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第三百二十五話 皆殺しの鬼人


一方、盗賊たちも調査隊がオーガを解き放つ算段をしていることはすぐに分かった。

さすがに彼ら(?)もオーガと戦って無事に勝てるとは思っていない。


 「お、お前たち! お行きなさい!!

 遠慮は要らないわ!! 皆殺しにするのよ!!」


まあ、間違いなく男なのだろうが、

そんな危機的状況に陥っても喋り方は変わらない。

真正のオネエと思われる。



 「うわわっ!?

 きたっ!」

 「急げ!! 鬼人の縄を解けっ!!」

 「えっ、あっ、あ、あれ、強く結び過ぎて・・・うまくっ!?」


速攻で襲い掛かられれば、縄をほどく暇などありはしないだろう。

そのままなら、すぐにでも調査隊は盗賊の餌食となる。


だが。


 「ふんっ、余計なっ、マネはせんで良いっ!

 ・・・ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」



鬼人が唸り声をあげる!

仮にもスタンピードの魔物の群れの中でただ一匹、生き残った存在!

その咆哮は人間たちの動きを止めるばかりか、周辺の樹々の枝葉までも揺らす程!!


そして・・・

ミチリ・・・ビチリと縄から異様な音がし始め・・・


ブチブチブチィバチィン!!

と、破裂するような音と共に鬼人を縛っていた縄ははじけ飛んだのである。


 「うわああああああああ!

 オーガが解き放たれたぁっ!?」


縄がほどける前に攻撃が出来ると踏んでいた盗賊たちは、途端に慌てふためきその足が止まる。

もっとも、足が動いていようが止まっていようが、鬼人には何の関係もない。


鬼人はその巨木のような太い足に力を込め、

盗賊たちの視界から消え去るほどの高さにまで飛び上がる。

その間、既に凶悪なその右腕は自らの背後までバックスイング、

標的となった最初の盗賊は、驚愕と恐怖で身動き一つとれない。


鬼人が着地した瞬間、真横から右フックのようにその右手が前方を薙ぐ。


グチャ。




盗賊の頸椎が有り得ない音を立てたかと思った瞬間、

仲間の盗賊の体を巻き込んで、一人目の犠牲者の体が吹っ飛んでいく。


二次被害の盗賊はまだ息があるが、

既に最初のこの一撃で、3人の盗賊が戦闘不能になった。


 「きゃあああああああああああああ!!

 なんなのおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」



何なのと言われても答えの返しようもない。


10人はいた筈の盗賊が一人また一人と殺されていく。

素手の鬼人一体に。

調査隊の面々も、盗賊が次々に殺されていくのを喜ぶべきなのだろうが、

余りにも圧倒的かつ無慈悲に殺していく鬼人に恐怖すら覚える。

果たして本当にこいつを放して良かったのかと。







そしてその答えは、

「もちろん、良いわけはない」。


そして彼らはすぐにその答えを知ることになる。


 「お! お止めなさい、化物ぉぉぉっ!!」

 「あ、ひっ!?」


鬼人はだるそうに振り返る。

気持ちの悪い喋り方をしていた盗賊のリーダーが、調査隊の一人の首筋に大ぶりのナイフをあてがっている。

どうやら鬼人が殺戮を繰り広げている間に調査隊の背後に回り込んだようだ。


しかし、いったい何のマネだろうか?


 「そっ、それ以上、抵抗したらこいつの命はないわよっ!?」


本気で何をしているのか、鬼人には意味が分からない。

 「・・・それでっ?」

 「え、そ、それでって・・・

 こ、このナイフが見えないのっ!?

 あたしはすぐにでもコイツを殺せるのよっ!?」


 「それはっ・・・

 我にとってっ、何か困ることなのかっ!?」


 「・・・あれっ?」


間抜けな表情を晒す盗賊のリーダーを無視し、

今度はゆっくりゆっくりと近づく鬼人。

一方、人質にされた調査隊の男は、自分のこれから先の運命は、

もしかすると絶望しかないのではないかと、ようやく今になって気づいてしまった。


 「ちょ、ちょっと待ちなさいぃぃぃぃ!

 ホントにころすわよぉぉぉぉっ!?」

 「いや、待って待って待って待って!

 オレごと攻撃しちゃダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


仲間は恐怖で動けない。

いま、この場で動いているのは鬼人のみ。


鬼人の今の優先事項は、この場にやって来た盗賊とかを殺す事。

戦闘不能にして生かすとか、捕まえることなど思いもしない。


そしてその為には、犠牲者が出るとか、

最初に出会った調査隊の面々の被害も知ったことではない。

誰か一人でも生き残れば十分だろう。

もし、この事を誰かに聞かれたならば、そう答えるだけ。


 「ちょっとおおお!?

 冗談だよなあああああっ!?

 オレ味方だぞおおおおおっ!!

 飯も食わせてやったよな!!

 いろんな事教えてやったよな!!

 頼むよっ!

 街に戻ればカミさんもガキもいるんだっ!!

 やめてやめて!!

 こんなところで殺されるなんて・・・っ!!」


そうは言っても鬼人には一切関係がない。

他にも人間はいる。

言葉さえ通じれば情報は手に入る。

食糧だって自力で何とかなる。

だから、何の問題もない。


そしてその鬼人は右腕を振り上げた。



誰かの思惑とか計算とか偶然とかは一切ない。

単に起きたことだけを書こう。


鬼人が人質などを無視した動きを見せたため、

盗賊のリーダーは、反射的に人質を殺すよりも、

人質を自分のカラダの盾にすべく、必死の力で調査隊の男を自分の前に押し出した。

もちろん、調査隊の男は抵抗しようとしたが、さすがに荒事に慣れている盗賊の力には敵わなかった。


鬼人の方にしてみれば、攻撃する対象は、あくまでも盗賊ではあったが、

その間に障害物が現れたとしても、

その障害物ごと破壊すれば何の問題もないだろう、

二つの頭部が並んでいるだけのことである。

そのまま二つの頭部と自分の拳が一直線になるように殴りぬければいい。


・・・そして二つとも、

まるで西瓜でも砕けたかように破裂した。





そこで初めて、残りの調査隊の人間も、

如何に言葉が通じようが、やはり魔物は魔物に過ぎなかったことに気付いたのである。


 「あ・・・あひ・・・。」

 「に、逃げろ・・・逃げなきゃ・・・。」


 「ぬっ?」

鬼人の方も、自分を見る人間たちの目が、

あのスタンピードで全滅した街の人間の目と一緒であることに気づいてしまった。


もうこいつらとは意思の疎通は出来ない・・・


人間たちは後ずさり・・・

後ろを振り返り、

明かりや松明すら持たずに狂ったように駆けだし始める。


この暗闇の林の中を明かりも持たずに走り去るなど、

自殺行為に他ならないのだが・・・。



そして鬼人の次の思考・・・




他の人間の所に助けを呼びに行ったのだなっ?



ならばとるべき道は一つ。

 「行かせない」


敵と認定されても構わないが、

そうなると情報を得るのに一苦労することになるのだろうか?

ならばここで息の根を止めるしかない。

鬼人の目ならこの暗闇でも十分に追える。

人間の足で逃れられる筈もない。


そして追いつく。

彼らは必死に反撃する。

だが敵う筈もない。


結局、鬼人は、この場にいた調査隊メンバー、そして盗賊を、

一人残らず惨殺して見せたのである。

 


短めでごめんなさい、

本当に描きたかったのは次のエピソードなのです。


次回、残された2頭の牝馬の運命は!?


あ、じゃなくてその後の鬼人さんです。

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