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第三百十三話 死闘の始まり

ぶっくま、ありがとうございます!


なんとか更新できました。

 

まだ私たちのパーティーが万全の状況だったなら、

この化物と戦う余裕はあっただろう。

だが度重なる連戦で、もはや余裕は全くないと言っていい。


 「タバサ、ケイジを。」

私は小声でプリーストの彼女に声をかける。


 「了解、ライフドレインで失ったHPは回復可能、『ハイヒール』。」

 「す、すまん、助かる、タバサ・・・。」


回復できるのはサキュバスの特殊能力で失われたHPのみ。

その前の「ダークネスハウリング」とやらの影響までは消し去れないようだ。

それでもかなりマシだとは思うが。


こちらはどうだろうか?

 「麻衣さんは、もう・・・。」

 「す、すいません、感知能力以外もうお役に立てません・・・。

 MPが残っていたら、さっきのスキルも使えたし、或いは召喚スキルで毒持ちのスネちゃんとか呼べたんですけど・・・。」


召喚スキルか、

確実なことは言えないが、彼女は強力な魔物の大蛇を呼べるそうだ。

その凶悪な毒の牙なら鬼人に有効だとは思うのだが。


ならば私のスキルで・・・

いや・・・この後の展開も不明だ。

私の能力・・・は、まだ使うべきではない。

他の手段を考えるべきだ。


 「リィナちゃんは・・・!?」

 「あ、ああ、悪ぃ・・・足引っ張っちまって・・・。

 天叢雲剣はまだ使えそうにないけど普通に戦うだけなら・・・。」


彼女もまだ回復したとは言い難い。

天叢雲剣の雷撃は精密な精神集中がいるはずだ。

悪夢を見せられたということだが、立っていられなくなるほどの酷い精神ダメージを受けたというならば、しばらく雷撃など撃つことは出来ないだろう。


 「ヨルさん、頼りにしていいかな?」

まだ彼女はそんなダメージも受けていないし魔力にも余裕がある筈。

女の子を凶刃の最前線に立たせるのには迷いもあるが、このパーティーには前衛職が少ないのだ。

・・・ブレモアももう使えないし。


 「は、はいっ!

 カラドックがヨルを・・・ヨルを頼りにしてくれるなんてぇぇぇぇっ!

 お任せくださいですよぉぉぉぉぉぉっ!!

 なっ、ならカラドックゥゥゥ、

 この戦いが終わったらぁぁ、戦いが終わったらぁぁあぁっ

 ヨッ、ヨルと二人きりで愛の契りをっをっをっをっをっをっをっ・・・!」


口調がいつもと違う。

・・・ダメだ、

いろんな意味でこのままじゃダメだ。

私も男だし、ヨルさんは魅力的だし、性格もいい子だと思う。

だから余計に私のために無理して欲しくない。

何よりも、


あのヨルさんの


足が震えている・・・ガクガクと。


自分より強いものの存在を魔族の本能で理解しているのだ。

そしてそれを自覚したうえで私の前に立っている。


彼女が国王である私の忠実な騎士だというなら、その覚悟も汲んでやろうと思うだろう。

だが彼女は違う。

彼女は個人的に私に好意を持ってくれているにすぎないのだ。

そんな人の命を無駄に散らせたくはない。


なら・・・


 「ケイジ・・・いけるのか?」

 「やるしかねーな・・・

 だが、カラドック、絶対にお前は生かして元の世界に戻してやるからな・・・。」


い、いや、何を言っている?

今までそんな事は一度も言ってなかっただろう?

目的が変わってるぞ?

確かに私もこの世界に骨をうずめようなんて気持ちはないが、

まずはクィーンの問題も・・・

いや、それどころじゃないな。


 「ヨルさんもケイジも無茶なことはするなっ!

 私のこと以上に自分の命を最優先にしろっ!!」


そしてそれは私の後ろの彼女たちについても同様だ。

 「ベディベール、イゾルテ、君らもだ・・・。

 絶対に前に出ちゃいけない。

 攻撃しようとも思うな。

 ニムエさんと一緒に自分の身を守るんだ。」


 「で、ですが、カラドック様、

 私たちはまだ余力が・・・!?」


イゾルテが抗議するように不満そうな声を上げる。

確かにイゾルテもベディベールもまだ攻撃する手段は残されているだろう。

だが君たちには身を守る頑強さは一切ないんだ。

少しの攻撃で取り返しのつかない事態になる恐れが大きい。


 「絶対にダメだ!

 君らは戦いに参加するより、ここから逃げる事を考えるべきだ!」


 「で、でも!」

 「イゾルテよ、カラドックの言う通りにせよ。」


 「は、母上様っ!?」

さすがはマルゴット女王、有無を言わせぬ貫禄だな。

けどしかし・・・。


 「女王、あなたも・・・。」

 「何を言う、

 前衛陣がギリギリなら、勝負を賭けられるのは、我ら魔力持ちしかおるまい。

 カラドックにアガサ殿、

 あと一踏ん張り頼むぞ。」


確かにその通りではある。

あの鬼人の戦闘力は不明だが、精霊術及び魔術を使える者が三人いれば何とか出来るのではないか。


 「モガモガモガモガーッ!!」


ああ、大丈夫、

妖精ラウネは勘定に入れてないから。

完全に怯えちゃってるな、

彼女が一番脅威に敏感なんだろう。

魔物としては至極真っ当な反応だと思う。

しかし、人間はそうは行かない。

足掻くだけ足掻かないとね!


一方、鬼人の方も、私達の状況を理解しようだ。

 「フンッ、戦うものの覚悟は決まったと見えるっ!

 せいぜいっ、こちらを楽しませてもらおうっ!!」


 「いやいやいや、

 話を聞けって! こいつらを痛めつけるだけならいいが、

 殺したらダメなんだって!!

 お前もクィーンに不老不死をもらうつもりなんだろっ!?

 あの人の不興を買ったらクビになるぞっ!?」


 「・・・言い訳などっ、どうにでもできるっ!!

 もとよりっ!

 我が望みは戦いと勝利っ!!

 不老不死などっ、そのための手段の一つっ!!

 邪魔をするなら貴様とてっ真っ二つにしてくれよぅっ!!」


冒険者のリーダー、ダンは諦めたように頭をポリポリ掻く。

 「あー、もう何言ってもダメだ・・・。

 『蒼い狼』のあんたら、後は必死で頑張ってくれ・・・。

 オレらじゃどうにもできねぇ・・・。

 運が良ければ生き残れるといいな・・・。」


ベアトリチェというトップがいなくなったからか、所詮寄せ集めの集団、

命令系統も何もない。

国と国としてならいくらでも突き崩す隙はあるのだが、

この場に至っては悪い状況としか言いようがない。


唯一、望みがあるとすれば、この鬼人一人さえ撃退する事が出来れば丸く収まる筈なのだが、

果たしてそんなうまくいくのか・・・。


鬼人とやらには戦ったことは勿論、どんな性質を持った魔物なのかも情報がない。

その進化の元となったオーガであるならば、何度か討伐した経験はある。

戦ったことはないがオーガから進化するというオーガジェネラル、或いはオーガロードの話は聞いたことがあるが、いずれにしても生命力、腕力、防御力ともにあらゆる人型生物の中で突出している魔物だという。


ケイジの話によれば、それだけの身体ステータスに加え、人間が身につけることのできる技能を習得し、知恵や戦術も人間並みに考える事が出来るようになるという、要はオーガが不得手とされる付け入る隙を全てカバーできる恐るべき存在。


これだけの情報で戦うとしたら・・・

やはり魔術。


ケイジやヨルさんには申し訳ないが、

彼らに鬼人の足止めをしてもらい、私達魔術を持つ者達で勝負をするしかないだろう。

それもそんじょそこらの魔術ではダメージすら与えづらいかもしれない。


まずは鬼人の足を・・・機動力を奪う!

着実に・・・確実に弱らせてから戦闘不能にしてみせよう!!



 「ウォーター、・・・からのフローズンソイル!!」

私と同じ考えだったのか、

マルゴット女王が鬼人の足元を氷漬けにする!!


・・・凄いな!

別属性の魔法を詠唱省略で同時に展開したぞ!?

アガサにも可能だろうが、そもそもアガサ自身ただの魔術士ではない。

簡単なように見えて、これができるのはかなり高位の魔術士でないと不可能なのだ。


だが・・・。



 「くだらんっ。」


なんだとっ!?

鬼人は自らのバトルアックスをその足元に叩きつけたっ!!

激しい破裂音と共に氷の破片が辺りに飛び散る!!

バカなっ!?

足首まで完全に覆っていたその状態で氷を砕いたら、自分の足ごと破壊されてもおかしくない筈!?

何の痛痒も感じないというのか!?


 「ではっ、戦闘『開死』いうことだなっ!?」


 

鬼人一人くらい簡単に倒せそうだと思うでしょうか?


一応オグリ一人で、かつてのブラックワイバーン一匹程度、撃破可能という設定です。

まぁ、遠距離から、範囲攻撃魔法ごり押しなら勝てるかも、です。

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