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第三百一話 ニムエの鑑賞日記


みなさま、ごきげんよう。

私のことを覚えておいでだろうか?

そう、数奇な運命に弄ばれる薄幸の淑女メイド、ニムエだ。


え?

何を言っているのかって?

まずは話を聞いて欲しい。


私は一通りの護身術、護衛術を身につけているとはいえ、

こんな世界の果てまで付き合わされて、魔人クィーンとその一味との戦闘に巻き込まれている可哀相なメイドなのよ?

ね?

これを薄幸と言わず何と言うのかしら?


さて、気を取り直してもう一度、

なぜ私はここにいるのだろう?


どこかで身を引くことは出来なかったのか?


いえ、そもそもマルゴット女王はじめとして、イゾルテ王女もベディベール王子も、

何故こんな第一線まで出張ってらっしゃるのか。


そしてなぜ誰もそれを止めないの?


護衛なんてブレモア一人しかいないのよ!?

有り得ないでしょう!!


確かにケイジ様もカラドック様も女王たちを控えさせるような言動はしてくれていた。

けれど、一度言い出したら退いてくれないのが女王だということも分かっている。

お二人とも呆気ないほどあっさり引き下がられてしまわれた。

もう、この意気地なしぃ!!


ちなみにこの「意気地なし」、

現在ニムエの中で、男の子に一度は言ってみたいセリフトップ3の中の一つである。

いつか私にその機会が訪れるだろうか?

・・・ふふふ、それっていったいどんな状況なのだろう?


おっと、いけない。

戦闘が始まっていた。

とりあえずここまでの流れの説明は不要だろう。


もちろん、ベディベール王子もイゾルテ王女も、最後方でなるべく戦闘には巻き込まれないような位置にいる。



出来れば私はその更に後ろにいたいところだけど、さすがにそれは許されない。

お二人を庇うように前に立ち、その更に前方に護衛騎士ブレモアが剣を構える。

本来であればブレモアが真に守るべきはマルゴット女王なのだが、

その女王はカラドック様と共に魔人クィーンと対峙しておられる。

なんでも魔人クィーンは転生者で、異世界の女王のお父上様と因縁があるのだとか。


・・・・その他所の世界からくる人たちは、

どうしてみんながみんな、女王の関係者か知り合いなのだろう?

もしかして、この一連の騒ぎを企んだ人は、女王の事が大好きなんじゃないだろうか?


ああ、また脱線するところだった。

現状、私達・・・というか、ケイジ様達のパーティー「蒼い狼」が優勢に見える。

向こうの冒険者・・・ええと、「聖なる護り手」と言ったっけか、

彼らの攻撃はこちらに届かない。

・・・ちょっとレイスの集団に襲われそうになった時は、

ちょっと・・・ほんのちょっと、女性としての尊厳が危機を向けたけども耐えきった!


ケイジ様、お願いだから下着を替えるまで、絶対に私の半径10メートル以内に近寄らないで欲しい。


・・・ね、念のためによ?

ちゃんと耐えきったんだからね!?


そう、恐らくパーティーとしての戦力はこちらの方が上。


だけれども相手のパーティー「聖なる護り手」が示す通りと言っていいのか、

あのスケスケのエルフが使いこなすという結界術が厄介みたい。

それによってクィーンが守られている。


どうにかしてその結界を破らない限り、こちらの攻撃が届かない。

・・・とは言え、どうやら弱点も多いらしい。


後ろで話を聞いていると、まずは結界の維持に大量のMPが必要なはずなので、

持久戦が有りなら術者の魔力切れを狙うか・・・

それか、麻衣様が示されたもう一つの手段、

なんでも術者の認識ごと目の前の空間を吹き飛ばせば、結界は維持できなくなると・・・。


え・・・

私は術法について特に詳しく知っているわけではないけども、

たった今ダークエルフの人が、滅茶苦茶な魔力を注いで、風魔法最大術のトルネードを使ったばかりよね?

それでどうにもならなかった結界を吹き飛ばせるの?

術者の魔力切れを待った方が良くない?


・・・それが普通の考え方よね?

私間違ってないよね?


 「・・・良し、ここは麻衣殿のいう通りにしてみようぞ、

 真正面からあのハイエルフの結界を崩してみせよう!!」



じょおおおおおおおおおおおぅっ!?


予感!

とても悪い予感!!

絶対にやな予感がする!!


そして私の予感を裏付けるがごとく・・・

女王はこちらを振り向いて笑ったのだ。


 「ベディベール、こちらへ、

 良い機会じゃ、

 ここでお前の才能を開花させようぞ。」



女王がその柔らかな微笑みを、息子であるベディベール様に向ける。

ベディベール様も先ほどの集団レイスの襲撃に脅えてらしたけども、

今はどうにか持ち直している様子だ。

・・・でもなんとかギリギリ・・・。


その足取りは恐る恐ると言った感じだ。

 「恐れることはない、

 ここにはカラドックもおる。

 ・・・協力してくれるな、カラドック・・・!」


私にはこれから何をどうするのか、さっぱり分からない。

けれど、カラドック様の次の言動はわかる。


 「もちろんですよ、

 さぁ、ベディベール・・・

 私と女王の間に入って・・・!」


やだ・・・!

あれは愛しい弟を見守る優しいお兄さんの目だ・・・。


ベディベール様ご本人は、既にご自分が何をすべきか理解されていたのだろう、

カラドック様の言葉に従い、

右にマルゴット女王、左にカラドック様・・・その中心に立つ。

 「あ、えと・・・。」


右手を女王に預け・・・

左手をカラドック様に伸ばし・・・


 「ベディベールよ、

 今まで妾とこうして手を握り合う事を恥ずかしがりおって、

 直接精霊術の波長を合わすことが出来なんだが、

 今はカラドックがおる。

 何も気負う事などないぞ。」


ああ、今まで才能が有れど、精霊術を使いこなす事が出来なかったのは、

思春期故の恥じらいがあったせいだったのか・・・。

けれど今は女王と同調できるカラドック様がいる・・・


 「は、母上・・・カラドック・・・様」


 「心を無にし、感じるのじゃ・・・

 自分の身は既に舞い踊る精霊の通り道・・・

いや、自分こそが既に精霊と同化したとな・・・。」


 「気負う事などないよ、

 自転車に乗るのと一緒さ、

 一度、同調してしまえば後は簡単・・・

 それとカラドック『様』はいらないよ、ベディベール。」


こ・・・これはっ!?



ま、魔力?

あ、いや、

そ・・・それとは違うような、とんでもないエネルギー!?


私の目には何が起きてるのかわからない!

わからないけども何か凄いことが起きようとしているのはわかる。


 「うわ・・・

 カラドックさんとマルゴット女王とでメチャクチャな魔力が、

 ていうか、何が凄いってエネルギーの質も量も完璧にシンクロしてるっ!!」


私の目に映らないものを麻衣様がとても丁寧に解説してくれた。

なんでも麻衣様は異世界の妖魔なんだって。

うん、驚いたけど、女王の首に巻きついてるペドッ娘妖精や、自動で犯罪者を狩りまくるというメリーさんほどではないからね。


この子は人畜無害そうだから安心して側にいられる。

そして、女王とはまた異なる感知機能を持っていると言うとても便利な・・・

あ、いえ、心強い女の子だ。



いけない、また脱線した。

今はべディベール様を・・・。


 「あ、べディベールさんが・・・」


私の位置からはべディベールさんの表情は見えない。

けれど、ぼそりと呟くような声が私の耳にも聞こえてきた。


 「す、凄い・・・これが精霊との同調・・・。」

 「さあ、私と女王に合わせて?

 少しずつ影響力を高めていくよ・・・。」


あ、これは宮殿の中に・・・風?



 「ふん、先のトルネードでも私の結界には影響を与えなかったのに・・・

 三人分の魔力を注いだとはいえ、精霊術で私の結界術をなんとか出来るとでも?」


オスカとかいうハイエルフの人はまだ余裕みたいね。

だんだん風が吹き荒れていくけども、

確かに部屋の中のカーテンや燭台やら調度品がメチャクチャな事にはなっていくけども、

結界そのものには・・・


 「ほっほっほ、全員妾たちの元に固まるが良い、

 仕込みは既に済んでおる。

 さあ、ラウネよ、そなたの出番ぞ?」


え、

あのペドッ娘妖精?

あ、あれ、女王たちの魔力の陰に隠れて誰も分からなかったのかな?


 「ふははは、やって良いのじゃな!?

 ストーンシャワーっ!!」



それ土系最大範囲攻撃呪文っ!?



まだですよ〜、

見せ場はまだですよ〜、


とはいえ、精霊術士ベディベール君の参戦も早くから描いていたシーンの一つです。


誰に解説させるかは昨夜決めたばかりですけど。

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