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第三十二話 ぼっち妖魔はフロアボスに挑む

<視点 麻衣>


さてと、

十分休んだのでいよいよ最後のフロアに降りますか。

正直、遠隔透視も使い続けると精神力の消耗が激しいのだけど、オンオフをうまく使い分ければ何とかなる。

まずは、階段を下りながら・・・


うわあぁ。


地下四階層が魔物少な目だった反動か、いっぱいいやがりますよ。

レベルも高め。

しかも奥に巨大な反応がある。

これがフロアボスか。


ん!?

と思ってる間に早速モンスター襲来!

 「皆さん! キラードッグです!

 一匹ですがレベル20!」


 「よし! 動きが素早くなってるぞ!

 油断するな!」


ホントだ、

今までのキラードッグより全然素早い!

これじゃベルナさんの魔法もあてにできない。

エステハンさんの剣とケーニッヒさんのナイフでようやく互角に渡り合えるって感じだ。


 「嬢ちゃん、召喚いけるか!?」

 「あっ、はい!」

でもその前に・・・。


 「ユニークスキル!

 『この子に七つのお祝いを(小声)』!!」


状態異常!

 くしゃみ!

 歯痛!

 悪寒!

 虫の知らせ!

 抜け毛!

 神経痛!

 乗り物酔い!!


なんだよ、虫の知らせって!!

それ状態異常じゃないでしょ!?


前回の使った時と内容に変化がある。

一つ一つの異常はランダムになるみたいだ。

それにしてもくしゃみは即効性あるのと、乗り物酔いは持久力に影響ありそう。

・・・ちょっと可哀そうな気もするけど。

でもここで追い打ち!


 「召喚! スネちゃん!

 敵はキラードッグ!!」


スネちゃんのレベルは13までアップしている。

単純なレベルではあちらが上だけど、あたしのユニークスキルの効果で魔物は明らかに動きに精彩がない。

きっと犬くんも「クッ、体調が万全だったら!」とか思ってるのかもしれないけど容赦しません。

それ! 毒の牙!!


止めにケーニッヒさんのナイフが突き刺さる。

まずは圧勝。


・・・このユニークスキルに関してはみんなに公表してない。

巫女系職業にまつわるスキルといっても、あたしだけのユニークスキルという設定なら、いろいろ詮索されるかもしれないからだ。

異世界からの転移者に許されたチートスキルと正直に言ってもいいのだけど、妖魔というバレてはならないあたしのルーツに繋げられると厄介なのだ。


それにしても、効果がまだふざけてんじゃないかってレベルだけど、確かにチートだ。

何が凄いって、ベルナさんの魔法にしたところで、呪文を唱えても相手に必ず当たるわけではなく、回避も防御もその気になれば可能なのに対し、

あたしのユニークスキルは必中だ。

正直、不死系のスケルトンやゾンビには効果なさそうな気もするけど、魔獣系・人型には絶対的なアドバンテージになる。


 「・・・なんか途中で動きが鈍くなったね?」

ベルナさんはあたしの守りに徹してくれたからか、キラードッグの動きを観察できたみたいだ。

でもその原因まではわからないよね。


 「体調悪かったかもしれんの。」

うん、ケーニッヒさん正解。


 「上のフロアから落っこちてきた奴じゃねーか?

 どっか怪我してたのかもな。」

エステハンさん、それじゃそういうことで。


その後も油断できない魔物がたくさんでてきた。

肝心の不死系モンスターについては、ほとんどの状態異常は通じなかったけど、

ゾンビにめまい、スケルトンに足のもつれが決まった。

効果はランダムだから確実ではないとはいえ、確かに美味しいスキルだわ、これ。


そしてあたしは巫女職もレベル3になった。

ユニークスキルの効果も上がったはず。

そしてスネちゃんがレベル15。

戦闘終了時に「スネちゃんが進化可能です。進化させますか?」とメッセージが頭の中に流れ込んできた。


おお!

さらにスネちゃんが強くなるならと、あたしはイエスを選んだ。

そのまま、スネちゃんは戻っていったので進化した姿は次にお預けだけど、今回はかなりの成果だ。

ふふふん!


ところがそれはあたしだけじゃなかったようだ。


 「おお!?」

ベルナさんが突然声を上げた。


 「どうした、ベルナ?」

 「あ、ああ、エステハンさん聞いてくれ!

 あたしもこのダンジョンでレベルがニつ上がったよ。

 魔法剣士職も一段階レベルアップ!

 しかもだよ?

 スキルポイントもついに風系魔法レベル5のトルネードを取得できる程溜まったんだ!」


 「おお、ベルナちゃん、それはめでたいの!

 レベル5の魔法は初めて取得するのかの!?」

 「ああ、あたしは風魔法が一番相性いいみたいだしね、

 レベル4のエアライドも捨てがたいけど、先にトルネード覚えるぜ!!」


ここであたしが知った魔法の知識をご披露しましょう。

基本的に魔法は魔術士職に就いた者が習得できる。

ただし各属性については個人の適性が影響するらしく、

適性に合うものは少ないスキルポイントで覚えることができるようだ。

各属性魔法は取得レベルがだいたい決まっていて、レベル1で目の前で発動させるだけの基本魔法。

具体的には、ファイア、ウォーター、ウィンド、ストーン。

それぞれほとんど攻撃には使えない。

生活魔法として便利なだけ。


レベル2で習得できるのが、初歩攻撃魔法、いわゆるファイアーボールやウィンドカッターに代表されるものだ。


レベル3ではフィールド変化、防御に転用できるもの。

ただし効果時間を続かせるには魔力の消費が大きい。


レベル4で高威力攻撃魔法、ファイアーランスのように単体に対し致命的な攻撃を加えられる。

ただ風系統のレベル4は例外的に補助魔法になってるらしい。


そしてレベル5では全体攻撃魔法が可能になるわけだ。

ベルナさんは、既に魔術士職で既定のレベルに達しており、各属性全体魔法を覚える条件の一つはクリアしていた。


ただし、これまで稼いだスキルポイントを、器用貧乏と言われるように、いろんなスキルに手を出していたため、全体魔法を取得できる程のスキルポイントが足りなかったようだ。

そしてようやく、今度の戦闘で、得意属性の全体攻撃魔法を手に入れたというわけである。

これで戦術の幅がかなり広がるね。

もちろん、あたしはその効果と威力に期待をかける。

 「ベルナさん、おめでとうございます!

 ・・・それでそのトルネードってもしかして・・・。」


満面の笑みを浮かべるベルナさん。

 「ああ! 次にコウモリの大群来たらお見舞いしてやるから安心しな!!」


ふっふっふ! 素晴らしい!

素晴らしすぎますよ、ベルナさん!!


ところがここで話の風向きが変わってしまうのだ。

エステハンさんがとんでもない提案を起こす。

 「タイミングいいな、ベルナ。

 ・・・この勢いで・・・フロアボスやっちまうか!?」


うぇぇぇぇっ!?

さすがにそれはあたしも予想できなかった。

 「え、あ、あの、予定ではフロアボス遭遇手前で引き返すはずじゃ?」

 「勿論そのつもりだったが、お嬢ちゃんもベルナもレベルアップして能力確かめたいだろ?

 フロアボスは強敵だが、この状態ならいけるぞ!?」

 「フロアボスって固定なんですか?」

 「ん~、一度倒すとしばらく現れないんだがな、

 いつの間にかランダムで発生してるんだ。

 今までに確認できたのは、クレイゴーレム、ロックワーム、ガーゴイル、四つ腕熊だ。」


ちょっと待ってちょっと待って。

今まで深く考えてなかったけど、フロアボスのいる部屋って、常時扉が閉められているから、基本的に他の魔物は出入りできないんでしょ?

一度冒険者に倒されたら・・・どうやって自然発生するの?

ぼうふらじゃあるまいし、ありえないでしょ!

そしたらケーニッヒさんが意味ありげな微笑みを浮かべた。

 「ふっふっふ、ダンジョンの99の不思議の一つなのかの。」


そんなに不思議あんの!

まぁ、確かに、一度あらかた魔物を掃討したら、もうそのダンジョンに魔物は出現しなくなる。

そうしたら冒険自体意味がなくなってしまうわけだろう。

となると、魔物の素材や食料も入手できないし、

冒険者のレベルも上げられない。


むう、ちょっとこの謎はあたしに解けるかどうかわからないけど、気に留めておこう。

 

それより今はここのフロアボスと戦うかどうか。

時間とか消耗品とか体力は問題ない。

単純に勝てるかどうか・・・。

ちなみにベルナさんの意見は、

 「レベルアップしたあたしは戦ってみたいけど、今回主役はまーちゃんだから、まーちゃんが決めるといいさ。」

とのこと。


ベルナさんも他のメンバーで、地下五階層のフロアボスとは三回ぐらい戦った事があるそうだ。


エステハンさんも余裕とのご様子。

 「オレとケーニッヒの二人だけでも五階層のフロアモンスターなら倒せる。

 まあ、問題ないと思うぞ。」


本当ですか?

なら行っちゃいますか?

引き返せませんよ?

で、ではフロアボス、カモン!!

 

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