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第三百十一話 クィーン戦終結


<視点 カラドック>


いったいなにがどうなったんだ!?

恥ずかしながら私の意識はベアトリチェから外れていた。


リィナちゃんが倒れたことや、ケイジが捕まってしまったことも勿論把握できてはいたが、

私の体に狙いを定めていた妖精ラウネの対処も無視できなかったからだ。


結局は、女王とヨルさんが頑張ってくれたおかげで、

いま妖精ラウネは紐でがんじがらめにされて猿ぐつわを噛まされている。

「ウガウガ」喚いているけど我慢してもらいたい。


一応、この戦闘で、敵を生かしたまま勝利する事が出来れば、

あちらさんのうち、男性が三人ほどいるから、

一人くらい人身御供に出来ないかと思っている。

そっとラウネに聞いてみたら、あの少年僧侶が良いとのこと。

言葉が出せないので首を縦にブンブン振っている。

承った。


こっちはそれでいいが、

ケイジがヤバそうだった。

何がどうヤバいのかすぐには理解できないが、ケイジの慌て方は尋常じゃない。


すると私の視界の端を縫うように麻衣さんが進み出た!

まさか彼女がケイジを助けに?

けれど麻衣さんとて、もう魔力が残り少ない筈・・・




すると突然麻衣さんの体から異常なほどの魔力が膨れ上がった!

妖魔変化!?

そうか・・・これが麻衣さんの本当の・・・


そして彼女はベアトリチェと刺し違えるかのように彼女のユニークスキルを・・・!

確かそれは敵単体に七つの状態異常を付与するスキルだとか。


けれど高位の魔物には通用しないと言っていたような気もする。

ベアトリチェに通じるのか?


そして彼女はスキルを放つ・・・!

やったか!?




・・・いま、

ベアトリチェと麻衣さんの体は止まっている。

ベアトリチェは右腕でケイジに抱きついたままだけど、

その顔は麻衣さんと互いに見据えたままだ。


そう思っていたら・・・


 「「えええええええええええええっ!?」」


 「「麻衣さん!?」」

こっちはこっちで私とケイジの声がハモる。

いったい何がどうなった!?


ベアトリチェは慌ててケイジを放して後ずさる。

彼女の体に何か変化があったのだろうか? 

 「あっ、なっ、なんですの、これ!?」


麻衣さんは、まるで悪戯したのがバレてしまった子供のようにしどろもどろに・・・。

 「あ、そ、それ、敵にランダムで七つの状態異常をかけるスキルなんですけど・・・、

 あの、あたしにもどんな状態異常がかかるのか、予測もコントロールも出来ないんで・・・その」



ではやっぱり、ベアトリチェに状態異常をかけたってのか!?

それは凄い!

・・・凄いけど二人の反応がおかしい。

バッドステータスになったというなら、ベアトリチェが困惑しているのは当然だ。

けれどどうして麻衣さんまでが困ったような反応なのだろうか?

いったい、ベアトリチェにどんな状態異常をかけたというのだろう。


そして状況についていけないのは、二人の間にいた筈のケイジも一緒らしい。

 「・・・ふ、二人とも一体どうしたってんだっ!?」


ベアトリチェはよろめきながら数歩後ろに下がる。

おかしいのは、彼女は両手で自分の下腹をさすりながら何かを見ているようだ。

お腹でも壊したのだろうか?


 「すっ、ステータスウィンドウ・・・!」


自分のカラダに起きた異常を確認するのか。

麻衣さんは固まったままだ。

今ので魔力が完全に尽きたのか、さきほどあれだけ膨れ上がった魔力の痕跡は、

もう跡形もない・・・。


 「麻衣さん・・・!」

私の呼びかけにビクンと彼女は反応する。


・・・身体的なダメージはなさそうだけど・・・。


麻衣さんが壊れた人形のように、ギギギと不自然な動作で私を見上げた。

え・・・な、なに、その表情は・・・?

口元が引きつっている・・・。


 「あ・・・カ、カラドックさん・・・。」

 「いったいどうしたんだ!?

 君はベアトリチェに何を!?」


私の質問に彼女は声を発しなかった。

でも私には麻衣さんの口が、

 「あわわわわ、やっちゃった」と呟いているようにしか見えなかった。

思い過ごしだろうか?


だが次の瞬間、

その場の空気を引き裂くような悲鳴が辺りに響き渡ったのである。


 「いやああああああああああああああっ!?

 本当に妊娠してるのですのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 「「「「「「「妊っ! 娠っ!?」」」」」」」



 「麻衣さんっ! それは今の麻衣さんのスキルでっ!?」

 「あっ、えっ、そっそのごめんなさいごめんなさいっ!!

 まさかそんな状態異常があるなんてっ!」


私達に謝っているのか、ベアトリチェに対してなのか、

もちろん、私たちに麻衣さんを責めるつもりなど全くないけども・・・。



 「なっ、なんですのっ!?

 七つの状態異常をかけるスキル!?

 よ、よりにもよってレジストしきれなかった状態異常が妊娠!?

 魔族の・・・しかもサキュバスの体は妊娠しにくい筈なのに・・・

 ていうか、この子のパパは誰になりますのっ!?」


私達は勿論、当の麻衣さんも何も分からない様子だ。

これはあれだね・・・。

ちょっとほんの些細な気持ちで悪戯しちゃったら、

その悪戯のせいでとんでもない大きな事故が起きてしまって、

自分ではどう収拾付けていいのかわからなくなっちゃった反応だ。


呆然とベアトリチェの慌てぶりを眺めているしかないのだろう。



 「て・・・あ、あ・・・ど、どういうことですか!

 ステータス画面に異常発達って・・・どんどん成長しているのですのっ!?

 こ、これ、間もなく生まれちゃうんじゃありませんこと!?」



ええっ!?

どういうことだ?

いくらなんでもそれはあり得ないだろう?

サキュバスの特性なのか、それとも麻衣さんのスキル効果なのか!?



 「オスカっ! カルミラっ!!

 あ、あとそれと・・・できればクライブも一緒に来てくださいっ!

 メイドのメナにも手伝うようにと!!

 早くっ、こ、このままだとっ!」


 「クィーンっ、はっ、はい!

 わかりましたっ!!」




ベアトリチェを囲むように冒険者の一団が部屋の奥の出入り口に消えていった・・・。

あっちの出入り口は、さっきの精霊術の被害が及んでいない。


そして・・・




静寂だけが残った。





ようやく、しばらくして・・・

夢から覚めたかのようにベディベール君が、ポツリと、

誰もが頭の中によぎったであろう考えをこぼすことになる。


 「あれ・・・いま戦ったら、簡単にクィーンを制圧できますよね?」


そう、誰でもそう思うだろう。

だけど。



 「ダメだ!」



やっぱりケイジはそういうだろうな。

 「え、ケイジ兄さん、でも。」

 「確かにチャンスだろう、

 だがこれから子供を産もうという女性相手にそんな卑劣なマネなどしてはならない!!

 ベディベール、お前も王族なら人の道に外れるようなことは絶対に間違えるな!!」


王族なら・・・か。


王族なら自らが守るべき民や国を守るために、どんな残酷な決断も行わなければならない時も来るのだが・・・

ここはケイジに従おう。


女王は・・・


私は女王と視線を合わせ、どちらが先ということもなく頷き合った。



今はこの場の収拾をつけないとならないか。

確か冒険者「聖なる護り手」のリーダーはダンと言ったかな?

むこうの隅っこでうずくまっているままだが、

ゆっくりと近づいて話しかけてみよう。


 「ちょっといいかな?」

彼は戸惑いながらもゆっくりと立ち上がる。

恐らく向こうも似たようなことは考えている筈だ。


 「な・・・なんだよ?」

 「勝敗を決するような流れじゃなくなったね。」


「聖なる護り手」リーダー、ダンはポリポリと頭を掻いた。

 「・・・ああ、そうだなぁ?

 さすがにこんな展開は読めなかったぜ、

 しかしお前ら強ぇなぁ。

 ここまで圧倒されたのは初めてだぜ。」


 「まだ奥の手は隠していたみたいだけど?」

 「ははっ、そりゃな!

 だが奥の手が有ろうとなかろうと、使う間もなく倒されちまったらそれまでだからな。」


 「こちらも無理に戦いを続けるつもりもないのだけど、

 とりあえず休戦でいいのかな?」


建物の被害は酷いが、今のところ魔族のシグ以外に犠牲者はいない。

リィナちゃんもふらふらしているが、なんとか立ち上がっている。

麻衣さんによると、精神的なダメージなので肉体面では心配は要らないということだけど・・・。



 「まぁ、休戦しかねーだろうな。

 どっちにしろ、オレとドルスだけでお前らを止めらんねーしな、

 そうしてくれるのが一番ありがてぇ。

 ・・・だがよりにもよってあのクィーンが子供を産むのか・・・。」


ん?

何か含みのある言い方だな。


 「どういうことだい?」

 「ん? ああ、深い意味はねーさ。

 もともとクィーンは種族的に自分で子供を産むつもりはなかったっていうか、

 諦めていたっぽいからな。

 それで・・・不老不死を求めてまで・・・。」


何を言ってるんだ?

 「申し訳ない、言っていることがよく分からないが・・・。」


 「ああ、すまねぇ、

 まぁ、もちろん、自分で子供を産もうとそんな可能性なんかどこにもなかったんだろうけどよぉ、

 単にまぁ皮肉めいた話だなぁと思ってな。」


 「ん? もしかしてクィーン・・・ベアトリチェが不老不死を求めたのは、

 子供のことが関わっているのか?

 しかし・・・新たに生まれてくる魂を邪龍に捧げるならそもそも・・・。」


 「へぇ、飲み込みが早ぇなぁ?

 そうだろうな、

 新しく生まれてくる魂は邪龍に食わせるってことなら意味ねー話だよな?

 だが正確には、邪龍に魂を捧げるのは、

 この世界で死んだ者の魂だぜ。

 ・・・だからその話は、結果的に新しく生まれてくる子供にまで、魂が届きにくいってだけの話だ。」


生まれる直前の魂を捧げるのではなく、

死んだ直後の魂を捧げる・・・か?


タイミングだけの問題なのか?

そこにどれだけの違いがある!?


 「・・・ああ、それは理解できるが・・・。」


そこでダンはニカっと笑う。

 「つまり異世界からの転生者には関係ねーのさ。」


えっ!?

転生者?

異世界からの?


どうしてここで転生者の話になる!?

それこそ、何の話かわからないぞ!?



その時だ。

 「ああああああああああああっ!?」




今の叫び声はっ!?

麻衣さん!!


 「麻衣さん、どうしたっ!?」


 「危険ですっ!!

 とても・・・とても危険なヤツが近づいてきます!!

 殺意と悪意が充満していますっ!!」


なんだと?

この状況で誰が・・・



麻衣さんは私たちがやってきた方角を向いて震えている・・・。

外からやってくるのか・・・。


 「おいおい、それってまさか・・・。」

今のセリフは「聖なる護り手」のダンだ。

心当たりがあるというのか・・・。




そして麻衣さんは遠隔透視を行ったのか、

その正体を私たちに告げる。


 「さっきの門番の一人・・・鬼人ですっ!!」


 

三人のうち、まず一人目・・・。

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