それは責任重大だな・・・。

 なるほど、未来を変えるわけにはいかないね・・・。」


さすがにちょっと顔色が悪くなったかしら。

話を変えたほうがいいみたいね。

 「こちらからも質問させて?

 カラドックが直接シリスから聞いた天使の目的は、

 地上の『魔』を監視するってことで良かったのよね?」


これは先ほどカラドックと麻衣が言っていた、二人の天使が現れた本当の目的とやらの手がかりだ。

少なくとも天使シリスの目的がそこにあるのに疑いはない、ということで話を一先ず確定させたい。


 「ああ、そ、そうだけど、誰からそんな話を・・・。

 あ、マルゴット女王経由かい?

 ちなみに『魔』ってものが何なのかは父上は何も明らかにしていないよ。

 私が知りたいくらいだ。」


私は首を傾ける。

どうだったかしら?

女王とそんな話をしただろうか?

覚えていないわね、

たぶん、ウィグル王列伝に書いてあったか、

冷凍睡眠装置で私達の時代に目覚めたツォン・シーユゥから聞いた話だったか・・・。

確かに私も「魔」とは何かと聞かれても、何のことかさっぱりなのよね。

旧世界の私達化け物の集まりがそうだと言われても否定できないけど、

少なくとも天使に警戒されるような活動をしていたとは思えない。

400年後に私達がどんなにシリスの子孫に危害を加えようとしても、

「相手にされてない」。

それが正直なところの私の感想だ。

むしろ今では、体よく利用されていたかのような印象まで持っている。


 「魔の正体・・・。」

 

一応、口に出してみたけど違和感しかないわね。

これが何なのかわからないと、その先に進めないような気もする。

けれど、それを知ることが「私の知りたかったこと」?

ううん、それも違う気がする。

ではアスラ王の正体についてはどうだろう?

確かに今現在、それについては謎であり、

知りたいかと言われれば、教えて欲しいと願うだろう。

・・・恐らく自殺した夫もそれについて探求していた筈だ。

怪しげな降霊術にまで手を染めて・・・。

いや、夫が追っていたのは世界の「真理」・・・だったか。


・・・ただ、そうね、

その「真理」とやらを知ることで、

私の知りたかったことも・・・明らかになるのだろうか。

それはあまりに短絡的かしら?


もっとも、それを追及するのはこの場ではない。

迂闊に多くのことを明らかにしてしまうと、

余計なものをカラドックが知ってしまう。


なるほど、

麻衣が未来の出来事を知っている筈もないだろうが、彼女に倣ってここは慎重になろう。


この後、出会うマスターとやらも転生者のようだし、

新たな事実が明らかになるかもしれない。


 「私の知りたかったこと」・・・か。


それは・・・なんだったろう?


「彼女」を・・・あの子を死なせずに済ませる方法はなかったのか?

私があの子を死に追いやってしまったことは避けられなかったのか?

そもそもそれは私が本当に望んだことなのか?

誰かが私たちを陰で操っていたのではないのか?


いろいろと思い付くのはあるが、

自分の心の中でさえ「これだ」と確定できるものはない。

ただ・・・やはりそれは夫の追い求めたものとは違う筈だ。

そうとも、私が追い求めたものは夫とは違う。


まあいい。

彼らとこの旅を続ければ・・・今まで見えなかったものが見えてくるかもしれない。


今はこの旅を続けるとしよう・・・。

 


挿絵(By みてみん)

光の天使

カラドックの400年後の世界には、

天使(自称)が一人復活します。

当時の主人公曰く「胡散臭い」だそうです。

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