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第三百十四話 一人、また一人

 

その言葉と共にケイジ達が反応!!

リィナちゃんとケイジがともにダッシュ!

やや反応が遅れてヨルさんも続く!!


ケイジとリィナちゃんお得意のエックス攻撃!

一瞬遅れた感があるがヨルさんは二人の間を貫くように突進!!

 「だああああああああっ!!」


鬼人の左右からケイジとリィナちゃん!

正面にヨルさん!

さぁ! どう受けるっ!?


その瞬間、2メートルを遥かに超す鬼人の体が沈む!

・・・そして




鬼人の体が消え去っ・・・えっ!?

うわっ!?





鼓膜が破れるかと思うような破壊音・・・。

それと共に大量の土塊が飛んできたぞ?


その原因を探ると、私の視界には、いつの間にか巨大な土塊の残骸が聳え立っていて・・・


何が?

いったい今何がどうなったんだ!?


リィナちゃんとケイジが、先程までいた筈の場所から、まるで吹き飛ばされたかのように、

離れた場所で尻もちをついている。


あの巨大な土塊はアースウォールか?

だが何故あんなにも粉々になったかのように・・・。


原因はすぐ分かった。

その土塊をかき分けるかのように、禍々しき鬼人の頭部が現れる・・・。


 「ほおっ? いいタイミングでっ!

 アースウォールを使ったようだなっ!

 術の選択は悪くないっ!

 他の術法であればっ!

 何の役にも立たずっ、体は真っ二つになっていただろうっ!!」


な、何を言っている?

ヤツは・・・鬼人はどこを見ている?

ケイジでもリィナちゃんでもない?


ヤツの・・・鬼人の視線の先・・・そこを追うと・・・


あ・・・あ、壁際に誰かがぐったりと・・・

あれは・・・あれは・・・



 「ヨルさんーっ!?」


タバサと私は彼女の元へ駆け寄る!

あ・・・ああああ、

鋼鉄製の槍が有り得ない角度でひしゃげ、彼女の瞳は虚ろな光を湛えたまま・・・


 「ヨルっ! しっかり!! ハイヒール!!」


彼女の体を暖かい光が包む・・・!

無事なのか?

即死でなければこの術で回復できるはず!!

あのあまりにも凶悪なバトルアックスを喰らったら、それこそ致命の一撃だろう。

見る限り、ヨルさんのケガは鬼人の武器によるものではなく、あのアースウォールの残骸をもろに喰らったせいか?


 「このワシのっ! 攻撃の寸前っ!

 見事アースウォールを築きっ!

 おかげでっワシの攻撃はっ! ただの体当たりになってしまったっ!!

 その娘はっ! 運が良かったなっ!!」


 「う、ああ・・・。」


 「ヨルッ!?

 カラドック! ヨルが意識を回復っ!!」

 「そうかっ!、良かったっ!!」


ここ一番で頼りになるタバサだ。

彼女がいなければ、ここに来るまでの悪魔との集団戦ですら、生き残れるかどうかわからなかったからな。


私はヨルさんを励ます意味で彼女の手をギュッと掴む。

意識は戻ったと言ったが、現状認識もできるまで回復したのだろうか?

ヨルさんの瞳が私に向けられる・・・。


 「あ・・・ああ、カラドック・・・。」

 「良かった・・・私がわかるかい?」

 「わ、わかるですよぉぉ、

 ヨルと長年、連れ添ってくれた愛しい旦那様を、ヨルが見忘れる筈ないですぅぅぅ。」


完全に寝ぼけているね。

うん、命に別条なさそうだ。



それにしても今のアースウォールは・・・アガサ?

私は視線をアガサに向けたが、そのアガサは私を否定するかのように、自分の視線を別の角度に向けたのである。


・・・そっちはマルゴット女王・・・いや、妖精ラウネか!!

 「ムゴムゴムゴ~っ!!」


マルゴット女王の首に巻きついたまま、ラウネは腕を曲げて盛り上がらない力こぶを作る。

何言ってるのか分からないけど「私がやりましたアピール」か。

うん、まぁ、よくやった。

後で生きのいい冒険者を見繕ってあげよう。



・・・しかし、

今回はさすがに血の気が引いた。

あんな巨大な鬼が、これまた化物のような斧を振り回したものを直撃したら、まずもって命がない。


それなのに・・・さらに視界から消えるほどの速度で動けるだと!?



ケイジとリィナちゃんもなんとか体勢を整えたが、

今の現状を正しく認識できたであろうか?


 「く、くそ、完全に姿を見失った・・・。」

 「あ、あたしより速く動けるなんて・・・」


辛うじて二人が立ち上がる。

だが、バカな・・・。


ケイジにはどんな高速で動く物体をも見極められる鷹の目と、

リィナちゃんは敏捷さを誇る獣人の中でも更に敏捷に特化した種族だというのに。


 「あー、こら駄目だな・・・。

 前衛職が足止めできねーなら詰んだな・・・。」


心底残念そうに首を振る「聖なる護り手」のリーダー、ダン。


一方、凶悪な形相を浮かべた鬼人は、忌々し気にアースウォールの残骸を薙ぎ払う。

 「次はっ! 誰だっ!?」


あ・・・あ、

初めて、恐らく初めてではないか。

あれは魔物が獲物を捕食する時の目・・・。

冒険者として私が今まで相対してきた魔物は、

例え人間を捕食するのが目的だったとしても、まずはある程度の反撃を警戒して、

こちらの出方を窺うような慎重さを持っていた・・・。


こいつは違う。

完全に私たちを虫けら同然に見做している。

どんな順番で私たちを始末しようか、そんな目で私たち一人一人の顔を品定めしていたのだ。


殺される。


その瞬間恐怖に囚われた者を誰が咎められよう?

 「あああああ、『ライトニング』!!」


光系呪文と並ぶ最速の魔術ライトニング!

通常の魔物であれば、たとえアガサが不用意に放った一撃だろうと、射程距離内にあるなら100%直撃を約束された魔術だ。

生命力や体力の高いなら、術を喰らいながらも最低限のダメージで耐えきることは出来るだろう。

であるならば、私たちはそのダメージを負った隙を見過ごすことなく畳みかけるのが常套手段。


知能と魔力の高い妖魔であるなら、防御呪文を展開して身を守ることは可能かもしれない。

もっともそれはライトニングより先に防御呪文を唱えられた場合のみだが。


だが奴は、それらいずれでもなく、

先程見せた驚異の瞬発力でライトニングを躱して見せたのだ!!

いや、あれは寸前に呪文の発動を察知して・・・


 「アガサッ!!」


アガサが攻撃を放った。

そして鬼人の姿が消えた。


その二つの事実で誰もが次に起こる事態を予測できた。

けれども次に取るべき行動の最適解を見出せる者など存在しない。

気が付いたらアガサの体を覆い隠すかのように、鬼人がバトルアックスを振り上げていたのである。


こちらの角度からは恐怖に表情を歪ませたアガサの顔だけは見えた。


何もできない。

サイキックによる局所的なシールドの形成?

そんなものはとっくにやっている。

鬼人の前では何の効果もなかった。


タバサのプロテクションシールドも無駄だろう。

恐らくあのバトルアックスの一振りでシールドごとアガサは殺される。

もうアースウォールも間に合わない。


体を真っ二つに斬り裂かれたら、タバサの治癒呪文でもどうにもならない。


ケイジもリィナちゃんも反応はできたろう。

だが今更これだけの距離では間に合う筈もない。


 「やめろーっ!!」



そんな叫び声など何の意味もない事も分かっている。

だがどうにもできなかった。

無詠唱で作り上げたアイスジャベリン。

鬼人に一矢報いることは出来るかもしれない。

その動きを縫い留めることも出来るかもしれない。

アガサを切り殺した瞬間であるならば。




闇雲に放った一撃。

次に狙われるのは私かもしれないのに。


全てはスローモーションのように。


鬼人のバトルアックスは袈裟切りにアガサの体を・・・



 


さすがにライトニングより速く動けるわけではありません。

魔術士の動きを読んで先に回避行動をとっただけの事。


次回、本当に犠牲者が発生。

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