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第三百四話 ベアトリチェ始動

<視点 ケイジ>


・・・凄まじい・・・。


カラドック達の精霊術とあのクソ生意気な妖精の土魔法でここまでの破壊を起こすとは・・・。


こいつらが味方で本当に良かった。

このメンバーで戦場に行ったら、ものの数分で勝負は決してしまうだろう。

防御呪文?

無理。


そんなもん、あっという間に剥がされて術者はよくて轢死体、

悪くすると挽肉の塊を大地に晒すことになるだろう。

最後の最後でベアトリチェはあの攻撃を受け止めたようだが、

あれは一瞬で岩石の襲撃が済んだから耐えられたようなもんだ、

あのまま永遠に精霊術を起動し続けたなら、いかな強大な魔力を持つ彼女とてどうすることもできなかったに違いない。


ただ、この期に及んで・・・・と言えなくもないか、

オレたちは、いまだベアトリチェや人間のパーティーを殺すのには躊躇いを覚える。

まぁ、オレとしても敵とは言え、あの「聖なる護り手」というパーティーも根は悪そうな連中に見えない。

彼らは彼らなりの行動原理で動いているのだろう。

自分たちの行為を誇るものだとも思ってはいないようだが、

罪悪感を持っているようにも見えない。


かと言ってオレには他人を説得できるような才覚もありはしないし、

偉そうに説教かます資格があるわけでもない。


そういうわけで、

今回のような状況では、すまないが問答無用にぶっ飛ばす、

或いは黙らせるのが一番だと思う。



この光景を見てみろよ?

敵パーティーのリーダー、ダンとやらも盾役の男も、スケスケのハイエルフも腰を抜かして戦意喪失と言ったところか、

・・・まぁ、今回の攻撃をかけたのは、カラドック以外「蒼い狼」のメンバーじゃないからな、

冒険者としてどっちのパーティーが優れているかなんて比べるのは何か違うのだろうけど、

少なくともこれで大勢は・・・


・・・あ?




 「あ・・・ベアトリチェさんが・・・」


今の声は麻衣さんだ。

彼女の視線を負うと、オレたちの本当の目的であるベアトリチェがうつむいたままブルブルと震えているようだ。


無理ないよな、

今の攻撃はそれ程までに彼女を怯えさせてしまったのだろう。

 「違います!!」



えっ?

今、オレの心の声を否定されたのか?


 「ケイジさん、前を!!」


一瞬びっくりして振り向いたオレに麻衣さんが前を見ろという。

そりゃまだ戦闘は・・・でも・・・・あ?





オレが首を戻して再びベアトリチェのいる方を見ると・・・

ボロボロに崩れ去ったアースウォールの後ろで・・・


いつの間にかベアトリチェが玉座から立ち上がっていたのだ・・・!!


顔はうなだれたまま・・・まだ震えている。

おかしい・・・

そう、そうだよな?

さっきの攻撃に脅えて震えるくらいなら、あんな幽鬼のように立ち上がらないよな・・・?

むしろ立ち上ろうとする気力すらあるまい。

なら一体・・・?


 「あ・・・あ、凄い・・・・悲しみと怒り・・・!」


え? 麻衣さん、なんだそれ?

悲しみと怒り?

え?

それってベアトリチェの内心の状態のことか?

あ、そう言えば両の拳を内側に握りしめてプルプルと・・・。




 「・・・ひ」


いま、ベアトリチェは何か言ったか?

ひ?


 「・・・ひ、酷い・・・酷すぎますわ・・・っ?

 こ、この宮殿を作り上げるのに・・・どれだけの時間と費用と手間をかけたと思ってらっしゃるのでしょうっ?

 気難しいドワーフの方を、一生けん命ご機嫌伺いしてここまで足を延ばしていただいて作っていただいたのですよっ!?

 世界有数の商会(ラプラス商会)から取り寄せてもらったシャンデリアや、私に魂を捧げると仰って描き上げていただいた高名な画家の私の肖像画もそこにあったのにぃ・・・!

 それら全て!

 すべてみんな!!

 根こそぎ破壊してしまうなんて!!

 あなた方は何て酷い所業をなさるのでしょうかっ!!

 許せませんっ!!

 野蛮人っ!!

 あなた方は人の皮を被った獣たちですわっ!!」




ええぇ・・・


これ・・・オレらが悪いってのか・・・やり辛ぇ・・・。


ていうか、オレとリィナは人の皮じゃなくて獣の皮被ってるんじゃないのかよ・・・。


 「そこのメイドの方!!」

どう反応していいのかわからずにフリーズしているオレたちを他所に、

ベアトリチェは非戦闘員であるはずのニムエさんに声を飛ばしていた。


 「・・・え!? あ、はい!?

 私、でしょうか!?」


 「はい! あなたも主をいただくメイドであるなら理解できるはずですわ!!

 一生懸命、日夜、手間暇かけて、お掃除したり、調度品の選定や手入れなど、

 目の届かないようなこまやかな部分にまで気を遣ってお仕事なさっている筈でしょう?

 それを・・・それを・・・こんなこんな滅茶苦茶にブチ撒けられて・・・

 これを・・・これを今晩中にキレイに片づけてね!?

 なんて命令されたらメイドのあなたはどう思われますか!?」


 「そ・・・それは・・・

 や、やっぱりあんまり・・・ていうか、やってられませんって、ですよね・・・?」


 「そうでしょう!?

 そう思いますわよね!?

 あなたならお分かりになっていただけると思いましたわっ!!

 それに! そう!!

 これだから権力をかさに着て、ふんぞり返る連中は始末に負えないんですよ!!

 確かに私たちメイドは雇い主のお世話をするのが仕事ですけども、

 メイドが雇い主に心からの忠誠を誓う義理なんて何処にも有りはしないのに!!

 もし私たちの忠誠が欲しいならそっちも使用人に対して、それなりの誠意を見せて頂かないとやってられませんものですわよねっ!!」


 「え・・・ええ、はい、そうです・・・ね。」



え・・・と、これ、なんの舞台が始まったんだ・・・。

ニムエさん、目から光がなくなってるぞ・・・。

本人もどう反応していいのか、よくわかっていないのかもしれない。


あ!

女王の視線がニムエさんに!?



 「・・・ほう、そうか・・・

 ニムエよ、後程国に戻ったら妾といろいろ語り合う必要があるようじゃの・・・?」



 「じょっ!! 女王!?

 いっいいいいえ、今のは相手に合わせただけのメイド会話術でございますぅぅぅっ!!」


そこにイゾルテも参戦。

 「ニムエ?

 私はあなたの味方をしますわよ?

 言いたいことがあるなら母上様にもはっきりと言わないと。」


 「イッ、イゾルテ様!!

 そそっそそそんなことは全く思っておりませんですからっ!!」



イゾルテ、何気に容赦ないな。

それともこれも天然なのだろうか?


ん?

おい、ベディベールも追い打ちかけるのか?


 「ニムエ・・・母上には僕からフォローしておくよ、

 そんな気にしなくても大丈夫だから。」


 「ベディベール様・・・なんと恐れ多い・・・。」


おお、ベディベール、男らしいじゃねーか、

うん? ニムエさんの反応が少し変な気がするが・・・。

  


しかしこれ、この後、どう収拾つけんだ!?

なぁ、カラドック・・・

ちょ、お、おい!

お前いま、爽やかな笑顔で視線逸らしやがったな!?

 

 

あれ?

ベアトリチェの反撃シーンまで行かなかった・・・。


じゃあ次回はそれで・・・。



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