第三百十話 ぼっち妖魔は勝負を決める
ぶっくま、ありがとうございます!
クィーンの正体をベアトリチェに、
そしてユニークスキル「この子に七つのお祝いを」を思い付いた時に、
閃いた展開です。
ようやくここまで書き込めました。
長かった・・・。
<視点 麻衣>
あっという間。
いや、
あれよあれよという間に、とはこういう時に使うのだろう。
途中まではけっこういい感じに戦いを進めていた筈だった。
宮殿そのものをぶち壊すのは、やり過ぎじゃないかとは思っていたけども。
とはいえ、今のところは敵側の人たちでさえ誰も死んでいないのだから、
うまくいけば、取り返しのつかない事態に発展しなくても目的は遂げられるかもしれない。
そう思っていた。
ところがベアトリチェさんを怒らせてから空気が変わった。
そりゃあ、ね。
自分のホームを滅茶苦茶に破壊されたら誰でも怒る。
まぁ、話し合いが決裂して戦闘になった以上、今更何をと思われるかもしれないけどもね。
この状況を、向こうが追い詰められて余裕がなくなったと見るか、
虎の尾を踏んでヤバい状況になってしまったと見るかはあたし達の心構え次第だ。
そうしたらとんでもない事態になる。
そりゃあ敵にも冒険者パーティーがいるんだもの。
能力の優劣はともかくとしても、連携攻撃を行ってくるのは当たり前だった。
考えてみれば今まで集団戦はあったにしても、
チームプレイやら連携攻撃を受けるのは初めてのような気がする。
もっともケイジさん達「蒼い狼」にしても、対人戦はほとんど経験ないのだろうから仕方ない。
なんでも、以前何度か国家規模の戦闘の邪魔をしたことはあるそうだけど、
その時はゲリラ的な散発攻撃しかしなかったそうなので、
その時も腰を据えて真正面から敵の軍隊と戦ったわけでもないらしい。
そりゃあ、そうだよね。
問題は今現在の状況である。
ベアトリチェさんは、敵全体の生命力にダメージを与えるというとんでもない術を使ってきた。
外傷がないので、一見、大人しめな術に見えるけど、次に直接攻撃喰らえばかなりヤバい上に、生命力によるスキルにも大きな影響を与えるそうだ。
ゲームとかだと生命力と魔力って独立した別々のステータスなんだけど、
現実はそんなことはない。
命が弱っている状況では、超能力だろうが腕力も脚力も真価は発揮し得ない。
まぁ、あたしは・・・
もともと生命力っていうかHP少ないし、
超能力も持っていない。
この世界の魔力を使う召喚術にしても虚術にしても、
これまでの戦闘で魔力をほぼ使い切っていた。
ハナから役に立てていない。
もっとも感知能力だけは例外だ。
これは魔力をほとんど使わない。
こっちから能動的に敵を探る場合には魔力というか精神力を使うけども、
受動的に何かを感知するだけなら何の問題もない。
それと・・・あたしが異世界にやってきた時に貰ったユニークスキル、
「この子の七つのお祝いに」・・・。
一応このスキルなら、後一発だけは使える魔力は残っている。
ただしこれはバクチだ。
みんなも知っている通り、レベルというか抵抗力の高い相手にはステータス異常はほぼ通らない。
ただし・・・確実な保証があるわけじゃないんだけど、
吸血鬼エドガーに使った時も、前回悪魔の一人に使った時も、
七つの状態異常のうち、一つだけは確実に決まっていた。
たまたま通用しただけなのかもしれないし、どんな相手でも一回だけは状態異常が通る仕様なのかわからない。
でも一発だけでも通用すれば・・・ここまで巫女レベルが上がった今ならば、
ベアトリチェさん攻略の突破口になる隙を作り出す事が出来るのではないか?
あたしは密かにそのチャンスを窺う。
その為には大人しくしていないと。
あたしはヨルさんのような隠匿結界スキルは持っていないけども、
もともと学校内では存在感のないモブキャラのあたしだ。
その時が来るまじっと待つしかない。
都合のいいことに、
ベアトリチェさんは一人ずつ、あたし達を無力化する狙いのようだ。
あ、ブレモアさんが・・・
魅了された・・・
でもあのロリ妖精に!?
しかも抵抗力が下がっているせいか、かなり痛々しい事態になってらっしゃった。
挙句の果てには敵のベアトリチェさんにディスペルかけてもらう始末・・・
意外と優しいところもあるのかな?
あっ!
ブレモアさんの背後からメイドのニムエさんが股間を蹴り上げたっ!!
・・・うわぁぁ・・・
ブレモアさんの口から泡が・・・。
痛そう・・・。
ご愁傷様である。
メイドのニムエさんの白タイツが何かべっとりと・・・
いや、やめておこう。
あ、・・・ニムエさん水魔法使えるんだね・・・。
すっごく嫌そうな顔で自分の足を洗っているけども・・・。
脱落したブレモアさんのことはどうでもいいとして、
次に狙われたのはケイジさんだ。
さすがサキュバスと言ったところか、男性ばかり狙われている。
・・・けれど、ベアトリチェさんの目的はエロ目的とは違うようだ。
いや・・・もしかするとベアトリチェさんの目的は最初から一緒なのかもしれない。
ただ、その手段の一つに・・・
ケイジさんの前世を暴く必要があったという事なのか、
ベアトリチェさんはケイジさんのステータス画面の不自然さを指摘した。
ケイジさんには称号が二つあるらしい。
一つは「転生者」で、もう一つは教えてくれなかった。
何でも大変不名誉な称号らしい。
「引きオタニート」だろうか、それとも「幼女専門犯罪者」だったりなんてことは?
いや、・・・さすがにそれはないか。
国によっては死刑相当の罪だとか言ってるし、
ケイジさんにロリ属性なさそうだし。
うん、行きの空飛ぶ馬車の中で、あたしの膝元覗かせても恥ずかしそうに目を逸らしちゃったしね。
あの時、ヨルさんに見られちゃったけど、そもそもヨルさんの方があからさまな行動してるんだから、彼女に文句言われる筋合いもないと思う。
あっ、いえいえ、別にケイジさんを誘惑しようなんて魂胆ありませんからね。
ちょっとしたおふざけですとも。
・・・ヨルさん、これで満足ですか!?
なんであたしがあの人の立てたフラグ回収しないといけないんだ・・・。
あ、それはそれとして、
かなりヤバい事態になった。
ケイジさんがひた隠しにしていた前世がバレそう。
・・・でもベアトリチェさんとケイジさんが知り合いだったのは・・・
カラドックさんの世界とは異なる?
ケイジさんもそっちの世界に関しては、はっきり思い出してないみたいだけれど、
どちらにしろ、自分が転生者だと知られたくないなら何とかしてあげないと。
って・・・今度はリィナさんがやられたっ!!
あれ、精神魔法だ!!
ナイトメアっ!?
なるほど、サキュバスに相応しい能力・・・
恐らくリィナさんはいま、幻覚でも見せられているのか、
あの苦しみかたはきっとそうだろう。
リィナさんの叫び声から何を見せられたのか、想像がつく。
いま、リィナさんが一番恐れていること・・・。
ハッキリあたしも言葉にして聞いたわけでもないけども・・・
ある程度は想像がつく。
そしてそのことをケイジさんが気付きもしないということも。
実を言うと、あたしはケイジさんに少々イラついている。
彼が天使の息子ということにも一因はあるのだけど、
ほとんどの部分はリィナさんに対しての彼の態度に不満がある。
何故ケイジさんはリィナさんの心の内面に気づかないのか。
二人とも相思相愛なのはいい。
でもだったら、リィナさんの不安に対して気をつかおうとできないものなのだろうか。
とはいえ、
一応、彼の人生お悩み相談みたいなのを受けてしまった手前、
冷たく突き放すわけにもいかない。
最悪の状況に至る前になんとかしないと。
きっとリィナさんの「悪夢」ならタバサさんで解呪できるはず。
なら・・・あたしのやることは・・・
一度あたしは振り返る。
マルゴット女王とカラドックさんはダメだ。
今は妖精の対応でそれどころじゃない。
動けるのはアガサさんだけだ。
でもアガサさんの魔法も、ケイジさんとベアトリチェさんが抱き合ってる今の状況では攻撃できない。
ならやっぱりあたし。
あたしのユニークスキルは必中攻撃だ。
標的を違えることもない。
もし大した効果が得られなくても、何らかの状態異常を付与する事が出来たなら・・・
アガサさんにはあたしが何かやろうとしている事は分かっただろう。
けど、この先何が起きるかはあたしにもわからない。
でもきっと。
これが
これがあたしがこの世界に連れてこられた理由。
だから。
「『妖魔変化』っ!!」
魔力増大!!
瞳孔が翡翠色に変化!!
誰かを助けられるのか、
誰かを救えるのか、
この世界を変えられるのか、それはわからない。
爪と牙が硬質化!!
全身の肌は鱗状の白い陶器のようにっ!!
でもやりますよっ!!
目が合った!
ケイジさんと・・・ベアトリチェさん!!
あたしのやろうとしていることがわかりますかっ!?
ベアトリチェさんが反射的に左手を掲げる!
ナイトメアをあたしに?
でもこっちが早いっ!!
逃がしはしませんっ!!
「ユニークスキル!!
『この子に七つのお祝いを』っ!!」
状態異常!!
絶望・・・レジスト!
先祖返り・・・レジスト!
憑依・・・レジスト!
鈍重・・・レジスト!
片頭痛・・・レジスト!
こむら返り・・・レジスト!
妊娠・・・・・・いったあああああっ!!
よしっ、一つだけ通ったっ・・・て
・・・あれ?
あたしはベアトリチェさんと互いに目を見つめ合う・・・
「えっ」
「えっ」
えええええええええええええええええええええええっ!?
そしてこの物語は、
この場に後、3回の変身を・・・
じゃなくて3人の登場を残している。
その意味がわかるn・・・
いえ、お判りでしょうか?