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第三百十五話 犠牲者発生 

ついに死人が出ました。


うん?






想定した瞬間より「わずかに」早く、アガサの体が瓦礫の上に崩れ落ちたという違和感。


そして私の放ったアイスジャベリンが鬼人の背中に突き刺さる。

ヤツの大斧が風を切る轟音は聞こえた。

だがそれは肉の体を両断したしたような音ではない。


あ、あれもしかして・・・


アガサ・・・無事かっ!?



見ればアガサは白目をむいて倒れているものの外傷はない?

膝が変な角度で曲がっている。

そういや膝から崩れていったものな。

これは・・・鬼人に襲われる恐怖で気絶してしまったということか?

鬼人の攻撃の方も、斜めからの袈裟切りが良かったのか、

ちょうど攻撃のタイミングに合わせて体が沈んでしまったために、ヤツの攻撃は空振りで終わったようだ。

これが上段から唐竹割にされていたら、避け切ることは出来なかっただろう・・・。


 「・・・フンっ、運がいいなっ!

 まぁっ、よかろうっ!

 せっかくだっ! あとでワシのっ!

 タネを存分にっ、体の中へとっ、流し込んでくれよぅっ!!」



なんだとっ!?

ふざけるな!

破壊衝動だけでなく、性欲も存在するのか?

落ち着いて考えれば不思議なことは何もないが、

どちらであろうと認めるわけにはいかない。


それに、今のもかなり危なかったとはいえ、運はこちらにあるようだ。

私のアイスジャベリンもヤツの背中に深く突き刺さったまま。

これを突破口に・・・!


 「ケイジ! リィナちゃん!!」

 「ああっ!」

 「はいよっ!」


鬼人の背後から二人が接近!!

あれだけ氷の槍が深く突き刺さっているならば、ヤツの攻撃可動区域は著しく制限されて・・・っ



次の瞬間、私は・・・・

いや、ケイジやリィナちゃんも目を疑った事だろう。

鬼人の背中にあった氷の槍が、まるで生き物のようにずるずると押し出され、


みるみるうちにその背中から抜け落ちてしまったのだ!


し、しかも傷口がブクブクと泡のようなもので・・・




 「ま、まさか再生能力までっ!?」


で、デタラメすぎる・・・。

こんなものにどうやって勝てとっ!?



 「さてっ!

 次はどいつを切り裂くかっ?

 回復使いのハイエルフかっ!?」


タバサの顔が引き攣る。

 「ヒッ!?」


 「それともっ!

 今っ! ワシのっ! 背に氷を打ち込んだヒューマンかっ!?」


 「・・・。」


 「いやいやっ!

 見ればあのハイエルフもっ、中々のカラダっ!

 クィーン様お付きの女には手が出せんがっ!

 この侵入者にならばっ、文句はあるまいっ!!

 やはり殺すのはっ! 男だけにしておこうっ!!」


すると、戦いの場から離れていた「聖なる護り手」のリーダーの方から横やりが入った。

 「ちょ、ちょっと待てや!

 おまっ! ここじゃ本人の同意のない性行為はクィーンが固く禁じてるだろっ!!

 それこそ完全なルール違反だぞ、オグリ!!」


遠くから非難の声を上げるダン。

ベアトリチェ・・・あなたはそこだけはまともなルール・・・

いや、まともって言っていいのかな?

当たり前と言えば当たり前なだけな気もするけど。


む!?


鬼人が振り返って・・・



あっ、また姿が消え・・・

奴はどこにっ!?



 「危なっ・・・ぐあああああああっ!?」


男の悲鳴っ!?

誰の悲鳴だっ!?


ケイジじゃない!

ダンの声とも違う。

初めて聞く声を・・・私はその断末魔の声が聞こえてきた方角は・・・


「聖なる護り手」ダンのいる方向に・・・


鬼人オグリと・・・



 「ドッ、ドルスーッ!?」





大楯ごと真っ二つになっている・・・

「聖なる護り手」のタンク役だった男が崩れ落ちた・・・。

あれは・・・ほぼ即死だ。

まだ、ビクビクと動いてはいるが、時間の問題。

いま、この瞬間にタバサが回復魔法をかければ間に合うかもしれない。

だが、そこに行くまでが遠すぎる。

距離の問題ではない。

そこに辿り着くまでに、鬼人が立ちはだかっているのだ。


助けに向かおうと体を動かしかけたタバサの気持ちは理解できるが、

この状況では何の意味もない。



 「人間よっ、

 貴様をっ、守ろうとしたようだなっ!

 だがそんなっ、貧弱な腕力と盾でっ、

 ワシの攻撃にっ耐えられる筈もないのになっ!!」


もともと鬼人は自分を咎めたダンを狙っていたようだ。

その行動を読んだドルスという男が身を挺してダンを庇おうと・・・


さっきまで私達と剣を交わしていた筈のダンは、縋るような目をタバサに向ける。

虫のいいことは理解しているのだろう。

それでも泣きそうな小さな声で、ダンは僅かな願いの為に口を開く。

 「あ、ハ、ハイエルフの姉ちゃん、あんた、僧侶だろっ?

 な、何でもする、・・・お願いだ、ドルスを・・・」


この男に悪意も敵意もなかった。

仕事だから私達を排除しようと剣を振るっただけ。

それは理解している。

だから心情的には助けてやりたいと思う。

タバサだってそうだろう。


だが。


 「ふんっ!」


グシャアツ・・・!

血飛沫と肉片が飛び散る。

それはダンの顔にもびちゃりと。



いま・・・なにをした?

あの化け物・・・


よりにもよって、死にかけていたタンク役の男の顔面を・・・



踏み潰しやがったあっ!!


凍りついたようにダンの体が固まっている。

だが、数秒後、・・・まるで氷が融けさらに水が沸騰するかのように・・・


 「うあおおおおおおおおおおおおっ!!

 テメェ許さねーぞおおおおおおおおっ!!」



ダンの剣から激しい魔力と、周辺の空気が歪む。

風属性の魔法剣か!!


叫び声をあげるや否や、

下から掬い上げるような剣の軌道で鬼人の脇腹を狙うが、容易くバトルアックスの柄で防がれる・・・む?


 「ぬおっ!?」

するとどうだろう?

鬼人は完全にダンの攻撃を防いでいた筈なのに、鬼人の脇腹がどんどん裂けて血が吹き出し始める。


なるほど、

剣の周辺にカマイタチを発生させて、真空の刃を生み出しているのか。


 「面白いっ!

 だが貧弱っ!!」


だがそれすらも鬼人にダメージを与えたと言い難い。

奴は面倒くさそうに腕を跳ねあげると、

何の抵抗もできずにダンは吹き飛ばされてしまう。


・・・その傍から切り裂かれた脇腹は回復し始める。


まだ、ダンは戦うことは出来るな。

このまま共闘することは可能だろう。

だが今見せてもらったスキルでもどうにか出来るとは思い難い。


何か手はないか?

精霊術で魔術を強化すればヤツにも大ダメージを与えられる自信はある。

だが、精霊術は起動にかなりの時間がかかってしまう。

ヤツがそれを見過ごすとは思えない!

 


 「あ・・・あの、今頃になってなんなんですけど・・・。」


後ろから麻衣さんが申し訳なさそうな顔をする。

ちなみに瞳の色や形相は元に戻っていた。

完全に魔力は使い果たしてしまったのだろう。


 「なんだろうか、麻衣さん、何かいいアイデアでも?」

私は縋るような目を向ける。

例え彼女に魔力が残っていないにしても、感知能力はまだ有効に使えるという。

起死回生の手段が残されているかもしれない。


だが、麻衣さんは本当に自信がなさそうだ。

 「す、すいません、本当に今頃なんですけど、

 ケイジさんの新たに手に入れた剣、ちょっと気になるっていうか・・・。」


 「オレの?

 悪魔ベリアルが落とした剣か?」

ケイジが鬼人に警戒しつつ、私達の会話に参加する。


 「麻衣さん、どんな理由が有ろうと遠慮しないで欲しい。

 むしろ、時間はあまり残されていないと思った方がいい。」


 「あ、ああ、すいません!

 ・・・と、前に言ったと思うんですけど、その悪魔の剣の鑑定に、

 わざわざ『喋る機能はない』って断り書きがあったのが気になってたんですよ、

 そんなの当たり前の話なのに・・・。」


 「それはその通りだね、

 でもそれをこのタイミングで、もう一度言おうと思った理由は何だい?

 何かきっかけが?」


 「あ、え、えーと凄く説明しづらいんですけど、

 あの向こうの剣士さんが魔法剣使ったあたりから、

 ケイジさんの剣から、なんかこう、嫉妬心というかライバル心というか、

 何か感情の発露のようなものが?」


 はい?



次回、この場に現れる二人目の存在が明らかに!!


・・・あ、ベリアルの剣は擬人化しませんよ?


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