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第三百五話 クィーンの反撃


見てはいけないものを見てしまったような気はする。


とりあえずグリフィス公国の内輪の話は放っておこう。

いま、オレが気にする話じゃないし、迂闊に介入してこっちに飛び火されてもどうしようもない。


となると至極当然、オレたちが目を向けるべきは、当初の予定通りクィーンことベアトリチェになるのだが・・・


あれ?

まだ・・・何か喋っているのか・・・


 「・・・ありえないですわ、信じられませんですわ、

 こんな常識知らずな人たちが存在していい筈ありませんわ、

 冒険者? 「聖なる護り手」の皆さんも役に立ちませんですの。

 なんてことでしょう、よくも私の宮殿をここまで滅茶苦茶にしていただきましたものですわ。

 ああ、この心の底から湧きあがる感情はいったいなんでしょう?

 彼らをこのままにして良いのでしょうか? いいえ、いいわけ有りませんですの。

 ではどうしましょう? みんな仲良く息の根を止めて差し上げるべきでしょうか?

 いいえ、それはあまりにも生ぬるいと言えますわ?

 彼らが心の底から後悔、反省してこそ罪を償うものですもの、

 たった一瞬の死などで私は満足できませんものね、

 そうですわ、彼らがお願いだから殺してくれと嘆願するまで苛ますことにいたしましょう。

 うふふふふ、ようやく方針が決まりましたですの、 

 さっそくこの方々には地獄をご覧差し上げましょう・・・!」




えっと・・・なんだろ。

さっきまでベアトリチェは、それこそオレら一人一人を誘惑でもせんばかりに、

オレらの瞳に語りかけてたと思ったんだが・・・

今の彼女はオレらをそれこそ虫けらでも見るかのように冷たい目だ・・・。


いや、目だけじゃない。

オレの耳にもなにか、彼女がぶつぶつ物騒な独り言をつぶやいているのが聞こえてきた。

これ、関わっちゃいけない人だ。

早く逃げた方がいい。


・・・あっ?


オレは自分の直感に従おうとした。

すぐにでもこの場から逃げ出そうと、この部屋への入り口を確認しようとして、

初めてそこでオレはこの状況を正しく理解できたのだ。


・・・出入り口が消えてなくなっていた・・・。





しまった。

さっきの精霊術とストーンシャワーの合体術のせいだ。

あれでこの宮廷の全てを破壊した。

そう・・・それはオレたちがやってきた出入り口も当然含まれる。

今やその出入り口とやらは、膨大な量の瓦礫に埋められて、

この場の全員が脱出不能となってしまっていたのだ。


もちろん、この場の戦闘を全て終わらせ、後顧の憂いをなくした状態でがれきの撤去作業をみんなで行えば、すぐに部屋から逃れることは可能だろう。


だが、魔力感知能力の低いオレでもわかる。

ベアトリチェのいるあたりから噴き上がる、濃密で凶暴な魔力の渦・・・。


 「な、なんだ! この魔力は!!」

 「うぁ・・・うううう・・・エ、エドガー以上の魔力・・・」

 「な、なんという・・・」

 「あ、ありえないですよぉぉぉ!」

 「これが魔人の魔力・・・!」

 「これが魔族の頂点・・・!」

 「やっぱりワシは死んでしまうのじゃあっ!?」



オレたちパーティーの屈指の魔力持ちが全員狼狽えている・・・。

カラドック、麻衣さん、女王、ヨル、タバサにアガサまでも!!

クソ妖精はここでも同じ反応か。

 

 「・・・本当に・・・私が怒る時って珍しいんですよ?

 その私をここまで本気にさせておいて・・・ただで済むと思わないでくださいませ?

 カルミラさん!?

 やってください!!」


 「は! はいぃぃぃっ!!

 『ヴォークテス』!!」


死霊術士の女か!

だが今の呪文はなんだ?

聞き覚えがある・・・シグの使った魔法障壁解呪の呪文か!!


闇系僧侶呪文!

死霊使いに覚えさせていたのか!!

オレらを覆っていた防御呪文が全て解除されてしまう。

そうだった、

ベアトリチェはスキルコピーというユニークスキルを持っている。

オレたちがこれまで見てきたスキルは、全てこの場で再現できると思った方がいいってことか!?


 「・・・笑止!

 障壁を剥がされようと新たに張りなおせば・・・!」

すぐにでもタバサが呪文を再詠唱・・・だが!


 「うふふふふ、ヴォークテスの呪文は私も勿論使えますのよ?

 それをカルミラさんに使わせたということは・・・

 この私は同時に別の呪文を使う必要があるという事ですわ!!

 『大いなる闇よ、呪われし瘴気をこの場に満たせ!

 生きとし生けるもの全ての命を喰らうがよい』!」


 「な!? そ、それは禁断の闇系範囲攻撃呪文!?」


オレたちの魔法担当、タバサにアガサの表情が驚愕で固まる!!

闇系の範囲攻撃呪文だと!?

以前ダークエルフのベルナールが使ったペインの最上級スキルか!?


あれは敵単体の神経を蝕む呪文だったと思うが・・・まずい!!

タバサのホーリーウォールを剥がされた今なら!!


 「くっ、間に合え『ホーリーウォール』ッ!!」


 「無駄ですわっ!!『ダークネスハウリングッ!!』」


なっ!?


視界が一瞬にして闇に染められる!!

目が見えなくなったのとは違う!!

まるで辺りの景色全てが写真の・・・ネガっていうんだっけか? 白黒を反転したかのように!!


一瞬・・・そう、その一瞬で


 「グワアアアアアアッ!?」


全身を襲う虚脱感!!

体の中身を全て抉り取られたような・・・っ!

なんだ、これはっ!?

外傷は一切ない!!

だが・・・だが・・・これは体に力が・・・!?



落ち着け。

いったい何が起こった?

反転した景色は元に戻った。

周りは・・・みんな苦悶の表情を浮かべてはいるが、五体満足には見える?


なんだ?

手足は動く。

さっきは体から何かを搾り取られるような感覚だったが、今は特に何も・・・?


だかベアトリチェは笑う、

あの妖しい笑みを・・・。


 「うっふっふっふ、ダークネスハウリングを味わったのは初めてですのぉ?

 痛みも苦しも、それ程ひどいものではないでしょう?

 でも気を付けてくださいませ?

 今・・・あなた方の生命力は5割から7割と低下している筈ですわ?」


・・・なんだとっ?


 「うふふふ、ご安心を。

 効果はしばらく続きますが、何もしなくとも数日安静にするだけで元の生命力は戻りますわ?

 ただ、それ以外の手段では回復呪文だろうとポーションによるものだろうと一切効き目はございません。

 これは怪我でも病気でも呪いですらありませんものね。

 それと、もっと詳しく解説するならば・・・

 今の呪文の効果はHPを大幅に下げるだけではありません、

 生命力に依存するあらゆるパラメーターにも影響を与えますわ!!」

 


そういうことか。

確かに体に力が入らない感覚がある。

いや、瞬間的な力なら元の攻撃力を維持できるかもしれない。

だが長期戦はまずい。

これは早めにケリをつけないと。


 「それと!」


まだあるのか?


 「体力と魔法抵抗力も大幅に下がっておりますわ!

 どういうことか、お分かりになります?

 私の魅了が最も効果を発揮できるという状況です!」



その瞬間、

ベアトリチェの姿が消えた!

いや、オレのイーグルアイは彼女の高速移動する瞬間を捉えていた筈だ。

だが、体の反応速度がついていけてない。

これもさっきの闇系魔術の効果だというのか?


 「あ、・・・あ!?」


気がついた時には、ベアトリチェは護衛騎士ブレモアに体ごともたれかかっていた。

まさか!?


 「うふふ、私の胸元が気になりますか?

 マルゴット女王と私を見比べていたのは存じ上げていますのよ?

 せっかくですから遠慮は要りません。

 このレザーと柔らかい膨らみの間に指を入れてみたいと思いませんか?」


こいつ、この流れで魅了スキルを使うってのか!?

 

ベアトリチェ

「ぶぶー、ちがいますー、

魅了なんてスキルは使いませーん!」

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