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第二百九十六話 惠介の記憶〜ミュラについて

ぶっくま、ありがとうございます!



引っ張るつもりはないんですが、

やっぱり舞台背景は大事かな、と。

 

有り得ない。

普通の人生送ってる奴には想像もできないくらい有り得ない。


そりゃ、オレもマザコンて言われれば否定はできない。

ていうか、大なり小なり男はマザコンだと思う。

違うっていうヤツは虚勢を張ってるに違いない。

そうに決まっている。

オレが特別におかしいなんて事は絶対にない。

みんなも勿論そう思うだろ?


しかし物には踏み越えてはならない一線と言うものがあり、

・・・いや、むしろそこに越えてはならない一線があること自体に思いが至らない者が殆どの筈だ。


それをベアトリチェという女はあっさりと踏み越えたらしい。

踏み越えてはならない一線など、違う意味で気にもしなかったのだ。

・・・時代が時代だったとはいえ、みんな親には恵まれなかった。


オレやカラドック、リナには父親がいなかった。

一時は子供心に、剣の師匠だったガラハッドを父親に見立てようとしたこともあったんだが、

それこそあの人は、線を引いて、オレと必要以上の関係になろうとはしなかったんだ。


ガラハッドの考えは分かる。

本当の父親が死んでいるならともかく、

「シリス」という存在がいる以上、ガラハッド自身が父親の真似事をするのは出過ぎた行為だと考えたんだろう。


考えは理解できるが、人としてはどうなんだ?

オレはが逆の立場だったなら絶対にそんな冷たい態度はとらないぞ。

実際は、オレたち親子や陽向おばさんたちの家族全員を守り、養ってくれたんだから、

感謝はしてるし、凄い能力だと思う。

その点では尊敬している。


でもあの人はダメだ。

何が「高潔の騎士」だ、

自分の手を汚す覚悟がないだけだろう。

「完全なる騎士」?

他人から後ろ指差されるのが嫌なだけなんだろう。


恐らくリナもオレと同じような感想を持っている筈だ。

そういう意味では、リナも父親とはどんな存在なのか、普通の子供が家庭の中で身についている筈の感覚が分からないのだ。


ミュラはもっと哀れだった。

確かに奴には父親はいた。

大破局後、軍事国家スーサのバックアップを受けたその父親は、中国南東部を手中に収め、ミュラはその権力者の一人息子としてそれなりに大事にされたそうだ。


けれどその父親は、朱武さんを裏切ったことによる自責の念から、

自分の息子より、朱武さんの息子である朱全・朱路の二人を贔屓するようになっていた。

・・・周りからしたらある程度納得のできる話かもしれないが、

何の罪もない子供から見たら絶対に受け入れられる筈もない話だ。


「なぜ、父上は僕を?」

そしてミュラはいつの頃からか、感情を他人に見せない子供になっていたそうだ。

後から聞いた話だと、

その父親も、ミュラの風貌が自分よりも母親の遺伝子がはっきりしているせいで、どうしても自分の息子に見えなかったとか。

まさしく最低な男だよな。


そしてオレたちとの戦争が終わった時、

ついにミュラは父親の過去の悪行を知る羽目となる。

そりゃあ自分の子供に、

あなたの父親は世話になった恩人を、罠にはめて今の地位を手に入れたんですよ、なんて話、

口が裂けても教えられないだろう。


でもミュラはそこで知ってしまった。

ヤツが最後に見たのは、

哀れにも、涙と血でぐちゃぐちゃの死体となった父親の変わり果てた姿・・・。


あいつにとって父親とはどんな存在だったのか・・・。


そしてほとんど捕虜待遇で連れてこられたミュラに、手を差し伸べたのはリナだった。


男のおれでさえ同情してしまった程だ。

自分より年下で、落ち込んでいる男の子に、彼女の保護本能が刺激されてしまったのは仕方のない話だったんだろう。

 「おい、リナ!

 そいつはお前のオヤジさんを罠にはめた奴の息子だろ!!」


同情はした。

しかし、そこでリナの興味を独占させるのは全く別の話。

オレが不快気にそう言っても彼女は耳を貸そうとはしなかった。

 「そうだけどさ!

 ミュラには何の関係もない話じゃん!!」


そう言われるともう反論できない。

確かにその通りなのである。

オレがシリスのやらかしたことで、アイツの息子なんだから責任を取れといわれたとしよう。

冗談じゃない。

なんでオレがあんな奴のしたことの尻拭いをさせられなきゃならないんだ?

・・・そうだよな、そういう話にしかならないよな・・・。


あの当時、カラドックが、必死にオレを慰めようとしてくれたのが、あまりにも痛かった。

 「け、惠介、

 幼馴染って、お互いをよく知りすぎているだけに、そのままゴールインてケースはレアなのが普通なんだよ、だから今回のリナちゃんも、そんな不自然な行動のわけでも・・・。」

いや、あれ、慰めじゃねーよな?

オレの傷口に塩を塗られていた気分だった。



結局、その流れはずっと続き、

ミュラをスーサの国に送る話が出た時、

リナはミュラを母親の元まで連れてゆくという、謎の行動力を発揮して見せたのだ。


リナ曰く、可哀相なミュラに母親と会わせてあげたい、のだそうだ。


うん、よくわかるよ。

子供には母親が必要だ。

いい話だよ、

リナ、お前は立派だよ。


・・・でもさ、そこにお前がついていく必要性は、

これっぽっちもないだろうがよーーーーーーーっ!!


 「あたしがその感動的な瞬間を見たいのっ!!」


結局シリスはその同行を認めてしまいやがった。

既にウィグルではスーサを敵性国家として認定していたから、

リナを赴かせることは危険だという声にオレも同調したが、

「アスラ王は女子供に手を出さない」と、何故かシリスは断言しやがったのだ。


いや、違う。

リナがアスラ王の孫娘だって知っていやがったんだ、あの男は。


それならそれで、リナをスーサから出させないって話もなったんじゃないかと、後でオレはシリスに食ってかかったんだが、アスラ王がリナを家族から引き離すこともあり得ないという、謎の信頼をシリスはオレにして見せたのだ。




結果はもう多くを語る必要もないだろう。

リナとアスラ王の関りにおいては、シリスの言ったとおりだったが、

それ以外の部分では誰にも予想できない結末に終わった。

当事者のミュラは勿論、リナも、アスラ王も、

シリスでさえ、そんな結末は予想していなかったのだ。


・・・そしてミュラはその時から姿をくらました。


あの後、奴がどこでどうなったのやら、誰も知らない。

大陸の殆どを治めたその後のカラドックなら、

ミュラの消息を掴むことが出来たかもしれないが。




 

天使シリス編ではミュラのその後はストーリーとして練っていますが、

こちらで公開するかどうかは・・・うーん、

どうしよう。


ミュラもそうですが、

前作の世界の人物が、

名前だけこちらにも登場する時が結構あります。


中には結構重要だったり、

あまり意味がない場合もあります。


ミュラは・・・どちらになりますかね。



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