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第三十話 ぼっち妖魔は魔法に憧れる

<視点 麻衣>


 「大丈夫か、お嬢ちゃん!!」

エステハンさんがあたしの事を心配して寄ってきてくれた。


あいたたた、

あちこちに擦り傷切り傷が・・・。


まあでも深いダメージは何もないからね。

初心者用ダンジョン探検セットの消毒薬使わせてもらいます。

 「すいません、ご迷惑お掛けしました。

 ちょっと蝙蝠の大群にトラウマがありまして。」


 「そうなのか?

 それであんなに取り乱していたのか。」

 「はい、でもフクロウのフクちゃん呼べるみたいですので、もう大丈夫だと思います。」


 「それにしても凄いな。

 召喚魔法自体、一般の魔法より消費魔力は大きいらしいのに、これだけポンポン呼び出せるのは驚異だぞ?

 ベルナどうだ?

 お前の魔力量と比べて。」


ベルナさんは呆れたように壁にもたれる。

 「やめてよ、エステハンのおっさん。

 あたしは魔法剣士なんだ。

 召喚士どころか、普通の魔術士より魔力量少ないんだからさ。」


あたしはカラダを休めながら二人の会話を聞く。

とりあえず周りにはヤバい魔物はいないみたいだ。おっと、そう言えば。


 「そうだ、

 エステハンさん、ベルナさん、

 あたしは魔法覚えられないんですかね?

 魔力そのものはある方だと思うんですけど。」


二人で顔を見合わせる。

あたしのスキルポイントはまた2000台に乗りそうだけど、このポイント内で取得可能魔法スキルは一切現れていない。

魔法習得にはもっとスキルポイントが必要なのか、それともあたしは元々資格がないのか。


 「うーむ、魔力があるんならなあ、

 魔法習得は簡単だと思うんだけどなあ。」

 「まーちゃん、あんたさあ、

 あたしが魔法使うところ見てるんだろ?

 魔力感知はできるのかい?」


 「ええと、そうですね、呪文詠唱の時に、右手に魔力らしき物が凝縮されていくのはわかりましたけど。」


ベルナさん目を見開いて口をパクパクし始めた。

酸欠かな?


 「ま、魔力の流れをそこまではっきり見えるのかい?」

 「は、はい、まあ。」


 「おい、ベルナ、どういうことだ?」

 「どうもこうも、まーちゃん才能の塊だよ。

 人間の魔力の流れが普通に見えるんだよ?

 あたし程度の魔力でさえもだ!

 これが何を意味するかわかるかい?

 高度な魔術士、いや魔導師がその術を使うところを見せてご覧よ?

 あっという間にその技を身につけられる目があるってことさ!」


魔術士? 魔導師?

 「すいません、魔術士と魔導師って違うんですか?」


 「ああ、それは今そんな気にするほどじゃないよ、

 強いて言えば、基本の四大魔法を使うのが普通の魔術士、

 火、水、風、土だね。

 そんで、習得魔法の中でもレアなのが氷、雷、光、闇の四属性。

 これを覚えれる者が上級魔術士。

 魔導師ってのはね、

 これらの属性を掛け合わせて新しい魔法を生み出したり、各属性レベル上限で覚えられる魔法の更に先を見つけることのできる者を言うのさ。

 魔導師なら確実に冒険者でいうとAランクだね。

 ただ、術法を極めても消費魔力に自分のMPが追いつかない場合もあるそうだから。

 魔導師レベルの術者でMPも高かったら間違いなくSランクだろうね。」


おおおお、

凄い情報を手に入れたぞ。


魔力か。


スネちゃんを召喚する時に使ってるんだよね、無意識に。

そして、その力はベルナさんが魔法を使う時と同じもの。


あたしは右手を前に出して手のひらを上に向ける。


召喚術を使う時はカラダ全体から力が抜けてくような感じだったけど、その力を右手に意識して集めてみる。


 「おお!?

 まーちゃん、凄いぞ!

 あっという間に魔力集中しちまいやがった!!」


え、でもこっからどうすればいいんだろう。

呪文詠唱しないといけないのかな?

さっきの感じだと呪文詠唱と共に集めた魔力が属性変換されていったみたいな。


なんだっけな。


 「我が掌中の炎よ、我が敵を焼け!?」


何にもかわりませんね、はい。


 「あああ、文言間違えてる、まーちゃ〜ん!!」


すいません、記憶力もザルで・・・。

正解は、

我が掌中に集いし炎よ、我に害なす敵を撃て!


だそうですけど発動しませんでした。

先にスキルとして習得しないと発動できないのだろうか。


 「あと、それとまーちゃん、

 一応言っておくと、呪文の文言は正確である必要ないんだ。」


と言いますと?


 「例えば私たちと違う言語の国の奴らも魔法を使う。

 当然文言は違ってくるわけだ。

 それでも魔法の効果や威力にそんな違いは見られない。

 てことは、詠唱の文句そのものが問題ではないはずなんだ。」


まあ、そうだよね。

あたしが遠隔透視する時だって別に呪文がいるわけでもないし。

ただこの世界の法則が今ひとつわからないからさ、

理屈にあってなくても、ここではそうなの!

って言われちゃったらそこまでなわけで。


あくまでベルナさんの魔法発動見てると、呪文詠唱で魔力集中と変換まで行い、魔法の名前を叫ぶことが発動のトリガーになってる気がする。

いや、詠唱始める前に魔力は集中できてたかも。

まあ、いま実際、あたしも呪文言う前に魔力集めてたし。


 「あ、あとベルナさんもう一つ質問が。」

 「あたしでわかることならね。」

 「四大基本魔法を覚えないと上級魔法は覚えられないんですか?」


 「あー、そんな事はない。

 ただ属性魔法は個人の適性がバラバラなんだよ。

 どんなに頑張っても覚えられなかったり、覚えても習得スキルポイントがべらぼうに高かったりで適性がない奴がいる。

 上級四属性はいわゆるそんな扱いなんだ。

 それに比べて基本四属性は覚えやすいってだけの話さ。

 もちろんそれでも覚えるのが難しいのが魔法なんだけどさ。」


奥が深そうだなあ、魔法。

まあ、でも元々今日の目的ではないしね。

フクちゃんを召喚できるようになっただけでも見っけもの。


結構なんだかんだで時間を食ってしまったあたし達は、地下三階層に降り立った!!




ゾンビがでたよ!!


 

 「うあああっ! ファイアーボールーっ!!」


ベルナさん大活躍だ。

ていうか、ベルナさんの呪文しか効果がない。

いや、エステハンさんの剣もスネちゃんの巻き付きもそれなりにダメージを与えてるよ?

でもどれもこれもゾンビに決定的なダメージが入らない。

勝てるは勝てるんだけど時間食いすぎ。

それよりヤバいのが・・・。


 「ちょ、も、もうあたし、魔力が・・・。」


まさかのベルナさん魔力切れである。

ケーニッヒさんのナイフが殆どゾンビを止められないのも地味に辛い。


人間だったら急所狙うんだけど、ゾンビに急所あるの?

頸動脈切っても向かってくるんだもん、

心臓にナイフ突き刺しても効果なし!

首を切り落とさないとダメなの?


ゾンビは動きが鈍いのがせめてもの救い。

あたしはみんなに後頭部、つまり延髄攻撃を指示した!

頭からの神経切断すればさすがに行動不能になるでしょう!


それは間違いでないみたいなんだけどね。

二体一組でやって来るゾンビの背後にまわるのが意外と難しいんだよね。


スネちゃん、フクちゃんは結構回り込めるんだけど、

その牙や爪だと神経を切断するのが難しい。

やっぱり切断系の武器でないと。


それにしてもよくもまあ、初心者用ダンジョンと言っておいて、あたし達に相性の悪い敵ばっかり出て来るもんだ。

わざと?

ねぇ、わざとやってる?


そしたら突然エステハンさんが笑い出した。

剣を放り投げていつの間にかグローブ装着?

いきなりゾンビ一体に向かっていって、ブルドッキングヘッドロック?

そのまま倒れたゾンビの後ろに回り込んで・・・うわわわわ、


首の骨へし折ったあ!!


続いて次々とプロレス技でゾンビを破壊していく。

こ、この人、剣士じゃなくて格闘家なんだ?

その後ケーニッヒさんが確実にトドメ刺していく。


なるほど、

さすがは冒険者ランクBなだけある。

この程度の敵など歯牙にもかけないわけだ。


 「どうしたあ、ベルナぁ!?

 もうへばったかあ!!」

 「エステハンのおっさん、

 ・・・相変わらずとんでもないよね・・・。」


あたしもそんな気がします。

ベルナさんがそろそろ限界近いけど、

エステハンさんとケーニッヒさんはまだ余裕。

行くの、地下四階層?


 

6年前の富士の樹海に向かったメンバーは、


麻衣、麻衣パパ、

相模原在住の探偵屋さん、

イギリスからは、

騎士一名、騎士見習い一名、

正体不明の片目のお爺さん、

そしてウェールズの魔女こと、フェイ・マーガレット・ペンドラゴンお嬢様です。


そして麻衣が高校一年現在、既にこのうちお三方が亡くなっております。


最初にお二人と書いてしまいましたけど、

三人です・・・。



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