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第三百四十六話 そして

<視点 ケイジ>


それからのことを書こうと思う。


まず魔人側についてではあるが、この廃墟と化した黄金宮殿の瓦礫を片付けた後に、

大々的にベアトリチェを悼む葬儀と、その後、魔王ミュラの即位式を行うことになるそうだ。

そちらについては魔族全体の問題となるので、各地から有力者を招集するという。

マドランドの町長であるヨルのパパも例外ではなく集められる。


黄金宮殿に住むものは、もちろん「聖なる護り手」だけのわけもなく、

戦闘には参加しなかっただけで、ヒューマン・亜人含め大勢の住人がいるそうだ。

彼らが総出でこれからのことに当たる。


そして当然、オレらがそれに付き合うこともない。

カラドックが言ったように、「魔王」と共同歩調を取り、邪龍に立ち向かうという話は、

画期的ではあるが人類側にとって前例がないだけに重大な案件だ。

この場の人間だけで話を進められるようなレベルのものではない。

また、オレたちの帰りを待っている者達もいる。

彼らに一刻も早く今回の経緯を伝えねばならない。


簡単にそれらのことだけ魔王ミュラに伝えると、

あいつもすんなり了承した。

ていうか、「さっさと帰れ」ときたもんだ。

それはいいが、その後、ミュラはとんでもない事を言った。

 「なんなら、その・・・リ、リィナって子はここに残ってもらってもいいけど?」


 「えっ? あ、あたし? そ、それは、・・・その・・・」



・・・このクソがきゃいい度胸してんじゃねーかてめぇぶっころs


その辺りでカラドックとマルゴット女王に妨害されて、

人類社会悲願であるオレの勇敢なる魔王暗殺作戦は失敗に終わった。

血の繋がったオレに対して、二人掛かりの精霊術で凍えさせるなんて酷くないか?


そしてオレの意識は遠くなった・・・。





気が付くとリィナはオレの傍にいた。

良かった、ミュラにかどわかされちゃいないみたいだ。


あ、そうだ、

オレが意識を失っている間に、カラドックが重要なことを聞いていた。

即ち邪龍の棲家について。


結論を言えば邪龍に会ったことがあるのはベアトリチェのみ。

邪龍がどこに潜んでいるかはベアトリチェのみしか知らない。

では人間の魂をどうやって与えていたかについては、

黄金宮殿の奥に邪龍に魂を捧げる神殿のようなものがあり、

そこからベアトリチェが召喚した魂を送っていたようだ。

ハイエルフのオスカによれば、

こちらからの一方通行で、物質は送れないという。

それはまた厄介なことになるかと思ったが、

麻衣さんの想像では、この後会う予定のラプラスのマスターが、邪龍の場所を知っているのでは?

と言うことで先に持ち越すことにする。



 「帰ろう、完全勝利とは言えないかもしれないけど、

 当初の目的を脱落者なしで達成する事が出来たんだ。」


カラドックが朗らかに言う。

そうだよな・・・。

オレは皆を見回す。

ああ、全員揃ってるな。

護衛騎士ブレモアも復活している。

強いて言えば妖精ラウネだけが瀕死のようだ。

「聖なる護り手」の少年僧侶を狙っていたらしいが、向こうもラウネを相手にするような余裕はなくなってしまったからな。

瀕死と言っても命に別状はないそうだ。

魔法や会話といった活動が出来なくなるだけで、アークレイの街までは静かになるだろう。


ゴツゴツした岩山に囲まれた正面出入り口を後にする。

入ってきた時には肉眼では見ることのできなかった、毒々しい色のヴェノムドラゴンが入り口付近に控えていた。

鬼人オグリの代わりだろうか?


オレらに対して警戒心を剥き出しにしていたようだが、麻衣さん曰く、自分から攻撃することはなさそうだとのこと。

傍に竜人がいるからコントロールされているのだろうか?


そしてその竜人ゾルケトフと言ったか・・・

緑色の皮膚をした戦士が声をかけてきた。

 「オグリが失礼しとぁ、

 しかしよくあの鬼人を撃破したものゆぉ、

 次にまみえる時は違う形で会うことになるだるぉ。」


出来れば敵で会いたくはないな。

鬼人相手にあれだけ苦戦したんだ。

おそらく鬼人と同格と思われるこの竜人相手に善戦できるとは思えない。

もし味方となるならこんな心強いものはいなさそうなんだが。




しばらく歩いていくと、

馬なし長馬車を待機させていた窪地に出る。

そこには会長ラプラスが、ビシッとまるでどこかの執事のような姿勢で待ち構えていた。


 「おお、皆さま、よくぞご無事で!

 お飲み物を用意しておりますのでお身体をお休め下さい。」

 「まるでオレらがこのタイミングで帰ってくるのがわかってたみたいだな?」


 「はい、我がマスターから逐次状況はお聞きしておりました故。」


あっ、こいつの上司である転生者は遠隔透視できるんだったけか、

・・・いやそれを常時、配下の人間に念話か何かで伝える事が出来るのか?

便利な能力だな。


その後、ラプラスと情報交換する。

魔人ベアトリチェとその息子ミュラは、マスターの知り合いではないとのこと。

ただ、マスターの世界において、ベアトリチェは黒十字軍という組織の一員であったようだ。

その世界においてひっそりと暮らしていたマスターは、その黒十字軍の人間に誘拐されて囚われていたらしい。

オレの前世において、黒十字軍はアスラ王治めるスーサの軍部の母体だとされていた。

やはりなんらかの繋がりはあるのだろう。


 「一度、アークレイに戻って各国に情報を伝えねばならない」


ラプラスはそれを了承した。

オレたちだけで全部できるわけじゃないからな。

まずは冒険者ギルドに報告、

アガサにタバサは自分たちの郷里に事の成り行きを伝えねばならない。

タバサの出身である森都ビスタールの中央神殿からの依頼は、ほぼ達成されたと見ていいだろう。

もっとも、邪龍復活という新たな問題が湧きあがったために、恐らく契約更新となるはずだ。

アガサの魔法都市エルドラからの依頼は、この後、マスターとやらの所に向かうことで解決する方向だ。


マルゴット女王がマスターに会いたいとか駄々をこねてたけども、本人も女王の仕事を忘れてはいないようで、これから自国に戻って内外に魔王の誕生と邪龍復活の兆候及びその対処に向けて動いてくれるという。


・・・落ち着いて考えると滅茶苦茶ハードな仕事だな、それ・・・。


妖精ラウネは、この後ブレモアの保護のもと、

冒険者ギルドで三人ほど食糧を調達した。

・・・一人目が大変だったらしい。

なにしろ、見た目幼女がベッドの上に力なく横たわっていたのだ。

「じゃあ、どうぞ。」と言われて「え? これヤバくね? 犯罪じゃね?」と、ラウネの生態を説明されても中々信じてくれなかったらしい。

今まではラウネ本人が主導していたから精気を与える人間側も問題なかったわけだが・・・

いや、問題はいろいろあるのは今は置いておく。

今回の問題は、ラウネ本人の意思が確認できないので、

どう考えても、いたいけな幼女を意識のないうちに手籠めにしてしまおうとか、そんな状況にしか見えなかったという。

途中から目を覚ましたラウネが、歓喜のあまり涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら冒険者に抱きついて腰を動かしていたと言っていたけど、

・・・ああ、ブレモアよ、それ以上の情報も解説も要らないぞ。

想像したくないからな。

ただ、その一人目の冒険者と、護衛騎士ブレモアが新たな境地に目覚めなかったかどうかだけが非常に気になる。


この件は早く忘れよう。


アークレイにはベードウーア王国のタッカーナ王太子がまだ残っていたようだ。

もはやマルゴット女王に逆らおうという気概はどこにもない。

女王も「この情報をそなたの手柄にするとよい」と、完全にタッカーナ王太子をコントロールしていた。

マルゴット女王を絶対に敵に回してはならない。




アークレイで一晩過ごした後、アークレイで女王チームと別れ、

オレらを乗せたラプラス=タクシーは、麻衣さんの感知能力だよりに人形メリーを回収する。




崖から落ちたという馬車の荷台の元で、人形メリーは前回麻衣さんに召喚された時のように、両手を組んで眠っているかのようだった。

もっとも、人形に睡眠行為など必要なはずもない。

単に動き回る用もないし、何より自分が活動するだけのエネルギー・・・すなわち人間の感情が辺りに全くないため、じっとしているしかないとのことだった。



そしてオレたちはラプラスの空飛ぶ馬なし馬車に乗せられ、

もう一人の転生者であるマスターという女性の元へと向かう。



 

どうしようかな。

この後すぐに泡の女神の所にいってもいいけど、

間に一つのエピソードを挟むかどうか・・・。


次回更新まで悩まさせてもらいます。

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