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第三百四十五話 修羅場

ぶっくま、ありがとうございます!


お礼代わりというか、

今回の話の終わりに、メリーさんの中の人が人間だった時のご友人をアップしますね。

<視点 引き続きカラドック>


私はパーティーの元に戻って、

後ろで縄でぐるぐる巻きになっているヨルさんを抱き起こす。

状況が状況なので、なるべく優しく扱ってあげると、ヨルさんは目をウルウルさせながら私にカラダをもたれさせてきた。


どうせ、穏便に終わる事など有りはしないのだ。


案の定、猿ぐつわを外した途端、やっぱり「それ」は溢れ出す。

 「ああああああ、やっぱりカラドックはヨルの白馬の王子様ですよぉぉぉぉぉっ!

 囚われのヨルを救いに来てくれたですぅぅぅ!!

 もうヨルは身も心もカラドックのものですよぉぉぉぉっ!!」


 「ヨルさん。」

 「はっ、はぃぃぃ!

 この話の流れはっ! プッ、プロポーズですよぉぉっ!!

 ついにこの時が来たですよぉぉっ!!

 あっ、カッ、カラドック! そっそんな真剣な目でっ、ヨルをっ!

 ヨルのことを見つめてくれてっ・・・」



 「ヨルさんは魔族・・・だね。」


 「・・・えっ」


 「今までの話の流れは理解しているね?

 ここから先は私には強制できない。

 今まではヨルさん個人の意志で私たちについてきてくれたはずだ。

 でも・・・君が魔族なら・・・今後、魔王に従うべきなのか・・・。

 そうだというなら、私達はここで・・・お別れとなる。」



 「カ・・・カラドック、そっ、それはっ・・・」

ヨルさんはこの世の終わりが来たみたいな顔をしている。

私は残酷なことをしようとしているのだろうか。

これ以上、事態を引き延ばしにする方が残酷ではないのか。

正解はわからない。


私達の背後からメイド魔族メナの叫び声が上がる。

 「何を当たり前のことを言っているのですか!!

 そこの女も魔族なら魔王様に付き従うのが当然です!!

 もしその絶対のルールを破ったならば、その者は魔族全てから裏切り者として追われることなるでしょう!!

 それだけじゃありません!

 ヨルと言いましたか!?

 私は聞いていましたよ!!

 そのカラドックとかいうヒューマンは、こことは違う別世界から来たのでしょう?

 そしてこの騒動が終わったら、元の世界に帰るとも!!

 わかっているのですか!?

 あなたとその男の間にある溝は種族や身分の差どころではない。


 まさしく住む世界が違う!!

 一人の男性に思いを寄せる姿はこの私にも理解は出来ます!!

 ですが、その先に・・・あなたの願うその先にはハッピーエンドはあり得ないのですよ!!」



そうだ、

その通りだ、まさしく正論だ。

あのメイド魔族メナは、正しく私の言いたいことを全て言い切ってくれた。

 「メナさん、だったね、ありがとう・・・。」

 「・・・貴方に礼を言われる筋合いは有りません。」



私は少し笑みを浮かべた後、ヨルさんに向き直る。

彼女は結論を出せるだろうか?


 「カ、カラドック、・・・ヨルは・・・ヨルは」


今まで彼女は気づいていなかったのだろうか?

考えないようにしていたのだろうか?

ついにヨルさんは、その質問を私に向けた。

今まで一度も尋ねたこともない・・・「私」のほうの気持ちについて。


 「カラドックは・・・どうして

 ヨルに

 ついてきて欲しいって

 言ってくれないんですかぁ・・・?」


 「ヨルさんは私の部下じゃない。

 私にそんなことをいう権利はない。」

 「っ・・・そんな事を聞いてるんじゃないですよぉぉぉっ!!

 権利とか筋合いとか関係ありませんですぅぅぅ!!

 ヨルは! ヨルは!

 カラドックにとってどうでもいい存在なんですかぁぁっ!!

 いてもいなくてもどうでもいい女なんですかああああああああああああああっ!!」


ヨルさんの爪が私の肌に食い込む。

痛みなど甘んじて受けよう。

これは私の責任だ。

逃げることは許されない。

彼女の琥珀色の瞳から大量の涙が零れ落ちる。



前にも言ったはずだ。

私には妻も息子もいる。

彼女達を裏切ることは出来ない。


それが正しい答えの筈だ。

一人の男として答えるならば。


だが私の決意を揺るがすのは戦略家としての自分だ。

ここでヨルさんを突き放してしまった場合、

彼女は私たちの敵となる公算が大きい。

現状、魔王側と私達で明確な敵対関係にはないが、

彼女は敵となった者に容赦はしない。


それをシグの時に見ている。


私だって人の子だ。

一時でも自分に思いを寄せてくれた子に対して、そんな血みどろな結末を迎えさせたいとは思えない。

それに何よりも・・・・。


 「ヨルさん、

 私は君に家族や親族から裏切り者と罵られる姿なんか見たくない。」


 「そんなものはどうだっていいんですよぉ!?

 いま、ヨルが知りたいのはカラドックの気持ちですよぉぉ!!」


 「気持ち?

 気持ちだって?

 ヨルさん、私の気持ちを知りたいって言うのか?」


その瞬間、彼女は怯えた表情を浮かべる。

この私の口から残酷なセリフが突き立てられる恐怖を思い浮かべてしまったのだろう。


・・・だけどね。


 「気持ちだけでいいのなら・・・

 私だってこのまま君を抱いてしまいたいっ!

 この口を君の唇にかぶせてみたい・・・!

 そう・・・思っている。」


 「・・・へっ?」


ボヒュンっ、と音がしそうなほどヨルさんの顔が赤く燃え上がる。

 「カ!?

 カラドック!?」


 「けれど・・・私はその衝動に身を任せることはしない。

 しないんだよ、ヨルさん。

 私の心の中には、今も愛するラヴィニヤがいる。

 私が彼女を裏切ることは決してないんだ・・・。」


上げてから落としてしまった。

本当に・・・私という男は最低なんだろうな。


 「う・・・うあ、うわああああああああああああっ!

 カラドックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」


痛いほど胸を叩かれる・・・。

いつかこうなるとはわかっていた筈だ。

後は彼女と剣を交えるような状況さえ避ける事が出来ればそれでいい・・・。

私が彼女に対して望むのはもはや、それだけだ。





だが、

私の計画は意外なところから妨害が入った。


 「あのさ・・・

 煩いんだけど・・・そこの女は僕の部下となるのか?」

離れた場所から、私達の会話にミュラが介入してきたのである。


 「ぐ、ぐずっ、魔族は魔王様の配下となるですよぉぉ・・・。」


 「ならばお前に指示を与える。」

なんだって?


 「はっ!?

 はいですよぉぉ!?」

 「お前はスパイとして今のパーティーに潜りこめ。

 僕に敵対行為がないようにカラドック達を監視するんだ。

 可能なら、カラドックを誘惑して意のままに従わせたって構わない。

 それまではカラドック達の味方のフリして、戦闘にも参加するんだ、いいな?」


ええっ!?

何を言い出すんだ、こいつっ!?


 「まっ・・・魔王さま、そ、それって・・・ヨルが・・・

 今のまま・・・カラドック達と一緒にいても・・・いいって・・・」


 「二度は言わない、わかったな。」


 「まっ、任されましたですよぉぉぉぉぉぉっ!!

 魔王様のご命令!!

 しかと承ったですよぉぉぉぉっ!!」


えっ、なにその茶番・・・。


 「ミュラ・・・君は。」

 「僕はもうお前たちの顔を見たくない。

 お母様をこれから弔うんだ。

 邪魔になるからとっとと帰ってくれないか。」


ヤバい、これはリナちゃんじゃなくても惚れる。

 「ミュラ・・・参ったな・・・。

 しばらく見ない間に君はいい男になったようだ・・・。」


今は赤ちゃんの姿だけどね、

これは完全に一本取られたよ。


 「うるさいんだよ!!

 お前たちもそれなら問題ないだろう!!」


 「はい、ミュラ様、

 あなたが素敵な方だと理解させていただきました。

 一生仕えさせていただきます・・・!」

ベアトリチェ側の女性陣も、完全にミュラをキラキラした目で崇め始めている。

あいつが前世でぼっちだったなんて、何かの間違いじゃないか?


・・・でもこれ・・・問題、

解決してないよね?

ちょっと先延ばしになっただけ?

いや、ヨルさんが裏切り者認定されなくなったと保障できただけでも大きいか。


 「さすがだな、カラドック。

 ここまで計算していたのか!」

い、いや、ケイジ、

それは買い被りだ。

今回私はいいところないぞ?


 「せっかくなんじゃ、めかけにでもしてしまえばいいものを。」

ウィグルは一夫一婦制なんですよ、マルゴット女王。

ましてや異世界の魔族を連れて帰ったら大変なことになるでしょう?

生物学的な意味で。


 「むぅぅ、難攻不落ですね、カラドックさん。」

麻衣さん、もしかして何か企んでいたの?


 「無理無理、麻衣、カラドックはアガサの巨乳圧迫にも不動を維持。」

 「無駄無駄、麻衣、カラドックはタバサの美脚摩擦にも不屈を堅持。」

 「はああああああああああぁぁっ!?

 二人ともヨルがいないところで、カラドックにそんな破廉恥なマネしてたんですよぉぉぉ!?」


君らね、

本当に煩悩こらえるのに苦労してたんだからね?


遠くで空気になっていた「聖なる護り手」の男性陣がツッコミを入れてくる。

 「あれは僕でも行っちゃいますけどね?」

 「もったいねーよな、へたれか、あいつ?」


冒険者パーティー「聖なる護り手」よ、

そろそろパーティー名変えた方がいいんじゃないかい?



挿絵(By みてみん)

前もどこかで言ったと思いますけど、彼女の顔は、

カラドックの嫁さんのラヴィニヤと同じ作りです。

髪と瞳の色だけ違います。

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