第三百三十六話 鬼人の最期
すいません!
文章長くなりました!!
あっ? もう12時半!?
二話に分けようかと思ったけど・・・
さすがにもう引っ張らないほうがいいかと・・・。
そしてぶっくま、ありがとうございます!
ううう、ワクチンうって肩が痛いよう。
熱はないけど、体も節々がぎくしゃくするし・・・
パソコンに文字打ち込むのもだるい・・・。
ええい、ロキソニン投入だぁああ!
一気に追い込み!!
えっ、えっと・・・
オレは今何を見ているんだ?
鬼人が麻衣さんを殺したと思ったら、
首をだらぁんと落としながら、麻衣さんはさも日常的に悪戯された女の子みたいに文句を言っている。
えっ? なんであれで生きているの?
妖魔だから?
妖魔って首をへし折られても死なないのっ?
オレ以上に混乱しているのは当の鬼人か。
目の前に起きた信じられない現象に、片足で立っていられず尻もちをつく。
「なっ、なんっなのだっ、貴様はああああああああああっ!?」
「なんだって・・・ただの異世界の妖魔ですよ?
それにしても、この首、どうしてくれるんです?
明日から学校いけなくなっちゃうじゃないですかぁ?」
いや学校って・・・美容院で前髪を変な風に切られたわけじゃないんだから・・・
「よっ? 妖魔っ!?
よっようまぁっ!?」
「人をどこかのバイオリン弾いてる中国の人みたいに言わないでください。
あれ? チェロでしたっけ?」
本人には失礼だから口には出さないけど、麻衣さんて時々、あまり頭が・・・いや、なんでもない。
命の恩人に対してオレは何ということを。
あっ、なんか麻衣さんにギョロリと睨まれたっ?
い、一方、鬼人は驚きも冷めやらぬうちに、自ら次に選択すべき行動を決めたようだ。
さすがは鬼人系最強種か。
それは逃走?
それとも停戦交渉?
そんな筈はあるまい。
上半身だけの攻撃とは言え、その巨体から繰り出される手刀が麻衣さんの心臓を・・・。
あああっ!?
「いっ痛いぃぃぃぃぃぃ!?
ていうか、あたしの服があああぁあああああああああっ!?」
・・・えっ?
鬼人は信じられないとでも顔全体で表現しながら自分の腕を引き抜く・・・。
い、いま、鬼人の腕が麻衣さんの心臓貫いて・・・
背中側に貫通してたよな・・・?
「ばっ、バカなっ!?
首を折られてっ・・・心臓を破壊してっ!
何故っ何故っ生きていられるのだっ!?
おかしいっ!! おかしいぞっ!!」
その疑問はオレには答えられない。
わかるわけがないっ!
妖魔だろうが魔族だろうが、カラダの重要な器官を破壊されて生きていける者などいる筈が・・・。
そこでオレの背後にいた二人のエルフが思い出したかのように言葉を紡ぐ。
「タバサ・・・あれはまさか妖魔種が進化を極めた果てに辿り着くという、
入手難易度最高とされる幻のスキル?」
「アガサ・・・あなたが言うのは、『人化』や『再生』スキルよりも希少な、その存在すらも確認されていない究極のスキル?」
なんだって?
いや、それってまさか・・・。
「「すなわち『不死』!?」」
不死だと?
それは邪龍やベアトリチェの目指すそれとは違うのか?
「妾も伝説の類としてしか知らぬが・・・。」
お? マルゴット女王が解説してくれるのか。
見ればカラドックでさえ、この状況を追うのに手いっぱいのようだ。
そうだよな、いくらカラドックが賢王と言っても、こんな異世界の魔物の生態など知る筈もないだろうしな。
あ、でも麻衣さんは異世界出身じゃないし?
「恐らく邪龍の得ようという不老不死は・・・肉体の劣化の存在しない・・・
いわゆる不老という意味合いが真の能力じゃろう。
その身に攻撃を与えれば、ダメージを負わせる事が出来る筈じゃ。
しかし、今、麻衣殿が発現させている不死は・・・その名の通り、如何なるダメージを与えても、ゾンビのように死にはしないスキルという事なのか・・・?
・・・その場合、聖属性の呪文でダメージを与えられるのか?
いやいや、妾の魔眼でも麻衣殿に不死属性などついておらぬな?
む、これは・・・。」
良かった、麻衣さんがゾンビや屍鬼になったわけではないのか。
「ヒィッ!?」
あっ、オレらが呑気に状況解析しようとしている間に、人形メリーが鬼人を羽交い絞めに!
そこへ・・・黄金色の瞳を輝かせた麻衣さんが、一歩、また一歩と近づいていく。
「この人形の体の前の宿主の娘、麻衣・・・。
悪いけど手伝ってくれる?」
「・・・仕方ないですねぇ?
あたしにも鬼人さんの過去が視えちゃったじゃないですか?
殺されてった皆さんの代わりに一肌脱ぎますよ。
・・・あ、もう脱がされちゃいましたけど。」
ど、どうなってんだ?
麻衣さんが右手を翳して・・・あ、
爪が・・・獣人のオレよりも遥かに切れ味のよさそうな爪が不気味にも伸びてゆく・・・!
「スキル取得、爪格闘術・・・ゲット、
スキルレベル・・・上限、クリア。
爪格闘術・・・進化・・・麻痺爪術ゲット。」
あり得ない・・・。
戦闘も行っていないのにみるみるうちにスキルをカンストさせたっていうのか?
オレの目には、もう麻衣さんが人間として映らなくなってしまった・・・。
あれは魔物・・・それもとんでなく高位の魔物だ。
「なっ、なにをするっ!?
放せっ! 放せっ化け物どもっ!!」
「麻衣? 左膝は砕けてしばらく使い物にはならないわ?
まずは右足を奪ってちょうだい?」
「はいはい、それ、グサッとな。」
「ぎやああああああああああああああああああああああっ!!」
耳を塞ぎたくなるような叫び声が鬼人から上がる。
麻痺爪は妖魔種によく見られるスキルだがそんなに痛いのか・・・。
「ああ、普通の麻痺爪は神経麻痺させるだけですけど、
あたしのは蛇の神経毒に近いので痛みもそれなりにあるかと・・・。」
怖えよ・・・怖すぎるよ麻衣さん。
「「これで」」
感想を入れてる場合じゃない。
麻衣さんと人形メリーの声が重なった。
その唇の動きまでも。
「「あなたの右足は死んだ」」
どういうことなのか、鬼人の露出している肌がどんどん黒ずんでいく・・・。
あれは・・・再生できないな。
ヤツの右足は・・・完全に壊死したのだ・・・。
「「次は左腕を」」
麻衣さんとメリー。
二人の顔は対象的だ。
当然ながらも人形の顔は、冷たい機械のごとく無表情に。
そして麻衣さんは、まるで喜悦を極めたかの如くその妖美な顔を歪ませて・・・。
「あがあああああああああああああああっ!?」
こっちは完全に露出しているおかげで指先から腐っていく過程が誰の目にも明らかだ。
鬼人は激しく身をよじるが、人形メリーの万力のような白い腕は外れない。
「ワッ、ワシのっ!! ワシの腕がっ!
腕がっ動かなくなっているううううううううっ!!」
そうだろう、どんなに怪力を誇ろうとも、
神経を麻痺させられて・・・
そしてその部位が死んでしまったのならどうにもならない。
「「そして右腕も」」
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
これで四肢は完全に封じられた。
左足がまだ残っているが、膝を粉砕されてまともに動けるはずもない。
いくら再生スキルを持っていようと、あの状態から正常に回復するのは不可能だ。
「どんな気分?」
「もうすぐ」
「あなたは」
「死ぬの」
人形メリーから始まる、麻衣さんとの死刑宣告のキャッチボール。
いや、あの構図は陣地の外と中でパスをし続け、最後の標的を翻弄するドッヂボールか。
それを示すがごとく、鬼人は哀れにもそのぶっとい首を交互に振り回すのみ。
「やっ、やめてくれっ! こっ、殺さないでくれっ!!
助けてくれたらっ、なんでもするっ!
お前たちのっ! 下僕になっても良いっ!!」
そんな世迷言を誰が聞くというのか。
当然のように、二人の死刑執行人は次の作業を開始する。
「手足の神経はまだ繋がってますよ?
これ、引きちぎったら痛いんじゃないですかね?」
「そうね、もう手足は要らないから根元から引き抜いた方がいいわね。」
鬼人から上がったのは声にならない恐怖の悲鳴だ。
まるで虫歯でも歯医者が抜くかのように、二人は冷静に残虐行為を実践する。
多分、オレたちの中でも何人かは彼女達の行為に目を背けているだろう。
オレだってギリギリだ。
相手が醜い魔物だから何とか耐えられている。
さすがに麻衣さんでは鬼人の手足を引きちぎる力はないのか、
人形メリーが丁寧に一本ずつ「引き裂いている」。
その度にこちらのSAN値がガリガリ削られていくような悲鳴が続くのだ。
気が付いた時には、
鬼人の周辺にはその血液やら排泄物やら体液で、ちょっとしたプールみたいになっていた。
崩れた瓦礫がちょうど、障壁の役目を果たしているのだ。
あとで、カラドックかアガサに凍らせてもらった方がいいな。
鬼人はというと・・・一応まだ息がある。
心臓がバクバクと動いているせいで胸の隆起が激しい。
しかし四肢から絶え間なく血が流れているのだ。
人間なら痛みか大量の出血でショック死しているに違いない。
「・・・なっ、なぜっ・・・
すぐにっ、・・・殺さないっ・・・。」
人形メリーは立ち上がる。
彼女は、もう何も警戒する事がないとでもいうように、
ゆっくり・・・余りにもゆっくりと死神の鎌を拾う。
鬼人の問いかけには興味ないのだろうか?
いや、そうじゃないな。
ここからの話には、あの禍々しい形状の鎌が相応しいという事なのだろう。
麻衣さんが、役目を果たしたとばかりに戻ってくる。
瞳の色はもとの深い緑色に戻っていた。
あれ?
そういえば、服が破れていないな?
首も?
ラジオ体操でもするようにコキコキ動かしているけど、
普通の首だぞ?
一度麻衣さんに目が合うも、彼女は何か恥ずかしそうにぎこちない笑みを浮かべて・・・
おっと、目を向けるべきは処刑現場か、
人形メリーがその鎌を、床で芋虫のように転がっている鬼人の首先にあてがった。
鬼人の頭の真後ろで。
「なぜ、すぐに殺さないかって?」
先程の質問の答えか・・・。
「決まっているわ?
みんなが訴えるのよ、
オレたちの苦しみはこんなものじゃない、
もっと奴を痛めつけてくれ、
娘は、家族はもっと苦しんだんだって。」
・・・うお
「私にはあなたが殺してきた人たちの悲鳴が、恐怖が・・・無念の恨みが今もなお流れ込み続けているの。
あなたに理解できて?
理不尽に命を奪われて、抵抗すらできずに嬲られ殺されていった人たちの悪夢。
その彼らが命の炎を消されてしまうまでの拷問のような時間、
今こそあなたが思い至らせるのはそのことなのよ?
そう、あなたは今、自分で行ってきた罪を清算しているだけ・・・。」
重い・・・。
人形メリーの言葉はオレの肩にものしかかる。
前回も言ったが、オレは直接自分の手で人を殺したことは少ない。
戦争での話は除くが。
だが、オレの前世が犯した罪でどれだけの大勢の命が失った事か・・・。
そしてその家族は?
全ての黒幕がオレだと知ったら、彼らはオレに何と言うのだろうか?
『カラドック様!
我らの恨みを晴らしてください!!』
そうカラドックが彼らの願いを聞いた時、
あいつはどれだけの重圧に耐えねばならないのか。
「そっ、そんなっ、
ワシはっ、ワシはっ、生きるためにっ、仕方なくっ・・・!」
オレはもう一度視線を鬼人たちに向ける。
今はこの結末を見届けよう。
「仕方ない?
せっかく言葉を覚えたのに?
他の道はいくらでもあったのに?
・・・あなたにも見せてあげるわ?
彼らの最期の苦しみを・・・。」
そう言って、人形メリーは鬼人の首元に置いた刃を動かした・・・。
「うわああああああああああっ、やめっ、やめっ、・・・!?
なっ、なんだ、お前たちはあああああああああああああっ!?」
鬼人の首筋から真っ赤な血が噴き上がる。
だが、オレとは別に鬼人の視線がおかしい。
自らの首元というより・・・
まるで何かが自分の胸元に這い上がって来たかのように・・・・。
「覚えている?
あなたが今まで殺してきた人たち・・・。」
「よっ、よせっ!
くるなっ!!
お前はっ! お前たちはっ! ワシがっ殺した筈だっ!!
何故っ!! 何故っ、今頃になってっ! やっやめろっ!
来るなああああああああああっ!!」
「いま・・・」
オレの隣で麻衣さんが、鬼人から視線を離さないまま喋ってくれた。
「鬼人の周りには、鬼人が殺した人たちが纏わりついてます・・・。
みんな凄まじい形相を浮かべてます・・・。
あたしもこれ以上、近くで凝視したくありません・・・。」
鬼人と・・・巫女職である麻衣さんにだけ視えるのか・・・。
いや、おれもそんなもの視たくないけどな。
鬼人は激しく身をよじろうとするのだが、
すこしでも動くと、死神の鎌の刃が更に深く喉元に食い込む。
これが・・・知能を得たオーガの末路か・・・。
「やっ、やめてっくださいっ!
ワシっ! ワタッシッがっ! ゆっ、ゆるしてっ!!
おおおねがいっしまっああああああああああああああっ!?」
もう何を言っているかもわからない。
ヤツは半狂乱だ。
これで儀式は終わりなのだろう。
ようやく、・・・人形メリーは最後の言葉を発する。
「私の名はメリー・・・」
その刃が喉元を深く斬り裂いていく。
「いやだあああああああああああああああああああああっ!!」
埋まる。
刃が流れるように、そして深く沈んでいく。
「いま・・・あなたの後ろにいるの。」
「やぁあめぇえええてええええええええええええええええええええええっゴバッ・・・!!」
そして鬼人の頭が転がった。
会社に勤務するのも・・・あと二回!!
ケイジ
「いや、作者の話はどうでもいいから!
麻衣さんどうなったの!?」
麻衣
「・・・あたしなんにもしてませんよ?」
ケイジ
「え?」
マルゴット女王&ニムエ
「「あっ」」