第三百話 ぼっち妖魔は考える
三百話までいきました!
そしてぶっくま、ありがとうございます!!
いえーぃっ!
みなさん、こんにちわーっ!!
元気してるーっ!?
て・・・誰だよっ!?
はい、申し訳ありません・・・麻衣です。
ちょっと出番が久しぶりすぎて、
あ、いえ、ずっとここにいたのは間違いないんですけどね、
クィーンことベアトリチェさん登場近辺からあたしの実況解説やってませんでしたからね。
それと共に、例のごとく情報量の多さと展開についていけないところがあって、
もう何が何だか・・・。
あのオスカさんていうシースルー過ぎる服着たハイエルフの人とか、
殆ど下着同然の格好のベアトリチェさんには、もう何も言うまい。
事前情報はあった。
今更騒ぐこともないでしょう。
ベアトリチェさんの前世が、カラドックさん達の間接的な知り合いであったことはびっくりしたけど、それもいいでしょう。
魔眼とやらであたしの正体がみんなにバレてしまった。
どこかのタイミングで、それも明らかになってしまう覚悟はしていたので、
衝撃はそんなに受けなかった。
だからそれもいい。
むしろ、カラドックさんやケイジさんまでもがあたしを受け入れるって言ってくれたのが嬉しかったぐらいだ。
・・・どうして二人ともお相手が決まってらっしゃるのか、とても残念である。
あ、今のは聞かなかったことに。
嫌な予感を感じ始めたのは、
ベアトリチェさんが、もう一つの別世界の自分の記憶が蘇ったと言い始めたこと。
これでパラレルワールドというものが確実に存在するのが明らかになった。
そこで有り得ない名前が出てきた。
結婚する前のあたしのママ。
しかもママの正体までベアトリチェさんは知っている。
さらに言うと、ベアトリチェさんはあたし達リーリトの主に仕える立場だったようだ。
そういう意味ではあたしたちの仲間と考えるべきなのか・・・
けれど、その解釈にはとてつもない違和感を覚えるのだ。
この人があたしたちの仲間!?
エロいとか、下品とか、はしたないとか、そういう女同士にありがちな嫌悪感ではない。
リーリトとイブの概念的な違いってのは、
男性の言うがままに従うか否かであって、
性に享楽的だとかそういうことじゃないからね。
だからベアトリチェさんが「サキュバス」種族だろうと、誰彼見境なく食指を伸ばそうとも、それはあたしの気にする事でもない。
あたし達の主・・・
決定的におかしいと感じるのは、「あの人」に対する態度だ。
別にベアトリチェさんが嘘をついている気配はない。
当然ベアトリチェさんの見たまま、感じたままというフィルター越しではあるのだろうけど・・・、
なんていうのかな、
ベアトリチェさんの口から語られる「あの人」の姿は、
その本来あるべき姿から、途轍もないほどの距離を感じるのだ。
姿、形・・・外見的なものに関しては間違いなく真実だろう。
では中身の話ではどうか。
あたし自身、さっきカラドックさん達に「同じ人物でも人格は別」という話をした。
・・・この考え方・・・と一緒って言っていいのだろうか。
いや、それとも微妙に違うような・・・。
そう、ベアトリチェさんは「あの方」の事を何も知らない。
そう言ってしまった方がしっくりくる。
だからあたしの見当違いのことばかり話が出て来るのだ。
ママのことについてもそうだろう。
恐らく仕事仲間というのは本当。
でも別に親しくもなんともない。
あたしだって今の学校で、同じクラスで名前をお互い知っていようと、
ほとんど話した覚えがない女の子だっていっぱいいる。
・・・え、それはお前がぼっちだからだろう? ・・・ってうるさいですよ!
つ、つまりそういうことだ。
ママと仲が良かった友人というのなら、
或いはあたし達リーリトと目的を共にする仲間であるのなら、
正直、ベアトリチェさんと敵対するのは躊躇われる。
けれど、どちらも違うようだ。
そして決定的にあたしが「違う」と思ったのは「不老不死」について。
とは言っても、ベアトリチェさんが、あたし達の主と全く何の関係もないのであれば、
ハナから気に掛ける事でもない。
けれど、この話、ベアトリチェさんがあたし達の主に従っていた理由になるというのであれば、話は変わる。
あたし自身、「主」の本当の目的など知らない。
一部の人間には、
「神々と敵対するため」とか、「神々に復讐するため」とか伝わっていることは知っている。
そしてあたしはそれを否定する材料もない。
でも・・・例え別人格とは言え、一度でもあの人を直に見ているあたしには、
そんな印象が全く感じられないのだ。
そもそも主自身「不老不死」じゃないのだろうか?
ていうか、「不老不死」なんて本当にあるのだろうか?
あたし達リーリトは「イブ」の子孫より寿命が長い。
これはエデンの園に生えていた「生命の樹」の実を食べたからだと言われている。
嘘か本当かは分からない。
でも寿命が長いだけだ。
病気になれば死ぬこともあるし、
ある程度長生きすれば寿命で死ぬ。
しょせんその程度。
ベアトリチェさんが言う、邪龍と契約することで得られる不老不死というのは、
どの程度のものなのか。
あ、いや、話を戻そう。
あたし達の主の目的・・・
神話によれば、あの人はイブに「善悪を知る樹」の実を与え、
リーリトには「生命の樹」の実を与えた。
その目的は何だろう?
その行動が、神々と敵対することに繋がるのだろうか?
・・・ピンと来ない。
一説によれば、その人間に与えた行為自体が神々の怒りを買い、
一度人間はこの地上から滅ぼされかけ、
「主」は大地の奥底深くに封印されてしまったという。
それに対し「主が神々に復讐する」というストーリーは理には適っている。
・・・理には適っているけど・・・なんていうか、
本来の目的から外れちゃってない?
そんな風に感じるのだ。
さて、そこで不老不死である。
リーリトやイブのお話は、少なくとも1万年以上は大昔の話。
その時点で、大地の奥に封じ込められつつも、
眷属をこの世に転生させられたり、
自らも器を通して復活できるというなら、
もうそれは不老不死と言っても良いのではないか?
じゃあ、「主」には今更それは必要ないよね?
それを必要とするならば・・・
現在不老不死ではない存在・・・
それはあたし達「人間」のことではないのだろうか?
主は「自らの似姿」をかたどって人間を創りあげた。
主は人間に「知恵」を与えた。
主は人間に様々な恩恵を与え続けた。
そしてそれらを天上の神々は「罪」だとか「悪」だとか呼んで、
人間と主に攻撃を掛けたわけである。
あ、これ、あくまでもあたし達に伝わっているお話ね?
でも、この流れだと・・・
「主」は私達人間を育て上げる過程で、
「神々」に邪魔されたって解釈でいいのだろうか?
「不老不死である主」の「似姿である人間」は発展途上・・・進化の途中・・・。
つまりは「主」は自分自身と同じレベルにまで「人間」を育て上げようとしている?
どんな方法で!?
邪龍のように、他の人間の魂を集めてだろうか?
いやいや、そんなんマッチポンプ過ぎて非効率でしょう。
誰か一人を不老不死にするために他の大勢を犠牲にするって言うのならまだしも、
「主」は特定の誰かを選定している様子もない。
フッと思った。
あの・・・メリーさんの死神の鎌・・・
あれにしたって、死んだ人たちの魂を浄化したり、冥府の底に送り届けるとかいう機能はあるらしいけど、それは魂の流れを正常化させているだけで、
「主」が消費しているわけでは・・・ないよね?
だとしても微々たる量だろうし。
まぁこれ以上はここで考えても無駄だよね。
とりあえず、今言えることは、ここまでの流れでベアトリチェさん・・・
いや、邪龍の不老不死を得る手段は、
「主」の物とはあまりにもかけ離れているのではないか、
そう、思わざるを得ない。
それだけである。
ギリギリで投稿できました・・・。
麻衣
「そういや、メリーさん・・・って
今、そのカラダはどこにあるのかな?
まだアメリカかな?
まさか、どこかの誰かに回収されたり・・・?」